門番今昔・1の続きです。
しかもまだ続きます。
次で終わらせられるように頑張ります。
ちょいグロ描写あります。
―夕刻。
レミリアとフランドールの相手をしていたら日が暮れてしまったため、急いで晩餐の準備をする美鈴。
トントントン、と綺麗なリズムを奏でながら食材を切っていく。
だが、どうもまだモヤモヤしたものが心に残っていた。
(しかし…遅いな)
朝に出たスカーレット卿が、未だに戻ってこないからだ。
そろそろ日が沈む。
町のほうに泊まるとも言っていなかったし、袖の下を渡すついでに酒宴でも開いているのだろうか。
そう、頭に思い込ませて料理を飾り付けていく。
その時。
(―――っ!!?)
警戒のためにこの屋敷の周囲2キロに展開させている美鈴の『気』が、何か異質なものを感じた。
(人間…?こんな時間に一体…)
それらは、着々と近づいている。数はおよそ…500前後…!?
ごくり、と喉が鳴る。
突然の異端審問官の来訪。
帰ってこない館の主。
500もの人間。
厭な予感が、当たって欲しくなかった一つの推測が、当たろうとしていた。
門の前まで全速力で走る。
まるでその『当たろうとしている推測』を振り払うかのように、走る。走る。
門の外へ出たところに、あわてた様子で、肩で息をしている門番隊が数人いた。
「落ち着きなさい!何事です!」
内心の動揺を表に出さず、冷静に説明を求める。
…私の予測なんか、外れててくれ。
そう、祈りながら。
「い。異端審問官の引き連れた兵隊が、この屋敷に向かってきています!それを止めようとした警備の者がすでに二人殺されました!」
当たった。当たってしまった。当たってしまいやがった。
心の中で毒づきながら、飽くまでも務めて冷静に指示を出した。
「事情を説明して、お嬢様達を地下に。障壁を張って外からも『中からも』開かないように、と伝えなさい。全員、何としてでも、スカーレット卿の御帰還までお嬢様達をお守りするように!」
それだけ伝えると、門の外へ出る美鈴。
「は、はい!!め、美鈴様!?どちらに!?」
「『何としてでも、スカーレット卿の御帰還までお嬢様達をお守りする』のですよ」
そう言った美鈴の手には。
見えないように握られていたその手は確かに震えていた。
数刻の、後。
門の前に一人。仁王立ちにて500の騎士たちを迎える一人の紅髪。
一人の馬に乗った、―部隊長であろうか―やや立派ないでたちの騎士が前に出るなり叫んだ。
「我々はローマ教皇庁の命によってこの地に派遣された騎士団である。ここの領主家族が吸血鬼として非道の限りを尽くし、さらにはこの町の住民がそれ与しているということは分かっている。だが、寛大なるローマ教皇猊下は『大人しく吸血鬼を引き渡せば町の者に手は出さない』と、仰せられた!」
ここまで、一息で言い切る。
それを目を閉じて無言で聞く美鈴。
「もし、これに逆らうとしたら我々はやむを得ず、無慈悲にして徹底的な殲滅を加えるが如何に!!」
ひときわ大きな声で言い放つ騎士。
そこでようやく美鈴が口を開いた。
「…町の方へ向かわれた、スカーレット卿は、どこにいる?」
「アレはすでに我らに潔く投降した。だから貴様らも吸血鬼の大人しく身柄を引き渡せ」
数瞬の、沈黙。
「町の人たちには、本当に手を出さないんだな?」
「当然だ。我々は神の意志の代行者であって、虐殺者ではないのだからな」
