幻想郷は今、空前のスイーツブームを迎えている。
人々は甘いものを求め、新たに出店された人里の店へと足を運ぶ。
そのスイーツは、妖怪や魔法使いなど、人とは違う者が作っている店も多い。
日々新たな発想が生まれ、新しい商品の開発が進む。
紅魔館や白玉楼など、仕事に追われている場所では、アルバイトを雇い、業務を任せている。
それほど、今のスイーツに対する熱が高いのだ。
なぜここまでスイーツに熱が入ったのか、まずその経緯を辿るとしよう。
それは宴会の事だった。
外から来た、女子高生、東風谷早苗。
幻想郷と外との違いについて話し合っている時の事だった。
「いやぁ、外ではいろんな便利な機械があって生活には便利でしたけどねぇ」
「機械に頼ってばかりだから人間は衰退するんだぜ」
様々な機械についての話に盛り上がっていた。
幻想郷に機械なんて全然無い為、そういった話は興味もあるし、聞いていて楽しい。
話をしながら、いろんな料理だったり、お菓子に手を伸ばす。
そう、お菓子に手を伸ばした、その時だった。
「そういえば、幻想郷って、お菓子屋って全然ないですよね。出店したらお客さん沢山来て儲かるんじゃないでしょうか」
その時、宴会場に電撃が走った。
妙なざわめきが起こり、一部の者達に笑みがこぼれる。
(咲夜は料理が上手いし、出店すれば確実に……。これで紅魔館の株も上がるわ)
(和菓子なら永琳や鈴仙とか作るのが上手いし、成功すれば知名度も上がるわね)
(洋菓子やパンなら私や魔理沙もよく作るし、暇つぶしにもなるからいいわね)
(庭の仕事は妖夢以外の誰かを雇えば何とかなるし……、ここは妖夢の和菓子を)
(火加減とかそう言うのなら私が何とかして、慧音はパン作るの上手かったし……)
(ペット達とよくお菓子作りはしますし、好感度を上げるには持って来い、か)
(最近来た私達の信仰を更に深めるチャンスかも知れませんね)
そうして、第一次スイーツ戦争が勃発した。
それでは、現在の勢力図を見てみるとしよう。
Red Devil Confectionery
紅魔館の勢力による、洋菓子専門店。
十六夜咲夜を筆頭に、厳選した妖精メイド達で作り上げる。
また、紅魔館の面子の意見のもとで様々な洋菓子を作っていく。
Magic Sweets House
アリス・マーガトロイド、霧雨魔理沙による洋菓子・パンのお店。
魔法使い達が、一味違った洋菓子とパンを作り上げる。
逸脱したデコレーションや、他では見られない洋菓子が集結している。
パン工房 ふじわら
藤原妹紅と上白沢慧音によるパン屋さん。
家庭的で、作りやすいパンを中心に販売している。
一つひとつ、愛情の篭ったパンが好評。
ベーカリー 地霊殿
地霊殿の面子全員で運営しているパン屋さん。
可愛らしいデザインのパンが多く、甘いパンが多い。
また、沢山の動物がいる事で、癒しのパン屋さんとしても有名。
御菓子処 永遠亭
八意永琳の指揮のもとに立ち上がった和菓子屋。
しかし、永琳は医師でもある為、あまりお店にいる事はない。
和菓子に関しては大体の事を鈴仙・優曇華院・イナバに伝授しているため、作っているのは優曇華である。
味は師匠たる永琳にも劣らぬ味である。
和菓子処 しらたま
白玉楼の魂魄妖夢による和菓子専門店。
慣れた手つきで作り上げられる和菓子は、絶品だ。
また、一人で切り盛りしている点には驚愕せざるを得ない。
お菓子専門店 命蓮寺
和菓子だけかと思えば、洋菓子、パンなど様々な物が売られている。
命蓮寺の面子全員が運営しており、一人ひとりの連携で素早く、そして美味しいお菓子が出来あがる。
いろんなものがあるから他と比べて劣るのではないかと思うが、味はどの店にも引けを取らない美味しさを誇っている。
