オーダーをしていたミルクティーセットとサンドイッチがテーブルへと運ばれてくる。
ここは良く使うカフェテラスの一角。
店内の照明はやや暗めに照らされ、BGMには軽快で、けれども静かなジャズの音がゆったりと響き、店全体を落ち着いてゆったりと雰囲気をかもし出していた。
私は待ち人をしている。
たった二人しか居ない我がサークルのメンバー、二人で一つのオカルトサークル秘封倶楽部メンバーの宇佐見蓮子を。
今回も彼女の方から呼び出しが有り、いつも通りに喫茶店での待ち合わせ。
そしていつも通り、本日も蓮子は遅刻となっている。
時計を見る。
約束の時刻から既に10分と40秒が過ぎていた。
はあとため息をつく。
自分から呼び出しをしているのに、呼び出した本人が毎回遅刻するというのはどうなのだろうか。
蓮子が時間通りに来たためしはほとんど無い。
時間通りに来る時が無い訳ではないのだが、残念ながらそれは数える程度しかない。
まあ遅れてくるのはせいぜい10~20分程度と余り長くないので、待っている方はさほど苦ではないのがせめてもの救いか。
運ばれてきた紅茶にミルクと蜂蜜を入れゆっくりと掻き混ぜる。
ある程度混ぜ終えたところでミルクティーを口にする。
少しの苦味と程よい甘みとミルクの味が口の中に広がる。
やっぱり紅茶はダージリンに限る。
セイロンはややあっさりしすぎているし、アールグレイは独特の癖が苦手だ。
ティーカップを置きサンドイッチを口にする。
サンドイッチの中身はハム・チーズ・卵焼きとオーソドックスなもの。
凝った中身はそれはそれで美味しいのだが、軽食ならこういったオーソドックスな物が良い。
「やあメリー、優雅にティータイムとは良いわねー。」
ふと頭上から声がする。
やっとこさ呼び出した張本人にして遅刻魔、そして秘封倶楽部のもう一人のメンバー宇佐見蓮子がやってくる。
「待たされてる身だもの、ゆっくりしていたいわ。そして15分の遅刻よ蓮子。」
「残念、正確には14分と50秒の遅刻よ。すみませーん、アイスティーとバニラアイス下さーい。」
蓮子は私の対面に着席しながら近くを通りかかったウェイターへオーダーをする。
「ふぅー、暑い暑い。やっぱり文月の後半ともなると暑いわね。ここはクーラー効いてて涼しいわー。」
「まったく、時と場所を正確に見れるのに何故そんなにも遅刻癖があるのかしら。」
「生憎昼間は星が見えないものなのよ。月はたまに見れるけれどね。」
「にしても毎度の事とは言え、呼び出し置いて遅刻はやめて欲しいものだわ。」
やや呆れ顔で愚痴る。
このやりとりも毎回の事なので今回も言ってもあまり意味はないだろうが、少しは愚痴を吐かなければ気がすまないものだ。
やがて蓮子がオーダーしたアイスティーとバニラアイスが運ばれて来る。
早速蓮子は運ばれてきたアイスティーを口にする。
「はあぁ、冷たくて美味しいわー。」
「ちょっと聞いてるの蓮子?少しは反省と言うものをして頂きたいのだけれど。」
「ごめんごめん。今日なかなか教授が返してくれなくてさー。論文の纏めの手直しをお願いしていたのだけれど思いのほか直す部分が多くてねえ。」
「だったら遅れると一言連絡ぐらい欲しいものだわ。」
「メリーだったらきっと大丈夫だろうと思ってさ。有る意味信頼の証よ。」
まったく何を言ってるのやら。
信頼されている事に付いては嬉しいことだけれども、それとこれは別の話だ。
まあ今更どうこう言ったところで蓮子の癖は治る事はないだろう。
本当に、仕方の無い相方だわ。
それよりも本題を進める事にしよう。
「それで、今日はどういった内容なのかしら?また何か見つけたの?」
バニラアイスを口に頬張る彼女に本日の活動内容を問う。
「いいえ、そう言った内容では無いわ。呼び出したのは今夜星を見に行きましょうというお誘い。」
「…は?」
星を見に行く?
