私は今大変な問題に直面している。どれくらい大変かと言うと、私の城である紅魔館地下の『大図書館』が『中図書館』下手をすればただの『図書館』になるかも知れないほど、この図書館の本が減っている。
原因は明々白々だ。魔理沙が図書館の本を持っていく。最初に本の持ち出しを許可したのは私自身だが、魔理沙は度が過ぎる。大量に本を持っていき、返すということをしない。
魔理沙曰く『死んだら返すぜ!』と言っているが、この勢いでは彼女が死ぬ前に、この図書館の本が底を尽きてしまう勢いだ。
彼女を何度も説得したが効果は今ひとつない。実力行使に出ようにも私はずっと図書館に引きこもっており体力はほぼ零に等しい。そもそも弾幕を張っても本を傷つけず、彼女を墜とすのは不可能に近い。弾幕にホーミング機能を付けたところで、彼女のスピードには追いつけないのだから。
対魔理沙用の防衛線を張っても意味はなかった。妖精メイドはいくら束になっても所詮は妖精、烏合の衆だ。あっという間に墜とされた。
そしてこの紅魔館に敵を真っ先に排除する役目を持つ門番が役に立たないのだから困ったものである。
門番、紅美鈴と霧雨魔理沙で戦闘スタイルが根本的に違うのは分かる。美鈴は格闘主体の接近戦、魔理沙は八卦炉をメインにした遠距離戦と、どう考えても美鈴が不利なのは百の承知だ。美鈴が負けることも多い。だが問題はそこじゃない。美鈴は負けても、
『くっそおおおおぉぉおお! また負けたぁ! だか、今度は負けない。またここにきて私と勝負しろおおぉ! 待っているぞ、我が強敵(とも)、霧雨魔理沙よ!』
何 故 ま た 紅 魔 館 に 呼 ぶ !
あの門番の正々堂々、真っ向勝負な戦闘スタイルは改善すべきだろう。いくら強くても、あれでは簡単に行動が読めてしまう。結果紅魔館への侵入を許し、図書館までたどり着かれる。咲夜でさえ苦戦する相手だ。美鈴のようなバカ正直な戦闘じゃ勝てない。かといって、妖精メイドをいくら配置しても、戦果は火を見るよりも明らかだ。我が方の惨敗に終わってしまう。
この紅魔館に咲夜クラスのモノはいないのだろうか? 咲夜は普段レミィの世話で忙しいし、メイド長としての仕事もある。図書館防衛戦にまで引っ張るのは酷だろう。
では妹様、フランドール・スカーレットはどうだろう? いや駄目だ。彼女だとこちらのリスクが高すぎる。彼女が暴走状態に入れば止めるのに更なる労力がいる。さらに悪いことに妹様は魔理沙と仲がいい。下手をすれば逆に裏切られる可能性もある。なにせ相手は呼吸するように嘘をつく女なのだから。
レミィに頼むのも論外だ。レミィに頼んだら最後、魔理沙と大戦闘をやらかし、図書館が、戦火が拡大すると紅魔館さえ吹き飛ばしてしまうかもしれない。
図書館防衛戦は今まで殆ど勝てたことがない。勝てたのはほんの数回だけだ。咲夜と美鈴の二人が協力して魔理沙を撃退してくれた時もある。さすがは紅魔館の最強の剣と無敵の盾と言ったところか。美鈴が無敵の盾とは少々疑問だが、そこはおいておこう。
しかし、魔理沙とて対策を取らないわけがない。最近は山にいる河童のマッドサイエンティスト、河城にとりと協力して、八卦炉と同等の、あるいはそれ以上の兵器を開発しているらしい。これ以上魔理沙に力を持たれては、こちらは防衛策がなくなってしまう。
「ふぅ……八方塞がりか。実に困ったものね」
「パチュリー様、よろしいでしょうか?」
魔理沙対策で知恵熱が出そうな私を落ち着かせるような声がノックとともに扉の向こうから響く。
「えぇ、入ってきて」
「失礼します。パチュリー様、お茶をお持ちいたしました。あまり考え過ぎるのもよくありませんよ?」
「ありがとう、こあ。そうね、あなたが入れてくれたお茶でも飲んで少し思考を落ちつけるわ」
「はい、どうぞ。お熱いので気を付けて下さいね。今日のお菓子は頭を使う時は甘いもの、ということでケーキを用意しました」
「いつも助かるわ、こあ」
笑顔で私にお茶とお菓子を持ってきてくれた少女。彼女は私の頼もしき使い魔である小悪魔だ。彼女はとても優秀だ。戦闘能力はそこまで高くないが、頭脳面での能力は他を圧倒する能力の持ち主だ。その彼女の才能を表すかのように掛けている眼鏡が、実によく似合う。
