講義の終了を知らせる鐘が教室中に響き渡る。
それは、その鐘をもって今日一日の授業が終わる事を意味していた。
教鞭を取っていた講師が簡単な挨拶を済ませた後、教室中の人間が帰り支度の為に一斉に立ち上がる。
私も例に漏れず身支度を整えると、すぐに教室を出て彼女のいる教室へ向かう。
彼女、秘封倶楽部のサークルメンバー宇佐見蓮子とは選択している授業が異なる為どうしても教室が離れてしまうのだ。
急がなければ…でないとまたしも彼女はすぐにいなくなってしまう。
ほどなくして彼女が講義を受けている教室の近くへと辿り着く。
と同時に彼女が丁度教室から出て来た。
どうやら急いでる様子らしい。
今まさに走り出そうかと言う瞬間だった。
このままでは彼女は行ってしまう。
私はすぐさま近づいて彼女を捕まえる。
「蓮子!ちょっと待って!」
そう言って彼女の腕を掴んだ。
それでようやく私に、マエリベリー・ハーンに気づいた蓮子はバツの悪そうな顔をして此方を向いた。
「や、やぁ、メリーどうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるもんですか。あなたこそ最近どうしたのよ?授業が終わるとすぐにいなくなっちゃうじゃない。」
「ええっと…それは…。」
そう言いながら顔をあさっての方向へ向け指で頬を掻いてる。
蓮子は最近すぐにいなくなる。
いつもなら蓮子の方から私の所へやってきてサークル活動をやろうと言ってくる。
それに応えて私も蓮子と一緒にサークル活動をする。
それを今までずっと変えずに続いていた私達だけのサークル、秘封倶楽部の姿だ。
それがここ最近になって蓮子がぱったりと来なくなってきた。
一日二日ならまだしも、それが一週間以上続くのだ。
明らかに何かあると思い、授業終わりに教室に言って見ても蓮子の姿が見えない。
周りに聞いて見ると、授業が終わると同時にすぐ帰ってしまってるらしいのだ。
「今日こそ話してもらうからね」
「話すといっても…。」
私は少し苛ついているのだろうか?少し語気に棘が混じる。
「なんで最近すぐに帰っちゃうのよ?」
「それにはちょっとふかーい事情がありましてですね…。」
蓮子は視線を逸らしをぐらかす様に話す。
その仕草が余計に私を不機嫌にさせる。
「それは私にも話せない事なの?私達は同じサークルメンバーじゃない。何か訳があるのなら教えてよっ。」
「うー…ゴメン、メリー!今はまだ話せないんだ!」
「そんな…」
「この埋め合わせは必ずするから!それじゃまた今度!」
そう言って私の腕を振り切り、謝る仕草を見せると大急ぎで講義棟を走って行った。
「待って蓮子…!」
私の声も届かず、彼女は走り去って行った。
あたりにはいつもの喧騒が戻ってくる。
その場には蓮子に向けて延ばされたはずの手が虚しく残り、私はただ立っていることしかできなかった。
「なんなのよ…わからないよっ…。」
声に出した言葉は誰かに届くわけも無く喧騒の中へ消えた。
蓮子と物別れになった日から数日経った。
外は雨が降っているようで、小気味の良い雨音が教室に入ってくる。
結局あの日以降、蓮子と会う事は無かった。
そうして私は講義に耳も傾けず、ふてくされたように机に突っ伏して表現できない苛立ちと喪失感を感じながらうつむき続ける。
しかし何故私はこうも苛立ちと喪失感に際苛まされるのだろう?
