三妖精が魔法の森の大木から、神社裏のミズナラの木に引っ越してからもう何か月にもなる。
彼女らは時々巫女や他の妖精などに悪戯を仕掛け、ある時は成功して相手が慌てふためく様を見て笑ったり、失敗してお仕置きされたりと言った、平凡だが楽しい毎日を送っていた。
しかし、わずかな綻びが、彼女たちに試練を与えることになる。
「ルナ、スター、早く起きなさい、ご飯冷めちゃうわよ」
サニーミルクが寝室でまだ寝ているルナチャイルド、スターサファイアを起しに行く。
最近二人は寝坊することが多い、妖精でも最低限の生活習慣は守って欲しいとサニーは思っている。
「ふわ~あ、サニーおはよー」
スターがあくびしながら言う。その態度にサニーは少し頬を膨らませた。
「ルナが時々夜の散歩しているのは知ってたけれど、スターも行くようになったの? 私だけ仲間外れみたいじゃないのよ」
ルナが弁解した。
「だってサニー、私とスターは夜に輝く天体の精だし、それに昼夜逆転の太陽なんて洒落にならないわよ」
「ルナがトロいのはしょうがないとして、スターまで寝不足で鈍くさいと調子狂うわ」
「そんなにカリカリしなくてもいいじゃない、サニーが夜すぐ寝てしまわなければ一緒に散歩できるのに」
その日、三人は人里で悪戯をしたが、妙に連携が取れず、すぐに上白沢慧音にばれてお説教を食らってしまった。
ようやく帰らせてもらった夕方、サニーとルナはお互いを責めあってしまう。
「まったく、サニーがちゃんと姿を消さないから」
「ルナが必要以上に音を消すからでしょ」
スターは口論になる二人を面白半分に見ていたが、やがて口をはさむ。
「サニーが姿を消す能力をがんばり過ぎて、その辺にいた人間の姿まで見えなくなってしまったのが原因だと思うな、それであの白沢に見つかったのよ」
「もう、スターまで私のせいにするわけ? やっぱり太陽は月と星を隠すから嫌いなの?」
「そういう意味じゃないわ」
「私の事が邪魔なのね」
「違うったら」
サニーは苛立っていた。その日の晩ご飯は少し気まずい雰囲気だった。
その晩、サニーはベッドの中で眠ったふりをしながら、二人が出かけるのを待つ。
途中本当に寝てしまい、はっとして目を覚ますと、すでに二人の姿は消えていた。
自分たちだけ夜の散歩を楽しんでいるなんて許せない。サニーはベッドを出て2人を追う。
満月が森を冷たく照らしている。別に夜空を見た事が無いわけではないが、陽が落ちてからはめったに外に出る事が無いサニーにとって、世界の異なる側面に驚きと神秘を感じた。
夜、もともとあまり縁がない、世界の半分。
「はっ、見とれている場合じゃなかった、二人を探そう」
大体の見当をつけて、羽で飛ぶのではなく、足で追いかける事にする、空を飛ぶと見つかると思ったからだ。
だがまだ暗さに目が慣れていない、地面に浮き出た木の根のせいで柄にもなく転んでしまう。
「いったぁ~い、こういうのはルナの役目でしょ」
誰もいない闇に向かって悪態をつく、が誰も応じる者はいない。一人芝居をしても仕方がないので追跡を再開しよう。
足を滑らせないように慎重に神社の石畳を降り、小川に出ると、ルナとスターの二人が靴を脱ぎ、足を真っ暗な水面につけてばちゃばちゃ動かしているのが見えた。
なんだか楽しそう、サニーは疎外感を感じて少し目が潤む。
自分もそこに行って、夜の散歩に混ぜてと頼めば二人はどう反応するだろうか。
露骨に拒絶される事はなくても、内心夜の天体である月と星の逢引を邪魔されたと感じるのかもしれない。
サニーには夜の空気は冷えるから、とか言ってやんわりと追い返されるかも知れない。
心に黒い染みが生じ、紙に垂らした墨汁のようにだんだんと広がっていく。
二人はとても楽しそうだった。
本来、私とルナが喧嘩したり苦労したりしているのを、あの子はクールに傍観して自分だけ楽をしたりする、その点では私とルナは対等だと思っていた。
けれど夜は二人の共通の時間と言える。
今夜ほどルナに優しく笑いかけるスターなんてサニーは今まで見た事が無かった。
もしかして、二人にとって私は邪魔な存在だったんだろうか?
