「お姉ちゃん」
…え?
お姉ちゃん。目の前にいる古明地こいしは確かに言った。
でも、それがあたいであるお燐に対して言ってるのはどういうことなの?
「…うにゃ?」
一拍遅れて、燐は周りをきょろきょろと見渡す。
この広い地霊殿のこと、もしかしたらさとりがどこか視界の端にいたのかもしれないと考えたからだ。
しかし、いくら探してもさとりの姿は見つかることはなく、その考えも無くなった。
燐がそうしてる内にも、こいしは燐をじーっと見つめている。どうやら聞き間違いでもないらしい。
「あたいですか?」
自分を指さしてそう言う燐。その表情は少し不思議そうな表情である。
こいしは燐を見ると、けらけらと笑って言った。
「あはは、それ以外にいるわけないじゃない?お姉ちゃん!」
…ああ。あたいは夢でも見てるのかな?
頭を抱える燐。まあ普通に考えたらどんな人でもそうなるだろう。
自分は姉でもないのにお姉ちゃんと言われる。その奇妙な感覚は言葉に形容し難い何かがあるのだ。
現在の状況をどうにかして整理しようとする燐だが、こいしはその暇さえ与えてくれない。
「お姉ちゃーん♪」
むぎゅー。
「ひゃ!?こい、こいっし様っ!?…いひゃい…」
抱きついてきたのである。これにはさすがの燐もパニックになってしまった。
しかも勢い余って舌を噛んでしまったようで、ひーひーと舌を出している。
燐は普段さとりの膝の上で寝ていたり膝に頬ずりをしていたりと中々大胆な行動をしているのだが、こうしたことにはどうも弱い。
自分でするのは気にならないが、他人にされると物凄く気にするタイプなのである。無自覚怖い。
「ほらほら、妹が甘えたがってるんだよー?お姉ちゃんならお姉ちゃんらしくしなきゃ」
「え、えっと、そのー。こいし様、あの、あのっ」
「…ぶー。時間切れでーす。順番的に次は私がお姉ちゃんを可愛がる番だよね?」
「ま、待って。待ってくださいこいし様っ!」
ばたばたと両腕を上下に振りながら慌てる燐に、こいしはむうと少し頬を膨らませて見上げる。
その瞳には、「どうして止めるの?」という子供のような純粋な気持ちがありありと込められていて。
まるで急かされてるように感じた燐は、思わずう、と躊躇してしまう。
こいしの眼を見て、もしかしてここは止めるべきじゃなかったのかもという悪寒がしたのだ。
機嫌が悪くなったこいしはある意味ではあらゆる兵器よりも危険というのを燐は分かっていた。無意識に行動するため止めるにも止めれないのである。まさにサイレントK。
こいしはラブリービジターでもあるが、もしかしたら裏の顔があったりするのかもしれない…。
と、燐が少し長めの長考をしてると、猫の耳にこいしが小さく何かを呟いているのが聞こえてきた。
「…ち…なな…ろ…」
「…こいし様?」
「ごー…よーん…さーん…」
少しずつ減っていくのは、数字。
そう、こいしはいつの間にか勝手にカウントダウンを始めていたのだ。
それが0になったらと思うと急に寒気と悪寒がした燐は、とにかく何かを言おうと手を伸ばした。
「にー…いーち…」
「え、えっと!…もう、もうこいし様の好きにしちゃってくださいっ!」
「…言ったね。じゃあ私の好きなようにするからね?」
…ええいままよと思うがまま叫んだら、何故かこんなことになってしまっていた。
え?もしかしてあたいってまぞなの?まぞひずむなの?
というか、若干無意識に言ってしまった感があるけれど、もしかしてこれがあたいの本心なの?
