※首吊り霊夢の続きですが、タイトル通り少々アレです。ご注意を。
多分前回のを見なくてもわかるような気がします。
博麗神社。
私の新聞で現在連載している怪盗アキューR18禁版の原稿用紙を取りにくると。
霊夢さんは珍しく生きていた。
ここ最近、来る度に首を吊ってばかりいたのに、今回は居間でお茶を飲みながらこちらを見ている。
相変わらず何を考えているかわからない眼だ。
それでいて全てを見通してそうな不思議な眼をしている。
「霊夢さんこんにちは」
「こんにちは」
挨拶をするとまたお茶を飲み始めた。
元から返答はしてくれるが、自分から話すことが滅多にないので慣れていることだ。
こちらが話さなければ必要最低限しか話さないのだし。
「原稿はできてますか?」
「ええ」
机に置かれていた原稿用紙をこちらに差し出してくる。
なんだか本編より量が多い。
「拝見させて貰います」
それきり霊夢さんは黙り込んだ。
何か考え事をしているようにも見えるがわからない。
「………」
「………」
私が黙って原稿を読んでると、霊夢さんも黙ったままだ。
といってももとより無口な霊夢さんが自分から話しかけてくることなんて滅多に無い。
話しかけてきたとしても必要最低限のことだけだ。
この日もそうだろう、そう考えていたのだが…
珍しく。
本当に珍しく。
霊夢さんが私に話しかけてきたのだ。
そのおかげで。
今私は霊夢さんの首を絞めている。
戸惑いのためか、未だ人を殺せるような力は入れていない。
少し本気を出すだけで霊夢さんの首なんて千切れるほど力はあるが、出す気が起こらない。
「なんで私がこんなことを」
「………」
私に首を絞められている霊夢さんは、ぼんやりとした眼でこちらを見上げている。
もうすぐ死ぬというのに、少し苦しそうな顔をするだけだ。
そこには一切の恐怖心も感じられず、私の目から見たら楽しんでるようにさえ見える。
「理解できません」
「………」
「少しぐらい声をあげたらどうなのですか」
「………」
声帯を潰した訳でも無く、話せない訳でも無い。
確かに首を絞めているが呻き声ぐらいは出せるはずだ。
だというのに霊夢さんは声も上げず、暴れる訳でも無く
ただ黙って首を絞められ、死に近づいている。
身体に酸素が回らなくなってきたのだろうか。
顔色が悪くなり、口が開いたり閉じたり金魚のようにパクパクし始めた。
「もう少しですからね」
「………」
首を絞める。
簡単に折れそうな細い首。
実際私が本気を出せばすぐに折れる細い首。
それを折らないように、優しく、じわじわと絞める。
霊夢さんの首を締める。
「………」
「………」
締める手を少し緩めるとヒュウッと、空気が漏れる音がした。
これ以上は無理だ。
しかし私は霊夢さんを殺さなければ、霊夢さんはどっちにしろ死ぬ。
なので私は首を折ることにした。
首がおかしな方向に曲がった霊夢さんは少し痙攣した後動かなくなった。
「二度と経験したくありませんね…」
「………」
手に霊夢さんの体温も、首の感触も、折る時の骨の感覚も残っている。
者を殺した事なんて何度もあるが、好意を抱いてる者を殺した事なんて無い。
「最低の気分です」
「………」
「もう二度とこんなこと私にさせないでください」
「………」
返事は無い。
死んでるから当たり前だ。
倒れている霊夢さんの身体を腕の中に抱き寄せる。
体温はまだ残っているためか、まだ暖かい。
いつも触れることも、傍に寄る事も出来ないのだ、死んでる時ぐらい大目に見てほしい。
「………」
「………」
いつも見ていたいと、見られたいと思う眼も今は何も見ていない濁った目をしている。
この眼には見られたくない、気分が悪くなる。
霊夢さんを抱きしめながら考える。
霊夢さんは人付き合いが悪く、あまり話すという行為をしない人物だ。
と言ってもこちらを嫌っている訳で無く、ただ話すことが苦手なだけだ。
実際声をかけたら返答してくれるし、話さなくても気を使ってくれるし、何より眼がいい。
全てを見通してるようなそんな眼が良い。
圧倒的な存在感を持つ霊夢さんに見られたい、圧倒的な存在感を持つ霊夢さんを見たい、そう思う者は多い。
そのため霊夢さんを一方的に慕ってたり、好意的に思っている人物は人妖含めてたくさんいるが
コミュニケーションが成り立つ人物はほとんど存在しない。
と言っても例外はある。
それが私と霊夢さんだ。
私と霊夢さんの関係は新聞屋と記者、天狗と巫女、編集者と小説家と色々例えられると思うが。
一番しっくり来るのは
