彼女が口を端を更に上げていやらしく笑った瞬間だった。風が強く吹き始め、暗雲が船の周囲に立ちこ
み、横殴りの雨が甲板と、其処にいた全員を叩き始めた。
少女は聖が法力でガードしているため雨風にさらされることはなかったが、それ以外の全員は、雨風に
晒されたまま、この事態の主犯である少女を睨みつける。
船の方は聖が法力を回してくれているのか大きく揺れることなく、その場で遊弋している。
「ぬえ!いったい何のつもりですか!」
雨音がうるさい中、そう叫んだのは星だった。それに対してぬえはひたすら笑いながら、
「忘れちゃったの?私は人間をからかう事が、何よりも楽しいんだよ?だから、人間をからかってやる、
それだけの事だよ」
その言葉を聞いた星は目つきを一層険しくし、懐へと手を伸ばすが、何故か其処で動きが止まってしまっ
た。
「ねぇ星、もしかしてこれを探してる?」
そう言ったぬえが持っているのは、星が法力を増幅させるときに使う宝塔だ。
「ちょっと悪いかとも思ったけど、ここに来る前に貴方の部屋から拝借させてもらったわ。ていうか護衛役
なのに宝塔持ってないなんて大丈夫だったの?」
そう言われると星は押し黙った。・・・というか、何も言えなくなった。
「さぁて、聖は船の法力制御で力を出しきれない、ムラサの力じゃ私には敵いっこないし、残るのは其処
にいる半獣の先生だけだけど、どう?やってみる?」
挑発するようなぬえの言葉に、慧音さんは目を険しくして、どこからか出した剣を構える。
「無論、私は人間を守ることを生きがいとしているものでな、人間を守ることができるなら、例え無理だと
してもやってみせるさ!」
その慧音さんの言葉に私はハッとする。そうだ、私は一体、何をやっているんだ。私は、私は――――!
そして、私は赴くままに、ぬえに斬りかかろうとする慧音さんの前に立ち、その行動を制する。
「何を―――」彼女のその言葉を遮って私は言う。
「私は、この船の船長です。ですから、この船を、この船に乗っている搭乗員全員の命を、守る義務があ
ります。だから、だからぬえ!」
言いながら、私は背中の錨を引き抜き、叫ぶ―――――!!!
「この船を沈めようとするのなら!私が相手だ!!!!」
「へーぇ、面白いじゃんムラサ。」
笑いながらそんな事を言う彼女に私は鎖着きの錨を投擲する。しかし、ぬえはこれを避けるどころか、引
き戻す錨に捕まり、私へ近づいてくる。
私は急いで鎖を手放すと同時に穴の空いた柄杓を掴み、弾幕を飛ばす。
それと同時にぬえも錨から手を離し、一歩下がると彼女お得意の“正体不明”をデコイとして飛ばした。そ
れに弾が当たると膨大な量の煙が発生し、辺りを埋め尽くすが、それを無視して、私は煙の中へと飛び
こむ――!
私とぬえの間に刺さったままになっていた錨を、走り抜ける勢いのまま引き抜く。そしてそのまま走ると、
彼女はもう目の前だ。私は錨をそのまま逆袈裟に振り上げる。
ガン!という音とともに煙が晴れ、私の目に、周囲の情報が飛び込んできた。私の錨はぬえがその手で
防いでいたが、彼女は再び笑い、告げる。
「久々にそんな本気なアンタが見れたけど、残念でした!ハ・ズ・レ!!!」
その言葉に合わせるように彼女の姿が霧となり、消えた。そして、私の背中に何かが突き刺さる。
「ほらね、やっぱりアンタじゃ、私には敵わないんだって」そんな彼女の声が私の背後から聞こえた瞬間
、私はその場に膝をついてしまった。
背後では「さ~て、次は誰が相手かな?」と、ぬえの愉快な声がする。
彼女は一体何を言っているのだろうか、だって私はまだ・・・
「まだ、まだ私は動けますが、何を言っているんですか、ぬえ」
私は立ち上がりながら、もう一度彼女へと錨を向ける、正直頭がフラフラするし、錨を持っているのも辛い
が、なんてことはない。私には守るべき人たち、いや、守りたい人たちがいるのだから。
彼女がこちらへ振り返りながら、「これ以上はシャレにならないけど、いいの?」と言う。いいも悪いも、「
