「ん……ぅん……」
ある夏の日の朝早く。
ぬえは纏わり付く暑さと、尋常ではない不快感を感じながら目を覚ました。
のそりと布団から上半身を起こしたかと思うと、そのまますぐに立ち上がる。
寝汗をかいた身体のあちこちに走るむず痒さ。
寝惚けていたぬえの表情がみるみる嫌悪のそれに変わっていく。
「もぉーっ! やだ、やだやだやだぁーッ!」
ばっさばっさと羽をバタつかせながら懸命に自分の身体を払い始めるぬえ。
彼女にしつこく纏わり付いているのは、黒くて小さな十数匹の昆虫であった。
「ぬえ、おはよ……うわぁ」
絶叫を聞きつけて部屋の襖を開けた一輪が、凄惨な光景に表情を曇らせる。
「助けてっ、一輪助けてー!」
「暴れるな、踏む、踏む!」
布団の周りにもチラホラと、黒い点が移動しているのが見える。
ぬえも一輪も、これの正体はよく知っていた。
「ぬえの部屋にも来てたんだ、蟻」
「ん、何日か前からわき始めて……」
腕を這っていた蟻を叩き落しながら、弱々しく頷くぬえ。
一輪は床の蟻を踏まないようにそっとぬえに近寄ると、優しく声をかけた。
「いま取ってあげるから。よくこんな中で寝ていられたねぇ」
ぬえを落ち着かせてから、一匹一匹丁寧に蟻を払っていく。
不快感に少し涙ぐみながら、ぬえが自ら服を捲る。
「昨日、全部追い払ってから安心して眠ったのにさ……っ」
「詰めが甘かったのね。ほら、あとはどこが痒い?」
背中にいた蟻をピンと弾いてから、一輪が尋ねた。
ぬえは自分の身体を忙しなく確認しながら、ボソリと答える。
「身体中ムズムズする……」
「特別こそばゆい所はないのね。まずは一段落と」
次は、と呟いた一輪が、ぬえの布団に視線を移動する。
蟻に占拠された可哀想な布団が、救いを求めているようにも見えた。
「ぬえ、手伝って。とにかく蟻を追い払って、お布団干すわよ」
腕捲りをして駆除作業に備える一輪を横目に、ぬえが情けない声を出す。
「一輪……先にお風呂入って来ていい?」
よっぽど気持ちが悪いのだろう。
その気持ちも分からなくはない一輪だったが、彼女はふるふると首を振った。
「な、なんでっ」
「お風呂場はいまムラサが使ってる。使ってるっていうか……戦ってる?」
「な……っ……えっ……?」
ぬえの目が点になった。
やがて、一輪の言葉の意味を呑み込んだのだろう、フルフルと震えだす。
「まぁ、そういう事なんで。我慢してお手伝いよろしく」
何はともあれ、目の前の蟻を片付けるのが先決である。
一つ一つ確実に処理していくことで、平和は少しづつ近付いてくるのだ。
今こそ、一致団結して物事に当たるべき時と言えなくもない。
「さ、まずはお布団を払って運び出し……」
「もぉやだッ! 毎日毎日、蟻まみれになるのやだぁッ!」
一輪の言葉を遮って、ぬえが悲痛な叫びをあげた。
そのまま部屋から飛び出していってしまう。
「ぬえ! どこ行くの!」
「知らないっ!」
「ちょ、着替え!」
「知らないって言ってるでしょ! 馬鹿ぁ!」
ぬえが、廊下を抜けてどこかへ行ってしまった。
部屋に残された一輪が、大きな溜め息をつく。
チラリと横を見れば、やはりそこには蟻とぬえの布団があった。
「もう、あの子は……」
これをこのままにして立ち去る訳にもいかず、一輪は冷静に対処を始めるのだった。
命蓮寺に蟻が出没し始めたのは、夏が始まって少しした頃、つい最近からである。
生活の陰に害虫あり。今回の蟻は、いわゆる不快害虫というやつだ。
黒蟻であるため建物を食い荒らされるような心配こそないが、とにかく鬱陶しい。
場所を変え時間を変え、次々と無尽蔵に進入して来る蟻。
魔法で進入を防ごうにも、既に屋内へ侵入してしまった個体に関しては手遅れだった。
法力や妖力を駆使して撃滅するだけであれば、そう難しいことではない筈である。
しかし、彼女らはそれを実行することが出来ないでいた。
理由は実に簡単だ。初めて蟻と対峙した、白蓮の一言が全ての始まりだった。
『穏便に対処を』
粘着テープや紙切れを持って蟻ににじり寄っていた面々だったが、
白蓮のその言葉によって動きを止めることになった。
発見第一号の蟻は、無事に命蓮寺の外へと生還を果たしたのである。