以上、七店舗だ。
なお、東風谷早苗はそういったスイーツの評論家になっている。
その為、新商品が出来あがった際には最初に早苗に食べてもらうのが主となってきている。
また、射命丸文はそういったお店の情報を載せた雑誌を出版している。
文々。新聞よりも発行部数が多い事にすこしばかり苦い顔をしていたが、読んでくれている人が多い事は純粋に喜んでるようだ。
ここで、商品を作るに当たっての素材がそんなに幻想郷にあるのか、という問題に直面する。
しかし、そこは便利な人物であり、仕入のプロがいる。
八雲紫だ。
欲しい商品を注文書に記入し、紫に渡すことで彼女がそれを仕入れてくる。
もちろんただではなく、それ相応の代価を支払っている。
これで各店舗は成り立っている。
さて、勢力の紹介を終えたところで、店舗同士の争いの様子を見てみるとしよう。
洋菓子店同士の場合
現在、洋菓子の部門だけで見れば、「Magic Sweets House」の売上が一番高い。
その美しいデコレーション技術、そして絶妙なクリームやスポンジの柔らかさ、そして自然な甘さは真似ようとしてもなかなかできるものではない。
命蓮寺勢やアリス達のような、総合的な販売を潰す、カテゴリーキラーたる紅魔館勢。
しかしながら、洋菓子のレベルとしては紅魔館勢が若干高い程度で、大した差は無い。
洋菓子界は、アリス達による寡占市場と化していた。
ある日のこと、どの店舗も休みとなった。
そのときにアリス達のお店へと咲夜は出向いた。
咲夜達の店、「Red Devil Confectionery」は、真っ赤な外装が目立つ店である。
外装とは打って変わって、内装は非常に落ち着いた空間で、気品のある館を思わせる。
人間の咲夜がこの店のオーナーを務め、妖精メイドに的確な指示を与えて、時間を有効に使っている。
ここでは時を止めるような事はせず、限られた時間の中でスイーツを作り上げる。
様々な種類の洋菓子が置かれており、どれも絶品のお店だ。
しかし、それでも売上一位と二位との差が大きい為、勉強に来たのだ。
お店の前、小さな黒板には「本日休業」と、可愛らしい丸文字で書かれている。
なんとも女の子らしいものだった。
洋菓子以外にも言える事だが、簡単なお菓子の味でその店が分かる。
クッキーやシュークリームなど、洋菓子のお店なら置いてあって当然のメニュー。
それが美味しくなければいけない。
「アリス、どうやったらそんな美味しいのができるのかしら」
咲夜の問いかけに、アリスではなく魔理沙が答えた。
「咲夜、私達の場所に客が集まるのは味だけじゃない、様々な工夫があるからでもあるんだぜ」
「と、言うと?」
すると、魔理沙は得意げに語り始めた。
「客をいかに集めるかっていうのは、マーケティングの技術が必要だ。立地条件やその店の風貌、そして、店の解放度や販売方式、陳列方法……。例をあげたら切りが無いくらいだ」
「なるほど……」
「店の風貌としては、温かくてぬくもりを感じる、入りやすいようなものにする。だから丸い木で作ったんだ。また、わざとパンの匂いが外に流れるような設計にし、外見は一部ガラス張りで、中が見える中間型の解放度にし、店内ではパンを作る様子も見る事ができる。これは人の興味を引き、買いたいと言う欲求や行動に結びつく。基本的なAIDAS理論から来るものだぜ」
「ふむふむ……」
何時の間にか取り出したメモ帳にペンを走らせ、必要と思う部分を書く。
マーケティング戦略なんて全く考えていなかった咲夜として非常に盲点だった。
これはパチュリー様と話をして、マーケティング戦略を進めなければ……と、心の中で咲夜は呟く。