この眼鏡は私からのプレゼントだ。本の読み過ぎで目が少し悪くなったと言う彼女のために、私が日ごろの感謝を込めて作ったものだ。この眼鏡をプレゼントした時の彼女の輝かしい笑顔を私は未だに覚えている。一生忘れることはないだろう。
「随分お悩みのようですね。パチュリー様」
「当たり前でしょ? もう策も尽きたわ。戦略を練ってもパワーでねじ伏せられる。もうこれは戦いではないわ。単なる妖精メイドの虐殺よ」
「でも、パチュリー様は諦める気はないんですよね?」
「当然よ。私の戦略が通用しないなんて、プライドが許せないわ。ねぇこあ? 何か打つ手はないかしら? 優秀なアナタの意見が聞きたいわ」
私は今まで彼女の助けを何度も借りている。体の弱い私の世話から、魔法の研究まで実に様々だ。
新魔法研究では彼女の大胆で斬新な発想にはいつも驚かされる。この図書館の魔道書の中には小悪魔本人が著者の本もかなりある。
彼女は別次元へ転位する超高度の空間魔法の本を書いていたはずだ。その本は私が一番感動した本だ。私でさえ思いつかなかった術式を彼女は編み出したのだから、まったく恐ろしいものである。
「ふむ……策がないわけではないですが、しかし」
「何かあるの!? 多少無茶でも構わないわ。話すだけ話してみて。どんな作戦なのか」
今は藁にも縋(すが)りたい気持ちだ。私はなんとしてもこの城を守りたい。
「いえ、無茶という訳ではありませんが、少しパチュリー様にお願いがあるだけです」
「なに? 私も出来る限り手伝うわ。体力面ではまったく役に立たないけど……」
「大丈夫ですよ。パチュリー様にはご迷惑はおかけしません。ただ私は次の防衛戦の全指揮権を譲ってもらいたいだけです。あと少し魔法面でのお手伝いを」
「え? それだけなの?」
「はい。今度の戦いは全て私にお任せ下さい。魔理沙さんを完全に墜としてみせます」
指揮権を譲ってもし、小悪魔が魔理沙を倒してしまったら、私より彼女の方が優れていることになる。普段の私だったら全力で拒否をしているだろう。だけど彼女は違う。彼女がもし魔理沙を撃退できたのなら、私は素直に喜んで賞賛を送るだろう。それほど私は彼女を信頼している。こんなにも心を許せるのは親友であるレミィと、こあだけだ。
「……えぇ、分かった。また魔理沙が来た時は、全指揮をアナタに任せるわ。だけど、任せるための条件があるの、あなたにしかできないことよ」
「……なんでしょうか?」
「任せたからには勝ちなさい、絶対に。パチュリー・ノーレッジの使い魔として全力全開で挑みなさい」
「了解です、パチュリー様。ご安心ください。貴方の小悪魔は決して負けません」
なんとも頼もしい言葉だ。これで図書館は守れるだろうか? いや、守ってみせる。私の最も信頼する人が私のために頑張ってくれるのだから。
さぁ、魔理沙は今度こそあなたの敗北よ。小悪魔が考える最強の布陣。次にここに現れた時には、私たちの勝利は決定しているのだから。
原因は明々白々だ。魔理沙が図書館の本を持っていく。最初に本の持ち出しを許可したのは私自身だが、魔理沙は度が過ぎる。大量に本を持っていき、返すということをしない。
魔理沙曰く『死んだら返すぜ!』と言っているが、この勢いでは彼女が死ぬ前に、この図書館の本が底を尽きてしまう勢いだ。
彼女を何度も説得したが効果は今ひとつない。実力行使に出ようにも私はずっと図書館に引きこもっており体力はほぼ零に等しい。そもそも弾幕を張っても本を傷つけず、彼女を墜とすのは不可能に近い。弾幕にホーミング機能を付けたところで、彼女のスピードには追いつけないのだから。
対魔理沙用の防衛線を張っても意味はなかった。妖精メイドはいくら束になっても所詮は妖精、烏合の衆だ。あっという間に墜とされた。
そしてこの紅魔館に敵を真っ先に排除する役目を持つ門番が役に立たないのだから困ったものである。
門番、紅美鈴と霧雨魔理沙で戦闘スタイルが根本的に違うのは分かる。美鈴は格闘主体の接近戦、魔理沙は八卦炉をメインにした遠距離戦と、どう考えても美鈴が不利なのは百の承知だ。美鈴が負けることも多い。だが問題はそこじゃない。美鈴は負けても、
『くっそおおおおぉぉおお! また負けたぁ! だか、今度は負けない。またここにきて私と勝負しろおおぉ! 待っているぞ、我が強敵(とも)、霧雨魔理沙よ!』
何 故 ま た 紅 魔 館 に 呼 ぶ !