それからというもの、命蓮寺は比較的穏便に、蟻と戦い続けていた。
§
「そーれ水難事故だー」
柄杓を片手に、風呂場でそんな事を呟くのは入浴中の水蜜である。
所々に散った蟻へ、死なない程度に追撃を掛けているところだった。
風呂場ともなると、流石に蟻たちの勢いもそう強いものではない。
ノンビリと朝の湯浴みを堪能しつつ、時折黒い点を見かけたら対応すれば良かった。
どうせこうなるんだから最初からこんな所に現れるんじゃないよ、と、
何度そう思ったか分からないが、そんな事を考えてみたところで現れるものは仕方がない。
姿を見せるのであれば返り討ちにするだけである。
「……っと……そろそろ上がろっか……」
つい蟻と戯れすぎて、長風呂になってしまった。
その甲斐あってか、風呂場の蟻はだいたい追い払えたようだった。
これで、次にお風呂に入る人は安心できるだろう。
水蜜が最初に突入した時は、それはそれは悲惨な状態であった。
風呂場に何を求めてきたのだろうか、壁の一角が黒く染まっていたのだ。
何がどうなってこんな事になってしまったのかは、さっぱり分からない。
食べ物なんかがよく置いてある、台所や居間などにわくのはまだ分かるのだが。
もしも水分を求めて来ているのなら、他にも方法はあるだろうに。
そんな事を思いつつ、水蜜の柄杓は蠢く壁と対峙を開始したのだった。
「ムラサー? もう上がってたのー?」
「ぁーぃ」
入浴と蟻退治を終えて服を着た水蜜に、どこからか声が掛けられた。
洗面所に掛けられた鏡をボーっと見つめて歯磨きを続けながら、生返事を返す。
ひょいと顔を出した一輪が、水蜜の姿を見て残念そうな表情を浮かべた。
「ぁにぉ」
人の顔を見るなりの失礼な反応に、水蜜もまた眉をひそめた。
「いや、さっきぬえがお風呂入りたがってたから」
ムラサが上がってたなら、入らせてあげれば良かったわね。
それだけ言って、横を通り過ぎていく一輪。
その手には、何故か一人ぶんの布団を抱えていた。
「ぉえわ?」
それが何となく気になった水蜜が、一輪を呼び止める。
「あぁ、これ? ぬえの布団。あの子、寝込みを蟻に襲われちゃってねぇ」
「あー……ぉひゅーひょーさぁえふ」
「えぇ、ご愁傷様ね」
苦笑を交し合い、一輪は布団を干しに外へと歩いていく。
その後姿を見送ってから、水蜜は歯磨きを終えてしまおうと再び鏡へと視線を戻した。
「ぅぐ……」
鏡面を蟻が彷徨っているのが見えて、口の中の泡を飲み込みそうになる。
すぐさま口をすすぎ終え、水蜜はやっと自由になった口で苛立たしげに言い放つ。
「どっからわいたの、あんたら……!」
§
同時刻、台所。
こちらでは、朝食の準備が着々と進められていた。
台所もまた、蟻の進軍による被害に遭った戦場だったのだが、
食物を取り扱う場所ということで、最優先で対処が成されている。
一時期に比べれば蟻の数も激減し、一時の平穏が訪れた場所となっていた。
「きゃああぁぁぁぁっ!」
朝食の準備をしていた星が突然悲鳴をあげ、手伝っていたナズーリンが首を傾げる。
「どうした、ご主人様。朝っぱらから騒がしい声を出して」
「あ、あぁナズーリン、恥ずかしいところを。台所だと思って少し油断をしていました」
その口振りからすると、ナズーリンの鼠が食糧を食い荒らしたという訳では無いらしい。
ナズーリンは心の中でそっと安堵すると、改めて尋ねた。
「一体どうしたの」
「蟻が居ました」
落ち着きを取り戻した星が重々しく答える。
何となく予想できたその答えに、ナズーリンはやれやれといった風に溜め息をついた。
「はぁ、またか」
ここ数日、蟻の出没は珍しいことではなくなっている。
特別、驚くようなことではなかった。
しかし、ここ台所は最優先で、徹底的に蟻の追い出しが行われた場所だ。
追い出した後で、進入経路と思しき怪しい場所には小規模な結界も張ったりしている。
「どこに居た? また追い出して、結界を追加しなければ」
「……この通りです」
星が差し出したのは、小さな箱である。ナズーリンの頬がひくついた。
ナズーリンが、そっとその箱……砂糖入れの蓋を取る。