「でもな、私達としてはまだAIDASの最初のA、Attentionが弱い。その店、咲夜達の真っ赤な外装っていうのは凄くその点が強いから見習いたい点でもあるな」
「ありがとう、魔理沙。貴重な話が聞けてよかったわ。それで、お菓子についてなんだけど、その種類の豊富さには感嘆せざるを得ないわ。どうしてそんなに商品が生まれるのかしら」
お店のショーウィンドウに今は商品は並んでいないものの、名前だけなら書かれている。
いちごショートやチーズケーキなどは基本的な洋菓子と言っても過言ではないだろう。
しかし、四角い形で苺を沢山使った「フレジエ」や、パイ生地で見た目も可愛らしい「ミルフィーユ・オ・フレーズ」、王様のお菓子の意味を持ち、2種類の生地を使う「ケーニヒスクーヘン」など、様々だ。
名前だけでは分からなかったり、小難しい名前ではあるが、どれも美味しい。
しかし、こう言ったものをどのようにして作っていくのかが気になっていた。
「そうねぇ。やっぱり基本は外の世界のお菓子の本から学ぶ事が多いわね。私達魔法使いは幻想郷での標準語だけでじゃなくて、それ以外の外の世界の言語も喋ったり読んだりする事もできる。だから、他の人達よりもそういう面では得しているっていうのもあるわね」
「なるほど、確かにそう言う面では得してるわね。様々な外の情報を手に入れる事ができるし……。パチュリー様に頼ってばかりになりそうだわ」
マーケティング戦略やお菓子の本などについてはパチュリーに頼らざるを得ない咲夜。
自分も色々勉強しなくてはいけないなぁと、咲夜は思った。
「それに加えて私達のアレンジを加えていくの。魔法使いはオリジナリティを求めているのはパチュリーが一緒にいるから分かるでしょう。魔法使いの魔法陣とかは自分で作ったりするけど、やっぱりデザイン的に美しくしたいのよね。そう言うところからデコレーションの技術に繋がったりもするわ」
「ロケットのときもパチュリー様はオリジナリティを求めていたから分かるわ。デコレーションに関してはこれから自分で技術を磨く事にするわ」
咲夜はメモ帳を閉じると、ゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう、アリス、魔理沙。いろいろと考えさせられたわ。ちょっとやってみたい事とかも増えたし、今日は帰るわ」
「あら、もう帰るの? まぁ、困ったらまた来なさい。困ったときは助け合わなきゃね」
「嬉しいわ。それじゃ、またね」
「えぇ、それじゃあまた」
「お互い頑張ろうぜ」
アリスと魔理沙が手を振ると、咲夜はそれに笑顔で返し、そそくさと帰っていった。
「……なるほど、そういうことか。さてと、聖達に報告だね」
店の片隅、様々な物に紛れて、正体不明と化していたぬえ。
総合的なお菓子店として構えている命蓮寺としては、様々な情報が必要となる。
その中でぬえはその能力を活かし、人の店に潜り込んでは情報を盗み聞きしたり、潜入調査をしている。
このように、堂々と市場調査をできるのは命蓮寺くらいだろう。
故に総合的なお菓子店として運営できるわけであり、他の店にも対抗できる力をつけているのだ。
紅魔館運営サイド
「アリス達は化け物か……!! なんであんなに売上が伸びる!?」
「お嬢様、落ち着いてください。私達にはマーケティング戦略や情報が足りないのです。パチュリー様の力があれば何とかその点を補えるはずです!」
「でかしたわ、咲夜! パチェ、これからは咲夜と一緒にお菓子作りに協力する時間を増やすわよ!」
「拒否権は?」
「ない!」
「でしょうね……」
命蓮寺運営サイド
「なるほど、そういうことだったのか。私も外の文章とかなら読む程度ならできる。これからは外の資料に手を出すとしよう」
