Coolier - 新生・東方創想話

リグルの狂気 魔砲使いと蟲使い

2005/03/09 07:25:59
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この話は「リグルの狂気 紅魔と蛍」の続きです。駄文ですが、そちらを読んだ本がわかりやすいと思います。
それでは一つの竹林での一つの幻闘、どうぞご堪能あれ。

魔砲使いと蟲使い編

太陽の昇った竹林を、紅魔館の門番、紅美鈴は駆ける。咲夜に教えてもらった情報によると、この竹林の奥に
八意永琳という(おそらく)幻想郷で唯一の医者がいるらしい。実際には薬剤師だが、この際どちらでも良い。
しかし、なぜ美鈴が永琳への使いなのか。それには多々理由があった。紅魔館の惨状を思い出して、唇を噛む。
絶句した。傷だらけの咲夜、放心状態のパチェリー、そして…魂を抜かれたレミリア。侵入者に…リグルに、
みすみす侵入を許してしまった自分が情けなかった。(実際には異次元断層を使って入ったから仕方ないのだが)
と、同時に腹も立った。あろうことかその時間帯、自分は門の前で、異常なし、といった感じで立っていたか
らだ。なぜ、気づけなかったのだろう。パチェリーの話では、相当でかい音も響いていたようだ。そんなこん
なで美鈴は強い罪悪感を感じ、この役を自らかって出たのだった。
(でも…美鈴、途中で何が起こるか…まして、リグルに逢ってしまったら…)
咲夜の心配が、美鈴の罪悪感を、多少は和らげてくれた。竹林を駆け抜ける。

「それにしても、美鈴は大丈夫かしら?」
いまだリグルの襲撃の爪痕を残す紅の館に、霊夢達の声が響く。
「大丈夫よ。あの子は存外しっかりしているし、きっと永琳を呼んできてくれるわ。」
「でもあの竹林は迷宮そのものだぜ?ったく、なんであんなとこに住んでんだ?」
それきり、声は聞こえなくなった。

悪魔の妹こと、フランドール・スカーレットは、先ほどの大きな音に、不信感と若干の興味を抱いていた。
495年間ずっと退屈していたのだ。最近外に出してもらえるようになったとはいえ、それは極偶にだったし、
それも夜という限られた時間のみだった。確かめたくなり、そして、それを自制心が収める。
―お姉さまと、約束したではないか。―
しかし、495年生きても子供、という人格は成長しなかったようだ。
「お姉さま、ごめんなさい♪」
悪戯っぽく独り言をいった。
「禁忌[クランベリートラップ]!」
ドアは、轟音とともに砕け散った。ひらり、と部屋を出る。そして、玄関ホールへと向かっていった。そこには、
霊夢と魔理沙、紅魔館の主要人物―すなわち咲夜、パチェリー、そしてレミリアが集っている。それが何を意味
するか―答えはすぐにやってくる。

「やっほ~、霊夢、魔理沙♪」
宙で宙返りをうちながら、機嫌よくそういった。
「げっ!フランドール!」
魔理沙がしまった、といったように頭を叩く。
「?何よ、私をのけ者扱いして~」
まだフランドールには、このリアクションが何を意味するかわからなかった。
「アレ?そういえばレミリアお姉さまは?」
この場にいる全員が、気まずそうに顔を見合わせる。そして、一番恐れていたことが起こった。
「お姉さま?」
その場でへたり込んでいるレミリアに気づき、声をかける。もちろん答えが返ってくるはずはない。そんなこと
とは露知らず、近づいて再び声をかける。
「お姉…さま?」
やっと状況が飲み込めたらしい。周りの雰囲気から読めそうなものだが、そんなことにあまりふれたことのない
フランドールには無理な話だった。そして…みなが恐れていたことが起こった。
「誰…だ?」
フランドールの周りに禍々しい妖気が漂い始めた。
「誰だ!」
声が轟く。誰かがボソリとつぶやいた。フランドールには誰だったかわからなかったが、確かに聞こえた。
「…リグル。」
玄関に向かって走り出す。そこを、魔理沙に羽交い絞めにされた。
「はなせっ!魔理沙ァ!」
「何言ってる!今は太陽が出てるぞ!冷静になれ!」
「あ…」
本気で今が昼だということを忘れていたようだ。体の力が急激に抜ける。魔理沙もそれに気づいたようで、腕の
力を緩める。
「でも…レミリアお姉さまが…私…仇を…」
「私だって同じだ。だが、よく考えろ。お前を怒らせること自体が、リグルの策略だとしたら…!」
やっと気づいた。レミリアも同じ手にかかったように、怒りは冷静を失わせる。それ故に攻撃がすべて馬鹿正直
になってしまう。そうすれば、いくら力で勝っていても、…負ける。
「こうしよう。夜になるのを待つ。そしたら私とフランドールの二人で奴を…リグルを倒しに行く。」
「ちょっと待って、何で魔理沙がいく必要があるの?」
霊夢が口を挟む。
「それはほら、アレだ。いつも世話になってるって言う…」
「恩返し?」
「そうそう、それ。」
「…嘘でしょ。魔理沙、あんたが恩返しなんて、滑稽よ。」
「…ばれた?」
「当たり前よ。何年付き合ってると思ってるの?まあ別にいく、いかないは魔理沙の好きだけど。」
数秒の静寂、そして…
「いく。理由なんて、ない。」
「そう…」
そして、声は聞こえなくなった。一匹の虫が、宙を舞う。

