Coolier - 新生・東方創想話

姉たちの憂鬱

2010/07/11 23:14:46
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 【―――No.1 ルナサ・プリズムリバー】



 妹たちについて聞きたい? 鴉天狗のあなたが?
 ……まぁ、別にいいけれど。あまり面白い話ではないわよ?

 そうね、何から話したらいいかしら。
 私には妹が二人いるわけだけれど、どちらも自己顕示欲が強くてね。
 メルランもリリカも、二人とも独自の演奏に走りたがるからあわせるのが大変。

 でも、そんな二人の音が私は好きなのよ。
 だからこそ、注意はしても強くは言わない。
 その独自の演奏こそが、彼女たちの個性だから。
 その独自の音があるからこそ、私たちは三人そろって初めて合奏が生きていくのよ。

 それに、姉だからこそ、妹たちのわがままは聞いてあげたい。できるだけ自由にしてあげたい。
 甘いと思われるかもしれないけどね、姉になるってそういうことだと思うの。

 どう? 面白い記事は書けそうかしら?
 そう、それならいいのだけど。今度はゆっくり、私のヴァイオリンでも聴いてほしいわ。



  【―――No.2 秋静葉】



 あら、鴉天狗じゃない。今日もゴシップ記事を作るのにあちこち忙しそうね。
 違うって? 私たちから見ればあんなのゴシップ以外の何物でもないわよ。少しは反省したらどうなの?
 ……する気は無しか。まぁ、そんなことだろうとは思ったけれど。

 ん? 妹について?
 うーん、あんまり面白い話でもないわよ?

 そうねぇ、何から話したらいいのかしら。
 あの子は豊穣をつかさどる神様なのは、知ってるわよね?
 だから、あの子は人間に結構信仰されるのよね。収穫が見込めないと飢餓になっちゃうから、当たり前だけどさ。

 そのことでね、たまーに天狗になるのよね。威張りくさるっていうかさぁ。
 ……天狗はそんなのばかりじゃないって? ……本当かしら?
 まぁ、それはともかく、そうなるとやっぱり喧嘩しちゃうわけよ。口喧嘩に始まって、終いには弾幕ごっこ。

 でも、結局その後で仲直りしちゃうから、仲はいいんでしょうね。あんまり自覚はないけどさ。
 それに、あの子って意外とスタイルいいのよ? 豊穣だけに。
 こう近年は辛抱たまらなくなったって言うかさ―――



 【―――No.3 古明地さとり】



 妹についてどう思うか……ですか。
 そのために長居したくない覚妖怪の元に訪れるなんて、あなたも物好きですね。
 ……えぇ、褒めているのですよ。その蛮勇、どこまで続くか楽しみですが。

 それはそうと、こいしの話でしたね。
 あまり面白い話でもないですが、……正直、どう接していいのかわかりかねてますよ。
 あの子が目を閉じてしまったのには、私にも原因があるでしょうからね。
 不甲斐ない姉を、あの子がどう思っているのか。私は、それを知るのが怖いのです。

 私は、あの子のことを大事に思ってます。だからこそ、私はあの子の心を守れなかった自分が許せない。
 あの子は、目を閉じて以降は笑うようになりました。けれども、覚妖怪としては、それは結局逃げにしかならない。
 ふらふらと出て行ってしまったあの子を、こうやって待ってあげることしかできない私では、そのことに気づかせてあげるのは時間がかかりそうですが。

 ふふ、あなたにしては珍しいですね。慰めてくれるなんて。
 何も言っていない? 心がそう言ってくれてますよ。意外と、やさしいのですね。
 おや、顔が赤いですがいかがいたしましたか? 貴女らしくないのではないですか?

 もう帰る? そうですか、これからこいしのかわいい所を100時間にわたって語りつくそうと思っていましたのに。
 え、結構ですか。そうですか。

 ……しょんぼり。



 【―――No.4 綿月豊姫】



 あら、こんにちわ。貴女は地上の妖怪?
 もしかして、妹が言っていたのは貴女の事かしら?
 気合と根性でまた月に来たのね。すばらしいわ。
 あ、桃食べる? え、いらない? そう……残念。

 うーん、妹のことねぇ。
 あの子ってね、真面目すぎるのよね。それでいて自分にも他人にも厳しいから、結構遠慮されてるみたい。
 周りからは鬼教官なんて言われてねぇ、あの子ちゃんと結婚とかできるのかしら?

 でもま、そこがあの子のいいところでもあるわ。
 あの子は真面目だからからかうととても楽しいし、なんだかんだと言っても付き合ってくれるし。
 つまり、なんだかんだでかまってほしいのよね、あの子は。
 それに、面倒見はいい子だからね。厳しすぎるって評判だけど、部下思い出もあるのよ、あの子は。

 あら? なにか不満そうね。
 なんでもない? こちらの気分の問題?
 そう……ならいいのだけど。

 ……桃食べる?



