「お嬢様」
「んー? どうしたの咲夜。あ、そろそろ寝るから長い話は駄目よ」
わざわざ言わずとも、お気に入りのくまさんナイトキャップと咲夜抱き枕を持った今の私を見て、寝るんだなと気づかないやつは珍しいだろう。居たら眼科を勧める。
しかし手塩にかけて育てた従者は珍しいくらい思いつめた表情で、話は手短には済みそうもない。
とはいえ、わざわざ寝室を訪ねてくるくらいだから重大な用事だろう。むげに追い返したりはしない。
咲夜はしばらく躊躇うようにして、ゆっくり口を開いた。
「お嬢様、私は不要になったのでしょうか」
「……はぁ?」
何を言っているのか、あと、何が言いたいのか、全く理解できなかった。が、とりあえず、全くのナンセンスだということだけは分かる。
不要どころか必需も必需だ。お前が居なかったら、紅魔館なんか三日でつぶれるっちゅうの。
「その、悪い点があったら仰ってください、改めますから」
「どあほ」
デコピンした。本気でやると頭が吹き飛びかねないので軽く。
いやはや、何を萎れているのか知らないが、完全で瀟洒なメイドらしくもない。
「馬鹿な事考えてる暇があったら働け、咲夜。お前抜きで紅魔館は成り立たないんだから。ホラホラ」
「……わかりました」
促すと、咲夜は頷いて退出した。でもまぁ、私の答えに満足はしてないんだろう。アレが満足した表情だと思うやつが居たら、うん。人里の有名な眼科を薦める。いや、脳みそか?
にしても、「私は不要になったのでしょうか」、だと。まぁ何をどうやったらそんな発想に至れるのかと。周りを見るがいい。妖精メイドは自分の身の回りのことすらマトモに出来ない。咲夜が居なきゃ館の掃除すら多分上手くいかないだろう。アレを拾う前ってどんな生活してたんだろう、私ら……。
ともかく、本当、一体何がどうなってあんな血迷ったことを言い出したのやら。
「やれやれ……」
分からないものを考えてたって仕方が無い。とりあえず寝よう。明日パチェにでも尋ねればいいや。そういうときのための知識人なのだから。
「というわけなんだけど、なんか心当たりない?」
「いや、私に相談されても困る」
「えぇ? 考えてよ、本から得た知識を盛大に生かすチャンスだと思ってさ、唯一無二の友人を救ってよ」
パチェは渋い顔だった。何でって、きっと面倒なんだろう。
とはいえ、従者の健康管理(メンタルもフィジカルも)は主人の仕事だ。そういうわけで、手伝ってもらわないことには困る。
でも、パチェは肩をすくめ、首を振った。
「と、言われても、分からないわよ。ごあいにくさま」
「えぇー……」
動かない図書館、意外と不便だな……。
などと思ったら睨まれた。考えてることがばれた?
「……あ、もしかしてアレかしら」
「ん、どれ?」
「レミィ、最近、妖精メイドの雇用増やしたでしょう、それも急に」
頷いた。
確かに二月ほど前から、メイドの数を増やしている。
で、それが咲夜の状態と何のかかわりを持っているというのだろう。
「急に増やしたから、咲夜、自分が要らないと思われたって判断したんじゃないの? 嫉妬とかもあいまって」
「あー、なるほど。でもそれ違うと思う」
「何で?」
「だってさ、それ言ったの咲夜だもん」
そう、咲夜が提案したのだ。紅魔館にはメイドが足りません! と。ちょうどメイドを増やしだす直前のことだ。
なるほど確かにと思って受け入れたというのに、それでそんな判断下されてたらやってられない。
そうでしょう? と尋ねたのだが、パチェは妙な表情をしていた。
「どしたの、パチェ」
「いや……咲夜、私にも似たようなこと言ってたんだけどね? ん、……あー……」
そしてわが友人は、何か分かったと言わんばかりに手を打ち、喉の小骨が取れたとでもいうような顔になった。そしてしきりに頷きだした。
ええい、じれったい。
「一体何?」
「なるほどねぇ……レミィ、やっぱり私の仮説で合ってるわ」
「え? 何で?」
「いい? あのねレミィ、咲夜が言ったのは、
『知名度』が、足りない」
目の当たりにした気がするが思い過ごしだったかしら。
咲夜さんにでも掃除してもらいなさい。
相手の言ってることも聞き取れると思うんだ
喚くさんのこういう紅魔館が好きです
日本語って、というよりも言語って、聞こえなくってもイントネーションで補えることが多いんですよね。
知名度とメイドって全然イントネーション違いますし、ねえよww
いや、吹きましたけれども。
ただし、もし咲夜さんが訛ってたりしたらこの限りではない。
でも訛った咲夜さん……あれ、アリか?
tメイドみたいな感じ
無理矢理だなぁ、と苦笑いするレベル
俺はよく分かかる
上司の発音が聞き取れず何回も聞き返すと、すげー気まずい
でも何するか分からんと仕事にならんから、聞き返すしかないんだよな……!