ただサークルメンバーであり、まあ友達とも呼べる人にしばらく会っていないだけではないか。
…いや、自分に嘘をつくのは止めよう。
そう、私は寂しいのだ。
蓮子と一緒に居た日々があまりに当たり前過ぎて、いつの間にか彼女の存在が私の中で大きなウェイトを占めていたのだ。
私の境界を見る目を素直に受け入れてくれた彼女が。
屈託の無い笑顔を向けてくれて話しかけてくれる彼女が。
いつも一緒に居てくれてた彼女が…。
そんな蓮子が私にとって大切な存在となっていた事を、会わなくなった事により気づかされた。
だからこそ会えない事による寂しさと、何故自分を避けるようになったのか分からない事による疑問と苛立ちと寂しさに際悩まされている
「蓮子…。」
そう彼女の名を呟くと、少し暖かな気持ちになれた。
自分自身のわだかまりがなくなり正直な気持ちに気づけたせいなのか、それとも考えすぎて少し疲れてしまったのかだんだんと眠くなってきてきた。
教壇で教鞭を振るっている講師の言葉に耳を傾けず、むしろ淡々と話すその声と外の雨音が子守唄のように響き、私はゆっくりと深い眠りの中へと落ちて行った。
「…リー……―」
外から喧騒が聞こえる。
「…メ…ー・・・―」
人が気持ち良く寝ているというのにまったく耳障りだ。
「……リ……!」
私はもう少しこの心地良い惰眠を貪りたいと言うのに。
気にせずこのまま夢のへ―――
「起きろぉ!マエリベリー・ハーン!」
「んな…っ」
いきなり耳元で、しかも大声で名前を叫ばれ体を大きく揺さぶられ私は夢から現へ無理矢理引きずり起こされた。
耳元で叫ばれたお陰で耳がキンキンするし、無理に起こされたの焦点が定まらず目の奥がチカチカする。
はっきり言って最悪だ、こんな最悪な寝起きは初めてだ。
お陰様で機嫌が一気に悪くなる。
こんな最悪な事をしてくれた人間は一体誰だ。
声がした方へ顔を向け、私を叩き起こした人間を睨み付け…ようとして私は目を疑う。
「やっと起きたわねメリー。何度呼んでも起きないんだから、このネボスケ。」
そこにはいつもの黒の帽子をかぶった蓮子が立っていた。
この間まで自分から姿を現さなかった彼女が何故いまここに?
周りを見ると帰りの身支度を整えているようで、いつの間にか授業は終わっていた。
私は嬉しさ半分驚き半分で彼女の姿を見る。一体なんで?
だがその気持ちはとりあえず置いておき、私を叩き起こしてくれた事は事実なので不機嫌な顔で彼女を軽く睨む。
「あらお早う、蓮子。随分な起こし方をしてくれたじゃない?お陰様で寝起きの気分は最悪なのだけれど。」
「そんなの寝ぼすけなメリーが悪いじゃないの。これでも起こそうとして何回も呼んでいたのよー?それなのにメリーはずっと気持ち良さそうにねてるんだもん仕方が無いじゃない。」
腕を組み、やや呆れ顔で蓮子は言う。
むっ、そう言われると何も言い返せない。
というかそんなに気持ち良さそうな寝顔をしていたのだろうか。
そんな顔を見られていたとなると少々恥ずかしい。
が、とりあえずそれはこの際気にしないこととする。
「それは悪かったわね。で、今までろくに顔を見せなかった蓮子さんが急にどうしたのかしら?」
ちょっとした憂さ晴らしを兼ねて少し皮肉を込めて聞いてみ見る。
最悪な起こし方をされたのだ。これくらいは良いだろう。
「ううー、あー、それはーそのー…。」
なにやらはっきりしない答えでうーんうーんと唸ってる。
「あれだけ派手に起こしておいて用は無し?それともただ人の寝てる人を起こすのが趣味なのかしら?良い趣味してるわ。」
「そんな訳ないでしょうに!とりあえず、外に出て話しない?」
外を指差し彼女は言う。
私も色々と今までの事で聞きたい事もあったのでそれを承諾する。
そして身支度を整え彼女と共に外へ出る。
外は先程まで降っていた雨は止み、何時の間にか雲間から太陽が顔を覗かせて晴れ渡っていた。
雨上がりの草の匂いがする並木道を蓮子と歩く。
話をしようと行ってきたのにも関わらず彼女は外に出てから何も喋らない。
かと言う私も聞きたい事は色々あるのだけれど、いざこうして一緒にいると何を話せばいいのか分からなくなる。
そんな感じでなんとも話をし辛い雰囲気が漂う。