殺す者と殺される者だ。
なにしろここに来る度に霊夢さんは死んでいるのだ。
この関係が一番しっくり来る。
と言っても博麗の巫女たる霊夢さんはこんてにゅーとやらのおかげで死んでも生き返る。
だから絶対に死ぬことは無い。
だけど霊夢さんはすぐに寿命で死ぬ、寿命であっけなく死ぬ。
人間の身体はすぐ死ぬように出来ている。
だから今さっき首を折り死んだ霊夢さんは私の腕の中で静かに死んでいる。
時間が立てば生き返るが今の霊夢さんはただの物だ、者では無い。
片腕でどこも見ていない霊夢さんの濁った眼を閉じ、腕の中で柔らかくて、小柄で、まだ体温が残っている霊夢さんの身体の感触を楽しむ。
少し前の霊夢さんは締め切りから逃れるために
弾幕死、爆死、毒死、窒息死、出血死、内臓破裂死、餓死、水死、中毒死、豆腐死、他殺。
と色々な自殺を図っていた。
他にも時空死、気圧死、速度死、転落死、焼死とありとあらゆる方法で自殺を図っていた。
しかしそれはおかしいのである。
私も最初のうちは本当に締め切りが嫌で自殺を図るだけと思っていた。
なにしろ巫女はこんてにゅーを使いすぐに生き返るのだ、すぐ生き返るから死ぬのだろう。
そう思っていた。
しかし、巫女は死んでも生き返るというだけで痛みはあるのだ。
だというのに霊夢さんは死に続ける、時折頭がおかしくなるような激痛がくるような死に方をする。
そのはずなのに、簡単に死ぬのはおかしい。
常識的に考えるとおかしいはずなのだ、常識的に考えると。
しかし霊夢さんは
死んでも生き返るという常識的ではない存在だ。
だから私とあり方が違うのだろうか、霊夢さんの考えてることはわからない。
今日だって霊夢さんが私に言った言葉と言えば
「ねえ、文。私殺してみたいと思わない?」
「はい?」
まったく持って意味がわからない。
最初聞き間違えかと思って聞きなおしたが、そのまま同じ言葉を返された。
久しぶりに霊夢さんから声をかけられたと思ったらこんな言葉である。
最初はすぐに断った、断ったのだが…
「どうしろというのですか…」
「………」
断った直後に自分自身に弾幕を当てて自殺を図った。
部屋が血まみれである。
ため息を付きながら部屋の掃除をする、こんな状況になるのは日常茶飯事なのだ。
掃除するのにも慣れる。
そうしていつのまにか蘇っていた霊夢さんの首を絞めることになった。
嫌である。
正直嫌である。
まったくもって意味がわからないし、何を考えているかもわからない。
何が悲しくて自分の好きな人間を殺さないとダメなのだろうか。
霊夢さんが一体何を考え、どういう行動目的を持っているかいまだにわからない。
あまりに特殊すぎるのだ、この巫女は。
だからこそ気になって、気になって、気になって仕方が無い。
今までの巫女の中でこんな巫女はいなかった。
というか人間でも妖怪でもこんな性格というかあり方を示した者を私は見たことが無い。
例えるなら…
捕らえることが出来ない物
空を飛んでいるような、いや空そのものだ。
自分で言っててよくわからなくなる。
実際霊夢さんがどういう者かわからないから例えることも出来ないのだろうか。
「あまりにわからなすぎるんですよ…」
「………」
「霊夢さん貴方は一体何なのですか」
「………」
腕の中で首に痣を付け、首がおかしな方向を向いている霊夢さんに声をかける。
当然のことながら返事は無い。
「私は霊夢さんのことが好きですよ」
「………」
あまりにわからないから最初はただの観察対象であった。
しかし観察してもまったくわからない上に、何を見ているかわからない眼を見ると私はいつのまにか囚われていた。
「お嫁さんにしたいです」
「………」
今では霊夢さんの元から離れる気なんてまったく起きない。
天狗の中には同性愛者も多い。
「旦那様でもいいですよ」
「………」
自分から話す事が無い人付き合い下手なのに、すぐ死ぬ自殺志願者なのに。
自殺しても生き返るから志願者では無いのだろうか。
こんな訳のわからない人なのに…。
理解できない人なのに…。
「霊夢さん以外に考えられないほど私は囚われてます」
「………」
私以外にもこんな感情を抱いてる者は多いだろう。
しかし霊夢さんは捕まらない、空を飛んでいるままだ。
それを捕まえようと私は必死だ。
でも捕まえられない。
「貴方は人間です」
「………」
人間はすぐ死ぬ。
寿命ですぐに死ぬ。
私達の何十分の一も生きられない。
「今は生き返りますが、あっという間に死んだまま生き返らなくなります」
「………」
