Coolier - 新生・東方創想話

All You Need Is Love

2010/05/21 23:23:54
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 惚れるとはどういう事なのでしょうか。
 気がついたら好きになっていることが、惚れる、なのでしょうか。
 もし。



 もしそうなのだとしたら、それはどこまでが「惚れていない」で、
 どこからが「惚れている」なのでしょうか。
 私には、判りません。

 黄色と緑を混ぜれば黄緑になるし、青と赤なら紫になります。
 そんなことは私だって知っています。
 でも、黄色とはなんなのでしょうか。黄色は黄色です。黄色です。それしかありません。
 それ以上は私には説明できません。

 どうして私はこんな事を考えているのでしょうか。
 いつから、そう、いつからこんな事を考えているのでしょうか。
 以前はこんなことを考えませんでした。つまり、ただ生きてたんだと思います。
 じゃあ、それが変わった、意識するようになったのはいつのことだったでしょう?

 私がふと上を見上げると青い空が広がっていました。



*          *          *




 私はその時、封印された聖を復活させるために真っ青な空の中を飛んでいました。
 そこで、たまたま通りかかった湖の近くで、ある女性を見かけたのです。
 名前も判らぬその方は、緋色の長髪をなびかせながら、門の傍に佇んでいました。
 教養の無い私には陳腐な文句しか出てこず、非常に心苦しいのですが、
 彼女はこの世のものとは思えぬほどの美貌をたたえた御方でした。

 その機会は、御姿を上空から見掛けただけでした。
 ただ、それだけのことだったのです。
 本当にそれきりのことでした。
 ですが、聖が復活して地上で生活するようになると、
 私はどうしてか、あの御方の御姿をもう一度垣間見たいと思うようになりました。

 きっと、私は一目惚れをしてしまっていたのでしょう。
 気付いたときには、既に心を奪われていました。
 会いたいのに会えない、御姿を見たいのに見れない。
 もどかしさがより一層、私の切ない気持ちを煽りました。

 以前から私は毎日、聖によるお経を聞くのが日課でした。
 ですが、今ではそのお経の内容は、半分も頭に入ってきません。
 私の頭の半分以上を、あの御方が占拠してしまっているのです。

 くらくらしました。
 それこそ、体中の骨が軋む音を上げるくらいに。
 日々、私はあの御方への偏執的とも言える情愛を深めていったのです。

 晴れの日は、あの御方の美しいお肌が焼けてしまわないかと心配で。
 雨の日は、あの御方が傘も差さずに立ち尽くしているのだと思うと心配で。
 嵐の日は、あの御方が飛んでいってしまわないかと心配で。

 真に御恥ずかしながら、あの御方のことを思って懸想をしたこともありました。
 私は、後にも先にもないだろうという程の、激しい自己嫌悪の念に駆られました。
 あの御方を想う気持ちは、そんな汚らわしいものではないはずだと。
 清い心であの御方を思い続けようと、決意を固めました。


 でも、それも長くは続きませんでした。
 まるで季節が移ろうように、心も移り変わってしまったのです。



*          *          *




 ぼんやりと彼女のことを思っていました。
 ただ、何をするでもなくぼんやりぼんやりと。
 思うというのは、考えるまでもなく彼女の顔が私の心の中に浮かび上がってくるのです。
 時には朧気に、ある時ははっきりと。 
 かつて見たような姿で。あるいはかすんだ雨の中に。  
 それは楽しい時間、多分楽しかったのだと思います。
 幸せ、だったのかも知れません。 



 想うだけで幸せでした。
 それが脆くも崩れてしまったのは、ある深夜の出来事でした。



 私が浅い眠りについていると、星の部屋から喋る声が聞こえたのです。
 何事かと思って聞き耳を立てていると、信じられない内容が聞こえてきました。
 
「だ、ダメですナズーリン……! 皆に気付かれてしまいますよっ……ああ……」
「ハハッ、そんなこと言ったって、ご主人の宝塔はこんなにも正直だよ」
「い、言わないで下さいっ! 恥ずかしいっ……!/////」
「ほらご主人、ちゅっちゅの時間だ」
「ちゅ、ちゅっちゅうぅぅぅ――……」

 なんとナズーリンが、星に夜這いをかけていたのです。
 私は、愛欲の楽園パレードに紛れ込んでしまったのでしょうか。
 その後、朝方まで続いた二人の情事を、ただ呆然と聞いていました。

 周囲を憚らずに愛し合う彼女たちを見て、
 羨望の感情と共に、どす黒い嫉妬の感情がこみ上げてきました。

 私だってあの御方と、もっと親しくなりたいのに。
 私だってあの御方と、朝までちゅっちゅしたいのに。
 私だってあの御方に、「/////」なんて表情をさせてみたいのに!