美鈴のこの質問に、騎士は、やや勝ち誇ったかのような口調で答える。
「では、聞くが」
「む?」
美鈴がようやく目を見開く。
その眼には、殺気と憎悪と…その他この世のすべての憎しみの感情のこもった眼であった。
「なぜ、何故貴様らの剣から血の匂いがするのだっっっ!!!!!!!」
一喝。沈黙。
「ふふ、気づかれてしまったのか。…その鼻の鋭さ、貴様も妖怪であろう?」
ニヤリ、と不敵に笑う。酷く陰鬱な笑み。
「スカーレット卿は、どうした?」
殺気を隠さずに訊く美鈴。
「既に、辺獄にて貴様らを待っていることだろう」
ズドッ。
鈍い音がした。
何か硬いものと柔らかいものが同時に切断されたかのような、違和感のある、音。
「…?」
ブシュッ。
遅れて、何か液体が噴き出す音。
「…ぎゃぁぁぁぁああ!!!?」
さらに遅れて、何か激痛を伴った際に人間の上げる、悲鳴。
「…いいだろう」
右手を赤く濡らした門番が、隊長らしき騎士の乗る馬の後ろにいた。
その移動の経緯を目視できた者はいなかった。
「…たかが5000の有象無象…。全て、総て、打ち斃す!!!」
その右手には隊長らしき騎士の右腕が握られていた。
「おねえさまぁ…。ちちうえと、めーりんは、大丈夫かなぁ…?」
不安そうな顔で、レミリアを見るフランドール。
「…大丈夫よ、フラン。ちちうえも美鈴も、とっても強いんだから」
ふるふると震えるフランドールをそっと抱き寄せるレミリア。
だが、その心中も決して穏やかではない。
まだ数百年も生きていない吸血鬼など、おそらくあっという間に捕まり、殺されるだろう。
(くっ…!)
レミリアは己の非力を呪った。
レミリアは大好きな二人の無事を祈った。
―何も解決しないと分かっていても、そうせずには居られなかったから。
「がぁぁっぁあ!!!!」
幾重にも閉ざされた、門の前。
次から次へと襲い来る騎士の群れ。
(祝福儀礼済みとは…厄介な!!)
それは妖しを、キリストに仇するモノを屠るためのモノ。
傷の治りが遅い。
―騎士が後ろから剣を美鈴の背中めがけ振りかぶる。
それを空気の流れで察した美鈴は後ろ回し蹴りで手を蹴る、手首から先を吹き飛ばす。
蹴りを放った後の不安定な体勢の美鈴の腹に槍が迫る。
それを目視した刹那に上げたままの足をそのまま振り下ろし槍を砕きその脚をバネにして右手を甲冑のスキマ…首の付け根に突き刺す。
その間に三人の騎士が首を、腹を、足を目掛け剣で斬りかかる。
喉に手を突き刺したまま、その騎士の死体を片手で振り回し、二人を吹き飛ばす、その回転を利用して気を込めた裏拳を騎士の腹部に叩き込む。
さらにその間に突っ込んできた槍を持った騎士二人が迫る。
それを各々片方ずつ腕で挟んで止め、
―――隙ができる。
がっと腕でつかんだ槍の取り合いをしている一瞬の間に横腹に鈍痛。
左の脇腹に刺さった槍がそのまま貫通して、背中からでていた。
一瞬顔をしかめる、がまるで気にもせず二人から奪った槍をその二人の体に『返却』すると体に刺さった槍を折り、一気に引き抜き、こちらも首のあたりに投げて『返却』する。
「はぁっ…はぁっ…ゴボッ…!」
血の塊を吐く。しかし、倒れない。
既に彼女の傍らには百近くの騎士の死体。
腕を貫かれ、腹を刺され、脚を斬られ。
無事でない個所など。まるで無い。
だが、倒れない。
遠巻きに彼女を囲む、騎士の群れ。
妖しを倒すための、武器の群れ。
それでも、倒れない。