「…フランドールと魔理沙…か。これは骨が折れるわね。」
竹林の中、リグルは紅魔館での会話の一部始終を聞いていた。いや、盗聴していた。リグルの妖気からできる虫
は、五感をリグルと共有させられる。すなわち、盗聴からスパイ活動まで、何でもこなす。ただ、痛覚も共有だ。
虫が業火で焼かれれば、リグルもそれに見合うほどの痛みを受ける。便利な力には、それに見合うリスクがある。
「痛いのはやだしなあ~でもスパイはいれときたいし~」
悩む。しかし。とてもいいアイデアが、脳に浮かんだ。たしか、ここは月の姫の家の近く。ということは―あの、
門番が通るはずだ。リグルの顔に、凶悪な笑みが広がった。

日が沈んだ。

美鈴は、完全に迷子になっていた。いつごろだか、目の前に奇妙な霧が広がり、それきり、竹林の中をさまよって
いる。と。目の前を、何かが通り過ぎた。竹の陰に隠れる。
「?」
なんだろう、と思った。しかし、その人影は美鈴の疑問に答えるように、自分の姿をさらし出した。
「咲夜…さん?」
竹の陰から出てきたのは、誰でもない、十六夜咲夜、その人だった。
「?!咲夜さん、何でこんなトコに…ていうか怪我はもういいんですか?」
冷静になればわかることだった。咲夜に近づく。咲夜はにっこり微笑むと…射程圏内に入った美鈴のみぞおちに、
掌をぶち込んだ。
ごぼり…!
「!?咲夜…さ…ん?」
美鈴が気を失う数秒前、物陰からリグルが現れた。
―はめられた…―

魂喰を発動させながら、横で待機している2匹の蟲に声をかける。
「ご苦労様、形態模写。でももう一働き。無実態、ありがとう。」
一匹の蟲が、札に戻る。もう一匹…形態模写は、主の命令を待つ。
「形態模写、この娘をコピー。こいつは精度100%で。」
―キィィ
瞬間、目の前に美鈴そっくりの…いや、美鈴のコピーが現れる。
「こんなもんでどうでしょうか、主。」
「うん、ばっちりよ。」
声まで美鈴そのものである。形態模写は、コピーの精度を10~100%まで変化させられる。ことに、100%は外見
どころか知能、そして、記憶まで本物そっくりにコピーできるのだ。コピーしたい人と、相当の力が必要だが。
「…で、命令は?主。」
「わかってるくせに。」
苦笑いしてそう答える。
形態模写は、頭を掻きつつ、
「…八意永琳を呼びに永遠亭へ、紅魔館へ連れて行ったらそれから先はスパイ活動…といったところですか?」
「そのとおり。なにか事あるたびにテレパシー送ってね。」
「了解。それでは。」
美鈴の姿をした形態模写は、走り去っていった。―さて。あとはどうフランドールと魔理沙を始末するか…魂
を抜かれた美鈴を眺めながらぼんやり考える。魂喰はすでに札に戻っている。と。早速テレパシーがはいった。
―主。いま私の上空をフランドールと魔理沙が通り過ぎました。どうします?
―見つかった?
―恐らく、大丈夫です。
―そう。じゃあそのままスパイ活動を。
―わかりました。
…よし。頭の中でまとまった 作戦を実行に移す。
「霧蟲[無実態]」
スペル発動。目の前に、霧でかたちどられた一匹の蟲が現れる。
「フランドールを迷わしておきなさい。私から解除命令があるまで。」
―シィィィイイィイイイ!
張り切ったような音を出し、蟲というよりは霧のような動きで飛び去った。次の標的は、魔理沙だ。

