○この作品は1から読むことをお勧めします
○永琳の能力に少しだけオリジナル設定を入れています
雨はどしゃぶりよりも酷くなる。
妹紅の髪からしたたり落ちるしずくの量が増えていく。
彼女の感情ははいらだちを通り越して怒りが爆発する寸前に及んだ。
裏口じゃなくて、表に回ればいいのに、と輝夜は思った。
だが、妹紅はそこまで頭が回らないほどに憔悴しきっていた。
「早くしないと、お前を、お前を!!!!!」
「あはは、やれるものならやってみなさいよ!!!!」
しかし、それ以上険悪な雰囲気になることはなく、二人の少女の間に生じた殺伐としたものは化学変化を起こしたみたいに中和されてしまった。
なぜなら、通せんぼしている輝夜の右肩からちょうど亀が甲羅から頭をだすように、永琳が顔を出したからだった。
「全く騒々しいわね、なにを二人で揉めているの?」
「永琳、慧音を助けてくれよ。早く、早くしてくれ。熱が酷いし、慧音の意識が朦朧として」
相当焦っているのか、妹紅は輝夜ごしに永琳に必死に話しかける。
輝夜は自分が壁になってしまったようなそんな錯覚を受けた。
「落ち着いて。わかったわ、早くあがってきなさい。あなたも風邪をひいてしまうわ。タオル貸すから」
永琳の声色が真剣なものに変わった。
状況を把握したようだった。
輝夜が通せんぼの格好をしている理由も含めて。
輝夜は手を下ろすと黙って道をどけた。
何もなかったかのように。
自分の衝動的にとった行動が急に恥ずかしくなって。
永琳はそのことについては、なにも触れることはなかった。
永琳は慧音の診察を一通り終えたようだ。
彼女の話によれば、慧音はただ、性質の悪い風邪にかかってしまっただけらしい。
二、三日安静にして、薬を投与すればすぐに治ってしまうとのことだった。
その話を聞いて、妹紅は安堵の表情を浮かべた。
「もこう…」
「慧音?」
ベッドに寝かされた慧音は意識朦朧の中で、妹紅の名を呼び掛けた。
「大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ…」
「無理はするなよ」
慧音はまた目を閉じた。
妹紅は冷たい手で慧音の手を握り締め、優しげな笑みを浮かべた。
影にかくれてその様子をそっとみていた輝夜は胸が疼いた。
胸が痛くて締め付けられたような感じがした。
妹紅が自分に絶対に見せない表情。
朗らかで、優しくて柔和な笑み。
妹紅が上白沢慧音という愛しい者にしか見せないあの表情がきりきりときりきりと輝夜を痛めつける。
少女は長い間感じたことがなかったこの感情の名前を忘れてしまっていた。
輝夜は気付かれないように足音を忍んで自室に戻ると、布団に突っ伏した。
輝夜は今日見た妹紅の顔を思い出してみる。
今日みた妹紅の表情のうち二つは長い間、もう何百年にもなる付き合いがあったのにもかかわらず、見たことがなかった。
一つは憂いの表情、もう一つはあの表情。
脳内から消し去ってしまいたかったのに、消すことはできなかった。
自分が妹紅に対してとったあの行動の意味さえもわからなかった。
輝夜はわかっていない。
妹紅に抱く感情がなんなのか。
不快だわ、と輝夜は一人呟くと、もう一度眠ることを試みた。
今度はゆっくりと眠りに落ちた。
それからというものの、妹紅は永遠亭に泊まりこみで慧音の看病に徹していた。
妹紅は慧音のためなら徹夜でもなんでもしていた。
もちろん、あの表情を浮かべながら。
その様子をずっと陰で見ている輝夜。
日に日に胸の不快感が大きくなってくる。
妹紅が自分を犠牲にし、慧音を懸命に看病したのと、永琳の薬のおかげだろうか、慧音の病状はよくなりはじめた。
しかし、それなのに微熱がずっと続いていた。
「永琳、慧音の微熱がひかないんだが…」
妹紅は慧音の額に手をやりながら永琳に不安げに聞いた。
「うーんなんなのかしら」
慧音は起き上がると口角をあげて微笑む。
「大丈夫だ。妹紅に色々と看病させて悪いしな。しかも私には色々とやるべきことが…」
「だめだ、無理しちゃいけない。もう少し休め」
「妹紅の言うとおりだわ。安静にしなくちゃね」
輝夜は不審に思った。
あの、月の頭脳とまで言われた永琳の薬を以て治療すれば、風邪が長引くことはめったにない。
ただし、只の風邪や病気ならば。
輝夜にある確信めいたものが生まれた。
それは実際その通りだった。
「上白沢慧音の病気は治らないわ。多分、そろそろ死んでしまうと思う」
永琳に秘密裏に呼び出された輝夜は彼女にそう告げられた。
続く
○永琳の能力に少しだけオリジナル設定を入れています
雨はどしゃぶりよりも酷くなる。
