・ようやっと終わりましたが
・長いです
・続きものです
時は既に夜。
激戦はまだ続いていた。
一人斃しては腕を剣で斬られ。
二人斃しては脚を槍で貫かれ。
三人斃しては胸を槌で撃たれ。
一撃一撃は軽くとも確実に体にダメージが蓄積されていく。
それでも。骨が折れ肉が裂け血が吹き出ても決して砕けぬ闘志。
たった一つ、「守る」という気持ち。
その気持ちのみで体を動かす。動かす。動かす。動かし続ける。
が、先ほどから全身の気をフルスロットルで活動させているためか、疲労が激しい。
その疲労を振り切って体を動かすためにそちらに気を回し、体の再生に回す分が間に合わない。
なんという負の連鎖。
「っ…!!!」
足がもつれる。
その隙を見逃さずに押し包んで槍で剣で槌で襲い来る騎士ども。
「ふんっっ!!!!!」
その縺れて倒れそうになった足を地面に着ける時に思い切り踏みつける。硬気功のおまけ付きで踏み込んだその足は地面に小さなクレーターを穿つ。
その振動に煽られてバランスを崩した騎士の3人を次の一歩の踏み込みで近づき手刀で首を落とす。
「ぶはぁっ!」
体が酸素と血液と休息とその他諸々生きるのに大事なものを求めてくるがそこをなんとか酸素だけで我慢してもらい、次に突撃してきた槍盾兵に盾ごと鉄山靠で吹き飛ばす。
と、その時。
ずどん、と重く響く爆音。
屋敷の方から聞こえた爆音に思わず振り返る。
その、入口には、地下室にて絶対に出られないようにしていたフランドールの姿があった。
「妹様!!!?」
何故ここに妹様がいるのかとか、早く中に避難させねばとか一瞬で頭に色々な思考が廻り。
「あれがここの屋敷にすむ吸血鬼の片割れだ!!かかれ!!!」
隊長の騎士の怒号が飛び、一斉に余っていた騎士たちがそちらに襲いかかる。
「妹様!!にげ――「めーりいいん!!助けにきたよー!!」
そう言ってフランドールが右手に魔力を貯める。貯める。貯める。
―そして―
「どかーん!!!」
襲いかかろうとした騎士の一団が破裂した。
ばらばらと、降り注ぐ騎士であったモノたち。
それに驚愕の表情を見せる、騎士たち。
が。
「…あ、あれれ…なん…で…?」
かくり、と力無く膝をつくフランドール。
本人には分かっていなかったが、美鈴には診えていた。
(あれだけの魔法…!!道理で!!!)
フランの中の気が、どんどん薄れていくのを。
無意識に膨大な魔力を使ってしまい、気絶してしまうフランドール。
それに気付き慌てて駆け寄ろうとする美鈴。
「妹さ…!!!」
が、それは、致命的な隙。背中をがら空きにするという、戦い…殺し合いにおいて、致命的な隙。
ぞぶぅ、と厭な音を立てて美鈴の背中と腕に突き刺さる、3本の剣と5本の槍。
「あ…がっ……」
がくんと足を付く。
ぼだぼだぼだっと洒落にならない量の血を、口から傷口から流し。ついに。
―どさり。
地に、血に伏した。
(妹様を…守らなきゃ…立ち…上がっ……たたか……なきゃ………)
「ふん、さんざん手こずらせおって」
いきなり序盤で右腕を千切られ、さらにおよそ半数もの部下を失ったが、まぁよい。
おそらく、こいつがここの最後の砦だったのだろう。
後はあそこに倒れている小さな吸血鬼と、情報によればもう一匹いるらしいが。
そいつらをやれば帰れる。こんなクソ片田舎に来るのはもうこりごりだ。
さて、部下にしじをd
騎士たちは安堵していた。
あぁ、怖かった、と。
後はあそこに倒れている小さな吸血鬼を―
―その安堵が致命的な隙を生む―
ふと気が着くと視界の端にいたはずのあの紅髪の妖怪がいない。
そしてふと気が着くと
隊長の首が変な方向に曲がっていた。
「ここ…は……!」
そして近き者は目に者を見た。
「絶対に……!!」
そして遠き者は耳に訊いた。
「通して……!!!」
明らかに、妖怪ですら致死量を超える量の血を流し
明らかに、妖怪ですら致命傷になる程の傷を背負い
それでも。それでもなお。
「なるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁあああああ!!!!」
明らかに、戦う意思を、守る意思を目に灯していた。
騎士たちは恐怖した。
今まで、ここでの戦いで感じた恐怖の更に上に行く恐怖―得体のしれない、理解の及ばない者に対する恐怖だ。
それは1人から2人に。2人から4人に。4人から8人から16人から32人から――騎士たち全てに伝播した。
後はもう、遁走しかない。
人間は真の恐怖に対してそれ以外の行動を持ち合わせていないものなのだ。
「フラン…フラン…!!!」
迂闊だった。まさか妹の能力が、あんなに厄介なものだったとは―――!