それ以上二人を見るのが辛くなり、サニーは静かに来た道を引き返した。
スターが彼女のいた方向を向いた時にはすでにその姿は無かった。
「スター、どうしたの?」
「ううん、何でもない」
次の日、サニーは朝から荷物をまとめ出した。
二人が何事かと尋ねても彼女は黙々と作業を続け、何度も尋ねるとようやく低い声でぼそぼそと答えた。
「私、元の家に戻る。あとは二人で仲良くやって頂戴」
「どうしたのよサニー、何があったのよ?」
突然のサニーの変貌にルナが驚いている。
サニーは二人の方を向いて吐き捨てるように言う。
「ゆうべはお楽しみだったわね、私なんかいなくてもやっていけるでしょ、月と星、夜の住人同士だもんね」
「サニー、じゃあやっぱり昨夜の気配は……だったらなんで一声かけてくれなかったの?」
「だって、仲良くやっている所を邪魔したら悪いでしょ。はい、これ餞別のお酒」
自分が作っていた酒をテーブルに置き、サニーはドアを乱暴に開け、出て行ってしまう。
二人は茫然と見送っていたが、はっと我に返って追いかけた。
「サニー待って」
「サニー、話し合いましょう」
魔力の気配が濃い暗い森の中、サニーはその影響をものともせず、落ち葉や枯れ枝を踏みしめ、ずんずん歩く。
ルナチャイルドが慌てて追いつこうとする。
「ルナ、気をつけないと転ぶわよ」
スターサファイアの言葉も聞かず。ルナは走り続け、案の定転んでしまった。
「ほらほら、言わんこっちゃない、動かないで」
スターが土のついたルナの顔や服をハンカチで拭く、その姿はまるで世話好きの姉とおっとりした妹を思わせる。
綺麗にしてもらったルナが髪に残った土を払うため、軽く頭を振ると、彼女の視界にちらと、かなり遠くにだが二つの影が見えた。どこかで見覚えがある……ような気がした。
「ほらルナ、サニーはもう行っちゃったよ」
ルナはもう一度首を回して、その影が見えた方向を見ようとしたが、そうする暇もなく、スターが彼女の手をひっぱった。もう一度影の見えた方向を向くと、影はすでに消えていた。
「見間違いだったのかな、でもあれは確か……」
「どうしたの? さっさとサニーの所へ行きましょう」
スターがルナを急かす、以外に焦っているようにルナは感じた。
「スター、誰かが私達を見ているような気がする。サニーを見つけたら今日はもう帰ろう。いいえ、元の家に隠れたほうがいいかも」
「変なこと言わないで、そんな気配は……あっ、動く者がふたつ……」
スターはルナの顔を見る、鈍くさいと言われるルナも、ただならぬ気配に顔を青くしている。次の瞬間、堰が切れたようにサニーに合流すべく駈け出す。
走っている間、突然スターが訳のわからない事を叫び、ルナをさらに不安にさせた。
「嘘!? そんな馬鹿な!」
「どうしたの?」
「あの距離をどうやって!?」
「だから、どうしたのって聞いてるのよ?」
「ルナ、一旦隠れて……」
二人の前に、先ほどの影が一つ、降り立った。
「追いかけてくるかなあ」
がらんどうのかつての家。一人の妖精が住むには少し広すぎるその空間で、サニーは膝を抱えて座り込み、妖精には不釣り合いな物思いにふけっている。
この家にはいろいろな思い出がある。野槌の子供にツタだらけにされたり、この辺でかくれんぼをしていた氷の精を捕まえ、一緒に悪戯をしたり、……つい最近の事だったのに。
「やっぱり寂しいよ」
かつての家はしんと静まりかえっている。
荷物を持って、再び神社裏の木の家に帰ろうとも思ったが、まだ踏ん切りがつかない。
もし万が一、二人が自分の事なんか気にせず、仲良く過ごしているところを見てしまったらと思うと怖い。
おそるおそる窓を見る、誰も来ない。もし自分の後を追いかけてきたのなら、そろそろ来てもいいはずなのに。
ふと、サニーはなんとなく胸騒ぎがして、ドアを開けた。何かが近くで起きている気がしたのだ。外の空気を吸うと、その予感は一層強くなり、来た道を走って戻る。
「何なのよ、この予感」
行く手を阻むクモの巣を、強引に手で払いのける。
途中で枯れ枝に引っ掛かり、スカートの裾が少し破れる。
地面に突き出た木の根に足を取られ、転んでしまう。
「ああもう、何だってこんな所に」
焦燥感に駆られると、何気なく超えていたそれらの障害物がひどく邪魔なものに見え、サニーを苛立たせた。
彼女は自らと同じ自然の一部であるそれらの障害に呪いの言葉を吐き、服の汚れを気にせず走る。
長く感じた数分間のうち、ルナの姿がようやく見えた。彼女はサニーの顔を見るや否や彼女に駆け寄り、泣きながら訴える。
「サニー、スターが、スターが!」
「スターがどうしたの」