「は?じゃないわよ。星を見に行く、つまり天体観測しに行くのよ。」
あまりに突拍子な内容に思考が追いついていかなかったが、やがて蓮子の言葉理解する。
「天体観測をしに?一体どういう事なのか私にはさっぱりだわ蓮子。出来れば説明をお願いしたいわ。」
「良いから行くわよ。これは決定事項。今夜0時に集合ね。」
こうして彼女の突然な提案により私達は天体観測をしに行く事となった。
街灯だけが照らす誰もいない夜道を蓮子が指定した待ち合わせ場所へ向けて私は歩いてる。
時刻はまもなく午前0時。
待ち合わせ場所は近くに有る公園の入り口。
公園へ向かう道の途中、昼間に蓮子が言っていた星を見ると言う意図を考えていた。
しかし何故また天体観測なのだろう。
結局蓮子は、それは後でのお楽しみと言って理由を話してはくれなかった。
あれこれ考えて見たけれど、結局答えは出ずじまいだ。
そうこう考えてる内に待ち合わせ場所である公園に着いた。
「遅かったねメリー。」
入り口付近へ行くとそこには既に蓮子が待っていた。
なんとも珍しい。
「あら、まだ午前0時を過ぎて無いはずだけど?」
「まあ正確には午前0時24秒前だけれどね。」
「しかし珍しいわね、蓮子が遅刻をしないなんて。やっぱり星が出ていると時間に正確になれるのかしら?」
「何言ってんの、私はいつも通りよ。」
「まったく、普段もこれくらいに来てくれると私としては嬉しいのだけれど。」
「まあまあそれは置いておいて。早速行きましょうか。」
そう言うと蓮子は公園の中へ進んで行った。
この公園はかなり広さを持っていて、数キロ四方にもわたる広さがある。
広いの良いのだが、いかんせん街灯の数が少なく、公園の道はほとんど真っ暗と行っても過言ではない。
私達が向かうのは奥の方にある広い運動場だ。
先にも述べた通りこの公園には街灯が少ない。
公園の中と言う事もあり、外の明かりが殆ど入らず真っ暗な為、星を見るには適しているのだ。
「そろそろ今日の目的を話してくれないかしら蓮子。良い加減理由が知りたいわ。」
「それもそうね。実は今日ある流星群が降るピークでもっとも観測しやすい日なのよ。天気も良いし折角だからメリーと一緒に見ようと思って誘ったの。」
「へえ、なるほど良い提案ね。たまには蓮子も良い事を言うもんだわ。」
「なあに言ってんの、私はいつだって良い事を言うものよ。」
「どうだかねえ。」
他愛も無い話をしつつ、これから始まる天体ショーに期待を膨らませ、明かりもない道を蓮子と馬鹿みたいにはしゃぎながら歩いていく。
空を見上げると一面に零れ落ちそうなほど星が溢れている。
夏の季節は雲が多く天気が不安定なのだが、今日は雲が少なく綺麗に晴れていて星を見るには絶好だ。
蓮子が前に立ち先導して公園の夜道を歩いていく。
何も無い暗闇に居るとどうしても孤独や不安事等を色々考えてしまうものだが、今は蓮子と一緒に居る。
その蓮子と私は二人で一つのオカルトサークル秘封倶楽部。
今まで何処へ行くのも二人で行動してきた。
私はいつも蓮子に引っ張られる。
サークル活動も大体は蓮子の方からの提案で活動してる。
そしてこのサークルも蓮子に誘われて二人で立ちあげた。
私は彼女に引っ張られて色んな事をしてきて、色んな場所へと行ってきた。
最初はなし崩し的に一緒に行動していたが、今となってはそれが生活の一部であり楽しんでいる自分がいた。
何時の間にやら私は彼女に置いていかれないように追いかけている。
今となっては蓮子は私にとってかけがえないない存在だ。
私の境界を見る目を素直に受け入れてくれた彼女が。
屈託の無い笑顔を向けてくれて話しかけてくれる彼女が。
いつも一緒に居てくれてた彼女が…。
そんな彼女を私は大切に思っている。
しかしふと疑問に思うときがある。
この感情はなんとよぶのだろう。
友情?恋愛?愛情?