 ……、

 いつぞや懸想をしたときの決意など、所詮まやかしでした。
 私だって、欲望のままにあの御方とらぶらぶちゅっちゅしたいのです。
 それなのに、叶わぬ望みだと思うと、涙が溢れてきました。

 私は他の生物たちとは違います。
 蕩けるような甘い恋や、身を焦がすほどの愛を知るために、
 この世に生を受けた訳ではないのです。



 苦しい。ある時、そう思いました。



 どうしてなのでしょうか。
 私には分かりません。
 でも、考えてみるとずっと苦しかったような気がするのです。 

 でも、おかしいのです。
 私はなんだか幸せな気分だったのです。
 それがどうして苦しくなるのでしょうか。
 また、そのことを考えると酷く気持ち悪くなって、余計に苦しくなるのです。

 ぐるぐると煮え切らない思いだけが体を駆け巡っていて、出来るのなら体の内側に手を突っ込んで中に詰まった物を掻き出したいのです。
 再び苦しいと思ったその時、私は自分の体を自分の手で傷つけてしまいました。

 ぼろぼろになった私の体を見て、他の皆は慌てふためきました。
 家族は、情緒の不安定な私を心配してくれました。
 こんな私が自分で傷つけた体を、必死になって庇ってくれました。
 どうにかして治そうと、家族みんなが親身になってくれました。

 しかし、私は彼女らの暖かい手が差し伸べられた瞬間、気づいてしまったのです。
 私の求める物はここにはないことに。
 まるで、心が雨漏りしたようでした。
 今まで自分を支えてきた何かが崩れていくのが分かりました。

 何がいけなかったのでしょうか。
 果たして何が……。

 どうして、この場所にいられることが幸せではなくなってしまったのでしょうか。
 自分がいけないとか、直さなければいけないというのではなく、もしかしてこの居場所が私には合わないのではないのかという傲慢が心の隙間に湧いて出た時、目の前が暗くなりました。
 果たして私はどうすればいいのか。



 ――満たされない。

 苦しい。



*          *          *




 ふと思った。

 私はこのまま風景の一部になってしまおうと。
 自分を傷つけることもなく、悩むこともなく。
 鳥が飛び、花が咲くように私もそうしていよう。

 そうすれば、誰にも迷惑をかけない、苦しくなくて済む。
 私はかすかにふき寄せる風に身を任せようと思った。

 頬にあたる風は気持ちよかった。
 しばらくそのままでいただろうか。
 しばらく。

 どのくらい? 

 ――彼女のことを忘れられるくらい?
 
 どれくらい経てば彼女のことを忘れられるのだろうか。
 
 そう月日も経たない内に、私は夢を見た。
 それは彼女の夢だった。それで、夢の中の彼女は綺麗だった。
 
 「やめてよ」

 夢の中なのか、現実なのか分からなかったけど、私は言った。
 でも、彼女はその長い腕で何も言わずに私を抱きしめた。

 「やめてって言ってるでしょ?」

  ――どうして?

 「もう、あなたの事は忘れたの。私、こんなに頑張ってるんだから夢の中にまで出てこないでよ!!」

 ――泣かないで

 「私、泣いてない、泣いてなんかいない」

 私は多分、泣いていたんだと思う。
 そして目が覚めて、私は確実に泣いた。
 夢だと気づいたことが悲しかったのかも知れないし、他に何か理由があったのかもしれない。
 
 どうして、こんなにつらい目に遭うのだろう。
 ただ起きているだけでもつらいのに、どこにも逃げ場所が見つからない。
 私はもっと平穏に毎日を過ごしたいだけなのに。
 何も悪いことなんてしてこなかったはずなのに。
 