「あの、ナズーリン? 私はいつになったら作るのを手伝わせてもらえるんでしょうか?」
「ん? ご主人はもうずっと販売員でいいよ。毘沙門天の代理が販売員してるってだけでも十分集客力に繋がるからね。マーケティング戦略なら私達も十分持ってるからね」
「そう、ですか……」
パン屋同士の場合
パン屋の売上の競争は激しい。
どの店舗も市場占有率を見る限りではほとんど僅差で並んでいる。
家庭的なパンで、作りやすいパンばかり揃えた、「パン工房 ふじわら」
外の世界で売られているような珍しいパンばかり揃えた、「Magic Sweets House」
そして、甘くておいしい、菓子パンばかり揃えた、「ベーカリー 地霊殿」
命蓮寺もパンを販売しているが、今の段階ではまだパンに力を注いでいないのでカウントしないものとする。
そのパン業界の中で、僅差でトップに立ったのは、「ベーカリー 地霊殿」だ。
「ねえお姉ちゃん! ハートの型でパン焼いてみたの!」
「あら、可愛らしいわね。綺麗にハート型に焼けてるみたいだし、お店に出しても大丈夫そうね」
地霊殿の新商品のアイディアを出す会議は、非常に明るい雰囲気である。
思っている事を正直に言う事もでき、出てきた意見は積極的にやってみようというチャレンジの精神が強い。
成功ばかりではないが、失敗がある分、成功したときの喜びは大きいものがある。
とりあえず実践してみる。
やる前から諦めていては潜在的な需要を掘り起こす事なんてできはしない。
アイディアの収集や開発、企画をし、承認されれば試行し、出来上がれば商品化する
いわゆるテストマーケティング、市場テストを行った後、売上や購入者の層をもとに新たに研究を進めていく。
この循環が非常に速く、どこの店舗よりこの良さは劣らない。
「少しこのパン固いかもしれないわね。今度焼くときは火加減を弱めにお願い、お空、お燐」
「「了解です!!」」
パンの製作は基本的にペット担当なのだが、大抵さとりやこいしも手伝っている。
運営に関してはさとり、こいし両名がやっている。
時折、営業中のほかの店舗に出向いては色々見て回り、商品を購入する。
実際に他の店舗の雰囲気や客足、何を購入しているのかなどを調査し、それを活かす。
さとりには第三の目があるため、客が思っている事を読み取る事が出来る。
やはりこれは外せない、こう言うものは無いのだろうか、などの意見は特に注意して読み取る。
覚りだからこそ出来る事を上手く運営に生かしている結果が、現在の売上一位に結びついているのだろう。
次に「パン工房 ふじわら」
主に調理しやすく、そして簡単に作れるパンを販売している。
様々な食パンやベーグル、バケットにクロワッサン、カイザーロールなど、外の世界から流れてきている、基本的なパンが多い。
それに加え、加工パンも沢山揃えている。
サンドウィッチやハンバーガー、焼きそばパンやコロッケパン。
庶民的な味が好評である。
スイーツとは言えないものが多いが、パン屋としての勢力としては強いものがある
「苺のジャム、美味しいね。店頭に一緒に並べておくのもいいかもしれない」
「そうだな。パンの隣の所、あるいは会計所に置いておくのが効果的かな」
試食会を開き、そのたびに新しい味や組み合わせを探る。
このパン屋は、なるべく自家製であったり、幻想郷で採れたものを使うようにしている。
そうすることで、客は安心感を得る事が出来るのだ。
「一応、作り方も書いておくとしようか」
「それがいいわね」
また、作りやすいパンと言うことで、家庭でも作れるように無料で作り方の書いた紙を設置している。
自分たちで作った方が美味しいかもしれないという、そういった思いからのものだ。
自分たちで作って、そしてアレンジを加えて新しい味に変えていく。