 【―――No.5 幻月】



 あ、鴉天狗だわ。こんなところにくるなんて、何かあったの?
 ……あ、わかった!! 私と遊んでくれるのでしょう!!? じゃ、早速―――え、違う?
 なーんだ。じゃあ、何のようで私のところにまで来たのよ。

 夢月のこと? 私がどう思ってるか聞きたいって?
 そんなのもっちろん、大好きに決まってるじゃない!
 私がいるからこそ夢月がいて、夢月がいるからこそ私がある。

 いい、鴉天狗。私たちはね、二人で一人前なのよ。
 私に足りないものは夢月が持っていて。
 あの子に足りないものは私が持っている。
 だから、二人で一人前。私とあの子、二人一緒だからこそ、前へ進めるのよ。
 ほかには何もいらない。私にはあの子さえいれば、世界が滅んだってかまわない。
 だって、私はあの子さえいればずっと生きていける。ずっと笑ってられるんだもの。

 ……ん? 夢月がもし結婚することになったらって?
 そんなの、決まってるじゃない。



 殺すわ。

 私から夢月を奪うやつは誰だろうと許さない。
 私からあの子を引き離すやつは、どんな奴だって八つ裂きにしてあげるわ。
 あの子は私の大事な大事な妹よ。この世に二人といない、世界で最愛の妹。
 私から妹を奪おうとする奴はみんな敵よ。そんな奴は一人残らず殺してやる。
 四肢を潰し、目を抉り、頭蓋を砕き、脳漿を撒き散らし、バラバラに刻んでぶちまけてやるのよ。
 そうよ、あの子に手を出す奴はみんな死んじゃえばいい。
 私が全部全部ゼンブ、粉々になるまでスリツブシテやるんだから。
 あは、あははははははは!! そうよ、みんなみんなシネばいい!! 夢月に関わろうとする奴はみんな死ね! 死んでしまえばいいんだわッ!

 ……あれぇ、鴉天狗ぅ、どこいくのぉ?
 あのねぇ、私ねぇ、体が熱ってきちゃったのぉ。
 だぁかぁらぁさぁ―――、私と遊んでよぉ鴉天狗ぅ!!

 アハハハハハハハハハハハハハハハ!!
 さぁ、楽しい楽しい弾幕ごっこよぉ。あれ、これじゃ追いかけっこかなぁ。
 まぁ、いいやぁ。
 夢月に関わろうとするオマエも、ここで死ネッ!!



 【―――No.6 レミリア・スカーレット】



 ……なんかくたびれてるね、何かあったのかい鴉天狗?
 ……ん? 究極のシスコンに追いかけられた?
 馬鹿を言うんじゃないよ鴉天狗、私以上のシスコンなんてこの世にいるんものか!!

 ……ちょっと、何よその「知らないっていいですね」みたいな目は。
 コホン、ならば私がどれだけシスコンなのかを、この場でありがたく語りつくしてあげるわ。

 そうねぇ、何から話したらいいかしら。
 まぁ、ひとついえることは、私はあの子のすべてを愛してるってことよ。
 素直じゃないあの性格も、あの赤い目も、金紗のような髪も、すべてが愛しいあの子の特徴。
 あの独特な翼も、私の両親は嫌っていたけどね、それでも私にとってはそれも愛しいあの子の一部でしかない。

 それに、何よりあの子っていい匂いがするのよね。
 傍にいると匂いをかぎたくなるというか、擦り寄りたくなるというか、むしろ押し倒したくなるというか。
 だからね、私があの子のドロワを盗むのも自然の摂理なの、うん。
 うーん、この香り。デリシャス。

 ……え、後ろ見ろって?
 何を言ってるのよ鴉天―――ゲェッ!!? フラン!!?
 ちょ、ちょっとまって。これには深い訳がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



 【―――No.7 聖白蓮】



 あら、鴉天狗さん。今日もお勤め、ご苦労様です。
 ……ずいぶん疲れてますね。お茶と和菓子でもいかがですか?
 あらあら、泣いて喜ばれてしまうとは思いませんでした。なにか、よっぽど嫌な事でもあったのですね。
 私でよければ、相談に乗りますよ?

 ……はぁ、妹の話を聞きに各地へ……ですか。それでひどい目にあったんですね。
 私にも弟がいましたけど、そういえば結構お姉さんって多いですよね、幻想郷は。
 あら、弟の話が聞きたい?
 ふふ、仕事熱心ですね。いいですわ、お話しましょう。
 といっても、あまり面白い話ではありませんけどね。

 弟はよく出来た子でした。
 私も昔は人間だったわけでして、あの子は立派に勤めを果たしていた。
 それでも、私と二人きりになるとよく甘えてきてくれましてね、恥ずかしいと思う反面、嬉しいとも思いましたわ。
 年をとると、そういう機会も減ってきたし、あの子も自立してしまったから、少し寂しくもなりましたけどね。

 でも、結局あの子は私より先に死んでしまって。
 その時ですね、私が死を恐れるようになったのは。
 死を恐れ、妖怪の法に手を染めて、若返った後はその力を維持するために妖怪を助けて。
 そこで、私は力なき妖怪たちが虐げられているのを知ったのです。このままではいけないと思ったのも、ちょうどその頃かしら。