瓦礫と化した部屋の瓦礫からようやく抜け出すと、地上へと駆け上がる。
いくらあの能力を持っていてもいきなり化け物専門の騎士たちとの戦いなどできるはずが―――!!!
そこまで思ったところで門の前に着いた。
そこで彼女が見た者は。
「…よくもまぁ、幸せそうな顔で眠ってなこいつは…」
血まみれで
門の前で
大の字で
フランを膝枕しながら熟睡している紅髪の妖怪だった。
その後。
スカーレット卿を失ったスカーレット家は急速に勢力を失った。
が、スカーレット卿はこの事態を想定していたのか。
すぐに紅魔館が幻想郷へと転移することになった。
恐らく、八雲のと色々取引をしていたのであろう、と。
―もうひとつの、その後。
この凄惨な戦いの後、この屋敷はこう呼ばれることになる。
『紅い屋敷の紅い悪魔、【スカーレットデビルの護る屋敷】、紅魔館』、と。
―――――――――というわけで、彼女は父上の信頼していた部下だったのよ?それにまぁ、確かに好戦的ではないのだろうけど、やるときはやるってことよ」
咲夜はぽかんと口をあけている。まさか彼女の過去にそんな凄惨ですぷらったーな過去があったとは…。
「あぁ、せっかくの紅茶が冷えてしまったわ。咲夜、淹れ直して頂戴」
「は、はい」
その言葉に我に返ると、時を弄って温度を固定してあるポットから紅茶を注ぐ。
ふと、窓の外を見る。
今日も今日とて門の前に立つ彼女が、月の明かりに照らされている。
「ふふふ…彼女もやはり、月が似合うわね」
ん?と疑問符を頭に浮かべる咲夜にレミリアはにやにやしながらこう言った。
「あら、分からないかしら。血の繋がりなど無くても、彼女も私たちの家族って事よ」
・長いです
・続きものです
時は既に夜。
激戦はまだ続いていた。
一人斃しては腕を剣で斬られ。
二人斃しては脚を槍で貫かれ。
三人斃しては胸を槌で撃たれ。
一撃一撃は軽くとも確実に体にダメージが蓄積されていく。
それでも。骨が折れ肉が裂け血が吹き出ても決して砕けぬ闘志。
たった一つ、「守る」という気持ち。
その気持ちのみで体を動かす。動かす。動かす。動かし続ける。
が、先ほどから全身の気をフルスロットルで活動させているためか、疲労が激しい。
その疲労を振り切って体を動かすためにそちらに気を回し、体の再生に回す分が間に合わない。
なんという負の連鎖。
「っ…!!!」
足がもつれる。
その隙を見逃さずに押し包んで槍で剣で槌で襲い来る騎士ども。
「ふんっっ!!!!!」
その縺れて倒れそうになった足を地面に着ける時に思い切り踏みつける。硬気功のおまけ付きで踏み込んだその足は地面に小さなクレーターを穿つ。
その振動に煽られてバランスを崩した騎士の3人を次の一歩の踏み込みで近づき手刀で首を落とす。
「ぶはぁっ!」
体が酸素と血液と休息とその他諸々生きるのに大事なものを求めてくるがそこをなんとか酸素だけで我慢してもらい、次に突撃してきた槍盾兵に盾ごと鉄山靠で吹き飛ばす。
と、その時。
ずどん、と重く響く爆音。
屋敷の方から聞こえた爆音に思わず振り返る。
その、入口には、地下室にて絶対に出られないようにしていたフランドールの姿があった。
「妹様!!!?」
何故ここに妹様がいるのかとか、早く中に避難させねばとか一瞬で頭に色々な思考が廻り。
「あれがここの屋敷にすむ吸血鬼の片割れだ!!かかれ!!!」
隊長の騎士の怒号が飛び、一斉に余っていた騎士たちがそちらに襲いかかる。
「妹様!!にげ――「めーりいいん!!助けにきたよー!!」
そう言ってフランドールが右手に魔力を貯める。貯める。貯める。
―そして―
「どかーん!!!」
襲いかかろうとした騎士の一団が破裂した。
ばらばらと、降り注ぐ騎士であったモノたち。
それに驚愕の表情を見せる、騎士たち。
が。
「…あ、あれれ…なん…で…?」
かくり、と力無く膝をつくフランドール。
本人には分かっていなかったが、美鈴には診えていた。
(あれだけの魔法…!!道理で!!!)