そのどれにも当てはまりどれにも当てはまらない。
いっそ彼女を抱きしめ胸の内を吐き出せば答えが出るのだろうか?
でもこの想いは彼女に届くのだろうか?
そして彼女は私のことをどう思っているのだろうか?
考えるほどに疑問が尽き無い。
でもいつか聞いて欲しいと思うときがある。私の、この想いを…。
「着いたわねー。」
思案をしている内に何時の間にか目的地の運動場に着いた。
思っていた通り明かりがほぼ無く真っ暗な空間となっている。
蓮子は持ってきた鞄の中からシートを出し地面に広げ始めた。
「何をしてるの?」
「寝そべって星を見たほうが楽だと思って持ってきたの。良いアイディアでしょう?虫除けスプレーもあるからメリーにもかけるわね。」
「なるほど良いアイディアだわ。そういった所は抜かりが無いわね。」
「でしょう?もっとほめてくれても良いわよ。さすがにラジオとか望遠鏡は持ってきて無いけれどね。」
笑いながら蓮子は準備を進める。
虫除けスプレーを取り出し自分にかけた後、私にも渡してくれる。
これで蚊にさされる心配もないだろう。
準備が整ったあと二人してシートへ寝そべる。
空を見ると視界全てに星の大海が映る。
本当に綺麗な夜空だ。
天気が良くて本当に良かった。
流星群はいつ降ってくるか分からないので、流れ星が見えるまで二人で星座を見ながら待つ事になる。
「メリーは星座とかは詳しい?」
「どうだろう、人並みぐらいかしら。有名な物しかわからないわね。」
「例えば?」
「そうねえ、北斗七星やカシオペア、オリオンとかならわかるかしら。」
「なるほど。折角の機会だからこの蓮子さんが星座のレクチャーをしてあげるわ。」
「ええ、是非ともお願いするわ。素敵な解説をお願いね。」
「もちろん、星の事ならまかせなさいって。」
そう言って蓮子が指を空へ指す。
「あそこの明るい星、デネブを基点に十字になってるのが白鳥座。反対の右に行って同じく明るく光るアルタイルを基点に×のようになってるのがわし座。
そして白鳥座とわし座の間やや上にあるベガを頂点に小さい四角のこと座。これらの星を繋ぎ合わせたのが夏の大三角。」
「有名な七夕伝説の星達ね。」
「その通り。七夕の時期はいつも天気が悪くて七月七日にはなかなか見れないのが残念だけれどね。」
「あら、一年に一度の逢瀬ですもの人に見られずにゆっくり二人で過ごしたいじゃない。七夕は天気が悪いほうが織姫と彦星には丁度良いわ。」
「メリーったらロマンチックな事を言うものねえ。」
「一般論じゃないかしら。」
「普通はそうは考えないものよ。」
「しかし白鳥座のデネブとこと座のベガは見つけられたけれど、わし座のアルタイルが見つからないわね。これじゃ織姫が一人ぼっちになって三角形を築けないわね。」
「そう?二つを見つけられたらだいたいは見つかる筈なのだけれどねえ。私が指をさすからそれを追って見て。」
蓮子は私に体を密着させ、私の視線に合わせるように指を空へ向ける。
彼女の体温を直に感じ取れ、吐息が耳へ伝わる。
髪からはシャンプーだろうか?良い香りが漂ってくる。
さっきまで考え事をしてたぶん、正直どうにもドキドキしてくる。
星の光が蓮子の指に嵌っているリングに反射して綺麗に光る。
「どう、分かる?あれがアルタイル。アルタイルさえわかれば夏の大三角は完成よ。」
指の先に明るく光る星が見える。