「目の前に紅魔館のメイドがいきなり現れて、私を捕まえようとしたの。それで、スターが私を助けてくれたんだけど、後ろから吸血鬼がスターを羽交い絞めにしてそのまま消えてしまったわ。最初からスターが目的だったみたい」
「紅魔館の吸血鬼とメイドにさらわれたのね」
「うう、そうなの、奴ら言っていたわ、運命を操る妖精はいらないとか言ってた。サニー、助けに行かなきゃ」
「ごめん、私が勝手な事をしたせいで」
「サニー、謝るのはこっちよ。実は昨日の晩、サニーも夜の散歩に誘おうかと相談していたのよ、いいえ、その晩にサニーも誘うべきだった」
ルナはそう言ったが、サニーはうつむく。
自分がその場にいて、能力を使っていればこんなことにならなくて済んだかも知れない。
それどころか、そもそも家出した自分を追って二人はここまで来たのだ。
今日森へさえ来なければ、こんな事にはならなかったのではないか。
悪戯がばれ、巫女にどんなお仕置きを受けても懲りなかったが、この時だけは、時間を巻き戻せたらどれほどいいか、後悔がせりあがって来る。
加えて、幻想郷において妖精よりもはるかに強い妖怪。
紅魔の吸血鬼はその中でも相当な強さを誇る。
助けに行こうと言ってはみたものの、多難な前途を思い、二人はしばらくの間沈黙した。
しかし、やがて首を振り、ルナが重い空気を破る。
「サニー、過ぎた事は仕方ないわよ。紅魔館がどうしてもスターを邪魔だと思ったのなら、いずれ何らかのやり方で見つけただろうし、それにそんな顔、サニーらしくないわよ、私達のリーダーでしょ」
「リーダー失格よ、私は」
「考えても見て、いくらあいつらが強くたって、私の音を消す力と、サニーの姿を消す力を合わせれば大丈夫よ、私たちをなめるとどうなるか、思い知らせてやりましょう」
そして精一杯の勇気を振り絞り、サニーに笑顔を見せた。
彼女は月の妖精なのに、サニーにとっては自分以上に彼女が太陽のように思えた、見る者の心を温かくする表情。こんな芯の強さがルナにあったなんて、とサニーは思う。
目に輝きが戻る。
「うん、やろう、三人そろったら、またみんなで宴会しましょ」
以前紅魔館に避暑のため侵入した事があったので、だいたいの構造は覚えている。
二人の能力で、壁に持たれて目を閉じていた門番を素通りすることに成功する。
「うう、お腹すいた」門番の腹がぐうと鳴った。
(まずは第一関門突破ね)
サニーが緊張しつつ、妖精独自のサインをだして微笑んだ。
中庭の誰もいない所でいったんルナの音を消す能力を解除し、小声でルナが言う。
「どうも門番は居眠りしてると言うより、お腹が減って動けないみたいね。ろくなもん食べさせてないのかしら」
「いまはスターを探すことに専念しよ。たぶん連中も、まさか攫ったその日の真昼間に侵入するとは思ってないはず」
再び音を消し、紅魔館内部に通用門から侵入できた。
メイドの妖精たちが二人を通り過ぎていくが、誰も気づいてないようだ。
厨房らしき場所では、数人の妖精メイドと、咲夜とか言うメイド長が料理の支度をしていた、たぶん今なら注意も薄れているだろう、姿を消した二人はチャンスを喜んだ。
「咲夜、ご飯はまだかしら」
スターをさらった張本人であるレミリア=スカーレットが部屋のドアから唐突に出てくる。
(ちょっと、なんでいきなりあの吸血鬼が来るのよ)
(ルナ、落ち着いて、私達の姿は誰にも見えてないわ)
二人は緊張したが、見つかりはしないはずだと自分に言い聞かせ、息を殺して通路の隅でじっと通り過ぎるのを待つ。
レミリアは口を開いてなにか声を発したが、向こうには聞こえていないようだ。
二人にもレミリアの発する声が聞こえなかった。
ただ口をパクパクさせているようにしか見えない。
(ルナ、やばい、ルナの能力だけ解除して)
ルナチャイルドは音を消す能力を持っているが、その効果が及ぶ場所は一切の音を消してしまうので、音を出しながら近づけば発見されてしまう可能性がある。
「……くやー、咲夜、ご飯はまだかしら?」
「お嬢様、もう少し待てないの?」
メイド長の少し呆れたような声が聞こえた。
カリスマあふれる吸血鬼も、館の中では普通の少女と変わらない、メイド長もまるで母親のようだ。
悪魔でも女の子。そのように思えなくもない。
だが今はそんな事を考えている場合ではないのだ、存在がばれたかも知れない。二人のあどけない顔に冷や汗が浮かぶ。
「まあいいわ、それと、あの捕まえた妖精、どこに監禁したの?」
「ええ、妹様の地下室に入れました」
「そう、星の光さえなければ、あの妖精も星をいじって運命を変えることもできない、運命を操れるのは一人でいいのよ」
「そうですね、妹様も良いおもちゃができたようですし」
二人は声を出しかけた口を慌てて押さえ、顔を見合わせた。
いまおもちゃと言ったか?