それが本当か否かと苦悩する燐を尻目に、慰めるように頭をなでなでしているこいし。その表情は、先ほどとはうって変わってにこにこしていた。
「にゃうう…こいし様。もしかしてあたいってネコなんでしょうか…」
「そうだねー…うーん。…まあそれはいいんじゃない?」
「にゃが、はぐらかされたっ!?」
「あはは。まあお姉ちゃんはかわいいから皆が皆弄りたくなるんじゃない?」
「…今もこうしてこいし様に弄られていますけどねー…」
「…ほら、そんなお姉ちゃんにはもっとなでなでしてあげよー」
なでなで。なでなでなでなで。
ごまかすように何回も燐の頭を撫でるこいし。どうやら少しばかり自覚があったらしい。
燐としては本当は一言か二言文句を言いたかったのだが、撫でられるのが普通に気持ち良かったので不問にすることにした。
何だかんだ言ってもこいしは怖いし、燐も結構甘いのである。
「にゃうー…でも、いきなりこいし様がお姉ちゃんだなんて言うからびっくりしちゃいましたよ」
「ふふ。まあ普通はそうだよね、いつもはお姉ちゃん以外には全然言ったりしないから」
「…あ。それで思い出したんですけど、どうしてあたいをお姉ちゃんって言ったんですか?」
「んー、じゃあお燐はお姉ちゃんって言われて嬉しくないの?」
こいしの質問返しに、んーと小さく唸る燐。
そして数秒した後、少しはにかみながらこいしに向かって言った。
「いやー…その、えへへ。あたい、あんまりお姉ちゃんって言われたことー…ないですから」
言い終わった後、燐は小さく「お姉ちゃん、お姉ちゃんかぁ…」と確かめるように何度も繰り返していた。しかも見ただけでも分かるくらい、幸せいっぱいに顔を綻ばせていて。
そう。実は燐、お姉ちゃんと言われることだけで見ると嬉しいのである。
今まではその外見や明るい性格が色濃く出たのか、ゾンビフェアリーや猫仲間からは姉さんか姉御としか呼ばれたことがなかった。
だから今回このようにお姉ちゃんと呼ばれることは、燐の中ではちょこっとした憧れだったのだ。
「へー、お燐って本当はお姉ちゃんって呼ばれたがってたんだぁ…」
こいしはその様子を見ると、無意識に燐のおさげに手をかけ、黒いリボンを外してしまっていた。
はらり、とまとめてあった髪が解け、髪が垂直に垂れていく。
「あれ。…こいし様、どうかしたんですか?」
すると、リボンが無くなっていることに気づいた燐が首を傾げた。解けた髪が肩に少しかかり、ゆらゆらと辺りを彷徨っている。
ずっと長い間まとめていたのか、元々はストレートだった髪はまるでウェーブをかけたかのような状態になっていた。
それを見ていたこいしは、ふと思ったことを燐に告げる。本当に素直な感想だった。
「ううーん…こうして見ると、お燐って本当に私のお姉ちゃんみたい!」
「…な、にゃ、にゃにを言いますかこいし様っ!?」
「だってウェーブをかけてるところなんか私そっくりだし、何だかお姉ちゃんみたいな雰囲気だなーって思ったから!」
「お、お姉ちゃんですか?あたいが、こいし様のお姉ちゃん…」
「そう。私が妹だったらおり…お姉ちゃんは不満?」
「いえ、いえいえ。あたいはその、さとり様に仕える身でしてそのー…お姉ちゃんとしては務まらないような気がするんですけど…」
「もー、お姉ちゃんってば。こういう時はそんなこと考えないの、ね?」
ぎゅむむ。
「にゃ…ぅー…。…どうしてあたいが恥ずかしくなるのかなぁ…」
こいしに抱きしめられながら、ぽっと顔を赤くする燐。
でも、悪い気はしない。むしろこんな感じも意外と悪くないと、そう思った。
それと同時に、こいしのような妹がいる姉のさとりのことを、ちょっとだけ羨ましくも思ったのだった。
家族っていつもこんな感じなんだろうな、と。
燐と別れた後、こいしは今度は空に声をかけた。
空はソファに座っていて、くつろぎの時間だった様子。空らしいのんびりとした状態である。
こいしはそんな空に近づき、燐の時と全く同じように言ってみた。
「お姉ちゃん」
「…にゅ。私のことですか?」
燐と違い、空はまっすぐこいしに向かって言ってくる。