何時間飛べど、一向に標的が見つからない。数分前からは、霧も出始めた。魔理沙は自分の前を飛んでいる。
「ねえ魔理沙、まだ見つからないの?」
目の前の魔理沙に問いかけるが、返事は返ってこない。風を切る音で、聞こえないのかな?もう一度呼ぶ。
「魔理沙ってばあ!」
それでも魔理沙は、振り向かない。なんだか違和感がある。しかし、フランドールは違和感すら無効化させる
ほど、魔理沙を信用しきっていた。
―魔理沙なら、わたしをリグルのところへ連れて行ってくれるに違いない。―

いつのまにか、フランドールとはぐれてしまった。まったく、あの方向音痴め。少々違うが気にしない。と。
目の前に、リグルの姿を補足。―どうする?はたして、わたしだけでリグルを倒せるのだろうか?フランドール
と一緒なら勝率はほぼ100%に近い。だが、私一人では……やめた。そんなことを考えてなんになる。スペルカード
発動。
「魔符[ミルキーウェイ]!」

―ゴシュウウゥウウゥウ…!

リグルに直撃。そのリグルは消滅する。が。
「フェイクだろ?」
魔理沙の声が、虚空に響く。
「う~ん、流石。この程度のには引っかからないかあ。メイドは引っかかったのに。」
背後から声が聞こえる。振り返り、言葉を発する。
「当たり前だ、あんなメイドと一緒にするな。」
「そんな言い方していいの?味方に対して。」
「味方じゃない。好敵手だ。ちなみにおまえは仇だぜ。」
「そのちなみは余計だと思うわ。…あなたはわたしの強敵になるかしら?」
「さあな。」
風が吹いた。
「恋符[マスタースパーク]!」
「砲蟲[甲殻砲]!」
白い光の束と、黒い光の束がぶつかり合う。威力はほぼ互角。このままでは埒が明かない。
「一本追加だ!恋心[ダブルスパーク]!」
決して気の長いほうではない魔理沙は声を張り上げる。
「じゃあこっちもよ!砲蟲[甲殻砲]!」
リグルも対応してもう一匹の甲殻砲を召喚。こんな小競り合いは意味がない。力の無駄とふんだ魔理沙はスペル
を解除。同時に一気に上空へ飛び上がる。先ほどまで魔理沙がいたところを、甲殻砲から放たれた黒い光の束が
通り過ぎた。
「魔符[スターダストレヴァリエ]!」
「砲蟲[甲殻砲]!」
二人の攻防は続く。

月がもう高い。そんな時間帯に、紅魔館の門番がたずねてきた。
「すいません!八意永琳さんはいらっしゃいますか?」
「ええ、私が永琳よ。」
玄関に出てきた女性…八意永琳は、愛想の良い微笑をしながら返事をした。
「私に何の御用ですか?」
「それが、うちの主人が、よくわからない病気にかかってしまいまして…!それで、うちに往診に来ていただけ
 ないでしょうか?」
永琳は、少々困った顔をすると、
「でも、私は姫の身の回りを…」
その言葉をさえぎるように、近くの部屋から出てきた月の姫…蓬莱山輝夜は、永琳にいう。
「私は大丈夫よ。レミリアの治療に行ってあげなさいな。」
「…姫がそういうのなら、行ってまいります。」
「あっありがとうございます!」
つむじが見えるほど深い礼をしながら、美鈴の姿をコピーした形態模写は主に連絡を入れる。
―永琳の呼び出し、遂行しました。

魔理沙はだんだん、リグルを軽視し始めた。先ほどから普通によけられる攻撃すら、甲殻砲をつかって回避する。
本当に、こんな奴に咲夜やパチェリー、レミリアがやられたのか?
「黒魔[イベントホライズン]!」
「砲蟲[甲殻砲]!」
またしても、だ。おそらくこれで、10回目くらい。馬鹿の一つ覚えみたいに、同じ攻撃を繰り返すことに、何の
意味がある?実際に力を消費するのはリグルだからいいのだが、なんだか期待はずれだった。
「なんだ、お前の力はこの程度か?そうだとしたら、とんだ期待はずれだぜ。」
嘲笑うかのように言う。しかしリグルは、動じない。それどころか、意外そうに顔を歪ませ…クックッという笑いを
もらし始めた。
「…なにがおかしい?」
「いや、まさかここまで頭が悪いとは思ってなかったからさ。」
「…私は頭は悪くないぜ。」
「いいや、悪いね。いままで、おかしいとは思わなかったの?普通によけられる攻撃すら、甲殻砲を使って相殺させ
てたことに。一度も?」
何かに気づき、耳を澄ます。普通の聴力でも聞き取りづらいほど小さな羽音が響いている。やっと、リグルの狙い
に気がついた。上空へ回避しようとする。しかし。
「もう遅いわ!…撃てェ!」
四方八方から甲殻砲の攻撃が放たれる。魔理沙は慌てふためき、そして…自分の真上があいていることに気づく。
迷わず上昇。間一髪で甲殻砲の集中砲火を免れる。が…
「かかったわね!」
いつのまにか真上にリグルがいた。勝ち誇った顔をし、スペル発動。
「とどめだ!砲蟲[甲殻砲]!」
黒い光の束が放たれる。
―勝った。―