 一体、悪いのは誰なのだろう。
 私をこんな風に悩ませる彼女が悪いのだろうか。
 考えるのがつらい。



*          *          *




 聖が誰かと話している。
 私はそれを聞こうと思った。
 
 でも、聞こえなかった。
 前はあんなに聞こえたのに、何も聞こえない。
 聖が私から離れてしまったのだろうか。
 本当は違う。
 私がどうでも良くなってしまっただけだ。
 ただ、聞こうとしなかっただけで、聞こうと思えば出来るのだろう。
 でも、それはきっと今の私には難しすぎる。

 聖は悪くない。
 駄目なのは私だ。
 
 「何とかしなきゃ……」

 私は呟いていた。
 何とかしなきゃ、そんなことは分かっている。
 悩んだり、自分を傷つけてる場合じゃない。
 そんなことをしたって何の解決にもならない。

 「どうしよう」 

 私はいつだってそうだった。
 他人任せにして、ただじっと見ているだけ。
 そんなことじゃいけないと分かっていたのに。

 私は自分がどうするべきなのか分かっている。
 恐れてはいけない。
 私の苦しかった事も、悩んだ事も、どれぐらい好きなのかを彼女に伝える。

 自分から立ち上がらなければ、いつまでも淀んだまま生きていかなければいけない。
 悩んで悩んで、ずっと苦しんで生きていくのは、もうまっぴらだと思った。
 今のまま過ごすのは、彼女に嫌われるよりも辛い。
 それならば、私は。
 
 そしてあの方は――

 ふと、上を見上げるといつかと同じ青空。


 だから私は、大好きなあの御方――紅魔館に向かって、飛立った。
 それはもう、彗星のごとく。マッハ3くらいで。



 

*          *          *




 美鈴は、己の目を疑った。
 現実にはありえないと思っていた出来事が起こっている。
 しかし、目前においては、巨大なそれが水しぶきを上げながら、
 湖の上を滑走してくる。マッハ3くらいで。

 風を感じた。緋色の長髪がなびく。
 凄まじい轟音が耳をつんざき、辺りの木々はおろか、大地さえ揺らす。
 湖上の蓮の花びらが無残にも消し飛び、宙に舞った。

 美鈴は、感覚で理解した。
 紅魔館が危ない。なんだか判らないが、とにかくまずい。
 私が止めなければ、全てが終わってしまう。

 中国4千年の歴史の知が、美鈴に語りかける。
 やっぱりラーメンといえば豚骨醤油だよね、と。
 
 美鈴は紅魔館の前に立ち塞がり、拳を握り締めた。
 目の前から飛んでくる建築物の直線状には、
 咲夜さんと自分の愛の巣――もとい紅魔館が存在している。

「ウオォォォォォ」

 怒号一発。
 気合を入れた美鈴は、玉砕をも覚悟で紅魔館を襲う「それ」と相対した。

 だが、地表すれすれに上陸したそれは美鈴に目もくれず跳躍し、
 唖然とする美鈴の頭上を遥かに跳び越した。

 美鈴は振り返り、ゆっくりとそれの描く放物線を追う。

「あれは確か、命蓮z――」

 美鈴の脳裏を、某ネズミー王国の住人を擁する寺院の名前がよぎる。
 次の瞬間、命蓮寺は紅魔館と濃厚なキスを交わし、爆発した。



 地下に住んでいたため、この爆発から唯一生還することができた
 フランドール・スカーレット氏はこう語る。

「気ぃついたら紅魔館、なくなってんねんけど」

*          *          *

 命蓮寺×紅魔館。
 建物だって恋したっていいじゃない!
 以上、Takuとyuzの合作でお送りしました。

Taku/yuz
http://3ehorloge.web.fc2.com/
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コメント