…もしかして、おくうに姉という自覚があったりしたんだろうか。相変わらずこの二人は正反対だ。
こいしもまさかそう返されるとは思ってなかったようで、少々動揺しながらもそういうことと頷く。
それを聞いた空は確認を取るかのように目を閉じ、んーと小さく考える。
やがて静かに目を開けると、ソファに首を置いているこいしに元気よく返事を返した。
「分かりました!よーしこいし、お姉ちゃんに任せなさいっ!」
「どうやってその結論に辿り着いたの!?」
一体どこからどうやってそんな考えが浮かんできたのやら。突拍子のない空の発言に思わずこいしの方がびっくりしてしまっていた。
いつもはびっくりさせる方なのだが、まさかこうしてびっくりさせられるとは。
確か地上に人間や妖怪を驚かせるのに必死な妖怪がいたのだが、その妖怪もこういった芸当を覚えて真似してみたら皆(別の意味で)驚くかもしれない。そう思ったくらいだった。
ともかく。
「…ですけど、お姉ちゃんってどうすればいいのですか?」
ふと、初歩的なことに気がつき首を捻る空。
そもそも空には姉妹という概念をよく分かっておらず、今回のことも割と出まかせで言っていたのだった。
「んー、そうだねー…」
空の疑問にあごに手をあてながら考えてみるこいし。
改めて考えてみると、ちょっと不思議な気分になる。元々当たり前のようにさとりを姉として生活していたので、いざ考えると急には思いつかないのである。
姉とは。姉らしい姉とは一体何か。
こいしは今までの姉のことを思い出す。古明地さとりという実のお姉ちゃんのことを。
少し古ぼけた、セピア色の記憶が蘇ってくる。
幼い頃、何度もぎゅっとされた記憶。ほんわりふわふわ、あたたかったな。
割れものを扱うかのように、優しく頭を撫でられた記憶。撫でてくれる人がいるのって、実は凄くありがたいことに最近気づいた。
自分が眠くなった時、膝を借りてそのまま眠ってしまった記憶。多分今でも、すぐ眠っちゃうだろう。
数少ない、あのころの明るい記憶を思い出していくと、こいしの心にじんわりと温かいものが入ってきた気がした。
「…じゃあ。じゃあさ」
「ええ。こいしさま、私に出来ることなら何でも言ってください!」
しばらく沈黙を保っていたこいしはやがて口を開き、空が座ってるソファにぽすんと腰かけていた。
そのまま少し移動すると、ぴとりと空にくっつく。
どうしたんだろうとこいしを見る空に、こいしは自分の頭を少し押し付けるようにして言う。
その瞳は、ほんの少しだけ潤んでいた。
「…私を、撫でてくれない?」
「ほぇ?こいしさまをですか?」
「うん、そう」
それを聞いた空は分かりましたとばかりに大きく頷き、早速こいしの頭を撫でてみる。
空は頭を撫でている間、前にさとりが撫でてくれた時のことを思い出していて。
とにかく丁寧に、空なりに優しく撫でた。
「ん…にゃふ」
「さとりさまのように、さとりさまのようにー…」
「…むー。お姉ちゃんのようにじゃないの。おくうなりの撫で方をしてほしいな」
「うにゅ?私なりのやり方でいいんですか?」
「うん。ほら、いつもお燐にしてるようなやり方でいいよ」
「わっかりました!こいしさまが言うならお姉ちゃん頑張ってみますね!」
…撫でるのにどこらへんを頑張るんだろうか。
こいしのそんな疑問をよそに、空はちゃっかり少し抱き寄せたりしてきていた。どうやらこれが空なりのやり方らしい。
先ほど撫で方とはまた違い、今度は少しだけ大胆になっていた。
撫でまわして髪を少しくしゃくしゃにしたり、自慢の黒い翼で体を包んでいたり。
多少ガサツでお調子ものだけど、あったかくて大きい手。
だけどそれがまた空らしくって、こいしは何だか嬉しくなっていた。
「ふにぅ。…ん…」
「こいしさま、気持ちいいですかー?」
「うん、疲れた体にはすごく癒されるかも…」
「それは良かったです。…こいしさま、私ちゃんとお姉ちゃん出来てますかね?」
「そうだねー…うん、甘えたくなっちゃうよ。あはは、私らしくないなぁ」
今度暇な時は、おくうに撫でられながらお昼寝でもしてみようかな?