フランの中の気が、どんどん薄れていくのを。
無意識に膨大な魔力を使ってしまい、気絶してしまうフランドール。
それに気付き慌てて駆け寄ろうとする美鈴。
「妹さ…!!!」
が、それは、致命的な隙。背中をがら空きにするという、戦い…殺し合いにおいて、致命的な隙。
ぞぶぅ、と厭な音を立てて美鈴の背中と腕に突き刺さる、3本の剣と5本の槍。
「あ…がっ……」
がくんと足を付く。
ぼだぼだぼだっと洒落にならない量の血を、口から傷口から流し。ついに。
―どさり。
地に、血に伏した。
(妹様を…守らなきゃ…立ち…上がっ……たたか……なきゃ………)
「ふん、さんざん手こずらせおって」
いきなり序盤で右腕を千切られ、さらにおよそ半数もの部下を失ったが、まぁよい。
おそらく、こいつがここの最後の砦だったのだろう。
後はあそこに倒れている小さな吸血鬼と、情報によればもう一匹いるらしいが。
そいつらをやれば帰れる。こんなクソ片田舎に来るのはもうこりごりだ。
さて、部下にしじをd
騎士たちは安堵していた。
あぁ、怖かった、と。
後はあそこに倒れている小さな吸血鬼を―
―その安堵が致命的な隙を生む―
ふと気が着くと視界の端にいたはずのあの紅髪の妖怪がいない。
そしてふと気が着くと
隊長の首が変な方向に曲がっていた。
「ここ…は……!」
そして近き者は目に者を見た。
「絶対に……!!」
そして遠き者は耳に訊いた。
「通して……!!!」
明らかに、妖怪ですら致死量を超える量の血を流し
明らかに、妖怪ですら致命傷になる程の傷を背負い
それでも。それでもなお。
「なるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁあああああ!!!!」
明らかに、戦う意思を、守る意思を目に灯していた。
騎士たちは恐怖した。
今まで、ここでの戦いで感じた恐怖の更に上に行く恐怖―得体のしれない、理解の及ばない者に対する恐怖だ。
それは1人から2人に。2人から4人に。4人から8人から16人から32人から――騎士たち全てに伝播した。
後はもう、遁走しかない。
人間は真の恐怖に対してそれ以外の行動を持ち合わせていないものなのだ。
「フラン…フラン…!!!」
迂闊だった。まさか妹の能力が、あんなに厄介なものだったとは―――!
瓦礫と化した部屋の瓦礫からようやく抜け出すと、地上へと駆け上がる。
いくらあの能力を持っていてもいきなり化け物専門の騎士たちとの戦いなどできるはずが―――!!!
そこまで思ったところで門の前に着いた。
そこで彼女が見た者は。
「…よくもまぁ、幸せそうな顔で眠ってなこいつは…」
血まみれで
門の前で
大の字で
フランを膝枕しながら熟睡している紅髪の妖怪だった。
その後。
スカーレット卿を失ったスカーレット家は急速に勢力を失った。
が、スカーレット卿はこの事態を想定していたのか。
すぐに紅魔館が幻想郷へと転移することになった。
恐らく、八雲のと色々取引をしていたのであろう、と。
―もうひとつの、その後。
この凄惨な戦いの後、この屋敷はこう呼ばれることになる。
『紅い屋敷の紅い悪魔、【スカーレットデビルの護る屋敷】、紅魔館』、と。
―――――――――というわけで、彼女は父上の信頼していた部下だったのよ?それにまぁ、確かに好戦的ではないのだろうけど、やるときはやるってことよ」
咲夜はぽかんと口をあけている。まさか彼女の過去にそんな凄惨ですぷらったーな過去があったとは…。
「あぁ、せっかくの紅茶が冷えてしまったわ。咲夜、淹れ直して頂戴」
「は、はい」
その言葉に我に返ると、時を弄って温度を固定してあるポットから紅茶を注ぐ。
ふと、窓の外を見る。
今日も今日とて門の前に立つ彼女が、月の明かりに照らされている。
「ふふふ…彼女もやはり、月が似合うわね」
ん?と疑問符を頭に浮かべる咲夜にレミリアはにやにやしながらこう言った。
「あら、分からないかしら。血の繋がりなど無くても、彼女も私たちの家族って事よ」