その中は、真っ白と真っ黒が素敵なコントラストを放つ魔空間であった。
「…………」
「…………」
無言で差し込んであった匙を引き抜き、蓋を閉めなおす。
この蓋には匙を通す穴が開いているのだが、それが魔空間生成の大きな原因だろう。
匙用の穴もキッチリ塞いでから、二人は顔を見合わせた。
残念ながら、平和は仮初めのものであったことが、たった今証明されてしまったのだ。
「砂糖の予備は?」
「いま取ってこよう。ご主人様は、他に蟻が居ないか確認していてくれ」
ナズーリンの言葉に頷き、星は砂糖が来るまで台所のチェックをすることにした。
先の砂糖占拠軍は残党なのか、新顔なのか。それを確かめなければ落ち着かない。
もし、既に塞いだものの他にも進入路があるとするならば、それも割り出さねばならないだろう。
「はぁ……朝食は少し遅れてしまうかもしれないわね」
§
白蓮は一人、部屋の真ん中に座って考え込んでいた。
彼女を悩ませているのは当然、命蓮寺じゅうに進入を繰り返す蟻たちである。
今は、可能な限り追い出すのみに止めているが、残念ながら現実的な対処法では無い。
いくら進入路を塞いでも、やがて別の進入路が生まれる。
全ての蟻を締め出してから、年中結界を張り続けるのも良い手段とは言い難いだろう。
一旦追い出した後で食べ物の管理さえしっかり行えば、
餌を求める蟻たちは来なくなるだろうと踏んでいたのだが、その考えは外れてしまっている。
生活している以上、食糧や生ごみを狙って出てくるものは仕方ないと思うが、
流石に風呂場や寝室にまで進出してくるとは想像していなかったのだ。
大目に見ていた寺内での食べ歩きも、しばらく禁止はしてみたものの効果がない。
一度追い出した場所への再進出も、もはや日常茶飯事となっている。
率先して追い出し役を買って出てはいるが、同時多発が過ぎて手が回らない。
いよいよ、殺虫を含めた本格的な駆除を考えなければならないだろう。
命蓮寺で生活する皆も、想像以上に長引く蟻との格闘に辟易している。
このまま誤魔化し誤魔化ししていても、更に皆を追い詰めてしまうだけだ。
「姐さん、ここに居たんですね」
「おはよう一輪。丁度、この部屋の蟻を追い払い終わったところです」
部屋の入り口に顔を出した一輪が、少し驚いた表情を作った。
「え、ここにも入ってきてたんですか」
「ええ……他の場所にも?」
またも拡大した進入被害に、白蓮の表情も曇る。
このままではいられないという気持ちに拍車が掛かるというものだ。
「はい。お風呂場と、ぬえの部屋に。お風呂場はムラサが片付けました」
「そうですか、ご苦労様です。一輪はぬえを手伝ってくれたのですね」
「ああ、それなんですが。部屋と布団は片付けたんですけど、肝心のぬえが……」
首を傾げる白蓮に、一輪は朝の一件を報告する。
ぬえが寝込みを襲われたことと、耐えかねたぬえが飛び出していってしまったことである。
「ふむ……あの子、寝る前に何か食べてましたか?」
「いいえ、言い付けはちゃんと守っていたようです」
一輪が片付けた時、ぬえが何かを飲み食いした形跡は一切無かった。
自ら呼び込む要素を作ったわけではないということだ。
白蓮は優しく微笑むと、一つ頷いた。
「分かりました。朝食まではまだ時間がありますよね? 少し、探しに行ってきますね」
「あ、それなら私が……」
「一輪いたっ! 台所えまーじぇんしー! 朝ご飯がピンチよ、手伝ってきて!」
白蓮への言葉を遮って、水蜜が慌しく駆け寄ってきて一輪の肩を叩いた。
「ちょっ……ムラサ、あんたはっ」
「私は洗面所を片付けてる最中ッ! あ、聖おはよう! じゃ!」
本当に応援を探しに来ただけらしく、すぐさま洗面所の方へと引き返していく水蜜。
「……そういうことらしいので、すみません。ぬえの事お願いします、姐さん」
「はい。一段落したら、今後の対応について話し合うことにしましょう」
「分かりました!」
白蓮の言葉に、一輪の表情が一気に明るくなる。
言葉にこそ出さなかったが『やっとか』という気持ちがひしひしと伝わってきた。
心の底では、彼女も参っていたのだろう。
勿論、家出してしまったぬえをはじめ、他の皆も同じく苦しんでいるはずだ。