そこへ一台の車が横を通る。
どにも排気ガスが多くて視界が煙くなったので私はガスを吸わないように口を押さえる。
けれども排気ガスを吸ってしまったらしく前を歩いていた蓮子が少し苦しそうに大げさに咽ていた。
「まったく、何やってんのよ蓮子たら。」
そんな様子が少々可笑しくて私は少し笑いながら言う。
「あーっ、やっと喋ってくれた。」
それを見た蓮子がまだ少し咽ていたが笑って私を見る。
「学校を出てからずっと喋らないんだもん、少し心配しちゃった。」
「蓮子が話をしようと言って外に出たのに、何も喋らないから話しかけなかっただけよ。」
「あはは、それもそうか。」
「そうよ、うふふ。」
お互い何が可笑しいのか笑い合う。
先程までの気まずい雰囲気は無くなり穏やかな空気が流れる。
「それで?話って何?」
「ええっとねえ…あ、あそこの公園でゆっくり話そっか。」
周りをキョロキョロと見回て、近くにある公園を指差して蓮子は言う。
「ええ、構わないわよ。」
別に話をするならどこでも良いのに何故わざわざ公園なのだろう。
まあ話をするのには賛成なのでとりあえず彼女の提案を飲みそのまま近くの公園へ行く。
さっきまで雨が降っていたせいか、公園には人が居なく、赤く錆びた鉄棒や砂場にある作りかけの砂の山があるだけだった。
「ねぇ、メリー。」
ふと何時の間にか前を歩いていた筈の蓮子が後ろにいる。
その声につられ後ろを少し顔を向けると彼女がなにやら持っている。
「キャッチボールしよっか。」
「…は?」
この女は脈絡も無く一体何を言い出すのだろうか。
「いっくよおー!」
返事をする間もなく彼女は大きく振りかぶってボールを日の沈みかけた空へ高く投げた。
いきなり投げられたものだから慌ててボールを追う。
ただコントロールが良くないのか変な方向へボールは飛んでいく。
「こんなの捕れる訳ないでしょう!」
なんというノーコン。
呆れながらボールを追う。
「別に捕れなくても良いよ。さあキャッチボールしようよメリー。」
彼女は微笑みながら言う。
まったく…、前から思っていたが蓮子の考えてることはよく分からない。
と言うより何処からそのゴムボールは出てきたのだろう。
結局ノーコンなゴムボールは捕れずに地面を転がる。
私はそれを拾い上げて彼女へ投げ返す。
何を考えてるか分からないけれど、とりあえずキャッチボールしよう。
「ゴメンネ。近頃顔を合わせに行かないで。」
ボールを投げながら蓮子は話す。
「最近一体何があったの?」
ボールを受け取り彼女へ投げ返す。
「うーん、ちょっと色々と用事があってねえ」
また彼女が私へボールを投げる。
「だったら私へ一言何か言ってくれれば良かったのに。」
そうしてまた彼女へボールを投げ返す。
会話は言葉のキャッチボールと言うが、今まさに言葉のを交わしながらキャッチボールをする。
なんともシュールだ。
しかし少し楽しいと思えてる自分がいる。
最近蓮子と何かしてる事がなかったので余計にそう感じる。
やっぱり蓮子といると楽しい。
「ちょっとねー、色々と言いにくくてさ。」
「にしても何も言わないは少し酷いんじゃ、ない?」
と少し言葉に乗せ少し強く投げる。
「ううっ、それを言われると辛いなあ。」
それを受け取り彼女は少し頭掻く。そしてボールを投げる。
「この際だから全部ゲロっちゃいなさい。でも蓮子がどうしても言いたくないならそれでも良いけど。」
「いや、そんな深刻なものじゃないんだけどね。ちょっとバイトをしてたんだ。」
「は?バイト?」
「そ、バイト。短期でちょっとね。」
バイト、ようはアルバイトである。
たかがバイトのせいで私はここ最近モヤモヤしていたのか。
てかバイトならそうだと言ってくれれば良いのに。なんともわからない。
心配して悩んでいた頃の私を返して欲しい物である。
「だったら一言そう言ってくれれば済むじゃない。人に言えない如何わしいものなのかしら?」
「なあに言ってんのよ、普通のバイトよ。喫茶店のウェイターしてたの。白と黒の少しヒラヒラした制服で可愛かったけれど少し恥ずかしかったねー。」
なるほど喫茶店のウェイターか。
人当たりの良い彼女なら打って付けだろう。
