「蔵を掃除しましょう!」
何か意を決したような表情で妖夢が言ったのは、二日前の朝の出来事だ。
そのとき、あの子はなぜか埃まみれで、クタクタで、自慢のリボンもクシャっとなっていた。あぁ! 私のキクラゲが!
理由を聞くと、なんでも、何の気なしに蔵を開けたらガラクタの洪水を食らったのだとか。
……ちょっと考えなしに物を入れすぎたらしいのよねぇ……。
「幽々子様ぁ、なんか木箱が出てきました」
「ん? その箱がどうかした?」
現在、作業三日目のお昼。ずいぶん処理したが、全体の割合からすると、まだまだゴールが見えない。
白玉楼の広さと来たら幻想郷随一だ。蔵の広さも半端じゃない。何というか、サッカーとか出来そうなレベルだ。
そんな中に、誰かさんが(私? いやいやまさかそんな事は無い)洪水が起きるほど物を詰め込んだものだから、一種のダンジョンと化していた。
たまに「曰く付き」だったり危険だったりする物品が混じってるあたり、本当にダンジョンだ。
とりあえず、貴重そうなものを選別して、香霖堂に持っていくことになった。
「いえ、お祖父さま……師匠の名前が書かれてありますから、どうしたものかなー、と」
「妖忌の?」
箱書きを見る。魂魄妖忌と確かに記されてあった。他の文字は殆ど擦れてしまっていたが、『雅』の文字だけがうっすら分かる。
厄介な呪いや術は掛かっていないようだったので、躊躇なく蓋を開けてみた。勝手に開けたところで、ここに本人は居ない。
中には、なんだか眼に痛い色の何かが入っていた。
「何でしょうか、コレ」
「さぁ……? 見た目は器……それも茶器か何かっぽいけれど、こんな奇抜な意匠のは見たことがないわ」
器は赤色をしていた。確かにそういう焼き物も無いではないが、ここまでドぎつい色のは見たことがない。
あと、デザインも奇抜……というかこれ床に置いたら倒れる。絶対倒れる。
これが普通の茶器なら勝手に使ってしまってもいいかな、とも思うけれど、ちょっと特殊すぎて使う気にはならなかった。何か変なにおいもするし。
ひょっとして、茶器以外の何かなのかしらと首を傾げるけれど、少なくとも私にはそれぐらいの用途しか思い浮かばない。
「どうしましょう、残しておいた方が良いですよね、これ」
などと言う妖夢の表情は、むしろ捨てないでと語っていた。
私も、捨ててしまうには忍びない。
「そうねぇ、捨てちゃうのはねぇ……これも香霖堂に持っていくとしましょう。用途も教えてもらえるんだったわね、あそこの店主は?」
「らしいですね、じゃあ持ってく物の箱に入れておきます」
さて、妖忌の奇妙な置き土産が片付いたところで……次は、ぎっちりみっちりうず高く積まれた、巻物類の整理かしらね。
ああ、気が重過ぎてやばい。
「……なんというか、白玉楼は宝の山だったんだな……ぜひ出張したいものだよ」
香霖堂の店主は、感嘆を通り越して呆れ返っていた。
どうも、持って行った物が全部とんでもなく高価な骨董だったらしい。
一つ鑑定するたびに眼の色が変わる店主は、見ていて面白かった。もっとも、笑うと不機嫌になるから堪えたのだけど。
「ふふ、私の審美眼に狂いは無かったということよ」
「それよりも、こんな貴重な品々を蔵の中にぞんざいに放り込んでおく神経を尊敬するよ。畏れ多すぎる」
「それはダジャレなのかしら、神経を尊敬。『けい』で韻を踏んだわけね、すばらしいわ。ぱちぱち」
「そう思うなら解説しないでもらいたいね。あと乾いた拍手はやめてくれ、非常に虚しい」
疲れきったように、店主はため息を吐いた。
そりゃあ、百品以上を連続で鑑定したのだから、疲れもするのだろうけど。
それとも別の理由かしらん?
「しかしまぁ、これを譲ってくれるというのかい? 悪い気はしないが、正直これ、売ったら八桁くらいになると思うんだが……」
「いいのよ、三途を渡るわけでもなし、お金なんて持ってても腐らせるだけだわ」
ぶっちゃけ不用品処理なので、只で引き取ってくれるだけ有難いというものだ。
「……あ、ついでにちょっと頼みたいことがあるのだけど」
「?」
「これ、鑑定してもらえないかしら?」
そういって私が取り出したのは、例の妖忌の茶器だった。
「何なのか分からなくてね、あなたの能力を借りさせてもらいたいのよ」
「なるほど。普段なら断るところだけど、まあぼろ儲けが確定したところだ、引き受けるよ」
店主は私から箱を受け取ると、それをまじまじと眺め始めた。
「雅……典雅、と書いてあるのかな? ……何だい、これ?」
「それが分からないから聞いてるんじゃないの。多分茶器……少なくとも器か何かだと思うんだけど」
「ふむ。開けるよ」
「ええ」
「これは……えらくどぎつい色してるなぁ。置いても安定しない形だし、茶器じゃないんじゃ……?」
「だから頼ってるんじゃないの」
彼は中の物品を箱から取り出すと眼を閉じ、考え事でもするみたいに眉をひそめた。多分、自身の能力を使っているのだろう。
やがて眼を開けた彼は、……なんというか、すごく奇妙な顔をしていた。
酢を瓶一本丸飲みしたあと生クリームを掻きこんで、ゴーヤを丸まま食べたような感じだろうか。ようするに、形容しがたい。
ちなみにひどい味なのでやってはいけない。
「分からなかったの?」
「いや、分かったよ、分かったんだけど……」
「何? もったいぶらないで教えてちょうだいよ」
「えー、その、名前はまぁ、箱書きのとおり『典雅』という道具らしい。で、用途はその、茶器とかじゃなくてね……えーその」
「何よう、教えてちょうだいな」
「いやその、あー……」
どこもおかしくはない。コンニャクを奢ってやろう。
…なんて説明は女の子相手にゃ出来んわなぁ…。
紫がこの場にいたら、胡散臭い笑みを浮かべながら一緒になって聞いてきそうだw
実際に食ったのかよ!!! エゲツナイDeatH
俺の友達が妖忌だったのかww
こどものつくりかたよりひどいww
いやまてよ・・これはただの自己h<スキマ
ほらほら妖夢ちゃん、それでボクの刀を封じてごらんよ
カカッと許す自分の心の広さが恐ろしい。
ジュースを奢ってやろう。
何が酷いって幽々子様が「変な臭いがする」って臭いを嗅いじゃってるところだ。
是非二代目庭師も夜のお供にもう一本サムライソード的な何かを購入するべきだと思います。
あと、妖忌の居所探して口の中にねじこんだれ>こーりん&少女たちww
きちんと説明しても、言葉濁しても、最終的にバッサリ切り捨てられそうなw
くだらないけど100点入れてしまうわ
つまり幽々子さまはバージ(ry
どうしてくれる
しねばいいのに
>変なにおい……幽々子さまはあの臭いがなんなのか知らない訳で、
いや、使ってすぐの臭いならわかるだろうけど、何年たってると思ってるんだ