翼と手による同時攻撃があまりに心地よかったので、思わずそう思ったこいしであった。
「うーん、なるほどねー」
空と別れた後、ぴょんぴょんとスキップをしながら廊下を進んでいくこいし。ご満悦の表情である。
それもそのはず、自分のしたいことを誰にも邪魔されず思うがままにことが進んでいるからだ。
相変わらず独自の無意識街道を邁進中である。
しかし、遠くでぱたぱたと聞こえる足音を聞こえたとき、こいしはようやく本来の目的を思い出したのだった。
「…いし、こいし…?」
「おりょ、さすがに来ちゃうかぁ。まあ、そろそろだとは思ったけど」
やや暗がりから現れたのは、こいしの姉であるさとりだった。
廊下を少し小走りで来ていたらしく、やや息が荒くなっている。
普段さとりはあんまり激しく動いたりしないので、割とすぐに息が上がってしまうのだ。因みにこいしはその逆で、地底の妖怪の中でも相当タフな方である。
それにしても性格やら何やら、どうしてここまで姉と正反対になったのだろうか。こいしのちょっとした疑問だった。
「…はあ。ようやく見つけたわよ、こいし…」
「見つけたって、こいしちゃんは普通に歩いてただけだよ?」
「いや、今回のはどう考えてもあなたが原因だと思うわ」
じと、と見つめてくるさとりに、私何かしたっけと首をかしげるこいし。
これまで色々してきたので、どれがどれのことを言ってるとかこいし自身にも分かっていないのである。
とりあえず話を聞かないと分からないので、そのままさとりに話させることにした。
「まあ私が悪いかどうかは分からないけどさ。何があったのかしら?」
「こいし。あなたは私を『お姉ちゃん』と呼んでるわよね」
「うん、そうだよ?当然のことじゃない、お姉ちゃん」
「ええ。…ですけど、燐や空までもがお姉ちゃんお姉ちゃんと想っていたのはどういうこと!?」
…ああ、なるほどね。こいしはさとりの言いたいことがすぐに理解出来ていた。
こいしはさとり以外にお姉ちゃんとは言わない。というか、他に言う人がいたらそれはそれで大問題である。
また、さとりは知っての通り第三の目を通じて他人の心を読み取ることが出来る。
考えてみたらこうなることも普通にあり得たよね。そう思いながらこいしは、さとりの言いたいことを口でまとめていた。
「あー。…つまり、お燐やおくうがずっとお姉ちゃんお姉ちゃん言ってた(想ってた)からお姉ちゃんが自分のことと勘違いしちゃったんだ」
「勘違いかどうかは知らないけど、そんなにお姉ちゃん言われると私照れちゃいますよ?」
「…え?お姉ちゃんも照れることあるんだ…」
「こいし。…それはどういうことか説明してもらいましょうか」
じとー。
「あはは、冗談だよ冗談。お姉ちゃんだって照れたり恥ずかしがったりするものね」
「…もう」
少しむくれながらもそのままこいしを見つめ続けるさとり。
こいしはそれを見て、ふっと自分の本来の目的を思い出した。こんな話は後でも良いのだ。
確かめるように、小声で呟く。
「じゃあ、このお姉ちゃんはどうかなー…」
「…こいし?今何か言った…きゃっ?」
ぽふっとさとりに抱きつくこいし。
さとりは慌てて抱きとめるものの、何がしたいのか分からず首を傾げるばかり。
元々こいしの行動は不安定かつ何を考えているのか分からないので、手を焼くのはしょっちゅうなのだが。
「………」
「んにぅ…んー…」
なので、無言で頭を撫でてみる。
確かにこいしのことはよく分からないものの、さとりにとってはこいしという存在は非常に大事なものになっている。
もう二度と、こいしを悲しませるわけにはいかない。
さとりは自分の中で、そういう決心をしていた。
そのままもう少し撫でたり背中をぽふぽふしたりして、穏やかな時間を過ごす二人。
だが、いつまでもそうしているわけにもいかない。まださとりの疑問は解決していないのである。
さとりはそう思い、撫でるのを止めた…のと同時にこいしがじぃっと見てきた。
聞くなら今しかないだろうと思い、さとりは口を開く。
「…さ、こいし。一体どうしてこんなことをしたのでふ」
ぷに。
………。
「ふぉら、ふぉいし。ほおふふふぁふぁいの」
ぷにぷに。
「ふぉいひー」
むにむに。
「………むーっ!」
ぷくーっ。
にまーっと笑いながら頬をつっついてくるこいしに、さとりは頬を膨らまして抵抗する。
