Coolier - 新生・東方創想話

魔界創世

2010/06/05 00:46:41
最終更新
サイズ
7.88KB
ページ数
1
閲覧数
1272
評価数
1/17
POINT
660
Rate
7.61

分類タグ

 魔界と呼ばれる幻想郷とはまた違う世界

雲ひとつなく晴れた空、建物と緑が共存する景色が見渡せる場所。
神殿の広間に佇む人影
静かに現れたもう一つの人影が声をかける。

「神綺様、どうなさいました?」
「あら、夢子ちゃんこそどうしたのかしら?」

 空を眺めていたその人影はこちらをゆっくりと振り向くと優しく微笑む。
微笑みあうような形になりながら夢子は神綺宛の手紙を差し出す。

「あら、誰からかしら?」
「神綺様のお望みの方からですよ」
「アリスちゃん?」目を輝かせて覗き込む。
「いえ、霊夢からです」極めて義務的に答える。
「送り返しておいてね」凄まじい落胆の色を見せ言い放つ。
「……あ、忘れてました、アリスからも」
「……意地悪ね、夢子ちゃん」

 そんなやり取りの後、二人はしばらくこの魔界の景色を眺める。
 
「霊夢……か、まったくあの子ったら、私の魔界を大分荒らしてくれたから……大変よね」
「ええ、でも今は御覧のように平和そのものです」
「そうね……この景色も皆も私の大切な物、もう失いたくない」
「はい、私も同じ思いです」
「さぁ、戻ってこの手紙読んでみましょう」

部屋に戻り2通の手紙を机の上に置くと
神綺の後方で夢子がそわそわしているのが感じ取れる。

「……夢子ちゃん、人の手紙をそんな覗き方は品がないわよ」
「私が手紙を気にしているように見えますか?」どこをどうみてもそうとしかと言いそうになる。
「……声に出して読んであげるから離れなさいな」

 まずは霊夢からの手紙を読み出す。
楽しみは後にとってゆっくりと楽しむ、そういうタイプだ。


「神綺、あなたまだ魔界の住人の統率取れてないの?
幻想郷にやたらとあんたの所のやつがうろついてるのよ
妖精と飲みだしたり、妖怪と戦うとかやりたい放題
結構強いからさらに始末が悪い
また問題を起こすようなら私がそっちに乗り込むから覚悟しておいてよ」

「……だってさ」やれやれという表情を夢子に向ける。
「そうですか」落ち着いた表情とは正反対の雰囲気を身に纏わせて作業を続けている。
「ゆ、夢子ちゃん、落ち着いてね、ね」
「……そう言えば、神綺様もお変わりになりましたね」


…………

「……そうかしらね」

 お茶を飲み一息つき呟くと昔はどうだったろうと思いを馳せる。

◆    ◆    ◆     ◆    ◆    ◆    ◆     ◆


「神綺様、こちらの防衛は私にお任せを……神殿にお戻り下さい」
「夢子、あなただけに任せて私がのうのうと神殿に篭れると思って?」

 そう言うと、目の前の魔物を神綺は次々と砕き先陣を切って飛び込んでいく。
魔界を作って数百年、環境が安定してくるとこの地を手に入れんと多くの怪物が押し寄せた。
神綺以下、夢子ら多くの精鋭が防衛、攻撃を日々繰り返していた。

「まったく……こいつ等、魔界を手に出来ると思ってるかしら」怒気を持って呟く。
「神綺様がお手を煩わせるまでもなく始末したい所なのですが、何分数が多すぎますね」
「良いのよ、あなた達を傷つけようなんて私が許さないから」
「…………」夢子はその言葉の意味が危険すぎるような気がしてならなかった。



 そして、新たに現れた魔物との戦いに夢子達は向う。

「今日は神綺様はおられない、私達だけでここを守り敵を撃破する、油断するな」

 神綺は門の守護に参加しており、そのタイミングで別の場に魔物たちが現れていた。

戦いは日が傾き、より激化した戦場を夢子は駆け巡り多くの敵を切り捨てていた。
そして、戦っている者達の中に二人の子供を目にする。

「マイ、ユキ、何故ここにいる!」目の前の敵を切り捨て近くに居たユキの前に飛ぶ。
「夢子様、私達だって戦えるよ」夢子を見てそう語る。
「そういう事を言っているのではない、まだお前達はここにいてはならない」
 
 夢子はこの二人をなんとか無事に戻らせないと取り返しのつかない事になることを感じた。

 だがその時……悲鳴と共に視界に地面に叩きつけられる人影が映る。

「きゃぁ!!」マイだった。

 魔物の放った攻撃がマイのわき腹を抉りその勢いで体勢が大きく崩れ地面に叩きつけられる。

「マイ!!」夢子は体中の血が引くのを感じた。
「いやぁぁ!!」ユキは空気を切り裂くような悲鳴を上げると糸が切れた人形のように倒れこむ。

 夢子も力が抜けそうになるのを気力で抑えるとすぐさまマイを拾い上げユキを抱えると街に飛ぶ。
眼下には魔物に押され気味の味方が見えた、だが、戻る事は出来ない。
夢子の腕の中で弱ってゆくこの小さな命を救う、それだけが今の夢子の望み。
 
 (皆、私が戻るまでどうか……お願い)そう願うだけである。

……
…………
 
 街に着くと神綺が門での戦いを終え、夢子達の元に向うつもりだった。

「夢子、どうし……!!」神綺は夢子の抱えるマイを見た瞬間言葉を失う。
「神綺様、すいません! マイが……マイが」

 まだ辛うじて脈を打つマイを神綺の前に差し出し
「マイをどうかお願いします」夢子は踵を返し飛び立とうする。

「夢子……あなたは……いえ、私が悪かったわね、
マイはもう大丈夫、傷は治したし安静にしておけば問題ない」場の空気が恐ろしく冷たくなる。
「し、神綺様……も、申し訳……!」言葉が出なかった。


