~前の話~
幻想郷で経営されている『香霖堂』に幻想郷では見かけない客が入ってきた。
その客は「竜が住んでいる場所が知りたい」と言い、地図を買って店を出て行こ
うとした。香霖堂の店主である森近 霖之助は一体何をしに行くのか、あなたは
何者なのかと聞いたところ、「あいさつをしに行く。そして俺は人間だ。」
と答えたのだが………
◆ ◆ ◆
「……………っ」
霖之助はしばらく動悸が治まらないでいた。
人間?違う。そんなはずは無い。あの影が何よりの証拠ではないか。
胸騒ぎがする。悪いことではないだろう。だが、何かが起きようとしている。
そんな気がしてならない。
(追うか………)
霖之助は必要最低限のものをまとめると客の後を追いかけることにした。
◆ ◆ ◆
「ハァ…ハァ…」
普段そんなに運動するわけではない霖之助にとって、山道を走って上るのは
かなりきつかった。
「あれ、何?ついてきたの?」
ちょっと意外そうにこっちを振り向く客に
「ちょっと……待って………くれないかな…」
「何で。俺には待つ理由ないんだけどね。」
待つのが嫌というより、ついてこられるのが嫌そうな感じだ。
呼吸も落ち着いたところで改めて
「もう一度聞かせてくれないかな…あそこへ何をしに行「もういいよ、ついてく
れば。」
言葉の途中で遮られてしまったが、ついていくのはいいと言うことにしてくれ
たようだ。
「物好きだな~。来ても面白くないよ。」
「かまわない。」
「ふ~ん………」
再び歩き出したのでそれについて行く。怒ったのだろうか、無言のままだ。
そこで、最も気になっていたことを聞いてみる。
「…………君は、本当に人間なのかい」
「…………ホントに物好きだな……」
少し間を置いて
「人間であることに間違いは無い……って言ってもあれを見たら違うって言いた
くなるよな。外側は人間。でも内側は違うかな。」
「じゃあ一体…」
が、その質問には答えずに
「暇だしちょっとした歴史の話でもしてやるよ。」
「え…いや、質問が「むか~しむかし、ある国にたくさんの竜が住んでいまし
た」
完全に無視して勝手に話を進めていく。
「竜は天候を操ったりして人のために色々なことをやっていました。そしてそれ
らの竜は人々に崇められ、神として扱われるようになりました。けれど竜の中に
一匹だけ、日の光にもつきの明かりにも弱く、ひとのまえに姿を現せないものが
いました。」
そうこう言っているうちに竜の住むとされる湖に着いてしまった。
(一体何の話だったんだ?)
と霖之助は疑問に思いながら湖の淵に近寄っていく。
「それで、その竜が一体どうしたんだい」
すると
「続きはこいつが教えてくれるぜ。」
と湖の水に触れる。
「さあ、起きて来いよ。」
すると、湖の中心に向かって渦が巻き始めた。
そして霖之助の頭の中になにかの声が響き始めた。
「こ、コレは一体何なんだい!?」
「驚くことじゃねえよ、起きてもらうんだよ、ここの竜にな。」
「!!」
ぼんやりと響いていた声がはっきりとしたものになってきた。
ーその竜は自分だけが神になれなかったことに怒り、海を荒らしまわった。ー
ーその怒りを静めるため、生きたまま人の体に封じたのだー
ーそうだろう、『驪竜』ー
ーいや、黒竜よー
「その呼ばれ方はあんまり好きじゃねえからな。やめてくんねえか、『勾陣』」
ーその呼び方をするな、黄竜のほうがしっくりくるー
そこにいたのは、全身が金色のような竜だった。
「……これが…竜」
唖然とする霖之助をほうって置いて
ー黒竜よ、一体何のようだー
「別に、あいさつだよ」
ーほう、それだけのことでこの私を呼び起こしたのかー
と会話が続けられている。
「こんなトコに篭ってたんじゃ中にいる『コイツ』みたいだぜ。この里の奴らに
姿ぐらい見せてやれよ」
ーそうだなー
「じゃあ何で出てこない」
ー人に自分の力で生きて欲しかったのだー
ー何時までも私たちに頼っていたのではいかんと思ってなー
「ふ~ん…まあいいさ。俺の用はそれだけだ。世界中の竜に会ってまわることし
