僕は香霖堂で店主を務めている『森近霖之助』だ。
しかしそれは表の顔である。
裏では混沌としているこの幻想郷の平和を守る正義の味方
『スーパー香霖堂マン』だ。
事件があれば即出動。
自慢のハンドパワーで相手を撫で倒し、驚異の膝パワーでどんな相手もイチコロだ。
そして極めつけは自慢の薀蓄で相手をなぎ倒す。
甘いルックスで少女から大人の女性まで大人気だ。
そして今日も『スーパー香霖堂マン』に事件がやってくる。
「…なんだいそのおぞましい正義のヒーローは」
「えっ、知らないの?正義のヒーロー『スーパー香霖堂マン』よ」
紙芝居風で紹介されて呆れ顔の霖之助と、ニコニコしている人里の守護者『上白沢 慧音』がいた。
「幻想郷の潜む悪を退治するなんて素敵だとは思わないのか」
目をキラキラさせている慧音に霖之助は溜息を吐く。
「頭を撫でただけでやられる悪者なんて聞いたことないよ」
ましてや薀蓄で倒せるのもおかしいと思った。これで倒せるものなら異変は無くなるのだろうか?
「うむー駄目か」
「君の知り合いがいいんじゃないか?」
「妹紅か…。たしかに適任だとはおもうんだけど…」
慧音は困惑の表情をした。
「この前、二人で仮面を付けて人里全員の前でヒーローごっこしたんだ」
「二人でやったのか。内容はどんなだったんだ」
「正義の慧音マンの前に、悪のヒーロー妹紅マンが現れ。宿命の対決をする内容だったんだ」
想像したら負けだと思う…。いろいろと。
「そこに永遠亭の医者『八意永琳』氏に見られたらしく」
「あー、言いたいことはよくわかった」
永遠亭の姫『蓬莱山輝夜』にバレたのだろう。迷いの竹林上空が今まで以上に凄かったのを思い出した。
「かなりの好評だったんだがな…」
慧音は残念そうに溜息をついた。
「それで僕にヒーロー役をしろと?」
「そうだ」
「拒否権は」
「ないぞ」
キッパリと却下された。
こんなヒーロー絶対に流行らないっと思う霖之助だった。
翌日
命蓮寺前でヒーローショーが開催されることになった。
舞台裏で着替えようよしたとき
「…酷過ぎる」
ヒーローの衣装をみた。漫画で見たこともある『ウ○ト○マ○』を青と黒を塗ったような衣装だった。
確かに人気は出るが、こんなんじゃ笑い者になるだけだ。
仕方なく着て、鏡をみた。これはひどいの一言に尽きる。
「…あのすいません」
「はい」
そこには今回のショーの脚本をかいた『稗田 阿求』がいた。
「あら、似合うじゃないですか霖之助さん」
「君のファッションセンスを疑うよ」
「えー、いいじゃないですか」
阿求は笑っていた。
「それに仮面を付けるんですから恥ずかしいことはありませんよ」
ニヒヒと笑う阿求に対し霖之助は頭が痛くなった。妹紅もこんな感じだったんだろうと思うと共感できる気がした。
ヒーローショーが始まり、霖之助の変身前の人が演じている。
そして悪役のリーダーの星とその手下のナズーリンと一輪だった。
「お前達人間共が我らを見限るから、我々はお前達の復讐を誓ったのだ」
「お前達妖怪は、いったいいくつの弱い人間を食ってきたんだ」
「そんなの。虐げられた我々同胞に比べれば少ない方だ」
「どこがだー!!」
ちゃんと演じている星を、霖之助は驚いていた。
真面目の彼女がここまで演技の才能があったとは。
「ナズ、一輪。やってしまえ」
ナズーリンは二本の棍棒を持ち、一輪は腕を鳴らしていた。
いくら演技とはいえ、迫力が半端ない。
「このままでは負けてしまう。皆、僕に変身するパワーを送ってくれ」
観客はシーンと静まり返った。
そして
「へんしーん」
「香霖堂マーン」
人里全体に声が広がり、ステージには煙が立ち込める。
そして変なBGMがながれ、霖之助は変身前の人と交代した。
「頑張ってください」
霖之助を応援するかのように、その場から去って行った。
(覚悟を決めるしかない)
そして僕はステージに上がる。
目を閉じ、ライトアップされるのを待つ。
パッ
ライトが付き、観客席からどよめきが来る。
「隊長!!奴が変身してしまいました」
「貴様、誰だ!!」
僕は目を開け、観客席に向かいこう答えた。
「僕はこの混沌としたこの幻想郷を守るため、巨大な悪に立ち向かう正義のヒーロー」
僕は恥ずかしいポーズを取りながら。
「人呼んで、『スーパー香霖堂マン』」
そういうと幻想郷中歓声が響き渡り、観客席から『きゃー、香霖堂マーン』と声を掛けてくる。
天狗達も空から写真を撮りまくっている。
(う~、やっぱり恥ずかしい)
そう思うが、早く終わらせるため、演技を続ける。
ナズーリンが近づいてくる。
「香霖堂マン、ここで終わりだ!!」
ナズーリンが襲いかかってきた。
ナズーリンは二本の棍棒を軽々と振るが、霖之助は華麗に避ける。
だがナズーリンからして見れば、ただ避けてるようにしか見えなかった。
「避けてるだけじゃ、私らには勝てないよ!!」
霖之助は余裕の表情を見せつけた。
「余裕ぶりやがって…」
さすがの冷静のナズーリンが切れ、猛攻を仕掛けてくる。
(かかった!!)