噂によれば吸血鬼の妹は、その高い能力ゆえに狂気に陥り、今も館から出られないらしい。
その妹の遊び道具にされてしまうのか?
二人は、手足をちぎられもてあそばれるスターの姿を思い浮かべ、背筋が凍りついた。
前言撤回、女の子でも悪魔だ。
レミリアが去り、咲夜が食堂へ戻った後、二人は互いにうなずき、地下室を探す。
程なくして階段が見つかった。
(ここじゃないかしら?)
(きっとそうね、行きましょう)
石造りの階段を数段下りた先に、暗闇がぽっかりと口を開けていた。照明設備はあるようだが、光は消えている。
この下に狂気の妹とスターが閉じ込められた部屋があるのだろうか。
(ルナ、先に行って。暗闇はあんたが得意でしょ)
(いやよ、夜の闇とは違うわ)
(う~んしょうがないな~)
サニーを先頭に、一歩ずつ階段を下りていく、暗いだけでなく湿った空気が肌にまとわりつき、サニーは不快に感じた。ルナもこんな場所に長居はしたくないだろう。足を滑らせないように気をつけながら10段ほど降りると平らな場所に出た。踊り場だった。そこで方向を変え、やはり慎重に一段ずつ陽の光から遠ざかっていく。
同じ分だけ降りると、今度こそ階段は途切れた、通路が一直線に広がっているのがかすかに見える。二人は不安と一刻もはやくスターを助け出したいと言う焦りがないまぜになった気分で歩き続ける。
「ルナ、扉が見えたわ」
「この中にスターが……、鍵は掛かっているのかしら」
「鍵を壊せるかな、お~いスター」
扉を軽くとんとんと叩き、小声で呼び掛けてみるが反応はない。
「サニー、思いついたんだけど、きっと誰かが食事を運んでくるだろうから、それまで姿を消して隠れるのはどう、怖いけど」
「う~ん、今のところ私達の能力は破られてないようだし、それが一番かも」
「そこまでよ!」
突然の声にびくりとして振り返ると、レミリアが両手に腰を当てて立っていた。
そのすぐ背後では咲夜が腕を組み、二人の妖精を威圧するように見下ろしている。
いつの間にここまで接近したのか?