か俺の楽しみなんて無いんでね」
ーそうかー
ー哀れだなー
「思っても言うなよ」
ーそうだなー
ーではー
そう言って竜は姿を消した。
◆ ◆ ◆
「そうか……君自身『竜』だった訳だ。」
湖からの帰り道、霖之助はずっと気になっていたことが分かりスッとしていた。
「しかし…あれが幻想郷のりゅうだったんだね。」
「ああ、しかも黄竜だったなんてな。」
「そういえば君は黒竜だといっていたね。色によって何か違ってくるのかい?」
別に、とあくびをしながら彼は答えた。
「大したちがいなんてねえよ、ただ黄竜は竜の長みたいなもんだからな。」
香霖堂に着いてから
「君はこれからどうするんだい?」
と聞いてみると
「出てくよ。おれがいた場所じゃろくなことが起こらねえからな。」
「そうかい…」
そうして早速去ろうとしたとき、
「でもまあ、暇だったらまた来るか…って常に暇だな俺。」
まあいっか、といって
「じゃあな」
彼は去っていった。
◆ ◆ ◆
そして次の日の朝、
「こ~~り~~ん!!」
ドッカ~~ン!!
玄関を箒にのったまま破壊し家の中へ突っ込んでくる。
「魔理沙…何なんだい、こんな朝早くに、玄関まで壊して……」
「そんなことより早く外に出てみろって、すごいことになってるぜ!!」
彼女に急かされ、外に出てみると
「ほら、香霖、あそこ!!」
指を指している方向を見ると
「あれは………」
そこには朝日にも負けないぐらい、『黄色』に輝く竜の様なものが気持ちよさそ
うに空を飛んでいるのだった。
幻想郷で経営されている『香霖堂』に幻想郷では見かけない客が入ってきた。
その客は「竜が住んでいる場所が知りたい」と言い、地図を買って店を出て行こ
うとした。香霖堂の店主である森近 霖之助は一体何をしに行くのか、あなたは
何者なのかと聞いたところ、「あいさつをしに行く。そして俺は人間だ。」
と答えたのだが………
◆ ◆ ◆
「……………っ」
霖之助はしばらく動悸が治まらないでいた。
人間?違う。そんなはずは無い。あの影が何よりの証拠ではないか。
胸騒ぎがする。悪いことではないだろう。だが、何かが起きようとしている。
そんな気がしてならない。
(追うか………)
霖之助は必要最低限のものをまとめると客の後を追いかけることにした。
◆ ◆ ◆
「ハァ…ハァ…」
普段そんなに運動するわけではない霖之助にとって、山道を走って上るのは
かなりきつかった。
「あれ、何?ついてきたの?」
ちょっと意外そうにこっちを振り向く客に
「ちょっと……待って………くれないかな…」
「何で。俺には待つ理由ないんだけどね。」
待つのが嫌というより、ついてこられるのが嫌そうな感じだ。
呼吸も落ち着いたところで改めて
「もう一度聞かせてくれないかな…あそこへ何をしに行「もういいよ、ついてく
れば。」
言葉の途中で遮られてしまったが、ついていくのはいいと言うことにしてくれ
たようだ。
「物好きだな~。来ても面白くないよ。」
「かまわない。」
「ふ~ん………」
再び歩き出したのでそれについて行く。怒ったのだろうか、無言のままだ。
そこで、最も気になっていたことを聞いてみる。
「…………君は、本当に人間なのかい」
「…………ホントに物好きだな……」
少し間を置いて
「人間であることに間違いは無い……って言ってもあれを見たら違うって言いた
くなるよな。外側は人間。でも内側は違うかな。」
「じゃあ一体…」
が、その質問には答えずに
「暇だしちょっとした歴史の話でもしてやるよ。」
「え…いや、質問が「むか~しむかし、ある国にたくさんの竜が住んでいまし
た」
完全に無視して勝手に話を進めていく。
「竜は天候を操ったりして人のために色々なことをやっていました。そしてそれ
らの竜は人々に崇められ、神として扱われるようになりました。けれど竜の中に
一匹だけ、日の光にもつきの明かりにも弱く、ひとのまえに姿を現せないものが
いました。」
そうこう言っているうちに竜の住むとされる湖に着いてしまった。
(一体何の話だったんだ?)