妹紅の髪からしたたり落ちるしずくの量が増えていく。
彼女の感情ははいらだちを通り越して怒りが爆発する寸前に及んだ。
裏口じゃなくて、表に回ればいいのに、と輝夜は思った。
だが、妹紅はそこまで頭が回らないほどに憔悴しきっていた。
「早くしないと、お前を、お前を!!!!!」
「あはは、やれるものならやってみなさいよ!!!!」
しかし、それ以上険悪な雰囲気になることはなく、二人の少女の間に生じた殺伐としたものは化学変化を起こしたみたいに中和されてしまった。
なぜなら、通せんぼしている輝夜の右肩からちょうど亀が甲羅から頭をだすように、永琳が顔を出したからだった。
「全く騒々しいわね、なにを二人で揉めているの?」
「永琳、慧音を助けてくれよ。早く、早くしてくれ。熱が酷いし、慧音の意識が朦朧として」
相当焦っているのか、妹紅は輝夜ごしに永琳に必死に話しかける。
輝夜は自分が壁になってしまったようなそんな錯覚を受けた。
「落ち着いて。わかったわ、早くあがってきなさい。あなたも風邪をひいてしまうわ。タオル貸すから」
永琳の声色が真剣なものに変わった。
状況を把握したようだった。
輝夜が通せんぼの格好をしている理由も含めて。
輝夜は手を下ろすと黙って道をどけた。
何もなかったかのように。
自分の衝動的にとった行動が急に恥ずかしくなって。
永琳はそのことについては、なにも触れることはなかった。
永琳は慧音の診察を一通り終えたようだ。
彼女の話によれば、慧音はただ、性質の悪い風邪にかかってしまっただけらしい。
二、三日安静にして、薬を投与すればすぐに治ってしまうとのことだった。
その話を聞いて、妹紅は安堵の表情を浮かべた。
「もこう…」
「慧音?」
ベッドに寝かされた慧音は意識朦朧の中で、妹紅の名を呼び掛けた。
「大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ…」
「無理はするなよ」
慧音はまた目を閉じた。
妹紅は冷たい手で慧音の手を握り締め、優しげな笑みを浮かべた。
影にかくれてその様子をそっとみていた輝夜は胸が疼いた。
胸が痛くて締め付けられたような感じがした。
妹紅が自分に絶対に見せない表情。
朗らかで、優しくて柔和な笑み。
妹紅が上白沢慧音という愛しい者にしか見せないあの表情がきりきりときりきりと輝夜を痛めつける。
少女は長い間感じたことがなかったこの感情の名前を忘れてしまっていた。
輝夜は気付かれないように足音を忍んで自室に戻ると、布団に突っ伏した。
輝夜は今日見た妹紅の顔を思い出してみる。
今日みた妹紅の表情のうち二つは長い間、もう何百年にもなる付き合いがあったのにもかかわらず、見たことがなかった。
一つは憂いの表情、もう一つはあの表情。
脳内から消し去ってしまいたかったのに、消すことはできなかった。
自分が妹紅に対してとったあの行動の意味さえもわからなかった。
輝夜はわかっていない。
妹紅に抱く感情がなんなのか。
不快だわ、と輝夜は一人呟くと、もう一度眠ることを試みた。
今度はゆっくりと眠りに落ちた。
それからというものの、妹紅は永遠亭に泊まりこみで慧音の看病に徹していた。
妹紅は慧音のためなら徹夜でもなんでもしていた。
もちろん、あの表情を浮かべながら。
その様子をずっと陰で見ている輝夜。
日に日に胸の不快感が大きくなってくる。
妹紅が自分を犠牲にし、慧音を懸命に看病したのと、永琳の薬のおかげだろうか、慧音の病状はよくなりはじめた。
しかし、それなのに微熱がずっと続いていた。
「永琳、慧音の微熱がひかないんだが…」
妹紅は慧音の額に手をやりながら永琳に不安げに聞いた。
「うーんなんなのかしら」
慧音は起き上がると口角をあげて微笑む。
「大丈夫だ。妹紅に色々と看病させて悪いしな。しかも私には色々とやるべきことが…」
「だめだ、無理しちゃいけない。もう少し休め」
「妹紅の言うとおりだわ。安静にしなくちゃね」
輝夜は不審に思った。
あの、月の頭脳とまで言われた永琳の薬を以て治療すれば、風邪が長引くことはめったにない。
ただし、只の風邪や病気ならば。
輝夜にある確信めいたものが生まれた。
それは実際その通りだった。
「上白沢慧音の病気は治らないわ。多分、そろそろ死んでしまうと思う」
永琳に秘密裏に呼び出された輝夜は彼女にそう告げられた。
続く
ちょっと、急いでる感あるけど、これはこれでいいな。
私も高校生のころ小説かいてたけど、こんなには書けなかったな。
いやはや妬ましいかぎりです。
何か緊迫感出て内容少し重い(?)からこれでいいのかな?
シリアス書けない私からしたらスゴいれす(´ω`)