私は、こうするのが仕事なものでしてね。」そう、笑いながら私は言ってやった。
彼女は不愉快な顔でこちらへゆっくり歩いてくる、隙だらけだが、私は動けない。
それを見ながら、「やっぱそれが精一杯なんじゃない。」と言うが、「それでも、退けないんですよ、これが
。」
彼女が少しずつ、近づいてくる、あと数歩で、錨が届く距離だ。そこから正体不明の弾を撃たれた。残念
ながら避けられないので、錨で払う。その隙に懐に潜り込まれる。必死で足を動かして、一歩下がり、錨
を振るう。
しかし、当たらない。甲板を打つ感触が手に伝わって、錨を落としそうになる。そして、ぬえが冷徹な声で
「寝てな」と告げて、私の腹目掛けて拳を繰り出した、その瞬間だった。
「面白そうな事してんじゃない、私も混ぜてよ。」
そんな声と共に、周囲が光に包まれた―――
その光と、声と共に、爆発音が来て、それらが全て治まった時、私とぬえの間に、一人の少女が立って
いた。見たこともない少女だが、一体誰なんだろうか。
「妹紅!?何故ここにいるんだ!??」そう叫んだのは慧音さんだった.。あの少女は慧音さんの知り合
いなのだろうか。
「何故じゃないよ慧音!今日は忙しいって言ってたのにこんな面白い事に巻き込まれてるなんてさぁ!」
少女はむくれた顔で慧音さんに叫んでいるが、これが面白い状況なのか?
すると彼女は頭を掻きながら「まぁ…」と、仕切り直して言った。
「最近輝夜とも殺し合ってなかったし、色々と溜まってるんだよね。だから、ちょっと付き合ってよ。」
直後、再び爆発音と閃光がしたかと思うと彼女の背中に炎の翼が生えていた。
雨粒がその翼に触れるたびに小さな音と共に蒸発していく。
それを見ていたぬえは気まずそうな顔をして、一歩後ずさる。
「なんか面倒そうな相手がでてきちゃったな…フン、潮時ってことか。」
そう言うとぬえは星に向かって宝塔を投げると、飛びあがって一回指を鳴らす。すると船を包んでいた嵐
がフッと消えた。
「なんだ、やらないのかい?」
「あたしは面白い事はやるけどめんどくさい事はやらない主義だよ、あんたと戦うのは面倒そうだからい
いや」
それだけ言うとぬえはそのまま西の方へと飛び立った。そして、それを見ていた皆が不意に気付いた。
「もう、夕焼けか…」
そう呟いたのは慧音さんだった。今回の取り決めでは日が落ちる頃には里に戻る事になっている。これ
では里の上空を周回するのは無理だろうか。
「あの…妹紅おねーちゃん」
皆が夕焼けに目を奪われている中、そう声を上げたのは客人である少女だった。どうやら彼女も妹紅さ
んとやらを知っているらしい。
その少女に妹紅さんは小さく「ん?」と言うとしゃがんで少女と向き合う。
「さっきはありがとう。あと、妹紅おねーちゃんの翼、すっごい綺麗だった!」
はしゃぐような調子で少女が言うと、妹紅さんは少女の頭に手を置いて小さく「ありがと」とだけ言った。
しばらく少女の頭をなでていた妹紅さんだったが、不意に立ち上がり、飛びあがる。
「じゃ、あたしはここいらでお暇させてもらうとするよ。あぁ、そうだ」
妹紅さんはなぜか私の方を向く。私が何かしたのだろうか。
「あんた、頑張るのは良いけどあんま無茶するなよ。知り合いにそういう無茶ばっかする奴がいるんでね
、あんまり心配を掛けるのは良くないよ。それと、」
そして、次に人間の少女の方を向く。
「今日は楽しかった?」
「うん!」
「そりゃ良かった。それだけだ、じゃ、私はもう行くから。」
彼女はそのまま飛んで行ったが、少ししたところで振りかえり、再び少女に向けて言う。
「楽しく生きなよ!」
そんな言葉と共に彼女の姿は夕焼けに紛れて見えなくなった。
そして、それを見届けるとともに私の足からフッと力が消えて、私はその場にへたり込んでしまった。
それを見た星と聖が駆け寄ってくる、全く私ともあろうものが情けない。
2人はしきりに痛いところはないかとか、大丈夫かと尋ねてくるが、それよりも、
「すいませんが、デッキに連れて行ってくれませんか。まだ、着陸作業が残ってますので。」