そういった、料理の楽しみを知ってもらいたいからである。
パンを作るのは、妹紅が担当している。
最初は慧音が作るはずだった。
しかし、寺子屋の先生をしている為に作っている暇が無い。
なので、慧音はパンを作る技術を妹紅に教え、寺子屋へ行く前の時間や、休み時間、終わった後を利用してパン作りに協力している。
「さてと、それじゃあちょっと印刷を頼んでくる」
「気を付けてね、慧音」
穏やかな雰囲気も、人気の一つである。
最後に、「Magic Sweets House」が来る。
しかし、洋菓子を購入する目的の人達が多い為、パンで売上が最下位でも気にすることはない。
洋菓子を買うついでに、パンも買おう、という気を起こさせる工夫をしているので、パンも売上が他の二店舗と僅差でいられるのである。
洋菓子同様に、外の世界の小難しいような名前のパンが多い。
しかし、名前はともかく、味は他では味わう事の出来ないものばかり。
他の二店舗の固定客を動かす工夫にも繋がっている。
ちょっと変わったパンを食べてみたいと思わせて入店させればこちらのもの。
様々なパンだけでなく、他にも魅力的な洋菓子がショーウィンドウに並んでいるのだ。
変わったパンを買うついでに、洋菓子も……。
こうする事で新たな客を増やす事が出来るのだ。
「私達のマーケティング戦略、そして幻想郷には無い、珍しいスイーツで固定客をゲットね!」
「あぁ、私達が最強だぜ」
現在、七店舗を通して最大の売上を誇る店だからこその台詞だ。
スイーツ評論家の早苗も、二人のスイーツには大好評だった。
「外の世界にあるものと比べて劣りません。有名店と競争できる程度のレベルです。売上ナンバーワンと言うのも頷けます」
パンの売上は僅差で最下位なものの、味は早苗が絶賛する店である。
最後に、和菓子同士の場合
和菓子は、他のお菓子と比べて外見がとても重要になってくる。
綺麗かつ優しい色であったり、ぬくもりを感じるような、そんなものが必要とされている。
いかに上手くあるものを真似て作る事が出来るか。
和菓子は、花鳥風月を形と色で映し出すものだ。
表現力や細かい技術が必要とされる、もっともお菓子としては難しい部類である。
売上の順番としては、一位は差があるものの、二位と三位は僅差である。
まず、一位の「和菓子処 しらたま」を見てみよう。
しらたまは、妖夢一人で切り盛りしているお店だ。
何処の店を探しても一人で沢山のスイーツを作る場所なんて無い。
それでもちゃんと滞り無く運営していけるのは、妖夢の技量だろう。
一人でも大丈夫だという、己の技術への自信。
それが、売上一位へと結びついているのだ。
「さてと、今日も頑張らないと」
早朝、一人起きた妖夢は白玉楼で主人の朝食を作る。
主人も早起きな為、妖夢としては嬉しいものだ。
朝食などを済ませてからすぐに職場へ向かい、和菓子を作る。
前日に仕込んでおいた素材を用いることで、時間短縮ができるのだ。
機械に頼らず、己の力のみでもちをこねる。
普段から鍛えられているその腕だからこそ出来る技だ。
「よし。次は、っと……」
あっという間に一種類の和菓子が出来あがる。
慣れた手つきは職人を思わせる。
しかし、妖夢はただ作るのが速いだけではない。
甘さを引きたてる塩の使い方と分量、鮮やかに見せる為の配色バランスや自然な美しさに見せる技術。
そして、手のひらの使い方がとても上手い。
丸める、形を整える、餡や栗を包むなど、そういった動作に使う手のひら。
その使い方と力加減が素晴らしいほど絶妙なのだ。
手先の器用さなら、人形遣いのアリスや医者の永琳、エンジニアのにとり、魔法使いのパチュリー等に並ぶほどかもしれない。
