「一大事だ!」
「あれ、藍?」
なにやら叫びながら狐が駆け込んできたとき、博麗霊夢は晩飯を食べようと掌を合わせたところだった。
ネギと豆腐とワカメを入れた味噌汁の旨みに舌鼓を打つ五秒前に邪魔者が入った形であるから、非常に不機嫌になった。
汗だくになってふさふさした尻尾を揺らす藍を見て、ああ油揚げを入れても良かったなと思う霊夢である。
ぜぇぜぇと肩で呼吸する藍は、全速力で飛んできたらしい。普段の落ち着きは少しも見られなかった。
「何よ一体。とりあえず数字でも数えて落ち着きなさい。素数はどう? ゼロゼロゼロ、八、二、二・四・四の、二、二っと」
「にっほ~んぶんかっせんった~、って冗談を言ってる場合じゃない! 大変なんだ、落ち着いてなんていられない」
冷静さを欠いたその様に、霊夢は呆れたような声を出す。
この高尚なギャグが理解できないとは。
「あのねぇ、大変大変って言われたって……ずるずる、事情が分からなきゃ危機感の持ちようも無いわよ」
味噌汁を啜りながら、霊夢は呑気に返事した。ちょっと濃い目だが、それがご飯に合うのだ。
皿の上では、塩鮭が私を食べてと魅力を放っている。存分に乳繰り合いたい霊夢としては、早々に帰ってもらいたいところだった。
とはいえ、あまり取り乱さないこの妖怪がここまで慌てているのだから、きっと面倒なことなのだろうが。
それにつけても、味噌汁が美味い。
藍は怖い顔になると、言う。
「いいか、霊夢、混乱をきたしかねないから、しばらく他言無用だ」
「何よもったいぶって、そんな大変なことなの? ……ずぞぞ」
「――紫様が死んだ」
「ぶふゥッ!?」
鰹と昆布のラブゲームの間に大豆が合わさり最強の三角関係となった人類至高の汁物が宙を舞った。いつもの霊夢なら自然の恵みを無駄にしてしまったと小一時間嘆くところだが、それどころではない。
本当に大変なことだった。
今度は霊夢が落ち着きを失う番だ。
「一大事じゃないのよ! 早く言いなさいよ!」
「すまない――とりあえず巫女に知らせに来たは良いとしても、この先どうすればいいか分からない」
藍は式である。ある程度自由意志があるとはいえ、基本は、あらかじめ組み込まれたオーダーに従うものだ。
命令どおりやっていれば、主人と同等にまで力が出るという仕組みだが――裏目に出ている。
もちろんその中に、主人が死んだ場合の対処法など入っているはずはない。結果として、(紫には劣るものの)超高度な計算能力も甲斐なく、狼狽している。
「と、とりあえず紫のところに連れてってよ、どこ?」
「マヨヒガだ。――クソッ、今思ってみれば、橙を一人で残してきたのは大間違いだ、今頃泣いてるぞ……急ごう」
霊夢も頷くと、白米味噌汁塩鮭沢庵の四連殺を掻い潜り、マヨヒガへ向けて飛び立った。
「紫……!」
苦悶の表情を浮かべ、幻想郷の大妖怪は死んでいた。
おおよそ、安らかな死に様とは言いがたい。
「一体、何でこんなことに……」
マヨヒガの居間、そこで紫は死んでいた。
外傷は全く無い。いやむしろ、殴る蹴るで紫を殺せる輩が居たら、霊夢だって見てみたいと思うほどだ。
並大抵の毒だって効きやしないし、術や魔法だってそうだ。妖怪のフィジカルとは偉大なのである。
老衰――であるなら、幻想郷の管理人である紫のことだから、何もかもきちんと決めてから死ぬはずだ。
つまり、考えられないことだった。
霊夢には悪い冗談にしか思えなかった。
「橙は?」
「部屋で寝かせてある――といっても、寝れるわけは無いな……」
藍はぎりりと唇を噛んだ。滅多に見せない険しい表情だった。
「原因は何なの?」
その問いに、藍は首を振った。
「はっきりした事は分からない。ただ――物凄く高度な術か何かの、リバウンドかもしれない」
「術?」
「ああ。詠唱を聴いたよ、この耳で。聞いたこともないものだった」
「嘘でしょう……?」
霊夢には信じられなかった。
というよりも、八雲紫の実力を知っている者なら、誰だって嘘だと思うだろう。
術のリバウンドというのは、力量不足の者が高度な術を使おうとして受けるものだ。身の丈に合わない術は、使用者を傷つける。
八雲紫にリバウンドが来るような術など、考えられなかった。
第一、そんなリスクを伴うことをするほど、彼女は馬鹿ではない。
「藍――その文言を教えて」
本当にそんな術があったとして、それが神道由来、すなわち霊夢の畑のものであるという保証も、よしんば神道のものだったとして、霊夢が知っているという保証もない。
しかし、それでも、霊夢は尋ねざるを得なかった。
藍はうなずき、口を開く。
「ああ、確か……」
「確か、『ケッコウ=ケ・ダラケ・ネコ・ハイダラケ』だったか……聞いたときはそんな危険なものだとは知らなかったからな、何ですかソレと聞き返したとたん――もがき苦しんでこの有様だ」
「……紫ー! 大丈夫! 私藍よりすっごく若いけどちゃんと知ってる!」
すると紫はむくりと起き上がった。
その表情には、先ほどまでの苦悶に代わり、安堵が浮かんでいた。
「なぁんだ、藍が世間知らずなだけだったのね。もう、冗談はヨシコさんだわ」
「え? ごめん何ソレ」
「ぬわ――ッ!!」
「紫!? 紫ぃぃぃ!」
ってやかましいわwwwwww
さぁわかんなかったみんなはググってみよう。
ところでこの手のSS、最近多いですね。気のせいでしょうか。
なにはともあれおもしろかったです。
・・・分かる人いるよね?
(某5歳児マンガのおかげで)
そんな古いネタだったのかw
サザエさんとか読んでると、古い言葉をつい覚えてしまうんですよね。
使いどころが無かったり、意味が分からなかったりするのが大抵だけど。
笑ったので、いや、笑ってしまったので。
10代でも知ってる俺は何なの?
死ぬの?
このあとお尻の周りは…と続くわけですが、そこまでいくと下ネタですね(^^;
でも何か、紫がこんなこと言うというのが、いまいちイメージ湧かなかったり。
あとがきやコメントのも含めて。
……ですよね?
あ、先日二十歳になりました
もう一品か二品、カリウム豊富な野菜や煮物を加えるんだ、霊夢ぅう!!!
信州ほか雪国名物アル中、ちがう、高血圧心臓発作で死ぬぞっ!!!(←ほんき)
>>46
あーああん やんなちゃった♪ で6度目をw
知ってるけどね、知ってはいるんだけどねw
ところで霖之助は醤油顔ですよねッ!
か~みがないから手で拭いて~
もったいないから食べちゃった♪
ジェネレーションギャップ。直訳すると世代のスキマwww
全部わかっちまった・・・・・・・