Coolier - 新生・東方創想話

パンツ職人の朝は早い。

2010/07/05 22:14:36
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 パンツ職人の朝は早い。

「まぁ、好きで始めた仕事ですから」

 ここは人里の工房、『鈴木衣料店』。
 幻想少女たちに穿かれているパンツやドロワーズの七割は、ここで生産されている。

 足踏みミシンを一生懸命に動かしているのは、この工房工場の主である鈴木茂吉さん(62)である。

「最近は色やら柄やらも沢山あるから、布をそろえるだけでも大変だよ。これも時代かねぇ」

 そう話している間も、彼は手元から決して目線を離すことはない。
 一瞬の油断と、それによって生まれるわずかな綻び。それがパンツの質を落としてしまうことを、茂吉さんは痛いほどに知っているのだ。

 ひとつひとつ、その全ての工程が手作業である。
 一日に仕上げられる枚数は三十枚ほど。茂吉さんは朝の五時から夜の九時まで、食事などのわずかな休憩を除いては、ずっとミシンの前に座り続けている。

 寸分の狂いもなく仕立て上げられた彼のパンツ。芸術とも呼べる彼の仕事には、人妖問わず多くの愛好家がいる。

 東風谷早苗さん(17)。彼女もまた、そんな愛好家のひとり。

「幻想郷に行くなら、下着に関しては諦めなきゃいけないと思ってたんです。ほら、昔の日本には下着を付ける習慣がなかったとか言うじゃないですか」

 初めて彼のパンツを脚に通して以来、その感覚にとりつかれたのだという。
 人里を訪れた際には、彼の工房を覗いて新作をチェックすることを欠かさない。

「外の世界じゃあ、機械で大量生産ですからね。ここまでの肌触りのものはなかなかありませんよ」

 そう言って微笑む早苗さん。
 今穿いているパンツをちょっと見せて下さいと言ったら、丁重にスペルを叩き込まれた。





 職人は、素材を選ぶにもこだわりがある。

「やっぱり、肌に直接当たるものだからねぇ。神経使うよ」

 掌全体で、布の手触りを確かめる茂吉さん。彼の指先からは、指紋が消えてしまっている。長年の仕事のために、擦り減ってしまったのだ。

「これはダメだ。少し目が粗い」

 彼のこだわりは、並大抵のものではない。気に行った布地が見つからなければ、例え半日を掛けて出向いた先からでも手ぶらで帰ってしまうという。

「妥協しちゃあダメなんだよ。使ってくれている人に、申し訳ないからねぇ」

 一枚一枚、自らの手で布を見る彼の眼は、真剣そのものだ。

 そんな彼の眼に、絶対の信頼をおく者がいる。
 地底で旧地獄を管理する、古明地さとりさん(11)だ。

「えぇ。彼のパンツ無しの生活なんて、私には考えられません」

 彼女が着用しているのは、もちろん茂吉さん手製の下着。
 だがさとりさんが認めるのは、自分が穿いたときの着用感だけではない

「妹が脱いだ後のやつをね、スーハーするときの、何というか、鼻触りといいますか。それが段違いですね。伝わってくる乳臭さも、他のパンツと比べると一目瞭然です」

 いつかは食べることにも挑戦してみたい、と笑顔で語るさとりさんは、この直後無意識に現れた妹によって連行されていった。





 茂吉さんの一番の悩みは、後継者不足だという。

 彼のミシンの腕前と布の選別眼、それは一朝一夕で培われるものではない。茂吉さんも五十年前、職人の元に弟子入りして必死に腕を磨いた。
 だが今、彼の工房には茂吉さんただ一人だ。

「まぁやっぱり、キツい仕事だからねぇ」

 短い休憩時間、煙草をふかしながら彼はこぼす。

「自分の代で終わりかなって思うけど、それも仕方ない」

 さびしそうに笑う茂吉さん。だが、そんな彼の元に朗報が入った。
 妖怪の大賢者として知られる八雲紫氏(18……いや19でお願い)が、後継者探しに協力すると申し出たのだ。

「次の博麗の巫女を選ぶのと同じくらい重要なことだと、私は考えています」

 八雲邸でのインタビューに、彼女はそう答えた。

「私を含めて、幻想郷の少女達はそのほとんどが、スカートのまま空を飛ぶのです。見えてしまうその中に気を配るのは当然のこと。スペルカードバトルがこれほど浸透し、スポーツとしても人気を博している今だからこそ、ファッションとスポーツウェアとしての最高級の下着が少女達に必要とされているのです。もちろん私を含めてね」

 大事なことなので二回言いました、とにこやかにサムズアップする紫氏。
 彼女はこれから、自らの式とともにプロジェクトを立ち上げるという。

 今日もミシンを踏み続ける茂吉さん。しかし、工房は今危機に直面している。
 河童の工場で生産される安値の下着が、売り上げを伸ばしているのだ。コストや生産速度で劣る茂吉さんの工房は、その呷りを受けている。
 八雲家のサポートが結実するまで、工房が持ちこたえられるかどうかは分からないという。

「でもまぁ、食っていける限りは続けますよ。待ってくれている人もいるしねぇ」

 そう言って煙草を揉み消すと、彼はまたミシンの元へ戻っていった。
 その後ろ姿は、まさに職人と呼ぶに相応しい貫禄を持っていた。





 下着は知性の象徴である。
 裸でいることに恥じらいを覚える心こそが、人を人たらしめているのだ。
 たまには、それを作る側にも想いを馳せてみてはいかがだろうか。





 
 むしゃくしゃしてやった。今はくんかくんかしている。

P.S.
>>9様 訂正致しました。ありがとうございます。
>>14様 気付きませんでした…… 訂正致しました。
うるめ
http://urumeiwashi.blog49.fc2.com/
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コメント



0.1850簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
パンツ一枚にも職人の魂がこめられてるんだなぁ……
感動しました。後継者探し手伝います
2.無評価名前が無い程度の能力削除
参考文献:オナホール職人の朝は早い
5.70名前が無い程度の能力削除
いろんなところに全力で目をつぶれば
実によく出来たドキュメンタリーだと思う
6.70名前が無い程度の能力削除
使い古されたネタだけに突き抜けてほしかった。
8.100名前が無い程度の能力削除
こういうの大好きですww
9.70名前が無い程度の能力削除
途中からパンツ職人の名前が変わってるよw
10.90sakura削除
イイハナシダナー
ナイスですw
11.80名前が無い程度の能力削除
これは良作
14.無評価名前が無い程度の能力削除
ラグナロクの・執筆者の皆様に対する謝辞及び諸注意
公の場で参加・不参加を表明しないこと。
好きなあとがきですけれど多分↑コレに引っかかっちゃうんじゃないかと
17.100奇声を発する程度の能力削除
ここで働きたい
18.80名前が無い程度の能力削除
さとりさんwwww
20.80智高削除
この記事はでかでかと写真を添えて一面を飾るべきだ。
パンツでなくドロワーズならなおさらグッド。
21.90名前が無い程度の能力削除
他のキャラクターも愛用しているのだろうか
読んでみたい
後継者は暇を持て余す蓬莱人とか
29.80名前が無い程度の能力削除
ワロチww
紫ww
32.90コチドリ削除
地上の星たる鈴木茂吉氏(62)に敬礼!
39.80名前が無い程度の能力削除
>鈴木茂吉氏(62)
「吉」の字が無かったらうちの親父と同じ名前&歳www
あ、職業は違いますよ?さすがに
41.90名前が無い程度の能力削除
さ と りw 紅魔館でも同じ事が起きてそうだ