あの門番の正々堂々、真っ向勝負な戦闘スタイルは改善すべきだろう。いくら強くても、あれでは簡単に行動が読めてしまう。結果紅魔館への侵入を許し、図書館までたどり着かれる。咲夜でさえ苦戦する相手だ。美鈴のようなバカ正直な戦闘じゃ勝てない。かといって、妖精メイドをいくら配置しても、戦果は火を見るよりも明らかだ。我が方の惨敗に終わってしまう。
この紅魔館に咲夜クラスのモノはいないのだろうか? 咲夜は普段レミィの世話で忙しいし、メイド長としての仕事もある。図書館防衛戦にまで引っ張るのは酷だろう。
では妹様、フランドール・スカーレットはどうだろう? いや駄目だ。彼女だとこちらのリスクが高すぎる。彼女が暴走状態に入れば止めるのに更なる労力がいる。さらに悪いことに妹様は魔理沙と仲がいい。下手をすれば逆に裏切られる可能性もある。なにせ相手は呼吸するように嘘をつく女なのだから。
レミィに頼むのも論外だ。レミィに頼んだら最後、魔理沙と大戦闘をやらかし、図書館が、戦火が拡大すると紅魔館さえ吹き飛ばしてしまうかもしれない。
図書館防衛戦は今まで殆ど勝てたことがない。勝てたのはほんの数回だけだ。咲夜と美鈴の二人が協力して魔理沙を撃退してくれた時もある。さすがは紅魔館の最強の剣と無敵の盾と言ったところか。美鈴が無敵の盾とは少々疑問だが、そこはおいておこう。
しかし、魔理沙とて対策を取らないわけがない。最近は山にいる河童のマッドサイエンティスト、河城にとりと協力して、八卦炉と同等の、あるいはそれ以上の兵器を開発しているらしい。これ以上魔理沙に力を持たれては、こちらは防衛策がなくなってしまう。
「ふぅ……八方塞がりか。実に困ったものね」
「パチュリー様、よろしいでしょうか?」
魔理沙対策で知恵熱が出そうな私を落ち着かせるような声がノックとともに扉の向こうから響く。
「えぇ、入ってきて」
「失礼します。パチュリー様、お茶をお持ちいたしました。あまり考え過ぎるのもよくありませんよ?」
「ありがとう、こあ。そうね、あなたが入れてくれたお茶でも飲んで少し思考を落ちつけるわ」
「はい、どうぞ。お熱いので気を付けて下さいね。今日のお菓子は頭を使う時は甘いもの、ということでケーキを用意しました」
「いつも助かるわ、こあ」
笑顔で私にお茶とお菓子を持ってきてくれた少女。彼女は私の頼もしき使い魔である小悪魔だ。彼女はとても優秀だ。戦闘能力はそこまで高くないが、頭脳面での能力は他を圧倒する能力の持ち主だ。その彼女の才能を表すかのように掛けている眼鏡が、実によく似合う。
この眼鏡は私からのプレゼントだ。本の読み過ぎで目が少し悪くなったと言う彼女のために、私が日ごろの感謝を込めて作ったものだ。この眼鏡をプレゼントした時の彼女の輝かしい笑顔を私は未だに覚えている。一生忘れることはないだろう。
「随分お悩みのようですね。パチュリー様」
「当たり前でしょ? もう策も尽きたわ。戦略を練ってもパワーでねじ伏せられる。もうこれは戦いではないわ。単なる妖精メイドの虐殺よ」
「でも、パチュリー様は諦める気はないんですよね?」
「当然よ。私の戦略が通用しないなんて、プライドが許せないわ。ねぇこあ? 何か打つ手はないかしら? 優秀なアナタの意見が聞きたいわ」