と霖之助は疑問に思いながら湖の淵に近寄っていく。
「それで、その竜が一体どうしたんだい」
すると
「続きはこいつが教えてくれるぜ。」
と湖の水に触れる。
「さあ、起きて来いよ。」
すると、湖の中心に向かって渦が巻き始めた。
そして霖之助の頭の中になにかの声が響き始めた。
「こ、コレは一体何なんだい!?」
「驚くことじゃねえよ、起きてもらうんだよ、ここの竜にな。」
「!!」
ぼんやりと響いていた声がはっきりとしたものになってきた。
ーその竜は自分だけが神になれなかったことに怒り、海を荒らしまわった。ー
ーその怒りを静めるため、生きたまま人の体に封じたのだー
ーそうだろう、『驪竜』ー
ーいや、黒竜よー
「その呼ばれ方はあんまり好きじゃねえからな。やめてくんねえか、『勾陣』」
ーその呼び方をするな、黄竜のほうがしっくりくるー
そこにいたのは、全身が金色のような竜だった。
「……これが…竜」
唖然とする霖之助をほうって置いて
ー黒竜よ、一体何のようだー
「別に、あいさつだよ」
ーほう、それだけのことでこの私を呼び起こしたのかー
と会話が続けられている。
「こんなトコに篭ってたんじゃ中にいる『コイツ』みたいだぜ。この里の奴らに
姿ぐらい見せてやれよ」
ーそうだなー
「じゃあ何で出てこない」
ー人に自分の力で生きて欲しかったのだー
ー何時までも私たちに頼っていたのではいかんと思ってなー
「ふ~ん…まあいいさ。俺の用はそれだけだ。世界中の竜に会ってまわることし
か俺の楽しみなんて無いんでね」
ーそうかー
ー哀れだなー
「思っても言うなよ」
ーそうだなー
ーではー
そう言って竜は姿を消した。
◆ ◆ ◆
「そうか……君自身『竜』だった訳だ。」
湖からの帰り道、霖之助はずっと気になっていたことが分かりスッとしていた。
「しかし…あれが幻想郷のりゅうだったんだね。」
「ああ、しかも黄竜だったなんてな。」
「そういえば君は黒竜だといっていたね。色によって何か違ってくるのかい?」
別に、とあくびをしながら彼は答えた。
「大したちがいなんてねえよ、ただ黄竜は竜の長みたいなもんだからな。」
香霖堂に着いてから
「君はこれからどうするんだい?」
と聞いてみると
「出てくよ。おれがいた場所じゃろくなことが起こらねえからな。」
「そうかい…」
そうして早速去ろうとしたとき、
「でもまあ、暇だったらまた来るか…って常に暇だな俺。」
まあいっか、といって
「じゃあな」
彼は去っていった。
◆ ◆ ◆
そして次の日の朝、
「こ~~り~~ん!!」
ドッカ~~ン!!
玄関を箒にのったまま破壊し家の中へ突っ込んでくる。
「魔理沙…何なんだい、こんな朝早くに、玄関まで壊して……」
「そんなことより早く外に出てみろって、すごいことになってるぜ!!」
彼女に急かされ、外に出てみると
「ほら、香霖、あそこ!!」
指を指している方向を見ると
「あれは………」
そこには朝日にも負けないぐらい、『黄色』に輝く竜の様なものが気持ちよさそ
うに空を飛んでいるのだった。
幻想郷の最高神は「竜神」ではなく「龍神」。
「竜」と「龍」の差が分からんなら、とりあえず出直すべき。
中身は何も言わんよ。
それでも物語を完結させたんですもの、間違いなく次の糧になると思いますよ。
とにかく頑張れ!