やがて開店時間を迎える頃には、ショーウィンドウに沢山の和菓子が並んでいる。
どれも色鮮やかで美味しそうだ。
「いらっしゃいませ」
接客の丁寧さも、人気の一つである。
次に、「御菓子処 永遠亭」
優曇華と、永遠亭から引きつれた兎達と共に作り上げていく和菓子。
こちらの和菓子は、様々な造形の種類があり、客の目も楽しませている。
本物の花を見ながら作る練習を行ったり、師匠の永琳に時折教わるなど、向上心に溢れている。
まだまだ未熟な点もあるので、これからが楽しみなお店でもある。
また、このお店の一押しの商品として、うさぎの形をした練切や上生菓子などがある。
非常に可愛らしく、そしてとても細かいところまでこだわっている。
それもそのはず、販売員全員が兎であり、兎については詳しい為、素晴らしい程の再現度を可能に出来るのだ。
「あ、つまみ食いしない!」
まぁ、兎は悪戯が好きな為、少し集中力が切れると悪戯に走ったりする。
極力そんな事が無いように厳選した兎達がいるのだが、それでも時々つまみ食いをしたりする。
売上に大きく関わりはしないが、自覚をもって欲しいものだと鈴仙は思う。
兎のOJT、及びOff JTを行い、販売員としての自覚を持たせるのが、今の課題だろう。
しっかりとしたお店には、まだもう少し時間がかかりそうだ。
最後に、僅差で最下位の「お菓子専門店 命蓮寺」だ。
命蓮寺は、和菓子だけでなく、洋菓子やパンにも手を出している為、和菓子の売上が最下位でも他の場所で補える。
七店舗の中でも安定した売上を誇る店舗である。
指揮官としてのナズーリンの力量がその売上に大きく反映していると言っても過言ではない。
また、販売員にいる寅丸星は毘沙門天の弟子であり、縁起がいいと言うことで購入するものもいる。
「ぬえ、しらたまの状況をまとめてくれた?」
「ばっちりだよ」
「よし。この前集めた情報とかも合わせて陳列の場所を変えるから、村紗と一輪手伝って」
「了解」
迷いの無いナズーリンの指示が飛び交う。
その指示を反論する事無くすんなりと聞き入れる命蓮寺の面々。
信仰も関わってくるとなると皆目の色が変わる。
彼らが主、聖の為なら喜んで仕事もするだろう。
その聖はと言うと、村紗や一輪達と一緒にスイーツを作るお手伝いをしている。
それも聖の一つの楽しみだと言うのだから嬉しいものだ。
「さぁ、開店するよ。今日も気合入れていこう!」
「「「「「おー!」」」」」
それぞれが声をあげ、開店を迎える。
元気で明るい雰囲気と、落ち着いた店内はどの店にも負けていない。
このように、どの店もそれぞれ特徴を持っており、似たような店なんて無い。
それぞれが自分たちのしっかりとした意識と目標を持って販売している。
しかし、その中でも一つ、全ての店舗が同じ事を思っている。
それは、お客さんに喜ばれる事。
そして、そのお客さんを笑顔にする事。
何も利益の為だけに働いているわけではないのだ。
早苗のひとことで始まった事だった。
最初は利益だけを考えていた。
だけど、自分たちの作ったものを、喜んで食べてくれる。
それが心底嬉しくて、心地よかった。
だから、利益だけを求めるのではなく、人々の笑顔さえも求めた。
スイーツによって、販売者側の意識が変わったのだ。
笑顔の為に働くことの喜びを実感することができる。
その事を知っただけでも、大きな利益だった。
今日も、幻想郷の笑顔の為、お店を開く。
どの店もお店の看板を、CLOSEからOPENに変え、笑顔で客を招き入れる。
「いらっしゃいませ!」
今日も元気な声が幻想郷に響き渡る。
第一次スイーツ戦争の終結は、まだまだ先になりそうだ。
信仰?
どのお店にも本気で行ってみたい…ちょっと幻想郷に逝ってきます!!!