こんてにゅーを使っても寿命には勝てない。
人間は寿命で死んだらそのまま土に帰るだけだ。
霊夢さんのことだからそのまま幽霊にもならず消えてしまいそうだ。
「ですから…」
「………」
だから。
お願いします。
「このようなことはやめてください」
「………」
貴方は好意を持つ人間を殺すということがどういうことかわかってるのですか。
それとも私の気持ちがわかっててこんなことさせてるのですか。
この手に残る嫌な感覚はしばらく忘れられそうにありません。
何で私にあんなことを頼んだのですか。
貴方の何十倍も生きているというのに、まったく理解できそうにありません。
「貴方には時間がありません」
「………」
私が貴方のことを理解できたとしても時間がかかる。
しかしあっというまなのだ。
人間の人生はあっというまに終わるのだ。
「私に比べて圧倒的に時間がありません」
「………」
理解できた時、年老いているか、恐らく寿命でもういない。
そもそも理解できるかがわからない。
「私は霊夢さんが何考えてるのかまったくわからないんです」
「………」
付き合いは長いともいえないがそれでもそれなりの時は立っている。
それでも私は霊夢さんの事を一片も理解できた気はしない。
「そもそも私ってどう思われてるんですか」
「………」
これもわからない。
わからない尽くしだ。
「殺されたいと思われるほど好かれているのか、殺されると思うぐらい恐れられてるのですか」
「………」
どっちなのかわからない。
そもそもこの考えであってるのかもわからない。
「まったくもってわかりません」
「………」
まったく理解ができない、本当に理解ができない。
今まで生きていてこれほどわからないことは初めてです。
「不本意ながらたかが二十年も生きていない貴方のことがまったく理解できません」
「………」
たかが二十年も生きてない人間の小娘に何でこんなに悩まされないとダメなんですか。
「私は…」
「………」
私は…貴方のことが…。
「………」
「………」
首の痣が無くなった。
どうやらこんてにゅーが終わったようだ。
死んでいる時はなんでも言えるが。いざ生きていると何も言えそうに無い。
霊夢さんを腕の中から離し床に寝かせる。
あと数分もしないうちに目を覚ますだろう、居間から歩き外に出る。
空を見上げると、雲ばかりだった
「今日は曇りですね」
「………」
相変わらず返事は無い。
文の内心を霊夢が知ったらどうなっちゃうんだこれ…
いや、面白いんですが…薄ら寒いものを感じざるを得ません。
あとがき怖いよぅ…
続編書いたんだから、書けるところまで書いちゃいなYO
で、>怪盗アキューR18禁版
アキューがあちこちに忍び込んでは捕まってヤられる話ですね?
どうしてくれる。というか、どうすればいい(笑)
それにしても…痛快なだけで全然恐さを感じないのは俺だけ?
あやれいむバンザーイ。
いわゆる蓬莱人ネタとの方向性の違いが見えればよかったかも。
今まで見て来た中でも、理想の霊夢の一つです
続編を書けるとこまで書いて欲しいなぁ。
続編期待してます
この霊夢は「ぶっ壊れてる」というより「違っている」という表現の方が
私にはしっくりきますね。
続編、楽しみにしてます^^
...あれ?魔理沙とか歴代自機もコンティニュー出来るような?
フロイトのエロスとタナトスを思い出す。
蓬莱人が不老不死に対して
こちらは寿命不死みたいなものなんですね。
何というかまさに恋。まさに愛。受け入れる受け入れないでなければ、これ以上は良い方に進まない。何だ、なんだこの新境地……。
かわいい霊夢かわいい
かわいい霊夢かわいいよ
ただ、この霊夢はもの凄くかわいいと思う。
禁句のお遊びのゾクゾクを楽しむ…まあ思考がぶっ飛んでるから妖精のソレとは明らかに異質だけど
そして霊夢エロイ くぁわいい そして俺も文たんに首を絞められたい
やっぱ死んじゃうからほどほどで(ry
けど……完全にあとがきの霊夢の独白まかせの話だったのが残念。
この設定を何とか上手く話の中に溶け込ませて、一つ話を練り上げられないものか、と思います。
あとがきもSSの内、という考えにはおおむね賛同しますけど、
そういう考えの元にこのSSを見てもなお、霊夢の独白が、状況説明にしかなってないように私には感じました。
この方向性、好きなんですけどね。
幽香あたり?
というより他殺は自殺の内に入るんだろうか……
にぐっとキタ
文さぁぁぁぁん!
俺じゃ駄目ですかぁぁぁぁ!?
駄目ですね、さーせん