これではとても喋れないではないか。そう思ったさとりのかわいらしい抵抗だった。
それを見たこいしは頬を少し強めに押した後、笑っていた。
勿論くすくす可笑しそうに、だが。
ぷしゅう。
「あはは、お姉ちゃんは本当かーわいいんだからもー」
「…こーいーしー。お姉ちゃんが喋ろうとしてるときに頬つっつこうとしない」
「ごめんごめん。本当のこと話すから、ね?」
「はあ。頼むわよ…?」
ぅー、と小さく唸るさとり。
大分遠回りをさせられてしまったが、これでようやく理由が聞ける。
恐らくそんなに大した理由ではないのだろうが、聞くだけ聞いた方が良い。さとりはそう感じていたのだった。
そして、こいしが口を開く。自分が今回何故こんなことをしていったのかという、その理由を。
「…んっとねー、お姉ちゃん。単純に興味だけだよ」
「興味?…もしかして、たったそれだけのために燐や空にお姉ちゃんって呼んでみたの?」
「うん、そう!」
こくりと大きく頷くこいしに、半ば呆然とこいしを見るさとり。
興味。まさかただの興味だとは思っていなかったのである。
そしてその興味に思いっきり振り回されていたさとりはさとりで、何故だか段々と気恥ずかしくなっていて。
思わず、照れ隠しでさとりはあらんことを口走ってしまっていた。
「…どSね」
「えへへ」
だが、こいしは何故か照れ笑いで返していた。
…せめてそこは否定して欲しかったなぁ…と思ったのはさとりだけではない、もしかしたらここを見ている人の一部もそう思ったことだろう。
それはともかく、である。
「…でも、別に興味だけってわけじゃないんだよ?お姉ちゃん」
「あ、一応まだあるのね…。じゃあ、それを聞こうかしら」
どうやらこいしはお楽しみを後にとっておく派らしい。チャーシュー麺でチャーシューを一番最後にするのと同じだ。
さとりが言い終わると、よくぞ聞いてくれましたとばかりに胸を張るこいし。
…話が早く終わってほしいという考えは、やはり今の姉妹が正反対だからだろうかとさとりはふっと思ったのだった。さとりが単なる物ぐさなだけかもしれないが。
「うん。実はね、お姉ちゃん」
「ええ」
「…ある日ちょっと考えたことでね。もしお姉ちゃん以外が…ううん、さとり以外がお姉ちゃんだったら、一体どんな感じになったのかなって思ったの」
「…私以外がこいしのお姉ちゃんだったら…」
考えてみる。今まで全く考えたことのないことだからこそ、考えてみる。
こいしの姉はさとりでしかない。これは当然のことである。
だが、もしさとり以外の人物がこいしの姉だったら、という仮定をこいしは言っているのだ。
「うん。だから、お燐やおくうに言ってみたの。『お姉ちゃん』って」
「なるほど。…別に私が不満ってわけじゃなかったのね」
「もう、そりゃあそうだよ。今のお姉ちゃんを嫌う理由なんてないもの」
ほう、と一息つくさとり。
実は、こいしが二人にお姉ちゃんと言った本当の理由を知ったとき、もしかしてこいしが自分に愛想を尽かしていたのではないかと内心思っていたのだ。
違うと分かった以上、それは杞憂となったわけで。
さとりは、最低でも嫌われてないということが分かっただけでも今回の話は収穫だと思うことにした。
こいしは続ける。
「…それでね。私は三人をどんなお姉ちゃんか個人的に評価してみたの」
「へぇ。…どんな感じになったのかしら?」
「んっとねー…」
そこで会話を切ると、こいしは目を閉じすうと息を吸い込む。これまでのことを思い出すように。
そしてそのまま、さとりに向かって言った。
同時に、ここでさとりは一つの間違いに気づかされることになったのであった。
今回の話には、もう一つ収穫があったのである。
「―――お燐は、とことん可愛がりたくなるお姉ちゃん。
―――おくうは、何だかとっても甘えたくなるお姉ちゃん。
―――そして、お姉ちゃんはこの二人をぴったり合わせた最高のお姉ちゃん!」
「………え?」
「…やっぱり、お姉ちゃんが好き。お燐やおくうも気分転換には良かったけど、私はお姉ちゃんが一番だった!」
「こ…こいし…?それってつまり…」
こいしは笑った。
昔と全然変わらない、一輪の花のような愛くるしい笑顔だった。
「うん!これからもよろしくね、大好きなお姉ちゃん!」
END?