紅魔館。美鈴は、見事に永琳をつれてきてくれた。
「美鈴ぅ~あんた意外とやるわねえ。見直しちゃった。」
「いやいや、なんのこれしき。…って!意外ってなんですか、意外って!霊夢さん!!」
「いやいや、冗談よ、美鈴。」
「…ならいいです。」
そんなやり取りでも、美鈴は不快感をまったく出さない。相当この仕事を達成できたことがうれしかったに
違いない。
「…咲夜はこれでよし…と。」
永琳の声がした。咲夜の傷は、パチェリーの応急処置だけだったので、レミリアのついでに本格的な治療を
してもらったのだった。咲夜にむかって口を開く。
「でもしばらくは安静にしてること。回復が遅くなるわよ。」
「…………」
「返事は?」
「…わかったわ。」
不服そうに答える。そんな返事にも、満足げに頷きながら、こんどはレミリアに向き合う。
「でもこっちのお嬢さんは…背中の切り傷全治2ヶ月。これは特に問題ない。二の腕の切り傷も同様。体に
 回ったと思しき痺れ薬はもうほとんど解毒されている…」
ここで一息はく。
「問題は、魂がないっていうこと。」
「魂がなければそれはただの脱骸ね。本当に怪我治るの?」
霊夢が少々的外れな質問をする。そんなものを無視して、パチェリーはずいっと、永琳に顔を近づける。
「レミィは、…レミィは、これから先ずっとこうなの?」
目には涙が浮かんでいる。永琳は首を横に振ると、
「私にはわからない。それを知りたいなら、レミリアをこうした犯人を捕まえればいいでしょう。…でも、
 返ってくる答えにまで責任はもてない。もしかしたら魂は保管されてるかもしれないし、もしかしたら…」
それから先はいわなくてもわかる。レミリアの魂をすでにあの蟲が消化してしまったりしていたら…レミリア
は、永遠に生きながらの死に苦しめられる。場の空気が、重くなる。
「…紅茶、いれてきますね。」
沈黙を破ったのは、美鈴だった。咲夜が苦笑いしながら、からかうように言う。
「でも美鈴、あなた紅茶いれられたっけ?」
「いれられますよ~私だって。」
そういって立ち上がり、厨房の方へ歩き出しながら、美鈴は、この美鈴は、自分の主に連絡をいれる。
―潜伏、成功しました。