0.3610簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
一体何考えてんだW
3.70名前が無い程度の能力削除
www
5.80名前が無い程度の能力削除
恋する建築物か……またひとつ、創想話に新たな風が吹き込んだようですね!
6.100奇声を発する程度の能力削除
いやー盛大に笑ったwwwwwwwww
7.80v削除
ちょっともう一回読み直して来ます。紅い髪誰だっけなぁと思ってたら……野球ボールの代わりに隕石が迫ってた。
……何がどうなってこうなってたッ!?ww
9.90名前が無い程度の能力削除
なん…だと…
10.80名前が無い程度の能力削除
ぶ、ぶらっくゆーもあ??でも、建物にも色々事情あるんだろうし……
あ、それと自分も豚骨醤油一番好きです。
11.90名前が無い程度の能力削除
なん…だと…
12.70名前が無い程度の能力削除
予想のはるか斜め上wwwこれはすごいwww
14.50名前が無い程度の能力削除
恋する乙女はマップ兵器。
16.90名前が無い程度の能力削除
どうやら幻想郷には我々の知らない世界があるようだ…
20.80コチドリ削除
元から紅い紅魔館に、「/////」なんて表情をさせるだと……
どんだけハードなプレイを思いついたんだ、命蓮寺!!
21.80名前が無い程度の能力削除
やはり付喪神化していたか
23.90ぺ・四潤削除
普通に感動したんだがww ところで百合って命蓮寺も♀なのかww
今、時代は無機質ちゅっちゅなのかww
あと、ナズ星ちゅっちゅの様子を詳しく!!
25.90名前が無い程度の能力削除
つまり建物たちはその中で起きる全ての事情を見ること聞くことが可能なのか

すげぇ
33.100MR削除
途中から違和感がMAXIMUM!!
35.100\すげぇ/削除
オチが予想外過ぎるwww
37.100名前が無い程度の能力削除
もう家どうしが結婚してみんなで住めばいいよw
楽しい13人家族w
39.100石動一削除
これは予想の斜め上を行き過ぎてwwww
話しにのめりこんできた所でマッハ3は卑怯すぎるwww
42.100名前が無い程度の能力削除
ヤンデレにも程があるぞwwwww
44.100名前が無い程度の能力削除
早苗 「それは無いだろ…常識的に考えて」
47.90名前が無い程度の能力削除
命蓮寺、
どれほどの大きさの物なのかは知りませんが寺という字があるからにはそれなりの大きさであるのは想像に難くないでしょう。

その大きさの物がマッハ3約3000km前後で飛んでくるとかソニックブームさんマジパネェッス
というか「どうして私はこんな事を考えているのでしょうか。」ってこっちが聞きたいわww
51.100名前が無い程度の能力削除
病んでるのはあなたの心だww
52.100名前が無い程度の能力削除
なんという砲爆撃支援要請wwwww
54.80名前が無い程度の能力削除
なんか、まさに二人の作風を足してニで割った感じだ。
この意味不明な感じ。
55.100名前が無い程度の能力削除
最初、雲山オチかなぁ、と思ったんですが、
まさかこうくるとは
57.90名前が無い程度の能力削除
紅魔館の腕とか髪の毛とかどこよ!?
タグでてっきり住人の話かと思ったらw
59.100名前が無い程度の能力削除
爆発オチやめろってwwwwwww
61.100名前が無い程度の能力削除
一目惚れからちゅっちゅまでのラブコメがマッハでどきどきした
67.80mthy削除
タグ、伏線というか実は真実そのままだったのかww
オチに唖然となりましたwww
73.100名前が無い程度の能力削除
人類には早すぎますね。分かります。
74.50名前が無い程度の能力削除
どうしてこうなった
91.60名前が無い程度の能力削除
衝撃のラストw
95.100名前が無い程度の能力削除
ハッピーエンド?
100.100名前が無い程度の能力削除
なんだ…ただの天才かwww
104.70名前が無い程度の能力削除
予想の斜め上というより俺とは次元が違う気がするww
106.50Admiral削除
なんぞこれw
110.100名前が無い程度の能力削除
命蓮zーww
112.100名前が無い程度の能力削除
ぼくの あたま が爆発しました。
114.90adcapr削除
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116.100名前が無い程度の能力削除
意味がわからん
わけがわからん
119.100うそっこ大好き削除
ムラサか一輪のどっちの視点なのか悩んでたらそれどころじゃなかったw
120.100名前が無い程度の能力削除
後半、勢いだけで突っ走ってる感じが素晴らしい。
前半の描写が丁寧なだけに余計草www

これが5年も前の作品なのかぁ……すげぇ……。