しかし普段そんなヒラヒラした服を蓮子は着ないので見てみたい気はする。
恥ずかしがってる蓮子をネタに突っつくのも面白いかもしれないし。
そう考えてると蓮子がボールを持ってうーんと唸ってる。
「どうかしたの?」
「いやー、なんか普通に投げるのもつまらなくなっちゃって。」
と言ってくる。
自分からキャッチボールをしようと言っておいてそれは無いだろう。
やや呆れて心の中でため息をつく。
そうしてると何を思ったが彼女は何かを思いついたような顔でニヤッと笑う。
あ、嫌な予感がする。
「と言うわけで、今から変化球を投げるからちゃんと捕ってねーメリー!」
予感的中。
何が、と言うわけで、なのだろうか。
受け捕る側の人間も考えて欲しい物である。
それよりも変化球なんて投げれるのだろうか。
「さっきみたく変な所へ投げないでよね。」
「大丈夫だって、多分。それじゃいくよー!」
腕が振られてボールが放たれる。
そしてボールは蓮子の宣言どおり弧を描くように変化して行く。
おおっ以外にも本当に変化球だ。
だがやっぱりノーコンで変なとこへ曲がっていく。
「だからこんなの捕れる訳ないでしょう!」
と言いつつもなんとかキャッチ。
我ながら良く捕れたものだ。
「すごいねメリー!捕れないと思ってたよ。」
からから笑いながら蓮子は言う。
まったく人の気も知らないで。
でもあの可愛らしい笑顔には勝てないなあ。
まったくもって卑怯だ。
まあこれは彼女が大切だと気づいてしまった自分が悪いのだけど。
やっぱり私は蓮子といると楽しい。
彼女と一緒に遊んだり笑っていたい。
ありのままの私を受け入れてくれた彼女と。
そうして日がほぼ沈んでも私達は話しながらキャッチボールを続けていた。
カーブの様な愚痴や消える魔球の様な優しさが篭った言葉のキャッチボールを。
蓮子のボールはたまに手に届かない変な所へ飛んで行く。
捕れる訳無い球に呆れながらも必死で追う。
まるでそれは私達のようだと感じる。
蓮子は私を連れて行ってくれる。
私の知らない場所や初めての所へ。
私は呆れながらも必死にそれに付いていく。
見逃した優しさや愚痴や色々を必死で追う。
でもそれが楽しい。
蓮子とお互いに笑いながら、怒りながら、楽しみながら秘封倶楽部の活動を続ける。
私はずっとそれが続けば良いと思う。
蓮子に引っ張られるのは大変だけど私はそんな関係が楽しいのだ。
だから、もしだけれども、彼女の変なところへ飛んだボールを投げた時の様に捕れなくても良いよと、無理しなくて良いよと微笑まれ言われたらどうしよう不安に思う。
いやそんな考えは意味は無いか。
考えたところで意味をなさないのだから。
でも、やっぱり彼女に「とれなくてもいい」とは言って欲しくない。
そんな事を言われたら私はどんな顔をすればいいのかわからない。
そんな考えを巡らせてると、急に蓮子からボールを投げて来なくなった。
何時の間にか日は沈み、月が輝いていた。
「どうかしたの?もう終わりにするの?」
「うん、そろそろね。次の1球で最後にするよ。最後だからちゃんと受け取ってねメリー!」
「OK。でもノーコンは勘弁よ。」
「いっくわよー、それっ。」
蓮子は振りかぶって投げる。
それはノーコンではなく綺麗な放物線を描き私の元へ飛んでくる。
しかし飛んできたのはゴムのボールではなく白い小さな箱だった。
「蓮子、何これ?」
「い、いいから開けて見てっ。」
なにやら少し照れながら言ってる。
一体何が入ってるのだろうか。
あれこれ考えながら蓋を開ける。
そこには銀のリングが2個入っていた。
片方のリングにはマエリベリー・ハーン、と私の名前が彫られている。
良く見ると私の名前が彫られたリングの裏側には蓮子の名前が彫られている。
逆にもう片方のリングには表に蓮子の名前、裏には私の名前が彫られてる。
「これって…。」
「私とあなたが出会って約1年。私とあなたの秘封倶楽部も結成して1年。だから何か記念にと思ってね。」
「じゃ、じゃあ今までバイトしていたのはこのためだったの?!」
「そ、そうよ。私達は二人で一つ。表と裏。秘封倶楽部も二人で一つだもの。私はメリーといると楽しいし、メリーは私の大切な親友なの。これからもずっと一緒にいたいと思ってさ。