一つの話を完結させるというのはそれだけで素晴らしいこと、誇れることです。
私なんてもう長い間作品を完成させられず、恥ずかしいばかり。
素敵な作品を読ませて頂いく毎日で氏を含め書き手の方々には頭が上がりません。
以下、阿呆がいらんことをグダグダ述べていますが
「なげえwバカがいやがるw」と聞き流して頂けると幸いです。
今作品には主たる登場人物として
霖之助、オリキャラ、最後に出てきた龍が挙げられるかと思いますが、
各登場人物に深みを持たせる小事件を挿入し話に起伏を持たせると
感情移入がし易かったかもしれません。
人物を掘り下げることなく設定だけ列挙されたのはいささかもったいなく感じました。
特にオリキャラは話の根幹を成す重要な人物ですので、慎重な取り扱いが必要かもしれません。
以下は参考までに。
黒竜は幻想郷に無い「海」を司るという点で話を膨らませても良いですし、
霖之助(魔理沙もですが)は五行において「水」に属するので
同じ水繋がりという部分に触れても面白いかも知れません。
また、黒竜は玄武との繋がりがあるとのことで、
玄武の沢と結びつけてみるなどなかなか夢が膨らみます。
そうなると妖怪の山など絡み出して風呂敷がどんどん広がって大変なことになりはしますが――
若しくは、「新月」を同じくキーワードに持つルーミアとの絡みも考えられますね。
霖之助も一観察者としてではなく、
神主をして「切れ者です。きっと」と言わしめた知性と発想力をいかしてあげられれば
よりキャラクターとしての魅力が深まったかもしれません。
もっとも彼とて霊夢の蘊蓄を聞く側に回ってしまう事もあり、
常に考察を披露する訳では無いのですが、
ともあれ二者のやりとりに驚嘆するだけの駒であったのは些か残念に思います。
龍という偉大過ぎる存在を前にしては霖之助はちっぽけな存在かも知れませんが、
それを何とか上手く料理することによってぐっと深みは増すと思うのです。
もともと幻想郷及び外の世界に思いを馳せるのが得意な彼のこと、
そのちょっとおかしくて、
しかし一考の価値のある語りを見せる機会は作りやすかったかも。
黄龍に関しては日本では麒麟に中央の座を奪われ、
後に匂陣がそれに取って代わるという歴史があるそうですが、
やはり名前と簡単な設定だけ述べられるに留まったのが残念です。
大結界騒動が最後に龍神様が公に姿を現した事件だそうですので、
そこを前面に押し出してみるなどすると深みが増したかもしれませんね。
騰蛇を持ってきて同じ中央の裏表(陰陽)という関係を考えても良いですが、
そうすると最早話が膨らみすぎて大変な事になるかも。
シリアスな長編として煮詰めていけば
興味深い作品になるのではないかな、というのが私の感想でした。
ともあれ文体には拙さを感じませんでしたし、話の骨子も破綻してはいなかったので
氏の書き方次第でいくらでも良作に化ける可能性を感じました。
また、重箱の隅を突くようで恐縮なのですが、三点リーダは「……」と二つ重ねて使うという
ある意味どうでもいいかもしれないルールがあります。
これは厳格に守られている訳ではもちろん無いので、深く気にすることはないのですが
心に留めておいて悪いこともまたないでしょう。
>「え…いや、質問が「むか~しむかし、ある国にたくさんの竜が住んでいました」
このような部分も
「え……いや、質問が――」
「むか~しむかし云々」
などダッシュを使ってみるというのも表現の幅が広がって良いかも知れません。
ご一考くださいませ。
長々といらん事を述べましたが、想像する楽しみを掻き立てられ、楽しく読むことができました。
創想話は独特の空気を持った場所なので、
万点以上を獲得している作品を概観して
受け入れられやすい雰囲気を模索してみても良いかも知れませんね。
それから続き物はどうしても作品集の流れをはやめてしてしまうため、
特に短いものが連投されると良い顔をされないのが通例です。
連載を考える場合は最低でも一話30kb程度を目処に考えておくと安心かもしれません。
もちろんそのようなルールは無いので、あくまで参考までに。
長文乱文失礼しました。
どうにも感想が長くなっていけません。恥ずかしいことです。
では、氏の次回作に期待しております。
まあ他の方が言いまくっているので多くは語りません
それなりに面白かったです
ー は ――の方がいいのではないでしょうか?
と。通りすがりが失礼。