ここでは太陽の光も月の光も届かない。傷を負っても回復できない。
「きっと来ると思っていたわ、残念だけど、私と能力がかぶる者は不要なの。妖精には分からないだろうけど、夜の王の威厳を取り戻し、再び人妖を畏怖させるにはね」
「サニーを返して! スターは運命を操ってどうこうする気はないわ」
ルナが叫んだ。しかしレミリアは首を横に振る。
「馬鹿ね、意思じゃなく、能力が問題なの」
「ルナ、ここは戦うしかないわ。スターを助け出せる状況にしなきゃ」
サニーが決意した。レミリアは目を細め、嘲笑の顔で咲夜を見上げる。
「あははは、ねえ咲夜今聞いた? 今世紀最高のジョークよ、妖精風情がこの私を倒すだと? しかも自然の光のないこの場所で?」
(ルナ、あいつらは油断してる、そこにつけ込むすきがあるわ。地下では陽と月の光で回復できないから、速攻でいくわよ)
「無意味な作戦会議は終わったかしら? そろそろ一回休んで欲しいんだけど」
サニーが自身にため込んだ太陽のエネルギーを、レミリアに向け放出した。
『光符 バイタルチャージ』
太陽光を真正面から浴びたレミリアは袖で顔を隠し、数歩後ずさり、たじろいだ。
太陽光を浴びても消滅するわけではないが、それでも力が出なくなる事には違いない。
レミリアは地下室で太陽光を浴びせられるとは思ってもみなかった。
意表を突くことに成功した。
「ぐっ、ただの妖精が」
「お嬢様!」 咲夜が能力を発動しようとする。
「させないわ。光符……え~っとなんだっけ、とにかく狂気の月光!」
ルナも自身に蓄えていた月光を咲夜の目に指向させ、解き放つ。
「ああっ」
咲夜はその光をまともに目に受け、瞳が赤く変色した。
「こんな目くらましで、咲夜! 分からせてやりなさい」
だが咲夜は時を操る能力を出せず、手に持ったナイフをその場に落とし、膝をつく。
「咲夜!」
「ああ、お母さん……ごめんなさい」
瞳孔の開いた真っ赤な目で、うわごとをつぶやいている。
「咲夜、しっかりして」
レミリアが咲夜の体に触れようとすると、咲夜はその手を振り払い、訳のわからない事を叫びだし、床でのたうちだした。
「いやああああ、許して、ぶたないでえっ、痛いよう、怖いよう」
咲夜は叫ぶと両腕で自分を抱きしめながら床にうずくまり、やがてひきつけを起こし、ぶるぶると震えている。
レミリアは必死で威厳を保とうとするが、口がわなわなとふるえるのを止められない。
「咲夜! これは過去の記憶?」
狼狽するレミリアに、ルナが冷たく言い放った。
「スターを返しなさい、これ以上狂気の光を浴びたら、そのメイドは回復できないわ」
「くっ、ただの妖精が」
「その妖精を恐れて攫ったのは誰かしら?」
「ふざけるな!」
レミリアはスペルカード宣言もせず紅い弾幕、スカーレットシュートか、スピア・ザ・グングニルか、それを用い怒りのままにルナに叩きつけた。
「きゃ」
妹を閉じ込めている扉に叩きつけられ、ルナは気を失った。咲夜はまだ錯乱している。
その隙にサニーはせめてルナだけでもと思い、彼女を抱えて階段へ飛ぶ。
しかし、追ってきたレミリアの体当たりを受け、一瞬意識が飛ぶ。
全身の痛みとともに意識が戻った時、サニーはレミリアの前で床に倒れ伏していた。
「咲夜を一瞬で戦闘不能にしたのは敵ながらあっぱれ、それに同じ夜の住人である事に免じて、その月の妖精はあの星の妖精と同様、飼殺してやるわ、でも……」
倒れたルナの首を片手で掴んで持ち上げた姿勢のまま、レミリアはもう片方の手をかざす、
床がひび割れ、地底への入口が姿を現した。光も何もない、ただの闇が広がっている。
「宿敵太陽の申し子であるお前には、地の底に落ちてもらう。永遠に陽の光を浴びられず、孤独と悔しさの中で朽ち果てるがいい」
蹴りあげられたサニーはなすすべもなく、奈落へと落ちていく。
(みんな、ごめん、私がもっと素直になっていれば……もう一度、一緒に悪戯したり、お酒を飲みたかった……本当に、ごめん)
もう太陽のエネルギーは残ってはいない。無限の闇が彼女を包み込む。
(一回休みとかじゃなくて、死ぬっていうのはこういう事なのかな)
やがてその思考すらフェードアウトしていく。
この日、太陽の子が幻想郷から消えた。
八咫烏の力で復活したサニーが火薬増量で活躍するRX編を書くべき。
何か足りない気がします。
続編希望。
てか、スターに運命を操るような能力なんてあったっけ?
せいぜいものの動きを探るレーダー的な能力があるくらいで、星をいじったりするようなことはできないはずだと思ったけど。
これが本当にレミリアの単なる早とちりでやったことだとしたら、タチが悪すぎる・・・誰も報われない。
おかしな表現もなかったし、読みやすかった。
ただ、ネタが…
オチがついたようでついてない感。
切るにしては弱いラストだった。
あと、蛇足ながら。
ゾンビフェアリーは単に、ノリの良い妖精がお燐に付き合ってああいう格好してるだけであって、普通に生きてる。
死んだ妖精がそうなるもんじゃない。
念のため…
替え歌でメインテーマもBLACKとRX二つ分作りました。
スターサファイアの能力については、スターが星の配置をいじくれば、誰かの運勢も変化してしまう、そういう解釈を思いつきました。
あと、ゾンビフェアリーの設定をろくに知らずに書いたので、続編ともどもオリジナルの解釈で書いています、すみません。