微笑みながらそう言うと、二人とも呆れた顔をしたが、両脇から腕を入れて私を立ち上がらせる。
そうしてデッキに入りながら私は一つ、気になっていたことがあった。
それは妹紅さんのことだ、彼女は一体何者なのだろうか、そして、
彼女は何故最後にあんな言葉を言ったのだろうか。
私がその答えを知るのは、それから丁度一ヶ月後の事だった。
一ヶ月後、あの時客人として乗っていた少女が亡くなった。
治療が難しい病気で、彼女が長く生きられない事は、もう数年前から解っていたらしい。
妹紅さんは、そしておそらく慧音さんも、それを知っていたのだろう。
『第125季 6月18日 天気:雨
今日は少女のお葬式の日だったが、私達妖怪は葬式に出ることができなかった。唯一聖だけが、慧音
さんの推薦でお経読むことになり、参列することができた。
葬儀の後、私達が彼女の骨が納められたお墓へと向かい、それぞれ手を合わせていた時、彼女の両親
に会う事が出来た。どうしてもお礼が言いたかったそうだ。
娘の夢をかなえてくれてありがとう、と泣きながらしきりに繰り返していた。そして最後に、これからも遊
覧飛行を続け欲しいと、二人は言ってくれた。
その後、慧音さんと妹紅さんにも会った。その場で妹紅さんは改めて自己紹介をしてくれた。
彼女は詳しい事は教えてはくれなかったが、自分が死なない人間であることを教えてくれた。その人生
は、彼女にとって楽しいものでは決してなかったであろうことは、容易に想像できた。
そしてその後、聖は慧音さんと話があるというので里に残り、帰った私達はだれからともなく聖輦船の点
検作業に入った。皆、再び船を飛ばしたいと思っているのだ。
この計画が、この船が、そして皆の気持ちが、人妖平等への階となる事を、私は強く、願っている。』
(ムラサ船長の『航海日誌』より、抜粋)
GO TO IMPERISHABLE FLIGHT...
み、横殴りの雨が甲板と、其処にいた全員を叩き始めた。
少女は聖が法力でガードしているため雨風にさらされることはなかったが、それ以外の全員は、雨風に
晒されたまま、この事態の主犯である少女を睨みつける。
船の方は聖が法力を回してくれているのか大きく揺れることなく、その場で遊弋している。
「ぬえ!いったい何のつもりですか!」
雨音がうるさい中、そう叫んだのは星だった。それに対してぬえはひたすら笑いながら、
「忘れちゃったの?私は人間をからかう事が、何よりも楽しいんだよ?だから、人間をからかってやる、
それだけの事だよ」
その言葉を聞いた星は目つきを一層険しくし、懐へと手を伸ばすが、何故か其処で動きが止まってしまっ
た。
「ねぇ星、もしかしてこれを探してる?」
そう言ったぬえが持っているのは、星が法力を増幅させるときに使う宝塔だ。
「ちょっと悪いかとも思ったけど、ここに来る前に貴方の部屋から拝借させてもらったわ。ていうか護衛役
なのに宝塔持ってないなんて大丈夫だったの?」
そう言われると星は押し黙った。・・・というか、何も言えなくなった。
「さぁて、聖は船の法力制御で力を出しきれない、ムラサの力じゃ私には敵いっこないし、残るのは其処
にいる半獣の先生だけだけど、どう?やってみる?」
挑発するようなぬえの言葉に、慧音さんは目を険しくして、どこからか出した剣を構える。
「無論、私は人間を守ることを生きがいとしているものでな、人間を守ることができるなら、例え無理だと
してもやってみせるさ!」
その慧音さんの言葉に私はハッとする。そうだ、私は一体、何をやっているんだ。私は、私は――――!
そして、私は赴くままに、ぬえに斬りかかろうとする慧音さんの前に立ち、その行動を制する。
「何を―――」彼女のその言葉を遮って私は言う。
「私は、この船の船長です。ですから、この船を、この船に乗っている搭乗員全員の命を、守る義務があ
ります。だから、だからぬえ!」
言いながら、私は背中の錨を引き抜き、叫ぶ―――――!!!