霖之助はニヤリッと微笑んだ。
星もそれに気づき
「ナズーリン、冷静になって」
急に口調が変わった星にナズーリンは聞いていなかった。
「壁際に追い込んだよ、これでおしまいだ」
棍棒を大きく振りかぶると、霖之助は一気に近づいた。
「甘い!!」
棍棒は霖之助に直撃をうけた…に見えた。
霖之助は空中で回転しながらナズーリンの耳元にいた。そして
フゥー
「…ヒャウ~」
ナズーリンはかわいい声を出し、そのまま気絶した。
「僕は無駄な殺生をしないのがポリシーだ」
観客からは『きゃー、かっこいい』とか『おなごを殺さずとは…。紳士じゃな!!』
「隊長!!ナズがやられました」
「くそ~、ナズの弱点を見ていたのか」
演技とはいえ、相手の弱点を観察していた。
星は槍を持ち、前に出る。
「たっ、隊長!?」
「一輪。ナズを連れて、あの方に報告するのよ」
「しかし隊長は?」
「心配は及びません。さぁ行きなさい」
一輪はナズーリンを担ぎ、ステージを出る。
ナズーリンの顔が赤くなっているが、今は演技中だ。
「ふふふっ、香霖堂マン。あなたにはわかるでしょ?」
星にオーラがでた。どうやら本気らしい。
「なるほど、毘沙門天パワーか」
「そうです、あなたには弱点を見つけ出すことはできますか?」
いつもとは違う雰囲気、観客からも二人の迫真の演技に釘付けだった。
「なら、僕も本気でいかせてもらう」
そういうと霖之助の手が光りはじめた。
「香霖堂ソード!!!!」
霖之助から作り物の刀が出てきた。もちろん切れない。
緊迫した劇。二人の戦いが始まろうとしている。
「いきます」
星は槍を回転しながら突っ込んできた。
そして距離が詰まってきたところで渾身の一撃を繰り出したが。霖之助はひらりと避けた。
星はそのまま横に振り、霖之助は刀で受け止めた。
(弾幕を使えないとはいえ、ここまでの腕とは)
霖之助は槍を弾き、縦斬りをしたが。星はひらりと身をかわし、振り向きざまに槍を振ってきた。
「おっと」
霖之助はバックステップをし、距離をとる。
霖之助は目を閉じ、集中し、構える。
そして一瞬に距離を詰めての攻撃を仕掛けた。
…しかし、星はそれを受け止めた。
「やりますね、少しは見直しましたよ」
「いやいや、これでもいくつかの死線をくぐってきたからね」
「なら期待できそうです」
そして二人は同時に離れる。二人は次の一手を読み合っている。
二人はにらみ合い、そして動いた。
先に動いたのは霖之助だった。
霖之助はジャンプをして、体全体を使っての回転斬りを仕掛けてきた。
(外せば隙が大きいはず、チャンスがくる)
星はギリギリまで引き寄せた。
(今だ)
星は横に避け、ガラ空きの側面を攻撃を仕掛けようとしたが
バシッ
星は足に攻撃を受けてしまった。
「くッ!!」
霖之助は左手を星の槍を握り、右手で星の左足を狙っていた。
一瞬の出来事に、星はうずくまってしまった。
勝負ありだ
「りn、じゃなかった香霖堂マン!!今度は負けないぞ。覚えておけ」
そう言って、星は足を引きずりながらステージからでた。
「多少の損害は仕方あるまい…」
霖之助は刀をしまい、空を見上げた。
「僕がいる限り、幻想郷を好きにはさせないぞ」
観客席から声援が巻き起こる。霖之助は観客席に向かい。
「応援、ありがとうー」
ステージのカーテンが閉まる。
これで霖之助のヒーローショーが終わった。
その後。
『スーパー香霖堂マン』の続編を頼まれたらしく。霖之助はまたステージに駆り立てられる。
修正しました。指摘ありがとうございます
少女たちを落としまくるんだ
腰砕けになったナズーリンが可愛いwwまだ脅威の膝が出てないからそれ見たい。
次回のステージは紅魔館前特設ステージですね。期待してます。