台所へ歩いていく一輪を追うように部屋を出て、白蓮は一人玄関へと向かった。
「では、いってきます」
§
「甘いんじゃない、あんたの汗が」
「それ、どんな病気よ……」
「さぁ? 感染症には、そういうのは無いけどさ」
「なんだ、ちょっと不安になって損した」
「感染症には無いけど、何か怖い病気なのかもよ?」
「え……それどんな病気……?」
「だから、知らないけどさ」
地底。地上への出口に程近い横穴の奥から二人の話し声が聞こえてくる。
ぬえを追ってきた白蓮が辿り着いたのは、土蜘蛛の巣であった。
「すみません、朝早くからお邪魔します」
声を掛けながら、横穴の中へと入っていく白蓮。
そこにはやはり、家主たる土蜘蛛のほかに、見慣れた妖怪の姿があった。
「はい、いらっしゃい。お迎えみたいだね」
「聖! どうしてここだって分かったの?」
驚きを隠せないぬえの反応に、白蓮は苦笑してしまう。
飛び出した直後は動揺からか、姿を隠すこともせずに飛んでいたらしく、
目撃情報には事欠かなかった。可愛らしい寝間着姿だったのだから尚更である。
地下に入った辺りからは行方がハッキリしなかったものの、行く当ては限られていた。
何せ寝間着である。そのままずっとフラフラするとは思えないし、
転がり込むのであれば、ある程度親しい知り合いのところと考えるのが自然だろう。
命蓮寺で生活している間に、ぬえとは地底の知り合いについて話したこともあった。
ここまで絞り込めたのなら、あとは総当りだ。
こうも早くに当たりを引けたのは、ここが地上に近いから、というだけの話。
白蓮がそのことを手短に説明すると、ぬえはなんとも居辛そうな表情で視線を逸らす。
「さぁ、一旦帰りましょう? 朝ご飯の後、今後の対応を話し合いますよ」
「え……じゃあどうにかなるのね、あの蟻!」
やはりぬえも、蟻さえどうにかなれば家出などしなかったのだ。
逃げ出したくなるまで追い詰めてしまったことを悲しく思いながら、白蓮はコクリと頷いた。
「それを皆で考えるのです。あなたの知恵も貸してもらえますか?」
その話し合いの結果を断固として実行しよう、という決意を改めて固めて、手を差し出す。
白蓮の手を取って、ぬえはこの日初めての笑顔を白蓮へと向けた。
「聖、いきなり飛び出して、ごめんなさい」
「いいえ。私も、対応が後手に回ってしまって。ごめんなさい」
そんな二人を、すっかり蚊帳の外の土蜘蛛がニヤニヤと見つめている。
そして楽しそうに声を弾ませて、茶々を入れにかかった。
「ぬえの汗、甘いみたいだから、そこも考慮して話し合うのよー」
「だからっ! どんな病気よっ!」
「えぇと、ぬえ? 病気が心配なら、今度医者に掛かりましょうか?」
「なっ! 違うもん、私の汗は甘くなんてないよ!」
そんな微笑ましい言い合いを少しだけ続けた後。
土蜘蛛にきちんと礼を言うと、二人は連れ立って地上へと帰っていった。
§
「……蟻の駆除……か」
思わぬ来客を受けた土蜘蛛が、ぬえの話を思い返して一人唸っていた。
土蜘蛛には、最近地上へ遊びに出るようになった妖怪蜘蛛の友人が居た。
その友人が、よく地上での出来事を語って聞かせてくれるのだが、
その中に今回の件に役立ちそうな話があったことをふと思い出す。
少し、お節介といきますか。
薄く微笑んで一人ごちると、土蜘蛛も自らの住処を後にするのだった。
§
命蓮寺へと戻ってきた二人をまず出迎えたのは、額に汗を浮かべた水蜜であった。
お風呂入ったのに何の意味もない! とぼやきつつ、蟻の行列を箒で掃いていた。
台所のほうもどうにかカタがついたらしく、朝食の準備が無事に終わっている。
各々、雑事をこなしつつ帰りを待っていてくれたのである。
かくして、全員そろっての遅い朝食を迎えることが出来た。
これが終われば、顔を突き合わせての重要会議が始まる。
命蓮寺内の平和と安息を左右するであろう白蓮の意見。
ここにいる誰もが、彼女が出した答えを期待し、同時に不安にも思っていた。
やがて朝食も終わり、片付けが全て完了してから再び全員が集まる。
小さな小さな黒い悪魔と、これからどう渡り合っていくのか。それがここで決まるのである。