みんなトップになりたそうなこと言っていいますが、ナンバーワンよりオンリーワンな気持ちを忘れていないのがいいですね。
ただ安易に皆にお店をやらせてみただけでなく、いろんなところで理にかなっていることばかりで、読み進めるたびになるほど!と思わせてくれることばかりでした。
いやー皆エプロンとか割烹着とか着て接客してる姿想像すると本当に幻想郷住人になって毎日通いたくなります。
ナズーリンは少し星ちゃんの扱いを学ぶようになってきたなww
星ちゃんに作らせたら絶対に砂糖と塩を間違えるからな。上手いこと言って作らせないようにしたんだなww
それはそうと、みんなが早苗さんに味見をさせたためにすっかり肥えた早苗さんオチを想像してた。すんませんww
紫ですら仕事してるのに
腹ぺこ亡霊姫ときたら
私見ですが、お店を紹介する描写がやや単調に感じるかなぁ。
個人的には神の視点ではなく、例えば情報誌を書いている文が、たまに独断や偏見を
交えて紹介していく構成だと嬉しかったかも。
また次のお話を楽しみにしていますよー
マーケティングの勉強になるなぁ φ(..)カキカキ こういうのを絡ませることで人妖の営みに不思議なリアリティがでてくるんですね。
その具体的な手法や差異、成果が伺える部分がほとんどなく
お菓子そのもののシズル感や個性をイメージさせる描写が見受けられなかったので
どのお店も同じように見えてしまったのが残念。
その中でもこけね店は地域密着型という個性があって
実際にあったら行ってみたいと思いました。
職業ネタは大好きなので、またこういうお話が見てみたいです。
こういう新しい流れの中での穏やかな話はいいなぁ
あとこの食べ物、かつ、儲け話しに霊夢がかかわってない奇跡(笑
この先どう展開するのかと期待しながら読んでいたら
それらの設定紹介だけで終わってしまった。
起承転結の承で終わってしまっている読感。
このままでも良い感じに楽しく読むことができますが,転と結があればより良い話になるかと思います。
要するにちょっともったいない
もし時間があるようでしたら,『改』もしくは『続』という形で出されてはいかがでしょうか
あと、続編希望します
評価ありがとうございます。
指摘ありがとうございます、修正いたしました。
私もお供しますよ!
>2 様
評価ありがとうございます。
料理の本を読んでるとほんとお腹減ってきますよ
>5 様
評価ありがとうございます。
もう甘いもの大好きなんでいろいろ食べ歩きしたいですね。
>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
少しばかりのマーケティングの知識が役になったようですね。
もうナズーリンと星ちゃんは結婚すればいいと思(ry
そのオチは考えてませんでした、面白いオチにできそうだなぁ、それ。
>風峰 様
評価ありがとうございます。
甘党の私もついていきますよ!!
>19 様
評価ありがとうございます。
腹ペコ亡霊姫は妖夢に和菓子の作り方とか教えてそうなイメージですね。
>コチドリ 様
評価ありがとうございます。
ひらがなにして正解だったかもしれませんね。
文が紹介するように書く……確かにいいですねぇ、それ。
次作も頑張りたいと思います。
>28 様
評価ありがとうございます。
あるのかぁ、行きたいのぅ。
少しばかりの知識ですが勉強になったようなら幸いです。
>29 様
評価ありがとうございます。
うむぅ、やはり少しばかりの知識じゃ中途半端でしたか。
職業ネタかぁ、何かあるかなぁ。
>豚 様
評価ありがとうございます。
どうも、向日葵ですよ~。
霊夢が食べ歩きする形でもよかったなぁと今更ながら思いますわ。
>53 様
評価ありがとうございます。
自分の年の数と同じだけ買いましょう。
>57 様
評価ありがとうございます。
完全にひこまろですね、わかります。
>58 様
評価ありがとうございます。
ちゃんと物語の構成とか考えていなかったからでしょうか。
そういう終わりかたって結構自分の作品にあるので、改善したいと思っているのですが……。
改善できるよう努力していきたいです。
>61 様
評価ありがとうございます。
続編ですか、なるほど……。
面白いかもしれませんね。
>66 様
評価ありがとうございます。
確かに、地域密着型のお店は長生きしそうですよね。
一応続編はありますよ。
続編、お待ちしております。
普通に終わらせていただきました。
続編は一応あります、一応。
個人的には守矢にも何かやって欲しかったなぁ
評価ありがとうございます。
大きな戦いなんてない、平和な争いですわ。
守矢は犠牲になったのだ……。