「この船を沈めようとするのなら!私が相手だ!!!!」
「へーぇ、面白いじゃんムラサ。」
笑いながらそんな事を言う彼女に私は鎖着きの錨を投擲する。しかし、ぬえはこれを避けるどころか、引
き戻す錨に捕まり、私へ近づいてくる。
私は急いで鎖を手放すと同時に穴の空いた柄杓を掴み、弾幕を飛ばす。
それと同時にぬえも錨から手を離し、一歩下がると彼女お得意の“正体不明”をデコイとして飛ばした。そ
れに弾が当たると膨大な量の煙が発生し、辺りを埋め尽くすが、それを無視して、私は煙の中へと飛び
こむ――!
私とぬえの間に刺さったままになっていた錨を、走り抜ける勢いのまま引き抜く。そしてそのまま走ると、
彼女はもう目の前だ。私は錨をそのまま逆袈裟に振り上げる。
ガン!という音とともに煙が晴れ、私の目に、周囲の情報が飛び込んできた。私の錨はぬえがその手で
防いでいたが、彼女は再び笑い、告げる。
「久々にそんな本気なアンタが見れたけど、残念でした!ハ・ズ・レ!!!」
その言葉に合わせるように彼女の姿が霧となり、消えた。そして、私の背中に何かが突き刺さる。
「ほらね、やっぱりアンタじゃ、私には敵わないんだって」そんな彼女の声が私の背後から聞こえた瞬間
、私はその場に膝をついてしまった。
背後では「さ~て、次は誰が相手かな?」と、ぬえの愉快な声がする。
彼女は一体何を言っているのだろうか、だって私はまだ・・・
「まだ、まだ私は動けますが、何を言っているんですか、ぬえ」
私は立ち上がりながら、もう一度彼女へと錨を向ける、正直頭がフラフラするし、錨を持っているのも辛い
が、なんてことはない。私には守るべき人たち、いや、守りたい人たちがいるのだから。
彼女がこちらへ振り返りながら、「これ以上はシャレにならないけど、いいの?」と言う。いいも悪いも、「
私は、こうするのが仕事なものでしてね。」そう、笑いながら私は言ってやった。
彼女は不愉快な顔でこちらへゆっくり歩いてくる、隙だらけだが、私は動けない。
それを見ながら、「やっぱそれが精一杯なんじゃない。」と言うが、「それでも、退けないんですよ、これが
。」
彼女が少しずつ、近づいてくる、あと数歩で、錨が届く距離だ。そこから正体不明の弾を撃たれた。残念
ながら避けられないので、錨で払う。その隙に懐に潜り込まれる。必死で足を動かして、一歩下がり、錨
を振るう。
しかし、当たらない。甲板を打つ感触が手に伝わって、錨を落としそうになる。そして、ぬえが冷徹な声で
「寝てな」と告げて、私の腹目掛けて拳を繰り出した、その瞬間だった。
「面白そうな事してんじゃない、私も混ぜてよ。」
そんな声と共に、周囲が光に包まれた―――
その光と、声と共に、爆発音が来て、それらが全て治まった時、私とぬえの間に、一人の少女が立って
いた。見たこともない少女だが、一体誰なんだろうか。
「妹紅!?何故ここにいるんだ!??」そう叫んだのは慧音さんだった.。あの少女は慧音さんの知り合
いなのだろうか。
「何故じゃないよ慧音!今日は忙しいって言ってたのにこんな面白い事に巻き込まれてるなんてさぁ!」
少女はむくれた顔で慧音さんに叫んでいるが、これが面白い状況なのか?