おまけ。
「かーかーからすがやってきたー♪」
「そしたらねこーがくるりんぱー♪」
「…あれ?何だか機嫌よさそうじゃない?お燐」
「そっちこそ、何だか凄く上機嫌そうじゃない?おくう」
「えへへ、そう見えるー?…あのね、お燐。実は私、お燐に言いたいことがあるんだ」
「ちょうど良かった!あたいもおくうに言いたいことがあってさぁ…」
「そうなの?じゃあさ、折角だし二人で同時に言ってみようよ!」
「分かったよ。せーのっ!」
「「お姉ちゃん♪」」
「「………あれ?」」
END
こいしってすごく妹が合っている気がします。
ちなみに自分も姉にするならお燐かなぁ。
だがあえて俺は全員妹にするぜ。
やっぱり、さとり様が一番上のお姉ちゃんですねぇ。
ちょっとだけお母さんっぽいのが何とも言えない
古明地姉妹天使っすなぁ
お燐お姉ちゃん最高だ。
それはそれで面白いかもしれない、うん。
おりんりんを撫でくり回すのもいいし
お空のちちまkいや羽毛布団も捨て難い…
そういうのもあるのか!
甘いお話、ご馳走様でした。
>>1さん
こいしってある意味最も妹らしいような気がします。
後お姉ちゃん成分は過剰なくらいがちょうど良いのです。
>>2さん
ありがとうございます。これからも色々と書いていきたいです。
>>4さん
ほんのり鉄分の香り。
お燐が死体と間違えて来てしまいそうです。
>>13さん
お姉ちゃんはとてもいいものだと思います。
なお地霊殿は動物好き必須です。ないと妹には出来ませんのであしからず。
>>15さん
何回も口に出すと恥ずかしくなって来ます。
姉がいるならまた違うのかもしれませんが……。
さとりはお姉ちゃんでありお母さんもあります。
>>18さん
二つの属性を持ち合わせたハイブリッドさとり誕生の瞬間なのです。
>>21さん
そういえば空がお姉ちゃんというのがなかったですね。妹的な感じなんでしょうか。
ともあれ、お燐は姉という感じがやや強い感じです。
>>25さん
ありがとうございます!
>>26さん
全員姉という選択肢も可能なわけです。
体が持たなさそうな気しかしませんが……。
>>27さん
個人的には甘さ控えめに出しましたが、甘かったですか。
何れは少しビターなものも書いてみたいものです。
>>32さん
四人はどこも特徴的なので、飽きが来ませんね。
後ちちまk(略)の話はここから思いついたものでした。
ここにひっそりお礼を申し上げます。
>>36さん
そうかその手があったか……。
でも、結局何も変わらない気がしますね。いつものように過ごしてそうです。
>>46さん
あります。
新たなる道の開拓ですね!
>>59さん
お粗末さまでした。
全員姉だと苦労しますよ?その分楽しそうではありますが。
勿論こいしお姉ちゃんについても興味が(ry