「やはり、追い返すだけでは限界があるかと」
「絶対数は、いまなお増え続けているだろうしな」
「巣ごと遠ざけようにも、相手は地面の穴。現実的とは言い難いわ」
「聖。粘着テープ及び殺虫剤の解禁を要求します」
「姐さん、私もそれが現実的だと思う」
「そうね」
台所はおろか、玄関、ぬえの私室、果ては風呂場まで。
餌を与えぬように散々注意して、この有様なのだ。
気を付けるというだけでは対応できない次元に達しているのは誰が見ても明らかである。
皆が白蓮の鶴の一声を待っている。そして白蓮も、既に覚悟は決まっていた。
「では……これより全てを解禁し、総出で命蓮寺内の蟻の駆除を開始します!」
白蓮の高らかな宣言に呼応し、皆が掛け声と共に立ち上がる。
目に見える範囲に現れる者は、粘着テープで漏らさず絡め取る。
いつか使うことになるのではないかと、殺虫剤の準備も抜かりなし。
命蓮寺の中が俄かに殺気立ち、ここから、全員の鬱憤が爆発するのだ。
第一次 命蓮寺不快虫戦争が、いよいよ始まるのである。
「……あのぅ……ひぇぇッ?」
部屋の入り口から聞こえた声に、全員の視線が集中する。
蟻に向けられた殺気がそのまま視線に乗り、声の主を怯えさせた。
「あら、ようこそ命蓮寺へ」
そんな中、白蓮が優しく声を掛け、他の皆を無言のまま宥めた。
白蓮の声に皆が少しだけ冷静になり、殺気が嘘のように静まる。
「すみません、入り口で呼んだけど反応が無くて……」
「それは、こちらこそすみませんでした」
先の会議に集中しすぎていた所為で気が付かなかったのだろう。
頭を下げた少女に対し、白蓮もまた穏やかなまま頭を下げた。
「それで、どういったご用件でここへ?」
「あ、はい。友達に頼まれて、蟻の誘導をしに来ました」
少女の思わぬ言葉に、命蓮寺の面々がざわめいた。
白蓮も例外ではなく、驚いたように目の前の少女に視線を送る。
「え、それはどういう……?」
「放っておいたら駆除されちゃうんでしょう?」
殺虫剤や粘着テープを、恐ろしいものを見る目で見て、少女は答えた。
「だから、出て行ってもらえないか、私が説得します」
白蓮はひとしきり困惑した後、少女を交えて再度会議を開始した。
そして話し合いの末、少女の言う『説得』に賭け、全てを一任することとなった。
結果、第一次 命蓮寺不快虫戦争は、始まる前に終わったのだった。
蟻を追い払うのに苦労するところや、ぬえが飛び出して行ったり、皆の会話とか面白かったです。
私の家では熱科学兵器(熱湯)で対処しました。
南無…(合掌)
薬とか使ってみても効果は芳しくないし
ベッドでゴロゴロしてたらいつの間にか足とかにひっついてて、噛まれたときのウザさと言ったら
それはそれとしてぬえちゃんの汗の味を舐めて確かめる白蓮さまを想像しt
家の中にも所定の位置に敢えて何か仕掛けておくと、そちらに食いつくのです。お試しあれ。
ムカデ様の奇襲攻撃はやべえ、超やべえっすよ
家でゆったりするどころか、常に周囲警戒と索敵してる緊張感ったらもうね・・・
都会でさえも割と酷い状況なので、そういう地方に行くと考えると……
。゚(゚ `Д)ノ。゚
蟻は嫌いです……
やっぱりムラぬえとかナズ星とか一ひじとかで命蓮寺全体に甘々空気が充満してるからアリが寄って来るんじゃないか?
ぬえの全身にアリがたかってるとか、村紗が朝風呂に入ってるってことはつまり、アレだ。その夜はお楽しみでしたね。
風呂場にいたアリも最後に誰かと誰かが洗いっことかしてたんじゃないのか?
オチのようにすんなりいかないのが現実。50KB超のガチバトルを期待していました。残念。
幼い頃は嬉々として潰したり水責めにしたり。今は申し訳なく思っている。
新居になってからはとんとご無沙汰です。
完全にシャットアウトしたと思っても、そうじゃないのが蟻を含めた小さな虫の厄介なところです。
うちにも来てくれないかなマジで
蟻とか蛾とか百足とかヤスデとか蜘蛛とか蠅とか蚊とかGとか芋虫とか毛虫とかetcetc……
マジでウチにもきてくれないかな……
ちっちゃくて赤い奴は何処にでも入ってきますよねえ…