あの右腕を失った騎士の隊長が叫ぶ。
「何故だ!!何故、死なない!!?」
自分の部下が殺されているからか、それとも右腕を失ったからか。
ややヒステリックに叫ぶ。
「何故かって…?」
肩で息をしながら、それでもなお衰えぬ、闘志。
そして、ニッ、と笑う。
「古い友人にに、頼まれてんですよ。留守を頼むって。友人の頼み無碍にしちゃ、女がすたるってもんです」
絶体絶命の状況を感じさせぬ、朗らかな、笑み。
その笑みに、騎士団は恐怖を隠せなかった。
「…っ!ええい!かかれ!もう奴はボロボロだ!押し包んで、嬲り殺せ!!」
その声を皮切りに、再び押し寄せる軍勢。
いなし、打ち、躱し、蹴り、弾き、叩き込む。
淀みのない、一切の無駄を省いた動き。
―負けられない
―負ける気がしない
―だって、こんなにも、負けたくない
「うおおおああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
―――――すでに、地下に隠れてから3時間が経過していた。
分厚い壁と地面に、一切の外の情報は遮断されている。
刻々と削られる、神経。
「ねぇ、おねえさま…。外に出てもいい?」
「駄目よ、フラン。きっと、きっともうすぐ帰ってくるから…ね?」
先ほどからこのやりとりを繰り返している二人。
「……おねえさまは、心配じゃないの…?」
「心配よ。心配に決まってるじゃない…」
「だったら!!なんでここで大人しくしてるのよ!!!」
地下室に響き渡る、怒号。驚いたメイド達がそちら見る。
「私たちだって、吸血鬼なんだよ!!?めーりんとちちうえを助けに行こうよ!!!ねぇ!!!?」
「黙りなさい!!!」
立ちあがって、フランドールを怒鳴るレミリア。
「私だって心配に決まっているじゃない!!でも、あの美鈴が、ここで待っていろと言ったのよ!!?私たちが今外に出て何ができると思っているの!?」
美鈴がここに避難させた理由。
それは憶測でしかないけれど、おそらく、二人を守りながら戦う余裕が無いくらい、激戦になるから。
つまり、まだ力の弱い二人では足手まといになるだけだと。
「力…力があれば…っ!!!!」
手を思い切り握り締めるフランドール。掌が裂け、血がこぼれるが意に介さず歯噛みし続ける。
「ちちうえ…めーりん…!」
力が欲しい。純粋に、誰からも守られなくても大丈夫な、圧倒的な力が。
と、吸血鬼が、一人の少女が純粋に力を欲した時。
フランドールの能力が。
――芽生えた。
しかもまだ続きます。
次で終わらせられるように頑張ります。
ちょいグロ描写あります。
―夕刻。
レミリアとフランドールの相手をしていたら日が暮れてしまったため、急いで晩餐の準備をする美鈴。
トントントン、と綺麗なリズムを奏でながら食材を切っていく。
だが、どうもまだモヤモヤしたものが心に残っていた。
(しかし…遅いな)
朝に出たスカーレット卿が、未だに戻ってこないからだ。
そろそろ日が沈む。
町のほうに泊まるとも言っていなかったし、袖の下を渡すついでに酒宴でも開いているのだろうか。
そう、頭に思い込ませて料理を飾り付けていく。
その時。
(―――っ!!?)
警戒のためにこの屋敷の周囲2キロに展開させている美鈴の『気』が、何か異質なものを感じた。
(人間…?こんな時間に一体…)
それらは、着々と近づいている。数はおよそ…500前後…!?