 ……と、これでは弟の話になりませんね。すぐに話が脱線してしまうのは、私の悪い癖です。
 意外でしたか? 私が私利私欲で妖怪たちを助けていたことが?
 私はね、鴉天狗さん。皆の言うような聖人君主ではないの。

 人と妖怪の平等は心からの本心よ。
 でも私は結局、私利私欲におぼれた、愚かな人間の成れの果てに違いはない。
 それでも、そのことを知っても、あの子達は私のことを慕ってくれる。
 そのことが嬉しいと、心のそこから思う。
 でもね、弟が今の私を見たら―――あの子は、なんと言うのかしら。

 ……ごめんなさい。辛気臭い話をしてしまいましたね。
 ちょっと待っててください、傷の手当もして差し上げましょう。
 ふふ、こんなときぐらい、頼ってくれたっていいんですよ? 遠慮する必要なんてありません。

 さぁ、服を脱いでください。まずは、その背中の火傷から。



 ▼


 一通りの資料をまとめ終え、所々包帯で治療された射命丸文はにっこりと微笑んだ。
 自分が書き終えた記事をそっと置き、彼女はすっと立ち上がると。

 「全員両想いじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 妖怪の山を揺るがす大音量の叫びと共に、もろとも感じていた鬱憤をついに爆発させた。
 うきぃぃぃぃ!! と嫉妬パワーでエクソシストブリッチを決めていた文は、ふとある事実に気がつくと即座に立ち上がり。

 「よし、ひじりんと結婚しよう!!」



 そんなわけで文は聖と結婚した。
俗に言う「吊橋効果」というやつである。

というわけで、今回の話はいかがだったでしょうか?
この話は以前に書いた「妹たちの憂鬱」を見ていると二倍楽しめます。たぶん、そんな話。
その話のコメントに姉版が見たいとのことだったのでがんばって書いてみたのですが、ご期待に添えていればうれしいです^^;

ニヤニヤさせることが出来たらいいなぁと思いつつ、今回はこの辺で。
前回の話に評価してくださった皆さん、コメントしてくださった皆さん、ありがとうございました。
白々燈
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コメント



0.2680簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
1コメもらった!
幻月病んでるwww
姐さんあっしとも結婚してください。
4.100名前が無い程度の能力削除
古明地姉妹の惚気話なら100時間にわたって聞き入る自信がある!
5.100名前が無い程度の能力削除
パーフェクトだ、そう、まるで足が生えたジ〇ングのようにパーフェクト
全 員 結 婚 汁
7.100華彩神護削除
最後コラwww
8.100名前が無い程度の能力削除
妹、姉ときたら次は姉妹揃ってのインタビューかな?w
文は放置プレイになりそうだけどw
10.100名前が無い程度の能力削除
おい、椛はどうした?はたてはどうした!?霊夢はどうした!!

椛とはたてが密かにアップを始めたようです。
11.100名前が無い程度の能力削除
パーフェクトだ
16.100名前が無い程度の能力削除
いやあ、お姉さんって本当にいいものですね。

>あの子ちゃんと結婚とかできるのかしら?
心配しないで。
よっちゃんその内とよねえの義娘になるから(元ネタだと)
20.100名前が無い程度の能力削除
次のお話は文とひじりんの新婚生活に霊夢、椛、はたてがやきもちを焼くんですね、わかりますw
29.100名前が無い程度の能力削除
あやひじとは新しい
33.100名前が無い程度の能力削除
何故結ばれたしwww
36.100名前が無い程度の能力削除
結婚おめでとうございます
40.100名前が無い程度の能力削除
依姫は確か人妻子持ちだったような…。いや東方的には違うんだっけ?それはともかく何故結ばれたしwww
42.100名前が無い程度の能力削除
そして、霊夢と椛とはたてが昼ドラのごとくドロドロの三角関係になるんですね。分かります。
48.100名前が無い程度の能力削除
オチが全てもって行きやがったwwww
49.無評価名前が無い程度の能力削除
メルランはどうした!!?メルラン!!
あいつインタビュー一回も受けてないぞ!!?
53.100名前が無い程度の能力削除
>>49
メルランは犠牲になったのだ……。

よし、じゃあ俺は魔理沙と霖之助の義兄妹をちょっくらくっつけてくる。
54.100名前が無い程度の能力削除
やばいむげっちゃんを嫁にするにはとんでもない覚悟が必要らしい・・・
静葉、さとりん、幻月、レミリアとどんどん壊れていく姉の様子に笑ってしまったw
そういえば聖もお姉さんでしたね
59.100名前が無い程度の能力削除
とりあえずれみふらを嫁にください。
二人とも嫁にもらえばきっと大丈夫なのだと信じます。

誤字報告>聖人君主→聖人君子 ですよね?
68.100名前が無い程度の能力削除
よし!
80.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです!
げんげっちゃんええわあ・・・(恍惚)