―魔理沙の敗北の原因は、わたしのスペルを自分のスペルと同じと考えてしまったからだ。
リグルは、宙に浮かびながら、考えをめぐらせる。
魔理沙のマスタースパーク系統は、本体からしか出せない。しかし、リグルの甲殻砲は、砲蟲を媒介として発射
する。そのため、ある程度力を注いでおけば、その蟲からそれに見合うだけの回数、発射できるのだ。そこまで
考えがめぐらなかった魔理沙が負けるのは当然…
「魔砲[ファイナルスパーク]!」
その声に、リグルは一時的なパニックに陥る。とっさに身を翻す。それでも間に合わず、右肩から指先にかけて、
魔理沙のレーザーに炙られた。
「………ッ!」
不思議なことに、痛みはほとんどない。たぶん、神経まで破壊されてしまったのだろう。これは修復に時間がか
かりそうだ。
「…なんでそこにいる?」
出来るだけ時間を稼ぐために、言葉を発する。腹を決めた。力を消耗しすぎるが、しかたない…
「よけられたからだ、決まってるだろ?」
よけられた、といっても、完全に、というわけではない。それは魔理沙もおなじだった。右足が、リグルと同じ
状況にある。
「それは当たり前よ、私が聞いてるのは理由だって。」
もう少しだ。
「当たる直前、マスタースパークを威力を最大限まで凝縮してコンマ何秒、放出した。その反動でよけたって訳
 だぜ。」
自慢げに解説を始めた。だがリグルには、そんなことはどうでも良かった。
「…流石ね。でも、貴方の負けに変わりはないわ!」
「…何っ!?」
一枚の札を取り出す。スペルカード発動。
「四天王[禍蜘蛛 ~地這~]!」
一匹の、巨大な蜘蛛が現れた。朽鉄と同じくらいでかい。その蜘蛛は、一声咆哮すると、地面にもぐり始めた。
「くっ…恋符[マスタースパーク]!」
時既に遅し。地這は地に潜ってしまった。そして…魔理沙の真下の地面が盛り上がる。
「いきなりかよっ!魔砲[ファイナルスパーク]!」
こいつを倒せるか倒せないかが、この勝負の分け目になる。すなわち、地這を倒せれば魔理沙の勝ち、倒せな
ければリグルの勝ち。おそらくどちらも、あと一回か二回しかスペルを唱えられないだろう。…光の束が、盛
り上がった地面に向かって突き進み、直撃。轟音とともに周りの木々をなぎ倒す。が。
「…ちっ、糸か!」
その通り。亀裂の入った大地から除いているのは、白い糸の束だった。そこで、あることに気づく。
―リグル本体を、狙えばいいじゃないか。―
考えるより先に実行に移す。恐らく、これが最後だ。スペルカード発動。
「くらえ!!!魔砲[ファイナルマスタースパーク]!!」
リグルはもはや、スペルを唱えられないようだ。その場に浮いたまま、ぼんやりと目の前に迫る光の束を見て
いる。
―やった、勝っ…―
突如、リグルの目が見開かれる。そして、口を開き、大声で叫ぶ。
「地這!蜘蛛の巣だ!」
リグルの足元の土が盛り上がり、地這が飛び出す。しまった、奴を忘れていた!
地這は尻を持ち上げ、8本中6本の足に糸を絡める。それを目の前に盾のようにはり…信じられないことが起こった。

ギイイィイイィイン……!

鈍い音とともに、ファイナルマスタースパークの軌道をかえられた。呆然と立ち尽くす。魔理沙は、目の前に迫っ
た地這の1本の足にすら、まったく反応できなかった。

ドゴオオォオオン…

「…カ…ハッ……!」
大地に叩き伏せられた。口から血を吐く。やばいぞ、コレ。
「地這、もういいわ。戻って。」
地這が札に戻った。この機を逃すほどの馬鹿はいない。反動を付けて立ち上がろうとする。が。
「ぐっ!?…ああぁ…ああ……あぁ!?」
胸と足に激痛が走る。首を器用に曲げ、自分の左足を見る。角度にして60度ほど、人間ではありえない方向に曲がっ
ていた。胸のほうは、恐らく肋骨が2,3本折れているのだろう。再び地に這い蹲る。リグルが近づいてきた。
「あ~もう、右腕がこんなことになっちゃったじゃないの。こんなんじゃあ今日中にフランドールを倒すのは無理かあ。」
感覚のない右腕をひらひらさせながら嘲る様にしゃべる。魔理沙は、やっと気がついた。
「…そうか、わたしと…フランドールを引き離したのは、…お前だったのか…」
「そういうこと。…でももういいや。無実態、戻っておいで。」
魔理沙の目の前に、霧のような蟲が飛んできた。
「もうじき、ここにフランドールがくるわ。彼女はどんな顔するかしらね?」
魔理沙にはその意味がいまいち理解できない。
「やっと見つけた、本物の貴方が、魂を抜かれていた、なんてことに直面したら…!」
スペルカード発動。
「蟲符[魂喰]」
風が吹いた。



リグルは頭を抱える。魔理沙の脱骸は別に見つかってもいいのだが、こっちの門番のものは…そう。いまこの門番に
化けて、形態模写が紅魔館に潜伏している。こいつはどこにおいておこう?悩んだ末、自分のうちにつれてかえるこ
とにした。あそこなら多分、誰にも見つかるまい。近くで満足げに佇んでいる魂喰に一声、
「もういいわよ。」
魂喰は、札へと戻っていった。上空にフランドールが見えた。
「あっやばっ、蟲符[異次元断層]」
脱骸とかした美鈴を、その小さな体からは想像もつかぬほどの力で持ち上げ、断層に入る。さて、あいつはどんな反
応をするかな?それを想像し、酷薄に笑う。