ごくり、と喉が鳴る。
突然の異端審問官の来訪。
帰ってこない館の主。
500もの人間。
厭な予感が、当たって欲しくなかった一つの推測が、当たろうとしていた。
門の前まで全速力で走る。
まるでその『当たろうとしている推測』を振り払うかのように、走る。走る。
門の外へ出たところに、あわてた様子で、肩で息をしている門番隊が数人いた。
「落ち着きなさい!何事です!」
内心の動揺を表に出さず、冷静に説明を求める。
…私の予測なんか、外れててくれ。
そう、祈りながら。
「い。異端審問官の引き連れた兵隊が、この屋敷に向かってきています!それを止めようとした警備の者がすでに二人殺されました!」
当たった。当たってしまった。当たってしまいやがった。
心の中で毒づきながら、飽くまでも務めて冷静に指示を出した。
「事情を説明して、お嬢様達を地下に。障壁を張って外からも『中からも』開かないように、と伝えなさい。全員、何としてでも、スカーレット卿の御帰還までお嬢様達をお守りするように!」
それだけ伝えると、門の外へ出る美鈴。
「は、はい!!め、美鈴様!?どちらに!?」
「『何としてでも、スカーレット卿の御帰還までお嬢様達をお守りする』のですよ」
そう言った美鈴の手には。
見えないように握られていたその手は確かに震えていた。
数刻の、後。
門の前に一人。仁王立ちにて500の騎士たちを迎える一人の紅髪。
一人の馬に乗った、―部隊長であろうか―やや立派ないでたちの騎士が前に出るなり叫んだ。
「我々はローマ教皇庁の命によってこの地に派遣された騎士団である。ここの領主家族が吸血鬼として非道の限りを尽くし、さらにはこの町の住民がそれ与しているということは分かっている。だが、寛大なるローマ教皇猊下は『大人しく吸血鬼を引き渡せば町の者に手は出さない』と、仰せられた!」
ここまで、一息で言い切る。
それを目を閉じて無言で聞く美鈴。
「もし、これに逆らうとしたら我々はやむを得ず、無慈悲にして徹底的な殲滅を加えるが如何に!!」
ひときわ大きな声で言い放つ騎士。
そこでようやく美鈴が口を開いた。
「…町の方へ向かわれた、スカーレット卿は、どこにいる?」
「アレはすでに我らに潔く投降した。だから貴様らも吸血鬼の大人しく身柄を引き渡せ」
数瞬の、沈黙。
「町の人たちには、本当に手を出さないんだな?」
「当然だ。我々は神の意志の代行者であって、虐殺者ではないのだからな」
美鈴のこの質問に、騎士は、やや勝ち誇ったかのような口調で答える。
「では、聞くが」
「む?」
美鈴がようやく目を見開く。
その眼には、殺気と憎悪と…その他この世のすべての憎しみの感情のこもった眼であった。
「なぜ、何故貴様らの剣から血の匂いがするのだっっっ!!!!!!!」
一喝。沈黙。
「ふふ、気づかれてしまったのか。…その鼻の鋭さ、貴様も妖怪であろう?」
ニヤリ、と不敵に笑う。酷く陰鬱な笑み。
「スカーレット卿は、どうした?」
殺気を隠さずに訊く美鈴。
「既に、辺獄にて貴様らを待っていることだろう」
ズドッ。
鈍い音がした。
何か硬いものと柔らかいものが同時に切断されたかのような、違和感のある、音。
「…?」
ブシュッ。
遅れて、何か液体が噴き出す音。
「…ぎゃぁぁぁぁああ!!!?」
さらに遅れて、何か激痛を伴った際に人間の上げる、悲鳴。
「…いいだろう」
右手を赤く濡らした門番が、隊長らしき騎士の乗る馬の後ろにいた。
その移動の経緯を目視できた者はいなかった。
「…たかが5000の有象無象…。全て、総て、打ち斃す!!!」
その右手には隊長らしき騎士の右腕が握られていた。
「おねえさまぁ…。ちちうえと、めーりんは、大丈夫かなぁ…?」
不安そうな顔で、レミリアを見るフランドール。
「…大丈夫よ、フラン。ちちうえも美鈴も、とっても強いんだから」
ふるふると震えるフランドールをそっと抱き寄せるレミリア。
だが、その心中も決して穏やかではない。
まだ数百年も生きていない吸血鬼など、おそらくあっという間に捕まり、殺されるだろう。
(くっ…!)
レミリアは己の非力を呪った。
レミリアは大好きな二人の無事を祈った。
―何も解決しないと分かっていても、そうせずには居られなかったから。
「がぁぁっぁあ!!!!」
幾重にも閉ざされた、門の前。
次から次へと襲い来る騎士の群れ。
(祝福儀礼済みとは…厄介な!!)