良く見ればその周りに星座になりそうな星が見えわし座が形作られる。
「なるほどね、ようやく見つけられたわ。これで織姫も彦星も一人ぼっちじゃなくなったわ。」
「それは良かったわ。ところでメリーは星に関して何か物語とか知ってる?」
「そうねえ、七夕以外だと一つだけ知ってるわよ。」
「へぇ、どんな話?良かったら聞かせて。」
「昔プロキオンという子犬がいました。子犬のプロキオンは母親のシリウスと幸せに暮らして居ました。周りには獅子や白鳥や鷲、牛飼いや狩人や琴を弾く乙女などの様々な仲間がいました。
しかし時が経つに連れ一人、また一人と仲間が居なくなっていきました。そしてついには母親のシリウスもいなり、プロキオンは一人ぼっちになりました。
プロキオンは悲しみました。そしてみんなを探し出すために地を走り、空を翔け、海を渡りました。けれどもどこを探しても見つかりません。
探し疲れてふと夜空を見ると、そこには今まで探していた母親が、仲間のみんながいました。みんなは星になっていたのです。姿は見えずともプロキオンを見守っていたのです。
プロキオンは喜びました。やっと見つけられた、これで皆の所へ帰れると。そうしてプロキオンは空へ向かい走り出しました。みんなが待つ夜空へ。
こうしてプロキオンはみんなと同じく星になれました。今もプロキオンは星になった仲間と共に幸せに暮らしていますとさ。めでたしめでたし。」
「…初めて聞く物語ね。そんな物語があるとは知らなかったわ。何というタイトル?」
「タイトルは『スタージェット』。作者はマエリベリー・ハーン。」
「なあんだメリーの創作だったのか。どうりで知らないわけだ。」
「あら、このお話はとある史実を元に作っているからあながち創作という訳ではないわよ。」
「でもそんな話聞いた事無いしなあ。良かったらその元となった史実を教えてよ。」
「簡単に教えたらつまらないでしょう?スタージェットという言葉を探して御覧なさい。そうすればきっと答えが見つかるわ。」
「なるほどねえ。なら今度探して見ますか。」
流れ星はまだ一つも流れない。
蓮子と私はたわいも無い会話をしたり、星のガイドをしてもらいながら星座観察等をして時間を過ごしていった。
ひとつ隣にいる蓮子の顔を横目に見る。
私には無い垢ぬけた笑顔で楽しそうに話す彼女がそこには居た。
ああ、なんて綺麗で眩しいのだろう。
きっと夜空に輝くどんな一等星にだって彼女の光には敵わない。
彼女を見ていると心が落ち着く。
彼女と居ると安らげる。
私はもう気づいてるのかもしれない。
自分の感情を。
己の心の奥にある何かを。
私は、本当はずっと、蓮子の事を―。
どこかでわかっていた。
でもわからない振りをしてた。
この気持ちに気づいてもきっと届きはしない。
伝えたい、叫びたい…自分の気持ちの連鎖は止まらない。
駄目だ…こんなのは表に出してはいけない…でも出したい…。
ジレンマの中で私の心を泣き出しそうになる。
それでも私の理性は叫ぶ。
今のままで良いじゃないか。
泣いてはいけない。
そう自分に言い聞かせる。
…本当にそれで良いの?
私は何に対しても興味が無いふりをして、感情をあまり表に出さず強がっている臆病な人間だ。
けれどもこの想いはもう無視が出来ない。
胸を刺す感情の痛みは増してくばかりで止める事など出来ない。
ああ、そうか。
人を好きになるって。
こういうことなんだ。
…どうしたい?