すると彼女は頭を掻きながら「まぁ…」と、仕切り直して言った。
「最近輝夜とも殺し合ってなかったし、色々と溜まってるんだよね。だから、ちょっと付き合ってよ。」
直後、再び爆発音と閃光がしたかと思うと彼女の背中に炎の翼が生えていた。
雨粒がその翼に触れるたびに小さな音と共に蒸発していく。
それを見ていたぬえは気まずそうな顔をして、一歩後ずさる。
「なんか面倒そうな相手がでてきちゃったな…フン、潮時ってことか。」
そう言うとぬえは星に向かって宝塔を投げると、飛びあがって一回指を鳴らす。すると船を包んでいた嵐
がフッと消えた。
「なんだ、やらないのかい?」
「あたしは面白い事はやるけどめんどくさい事はやらない主義だよ、あんたと戦うのは面倒そうだからい
いや」
それだけ言うとぬえはそのまま西の方へと飛び立った。そして、それを見ていた皆が不意に気付いた。
「もう、夕焼けか…」
そう呟いたのは慧音さんだった。今回の取り決めでは日が落ちる頃には里に戻る事になっている。これ
では里の上空を周回するのは無理だろうか。
「あの…妹紅おねーちゃん」
皆が夕焼けに目を奪われている中、そう声を上げたのは客人である少女だった。どうやら彼女も妹紅さ
んとやらを知っているらしい。
その少女に妹紅さんは小さく「ん?」と言うとしゃがんで少女と向き合う。
「さっきはありがとう。あと、妹紅おねーちゃんの翼、すっごい綺麗だった!」
はしゃぐような調子で少女が言うと、妹紅さんは少女の頭に手を置いて小さく「ありがと」とだけ言った。
しばらく少女の頭をなでていた妹紅さんだったが、不意に立ち上がり、飛びあがる。
「じゃ、あたしはここいらでお暇させてもらうとするよ。あぁ、そうだ」
妹紅さんはなぜか私の方を向く。私が何かしたのだろうか。
「あんた、頑張るのは良いけどあんま無茶するなよ。知り合いにそういう無茶ばっかする奴がいるんでね
、あんまり心配を掛けるのは良くないよ。それと、」
そして、次に人間の少女の方を向く。
「今日は楽しかった?」
「うん!」
「そりゃ良かった。それだけだ、じゃ、私はもう行くから。」
彼女はそのまま飛んで行ったが、少ししたところで振りかえり、再び少女に向けて言う。
「楽しく生きなよ!」
そんな言葉と共に彼女の姿は夕焼けに紛れて見えなくなった。
そして、それを見届けるとともに私の足からフッと力が消えて、私はその場にへたり込んでしまった。
それを見た星と聖が駆け寄ってくる、全く私ともあろうものが情けない。
2人はしきりに痛いところはないかとか、大丈夫かと尋ねてくるが、それよりも、
「すいませんが、デッキに連れて行ってくれませんか。まだ、着陸作業が残ってますので。」
微笑みながらそう言うと、二人とも呆れた顔をしたが、両脇から腕を入れて私を立ち上がらせる。
そうしてデッキに入りながら私は一つ、気になっていたことがあった。
それは妹紅さんのことだ、彼女は一体何者なのだろうか、そして、
彼女は何故最後にあんな言葉を言ったのだろうか。
私がその答えを知るのは、それから丁度一ヶ月後の事だった。
一ヶ月後、あの時客人として乗っていた少女が亡くなった。
治療が難しい病気で、彼女が長く生きられない事は、もう数年前から解っていたらしい。
妹紅さんは、そしておそらく慧音さんも、それを知っていたのだろう。
『第125季 6月18日 天気:雨
今日は少女のお葬式の日だったが、私達妖怪は葬式に出ることができなかった。唯一聖だけが、慧音
さんの推薦でお経読むことになり、参列することができた。
葬儀の後、私達が彼女の骨が納められたお墓へと向かい、それぞれ手を合わせていた時、彼女の両親
に会う事が出来た。どうしてもお礼が言いたかったそうだ。
娘の夢をかなえてくれてありがとう、と泣きながらしきりに繰り返していた。そして最後に、これからも遊
覧飛行を続け欲しいと、二人は言ってくれた。
その後、慧音さんと妹紅さんにも会った。その場で妹紅さんは改めて自己紹介をしてくれた。
彼女は詳しい事は教えてはくれなかったが、自分が死なない人間であることを教えてくれた。その人生
は、彼女にとって楽しいものでは決してなかったであろうことは、容易に想像できた。
そしてその後、聖は慧音さんと話があるというので里に残り、帰った私達はだれからともなく聖輦船の点
検作業に入った。皆、再び船を飛ばしたいと思っているのだ。
この計画が、この船が、そして皆の気持ちが、人妖平等への階となる事を、私は強く、願っている。』
(ムラサ船長の『航海日誌』より、抜粋)
GO TO IMPERISHABLE FLIGHT...
ただ、再び聖輦船が飛ぶ理由付けが希薄かなと思います
(少女一人の願いであるなら雲山が川船抱えて飛べばいいだけですし。まぁそこは聖らしい底抜けの好意と見ればいいのかもしれませんが)
ネタ的には面白いので、続編というか再構成した長編にして再投稿してみたらどうでしょう