それは妖しを、キリストに仇するモノを屠るためのモノ。
傷の治りが遅い。
―騎士が後ろから剣を美鈴の背中めがけ振りかぶる。
それを空気の流れで察した美鈴は後ろ回し蹴りで手を蹴る、手首から先を吹き飛ばす。
蹴りを放った後の不安定な体勢の美鈴の腹に槍が迫る。
それを目視した刹那に上げたままの足をそのまま振り下ろし槍を砕きその脚をバネにして右手を甲冑のスキマ…首の付け根に突き刺す。
その間に三人の騎士が首を、腹を、足を目掛け剣で斬りかかる。
喉に手を突き刺したまま、その騎士の死体を片手で振り回し、二人を吹き飛ばす、その回転を利用して気を込めた裏拳を騎士の腹部に叩き込む。
さらにその間に突っ込んできた槍を持った騎士二人が迫る。
それを各々片方ずつ腕で挟んで止め、
―――隙ができる。
がっと腕でつかんだ槍の取り合いをしている一瞬の間に横腹に鈍痛。
左の脇腹に刺さった槍がそのまま貫通して、背中からでていた。
一瞬顔をしかめる、がまるで気にもせず二人から奪った槍をその二人の体に『返却』すると体に刺さった槍を折り、一気に引き抜き、こちらも首のあたりに投げて『返却』する。
「はぁっ…はぁっ…ゴボッ…!」
血の塊を吐く。しかし、倒れない。
既に彼女の傍らには百近くの騎士の死体。
腕を貫かれ、腹を刺され、脚を斬られ。
無事でない個所など。まるで無い。
だが、倒れない。
遠巻きに彼女を囲む、騎士の群れ。
妖しを倒すための、武器の群れ。
それでも、倒れない。
あの右腕を失った騎士の隊長が叫ぶ。
「何故だ!!何故、死なない!!?」
自分の部下が殺されているからか、それとも右腕を失ったからか。
ややヒステリックに叫ぶ。
「何故かって…?」
肩で息をしながら、それでもなお衰えぬ、闘志。
そして、ニッ、と笑う。
「古い友人にに、頼まれてんですよ。留守を頼むって。友人の頼み無碍にしちゃ、女がすたるってもんです」
絶体絶命の状況を感じさせぬ、朗らかな、笑み。
その笑みに、騎士団は恐怖を隠せなかった。
「…っ!ええい!かかれ!もう奴はボロボロだ!押し包んで、嬲り殺せ!!」
その声を皮切りに、再び押し寄せる軍勢。
いなし、打ち、躱し、蹴り、弾き、叩き込む。
淀みのない、一切の無駄を省いた動き。
―負けられない
―負ける気がしない
―だって、こんなにも、負けたくない
「うおおおああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
―――――すでに、地下に隠れてから3時間が経過していた。
分厚い壁と地面に、一切の外の情報は遮断されている。
刻々と削られる、神経。
「ねぇ、おねえさま…。外に出てもいい?」
「駄目よ、フラン。きっと、きっともうすぐ帰ってくるから…ね?」
先ほどからこのやりとりを繰り返している二人。
「……おねえさまは、心配じゃないの…?」
「心配よ。心配に決まってるじゃない…」
「だったら!!なんでここで大人しくしてるのよ!!!」
地下室に響き渡る、怒号。驚いたメイド達がそちら見る。
「私たちだって、吸血鬼なんだよ!!?めーりんとちちうえを助けに行こうよ!!!ねぇ!!!?」
「黙りなさい!!!」
立ちあがって、フランドールを怒鳴るレミリア。
「私だって心配に決まっているじゃない!!でも、あの美鈴が、ここで待っていろと言ったのよ!!?私たちが今外に出て何ができると思っているの!?」
美鈴がここに避難させた理由。
それは憶測でしかないけれど、おそらく、二人を守りながら戦う余裕が無いくらい、激戦になるから。
つまり、まだ力の弱い二人では足手まといになるだけだと。
「力…力があれば…っ!!!!」
手を思い切り握り締めるフランドール。掌が裂け、血がこぼれるが意に介さず歯噛みし続ける。
「ちちうえ…めーりん…!」
力が欲しい。純粋に、誰からも守られなくても大丈夫な、圧倒的な力が。
と、吸血鬼が、一人の少女が純粋に力を欲した時。
フランドールの能力が。
――芽生えた。
「吸血鬼の大人しく身柄を引き渡せ」
おそらく、
「吸血鬼の身柄を大人しく引き渡せ」ですね。