心のコエが聞こえる。
…言って御覧なさい。
蓮子の隣にいたい。
蓮子に自分の気持ちを受け止めて欲しい。
「―――それであれが…どうしたのメリー?ずっと私の顔を見て。」
「………。」
蓮子の顔が目の前に映る。
瞳の中に私が映り、瞳の中の私に蓮子が映る。
彼女の吐息が私にかかる。
「本当にどうしたの?星の話ばかりじゃやっぱりつまらなかった?」
自分の気持ちに気づいてしまった。
蓋をしていた溢れるモノはもう止まらない。
理性や倫理などとうに忘却の彼方に置いてきた。
「…ねえ、蓮子。」
真横にいる彼女へ更に顔を近づける。
「う、うん。な、何?メリー。」
「あなたは前に私の事を大切な親友だと…言ってくれたわよね。」
右手の人差し指にリングの感触が強くなる。
「もちろんよ。メリーは私の大切な親友だもの。それがどうかしたの?」
私を大切な存在だといってくれた証がそこにある。
「私も蓮子の事は大切な友人だと思っている…だけどね。」
私はいつものようにポーカーフェイスを努める。
抑えきれ無い物を抑えきれるように。
「う、うん。」
蓮子はやや緊張した赴きで答えを待つ。
「私は、それ以上に、あなたの事を―――」
―好きなの―
「あっ…。」
急に声を上げ蓮子は私から視線を外し空を見る。
「流れ星が落ちて来た!」
もう蓮子は私を見て居なかった。
真実とは何故いつも残酷なのだろう。
空を見続けている彼女につられ私も空を見ることにする。
最初は先程と変わらない星空が広がっていた。
だがすぐに小さな一筋の光が空に描かれて消えた。
そしてそのすぐ後にまたも光の筋が空に流れる。
光の筋は時に小さく、時に大きく、空へ流れていく。
一瞬の煌きを見せるその光はとても儚くとても綺麗だった。
「結構流れてるわね。メリーも見えた?」
「…ええ、見えるわ。とても綺麗だわ。」
流れる星の光は蓮子の笑顔のように綺麗だ。
「やっぱり流れ星の煌きは美しいものね。どうメリー?来て良かったでしょ。」
「本当、こんな素敵な物が見られるなら美容の天敵で有ってもずっと夜を過ごしていたいものだわ。」
蓮子と居られるなら例えどんな場所も時間も、私にとってはとても大事で素敵な物になるだろう。
「そう言ってもらえると誘った私としても嬉しいよ。それと折角の流れ星だもの、メリーはお願い事とかしないの?」
「そうねえ、なら世界平和と言ったところかしら。」
私の願いは唯一つ、蓮子と居られること。
それ以外に望みはいらない。
星に願えばいつかは叶うのだろうか?
願わくば私の願いが星になり、彼女に見つけてもらいたい。
「なんともありきたりな答えね。」
「なら蓮子は何を願うのかしら?」
「私の願いは決まってるわよ。」
「ならば是非とも聞かせて欲しいわ。」
「良いわよ。笑わないで聞いてね。私の願いはメリーとずっと居られる事。」
「え……?」
今、彼女は何て言った?
思考が止まってしまい言葉を上手く理解できない。
「私達はもう三年生。もうすぐすると離れ離れになってしまうかもしれない。でも、それでも、どんなに僅かでも良いから一緒に居たいと思う。
だって秘封倶楽部は二人で一つ。メリーは私の大事な親友ですもの。」
「……。」
言葉が出ない。
去年のあの時と同じ様に、彼女は私の事を大切な親友と言ってくれた。
一緒に居たいと願ってくれた。
その思いが私の中へ、自分の感情へと流れてくる。
とても、とても嬉しい。
その想いと気持ちはとても嬉しい。
けれど彼女の言葉と私の感情は似て非になる。
混ざるようで混ざらない。
まるで右手に付いてるリングに刻まれた名前の様に。
「ちょっと、くさかったかな…。」
蓮子が照れ笑いながら私へ顔を向ける。
その笑顔が眩しくて私には少し明るすぎる。
「ううん、そんなこと無い。むしろそんな風に願ってくれて私も光栄だわ。」
「そう言ってもらえると私も嬉しいよ。所でさっき何か言いかけていたけれど、何て言おうとしてたの?」