私は今まで彼女の助けを何度も借りている。体の弱い私の世話から、魔法の研究まで実に様々だ。
新魔法研究では彼女の大胆で斬新な発想にはいつも驚かされる。この図書館の魔道書の中には小悪魔本人が著者の本もかなりある。
彼女は別次元へ転位する超高度の空間魔法の本を書いていたはずだ。その本は私が一番感動した本だ。私でさえ思いつかなかった術式を彼女は編み出したのだから、まったく恐ろしいものである。
「ふむ……策がないわけではないですが、しかし」
「何かあるの!? 多少無茶でも構わないわ。話すだけ話してみて。どんな作戦なのか」
今は藁にも縋(すが)りたい気持ちだ。私はなんとしてもこの城を守りたい。
「いえ、無茶という訳ではありませんが、少しパチュリー様にお願いがあるだけです」
「なに? 私も出来る限り手伝うわ。体力面ではまったく役に立たないけど……」
「大丈夫ですよ。パチュリー様にはご迷惑はおかけしません。ただ私は次の防衛戦の全指揮権を譲ってもらいたいだけです。あと少し魔法面でのお手伝いを」
「え? それだけなの?」
「はい。今度の戦いは全て私にお任せ下さい。魔理沙さんを完全に墜としてみせます」
指揮権を譲ってもし、小悪魔が魔理沙を倒してしまったら、私より彼女の方が優れていることになる。普段の私だったら全力で拒否をしているだろう。だけど彼女は違う。彼女がもし魔理沙を撃退できたのなら、私は素直に喜んで賞賛を送るだろう。それほど私は彼女を信頼している。こんなにも心を許せるのは親友であるレミィと、こあだけだ。
「……えぇ、分かった。また魔理沙が来た時は、全指揮をアナタに任せるわ。だけど、任せるための条件があるの、あなたにしかできないことよ」
「……なんでしょうか?」
「任せたからには勝ちなさい、絶対に。パチュリー・ノーレッジの使い魔として全力全開で挑みなさい」
「了解です、パチュリー様。ご安心ください。貴方の小悪魔は決して負けません」
なんとも頼もしい言葉だ。これで図書館は守れるだろうか? いや、守ってみせる。私の最も信頼する人が私のために頑張ってくれるのだから。
さぁ、魔理沙は今度こそあなたの敗北よ。小悪魔が考える最強の布陣。次にここに現れた時には、私たちの勝利は決定しているのだから。
ともかく続きに期待です。
早く続きを書く作業に戻るんだ、もとい書いてくださいお願いします。
あなたとは小悪魔像が近いかもしれません
やっぱりパチュリーの使い魔で、図書館司書である小悪魔は聡明であるべきだと思うのですよ
でも少しドジで…
続きを心待ちにしてます
めがねっこあ!
長編というのがどれだけの量になるかわかりませんが、今回の感じからすると長くても50kb以内ぐらいになるのでしょうか。
そうだったとするとやはり一本でまとめたほうがいいかもしれません。
期間が開けばいいのですが、もしこれぐらいの量で連投になってしまうとちょっと風当たりが強いと思います。
でもこういう続きが気になる終わり方も個人的には好きです。
このタイトル通り、これからどれだけ小悪魔が活躍するのか楽しみです。
メガネっこあ!
めがねっこぁ!
後、何気に熱い美鈴がツボりましたwwwこういうキャラでいく美鈴も好きですね。
何人かの皆様が言っていますが、確かにもう少し長くまとめて投稿した方が良いかもしれないですね。
がんばって下さいね。