折角だし何か記念にプレゼントしようと思って…ゴニョゴニョ…。」
恥ずかしそうに顔を赤くしながら蓮子は言う。
まいったなあ、そんな事を言われたら何も言い返せないな。卑怯ったらありゃしないわ。
なんだか笑いがこみ上げてくる。
「ふふ、あははははははっ。」
「な、何が可笑しいのよ!」
「いや、ごめんなさいね、ふふっ。どうせならもっと早く渡してくれれば良かったのに。」
「だ、だっていざ渡そうと思うとなんだか恥ずかしくて…。それに喜んでくれるかわかなかったし…。だからキャッチボールで誤魔化しながら心の準備してたのっ。」
「まったく…何を言ってるのよ、そんな訳ある分けないじゃない。蓮子、本当にありがとう。本当に嬉しいわ。ずっと大切にするわ。」
「本当?本当に!?良かったあ、喜んでくれなかったらどうしようかなあと思ってたよ。」
「何を言ってるのよ、喜ばないはずないじゃない。私の大切な親友からの大事な贈り物だもの。」
「そ、そう言ってくれると私としても嬉しいよ!」
蓮子の顔がまた赤くなった。かわいいなあもう。
でも私も嬉しくて恥ずかしくかったので顔を赤くしてるかもしれない。
蓮子が私を親友と言ってくれた。
ずっと一緒にいたいと言ってくれた。
その事がとても嬉しかったのだから。
やがて蓮子近づいて来てリングを1つ持つ。
「この表面にメリーの名前が彫られてるのがメリー分。逆が私の分。さっ、早く指に嵌めて見て。多分人差し指に合うと思うから。」
そう言って蓮子は私の右の人差し指へリングを嵌めてくれる。
…なんとも恥ずかしい気分だ。
蓮子が嵌めてくれたリングを目の高さまで持ち上げて見つめる。
とても綺麗だ。
「似合ってるわよメリー。」
「ふふっ、ありがとう。じゃあ今度は私が蓮子に嵌めてあげる。」
「えっ、えっ?!」
「確か蓮子は左利きだったよね。」
もう片方のリングを持って彼女の左指の人差し指へリングを嵌めていく。
蓮子は顔を真っ赤にしてる。なんとも可愛い。
しかしこれではまるで指輪交換みたいだ。
そう考えると私の顔もみるみる赤くなっていくのが分かる。
「あ、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。」
私はリングを付けた蓮子の左手に私の右手の指を絡めていく。
急な私の行動に蓮子は少し驚いた様子だったが、そのままされるがままおとなしくしてる。
そうして指が絡みあい、お互いのリングがカチリと音を立てて重なる。
そして恥ずかしがる蓮子に笑顔で目を合わせる。
「蓮子、本当にありがとう。こんな素敵な贈り物貰えて嬉しい。私達は二人で一つの秘封倶楽部メンバー。そしてあなたは私の大切な親友よ、蓮子。これからもよろしくね!」
「こ、こちらこそ!メリーは私にとって大切な親友だもの。これからも一緒に頑張りましょう!」
お互い照れ笑いながら見つめ合う。
彼女が大切な親友と言ってくれた。
一緒に居て欲しいと言ってくれた。
その事実がとても嬉しい。
お互いの気持ちが今までよりも近づけた気がするのだから。
「ねえ、蓮子。」
「な、なにっ?」
「どうせだからもう少しキャッチボールしない?折角だしさ。」
それを聞いた蓮子は少し不思議そうな顔をしたけれど、すぐに笑顔になって応える。
「いいね、やろうか!」
そうしてキャッチボールは続いていく。
いつまでも続いていく。
互いの指には銀に光る指輪が輝いている。
お互い上手くなって距離を置き始める。
でも距離は離れても心は近づいてる。
君の声は遠くなり、君のコエが近くなる。
カーブの様なグチと消える魔球のような優しさが混じったキャッチボールは続いていく。
良い秘封倶楽部でした
ああ~青春。
ちゅっちゅしてないのに甘酸っぱい秘封だったね
読んでて背筋がむず痒くなったけどこれはいい友情蓮メリ
割と好きなシチュエーションなのですが、ちょっと誤字や違和感のある表現が目につきました。南無三…。
例えば以下のように。
>それを今までずっと変わらずに続いていた私達だけのサークル
→変えずに続けていた、のほうが自然かもしれません。
>蓮子は視線を逸らしはぐらかす様にに話す。
→に、が重複。
>喪失感に際悩まされているのだろう?