「それは…。」
飲み込んでいた感情がまだ昇って来る。
言うんだ、今言わなくては二度と言えなくなる。
彼女は私を大切な存在だと言ってくれた。
素直に私に気持ちを言ってきた。
ならば私も自分の素直な気持ちを伝えなくては…。
昇って来た言葉を口へ紡ぐ。
「あなた事を大切に思ってる、大事なパートナーとしてね、と言おうとしたの。あなたと同じよ蓮子。私達は二人で一つで秘封倶楽部ですもの。」
「そ、そうなんだ。う、うんありがとう。メリーもそう言ってくれるなんてなんか照れるなあ。」
恥ずかしそうに顔をくしゃくしゃにして蓮子は笑う。
その笑顔が私を傷つける。
私は寸前の所で嘘をついた。
結局言わなかった。
今の関係が壊れる事を恐れて言えなかった。
二度と戻れなくなる様な気がして最後の最後で私は怯えたのだ。
結局私は強がるだけの臆病なままの人間だった。
この関係が壊れるぐらいなら、私は今の関係で居続けたい。
ずっと一人だった私の唯一の絆。
やっと見つける事の出来た一筋の光。
そんな繋がりを手放したく無い。
今思えば初めて蓮子と会った時から私の気持ちは決まっていたのだろう。
今でもあの日事を覚えている。
蓮子と初めて会ったのは今日と同じ様に星が良く見えた夏の日。
どこから聞きつけたのか、私を引っ張っていた彼女は私の目の事を知っていた。
そして自分にも人とは違う物が有ると告白して来た。
私は初めて出会った、私の目を受け入れてくれる人を。
その時見せた彼女の星の光のような笑顔に惹かれていたのだ。
それから私達は秘封倶楽部というオカルトサークルを立ち上げ、何処へ行くのも二人で行動してきた。
彼女は色々な表情を私へ見せてくれた。
笑った顔、怒った顔、泣きそうな顔。
それの全てが私は好きだった。
まったく…今頃そんな事に気づくなんて…私はいつまでも自分に正直になれないものね。
本当におかしいったらありゃしない。
最初から分かっていた。
彼女が好きだという事に。
この気持ちは二度と彼女に伝わる事はないだろう。
蓮子の知らない私だけの秘密。
二人で一つの私達だけど、これだけは胸の奥にしまっておくわ。
ごめんね…蓮子。
そうして私達は再び空を見上げて、流れ星へと互いに想いを馳せる。
先ほどと同じ様に夜空には星が流れる。
それは儚く綺麗に、そして私の代わりに泣いてくれるかのようにまっすぐ流れていた。
遠い思い出と、私の感情と共に星は流れる。
それを指差し彼女は笑顔を私へ向ける。
私には無い、とても無邪気な声で。
あなたはどうですか?
>3
いーわなかーった いーえなかーった
>5
君が指差す夏の大三角
>6
質問の意図は計りかねますが自分はそんなこと無いです。
二人とも好きですよ。
>7
自分は原作もアニメも見て無いのでなんとも言え無いです…。
>11
これじゃ一人ぼっち
BADでも無いけどHAPPYでも無い
頑張れメリーさん
なんという初歩的ミスを…orz
ご指摘ありがとうございます。
メリーさんにいつか幸せが訪れて欲しい物です。
えっと……、禿物語!
禿の少女達が織り成す物語ですね、わかりませんw
>19
なるほど、自分の作品と言うのはなかなか客観的に見る事が出来ないのでそう言ったご意見は参考になります。
貴重なご意見誠にありがとうございますm(__)m
メリーの葛藤と曲の内容がマッチしてとてもよかったです。
これからもがんばってください!
がんばれメリー
もったいないお言葉ありがとうございます。
正直自分には手に余る評価ですアワワワ。
これからも精進してまいります。
>23
なるほど、そういう風に解釈もできますねw
メリーさん頑張れ。きっと幸せになれる。
メリーを応援したい気持ちもあるが、大切な親友のまま大人になって欲しくもある
だが、もしもいつか幻想郷に行くのなら、行く手を遮る困難がわんさか待ち構えて
いそうなんで、そこで吊り橋効果ですよメリーさん