 
       ゆ る さ な い



「……よくも私の子供達を」その目には狂気とも言える光が宿っていた。

 夢子が声を出そうとした瞬間には、すでに神綺は居なかった。
夢子は門番に二人を任せると再び戦場に飛ぶ、その表情は不安を色濃く示していた。

そして、その不安は形としてそこに広がっていた。

戦場は夢子が居なくなった事により、統率が乱れ魔界の精鋭の多くは傷つき倒れ
多くの死者も出ていた。

それ以上に相手の魔物達の死体であろう肉塊があたりに散らばる。
そして、その先に見える人影こそ神綺であった。

数多くの魔物の返り血を浴び、その赤き服をより赤く染め次々と命を奪う。
夢子はここまでの力を振るう神綺を見たことはなく、震える体を支えるのが精一杯であった。

「あら、早かったのね、夢子……もう大丈夫よ」月の光が赤く染まる姿を照らしていた。
「しん……き様、おやめ下さい……もうこの戦いは終わりです」
「あら、まだこいつ等は生きてるの、殺すまで終わらないのよ」再び残った魔物を見据え呟く。
「嫌です、あなたのこんな姿を私は見たくありません」心の底から声を張り上げる。

「……あなたはどんな私を見たいと言うのかしら?」
不機嫌そうにそう呟きながら振り向く、そして今度は神綺が言葉を失う。

 そこには耐え切れず泣き崩れる夢子が言葉にならない言葉を発していた。

「わ、私は……力に溺れず……優しいあなた……
 こんな破壊に心を囚われた姿は望み……ません」
「ゆ、夢子……」
 
 神綺はこう思っていた。

私が魔界全てを守り、その外敵のすべてを力の限り破壊すれば皆、私に笑顔を見せてくれる。
それこそが魔界を造り、育ててきた私に課した使命だと決めていた。

しかし、この子はそれを望まず、ただ優しい私に居て欲しいと望んでいたのだと。

「…………解ったわ……わがままな子ね」ふっと、力を抜くと神綺はもう一度だけ魔物を見据え呟く。

「お前達、もし……またこの地に踏み入れるのなら私だけじゃない、全ての魔界の者が迎え撃つ
それがどういうことか解らない愚か者ならもう何も言わない、去れ!!」

そういい終わるとまだ涙が止まらない夢子の元に降り立つ。
返り血に染まる自らの手に戸惑いながら語りかける。

「夢子、ごめんなさいね……私は私があなた達の分まで全てをすればいいと思っていた
でも、それはあなた達の存在を考えない独りよがりだって解ったわ」
「神綺様……」夢子は顔を上げ神綺を見上げる。
「ほら……もう泣かないの、あなたの泣き顔なんて見たくないわ」そう優しく微笑む。
「し、神綺様」そしてまた泣き出す。
「あらあら」思わず手を差し出しそうになるが自らの手を見て躊躇う。
そこに夢子は自ら神綺に飛び込む。
「あぁ! 駄目よ夢子、血で汚れちゃう」
「いいのです……これは神綺様が私達の為に戦った証です」
「……」そう聞くと躊躇いながらも夢子を優しく包む。


◆    ◆    ◆     ◆    ◆    ◆    ◆     ◆


「神綺様? 神綺様、起きてますか?」物思いに耽りきった神綺を呼んでいた。

「あの時の夢子ちゃん、可愛かったわ~」
「な!? 何を思い出していらっしゃるので?」動揺を隠さず大げさに引く。
「昔の私の事よ、そう……昔を、ね」そう呟く表情は優しかった。
「そうですか? では、もう一通の手紙を」
「アリスちゃんね、どれどれ」

 ぱらっ

「神綺様、お元気ですか?…ってこれだけ?」
「あの子らしいじゃないですか、そっけないですけど、元気なのか心配してるのですよ」
と、フォローを入れる。
「…………」落ち込んでいるのが目に見える。
「ほ……ほら、神綺様宛てに色々言いたい事があったのでしょうけど、あの子表現が苦手ですから」
精一杯のフォローも追加する。
「そ…………そうよね、今度会いに行ってあげようかしら」

「それはおやめ下さい、霊夢にいよいよキレられますよ」
「それは怖いわね……」頭を抱えて顔をしかめる。

「……では、皆が幻想郷に迷惑をかけない方法を考えましょうか」
「そうね……今度皆に話し合いの場でも用意してくれるかしら?」


「それが神綺様のお望みであれば、喜んで」

 そう答える夢子は義務的な受け答えをしながらも柔らな笑顔を浮かべていた。
また旧作、東方怪綺談のキャラで投稿させていただきました。
もうちょっと書ける幅を増やさないといけないとは思うのですが
本当に難しい物ですね。
風月灯篭
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.600簡易評価
10.60名前が無い程度の能力削除
ちょっと表現が稚拙なのと、全体的に短いのが気になりました。もう少し読んでいたかったので残念です
11.無評価風月灯篭削除
コメント頂きありがとうございます。
表現がなってないのは勉強不足でありました、改めて勉強したいと思います。
短いのは内容を練り込み多くを作れないのが同じようにまだまだであったと思います。

自分なりの勉強をして投稿したものでしたが
総合的にも部分としてもまだまだであるようで
より良い物を書ける様勉強して改めて投稿できる物を作りたいと思います。