→苛まされる。
>少し皮肉を込めて聞いて見る。
→みる、と平仮名表記かな。
>太陽が顔を覗かせて何時の間にかに晴れていた。
→に、が余分。
>こんなの捕れる分けないでしょう!
→訳。
>喫茶店のウェイターしてたの。
→看護婦が看護師となっている今性別云々はアレですが、まだウェイトレスのほうが馴染みがあると思います。
>無理しなくて良いよ微笑まれ言われたらどうしよう不安に思う。
→良いよと、のほうが自然。
>急に蓮子からボールが投げて来なくなった。
→「が」を「を」か、もしくは「ボールが来なくなった。」
>月明かりが輝いていた。
→日光が輝く、と同じで不自然だから「明かり」は不要かと。
>片方のリングには
→なぜかここだけ半角。
>じゃあ今までバイトして居たのは
→ひらがな表記がよいと思われる。
>メリーは私な大切な親友なの。
→私の。
>どうせならもっと早く渡してくれれば良かったのに。。
→余分な。が…
>そんな事ある分けないじゃない。
→訳。
早速のコメントありがとうございます!
おっしゃる通りBUMPの同名の曲が元ネタです。
にしてもこんなに早く気づかれるとは思わなかったですw
>2
ありがとうございます!
>7
ありがとうございます。
たまにはこういう秘封てのも良いかと思いましたw
>8
ご指摘頂きありがとうございます。
至らない部分が多くて申し訳ありませんorz
誤字脱字を修正いたしました。
これからも精進して頑張ります。ナムサン。
ウボァ orz
ご指摘ありがとうございます。
修正いたしました。
>17
コメントありがとうございます!
>20
タイトルで直感されるとはw
マイナーな曲なので気づいてもらえると嬉しい限りです。
女の子同士で指輪交換だなんて…っ!
でもいやらしさがなくてすごく良かったです。
とれなくてもいいよと、無理しなくてもいいよと~のくだりで気になったのですが、
それは自身の能力で危険な目にあうかもしれない。だから無理してついてこなくてもいい。
そういった意味なんでしょうか?
秘封倶楽部のことはよく知らないのですが、紫様みたいな能力でしたよね~。
間違っていたらごめんなさい。少しだけ気になったものですから。
青いというか、甘酸っぱいというか。なんかそんな感じ。
そんな空気感が見事に文章で表現されていたと思います。
おもしろかったです。
指輪交換の件は、キャッチボール→プレゼント→指輪という頭のおかしい妄想から生まれた産物です。
とれなくてもいい~のくだりですが、作中ではメリーは蓮子にいつも引っ張られる感じです。
なので蓮子がメリーに対し、無理に付き合わなくても構わない、受け止めてもらえるのは嬉しいけれど無理をして欲しくないという表れとでも言うべきでしょうか。
メリーの能力は境界を見れると言うタイプなので紫とはまた違いますねー。
ただ最近は能力が向上?してるらしいです。
境界という曖昧な概念をモチーフとした能力、また容姿から紫と重なる部分があるのは確かです。
>24
『キャッチボール』は曲調ならびに歌詞が青春という雰囲気が出ていますね。
頑張ってイメージし、物語として作って行きましたので、そんな風に感じ取ってもらえたのならば作者冥利に付きます。
本当にありがとうございます。