やっと、魔理沙の姿を発見した。つい先ほど、霧のようなものが晴れると同時に、魔理沙もいなくなってしまったのだ。
正直泣きそうになった。だが、絶大な意思でその涙を押さえ込み、魔理沙を探し始め、現在に至る、というわけだ。地
に降り立ち、魔理沙に声をかける。
「魔理沙!何でこんなとこにいんのよ!」
反応がかえってくるはずもない。しかし、何があったか知らないフランドールは、再び声をかける。
「ちょっと魔理沙ってば、聞いてんの?!ねえってば、ねえねえねえねえ!」
それでも反応は返ってこない。と、魔理沙の体が傷だらけなことに気づく。生半可な傷ではなかった。
「!?ねえ魔理沙!何があったの?!…リグルにあったの!?」
目を覗き込んだ。その目に、生きている、という色がない。…レミリアと同じように。やっと、状況が飲み込めた。
同時に、涙と…そして、悔しさがこみ上げてくる。
「くそっ!!!…ちくしょおおおぉおおぉお!!!」
自分は、大切な人一人護れなかった。そんなことはもう繰り返さないと、心に誓ったのに。フランドールは、涙を撒き
散らしながら、悔しさの咆哮を、喉が声を発せられる限り、叫び続けた。

夜の竹林に、吸血鬼の咆哮が響き渡った。        魔砲使いと蟲使い ―了
どうも、雪羅奈界です。なんかもう大変です。電波だしまくり。というかパクリ入りまくり。
「魔砲使い」これみると黒姫が浮かぶ私は何なんでしょう?そして偽咲夜が美鈴を気絶させる
シーン、これは某少年誌のワ○クワー○のスプ○タ・マン○じゃないですか。
そして魔理沙よ、すまぬ。今後の展開のためとはいえ、こんなことに…(泣
さらに美鈴。前作のときに誰かいないなあ、と思ってたら…というわけでこっちに…
とうとう謝る対象が読者の皆さんでなく、登場人物になってきた…

え~と、こんな駄文を最後まで読んでくれてありがとうございます。
それでは次回作にて。

…しまった、みょんだし忘れた(笑
雪羅奈界
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コメント



0.460簡易評価
5.無評価無為削除
>「美鈴ぅ~あんた意外とやるわねえ。見直しちゃった。」
直後に美鈴からのつっこみがないのは諦めの境地ってことですか?

いや、「みすずぅ~」って言ってるように見えたんで。
6.無評価雪羅奈界削除
>無為様
もちろんです。(笑
本当は呼び名中国で行きたかったんだけど、この話にはあわないなあ、
とか思ったもんで。
7.50ナイトメア削除
う~~~~~むぅ~~~~。
まさかリグルが幻想卿の有力者の魂を喰いまくって、気がついたら一人になっていたというオチじゃないでしょうねぇ…………。
面白いことは面白いのですが、読んでいて不快な気分になります(でも、引き込まれる)。
この後の展開が心配で心配で拒食症になりかけましたよ(笑)。

後、リグルは『魂喰』の危険性に気づいているのでしょうか?もし、
これ以上魂を食いすぎた場合、自らの制御下を離れるような化け物
になる可能性もありうるのですが?

まぁ、魂を保管しておけばその心配はないわけでありますが。

最後に一つ、何らかの力を得るのには代償が必要であり、リグル自身も何らかの代償を支払っているのでしょうか?
何の努力もしてないように見えるわけですし。
9.40名無し妖怪削除
>ナイトメア氏
そういう今後のネタ推測は作者さんにとって一番最悪な行為なのが分かってる?
思うだけにして口には出さないのが最低限のマナーよ

と、偉そうに説教たれたあとに言うのもなんだけど
ここからどういう風に話を広げていくのか、楽しみにしてるよ
10.無評価ナイトメア削除
>名無し妖怪氏
ど、どうもすいません(汗)。

でも、本当に見ていて凄くドキドキさせられまして、せめて後何話ぐらい続くか知りたいです。

本当にすいません!!!!
11.無評価雪羅奈界削除
>ナイトメア様
大丈夫です。最後までいけばリグルは何を代償にしてたかわかります。
まあそんなに大それたものではありませんが。(笑
…あと何話続くかなあ、たぶん4,5話くらいだと思います。なんかダラダラ
と引き伸ばしちゃってます。すいません。
13.50SRW削除
むぅ 魔理沙までも犠牲になるとは……
更に美鈴もいい位置に居ますね、続きがさらに楽しみになりました。