それは、きっと……誰にでもある普通の話。
宿敵と書いて、友と呼ぶ
「ちょっと!パチュリー!なんであんたがいるのよ!?」
「私がここにいちゃいけない理由でもあるの?」
ある晴れた日の午後。
『気分転換しようぜ~』と一方的に告げられて、そのまま魔理沙に連れられて外に飛び出した魔女、パチュリー・ノーレッジは、魔理沙の箒に乗せられて、魔法の森にとやってきていた。普段は紅魔館の大図書館で一日を過ごすパチュリーにとって、彼女にとって特別な存在である霧雨魔理沙とこうして、外にとやってきたことは、とても嬉しいことであった。こんなことなら、メイドである咲夜に頼んでお弁当でもつくってもらえばよかったと思いながら、キノコ採集を始めている魔理沙の背中を見つめている。
「パチュリー!お前も、一緒にキノコを探してくれよ?」
「知ってるでしょ?私はあんまり運動は得意じゃ……」
「運動は、得意不得意でなんて決め付けるもんじゃないぜ!慣れれば、すぐに動けるもんだ」
パチュリーを見る魔理沙。
彼女の満面の笑みは、図書館という狭い世界でしかいなかった、自分に新しい発見をさせてくれる。本は書かれてあることが全てであり、それは変化はしない。だが、魔理沙は、一つ一つの表情が全て違う。咲夜や、レミィなんかよりも、彼女の表情はいろいろなことを物語ってくれる。私は、彼女という本をもっと読みたい。もっと知りたい。
「魔理沙、あんたこんなところでなにし……ぱ、パチュリー!?」
偶然やってきたのは、アリス・マーガトロイド。彼女は上海人形と一緒にどうやら森を散歩していたようだった。
「おう!アリス。今日はキノコ博士の、パチュリーと一緒に探検しているんだぜ」
「……」
「……」
魔理沙の笑みとは裏腹に互いを見るアリスとパチュリー。
その表情は、とても仲が良いとは言えないものである。
「こんなところにいると、またすぐ持ち前の喘息がでるから紅魔館に帰ったほうがいいんじゃない?」
「自分の体が自分が一番良く分かってるわ。貴方は、はやく友達の人形と一緒におうちに帰ればどう?」
「そっちこそ余計なお世話ね。私のほうがキノコをとりに魔理沙とは一緒に行っているんだから、私に任せてくれれば、魔理沙も満足してくれるわ」
「いつも捕りに行っているのに、私を頼ったっていうことは、普段きっと酷いものをつかまされているんでしょうね。私を頼ってくれて嬉しいわ。魔理沙」
「なっ……くぅ~~!!引きこもり女は、図書館にひきこもってればいいのよ!」
「!!……人形しか友達がいない哀れな女こそ、早く人形の友達が待つ家に帰ればどう?」
二人の目から火花が散るようになってくると、魔理沙は混乱しながら、二人の対立を止めようと、間に入ろうとする。
「お、落ち着け2人とも!」
「「魔理沙は黙っていて!!」」
そういって2人の拳が魔理沙を吹き飛ばす。
「こうなったら弾幕ごっこで勝負をつけてあげるわ!」
「望むところよ。負けたほうは、一ヶ月間、魔理沙に近づかないっていうことでどう?」
「あら?そんなこと言って良いの?自分の首を絞めるだけよ?」
「後で、泣いても知らないんだから」
アリスは上海人形を構えさせる。
パチュリーは、脇に抱えている本を掴み、詠唱を行う準備をする。
「行くわよ!赤符ドールミラセティ!」
「木符&火符フォレストブレイス」
「こんなところで弾幕ごっこなんかするな~~!!」
魔理沙の声がむなしく響く中、人形の弾幕と、本の弾幕が交互に二人を襲う。パチュリーとアリスは互いの弾幕を回避しながら、攻撃を続けてく。2人とも魔女なだけあり、攻撃方法は違えど、相手に対する攻め方は似ていたりする。
「やるわね……」
「貴方こそ」
二人の一進一退の攻防が続く中、アリスが弾幕を回避する中で、バランスを崩してしまう。そんなアリスに迫るパチュリーの弾幕。アリスは被弾してしまい、そのまま地面に倒れてしまう。アリスは息を呑む。パチュリーは被弾したアリスに止めとばかりに、魔法陣を展開する。
「これで……日符ロイヤルフレアー!!」
魔理沙のために……。
パチュリーは、そのことだけを考えて、彼女の中での最強のスペルカードのひとつを、打ち出す。巨大な光が、アリスを襲う。アリスはそれを避けきれないことを悟り、目を閉じて、身構える。だが、そんなアリスの前に立つ影。
「マスタースパーク!!!」
強力な光と供に、ロイヤルフレアーを弾き飛ばす。
パチュリーは、マスタースパークをなんとかかわす。マスタースパークは、青空にと飛んでいった。アリスとパチュリーそれぞれが魔理沙を見る。魔理沙は腰に手を当てて溜息をつく。
「2人ともいい加減にしろ!こんなことをするために、キノコ採集しに来たんじゃないんだからな。パチュリーも、あんな距離で弾幕なんかはって、アリスになにかあったらどうするんだ?弾幕はゲームだぜ。人を傷つけるものじゃないんだからな」
魔理沙はそういうと、パチュリーから視線を反らして倒れているアリスにと手をかける。
「大丈夫か?アリス?」
「あ、私は別に……」
アリスは魔理沙の背中で自分たちを見つめるパチュリーを見た。その表情は今まで見たことがなかった。目を見開いて、呆然とした表情……。アリスは彼女に声をかけようとした。だが、彼女は後ろを振り向いて、その場から走り去っていく。
パチュリーは、その2人のやり取りに、顔を背けた。そして、そのまま、森の中にと姿を消していった。パチュリーは、2人の間にいることが出来なかったのだ。自分は魔理沙に拒絶された。魔理沙はやはり、アリスが一番大事なのだと……。自分なんかよりも。今更、自分は何を思っていたのだ。
「……私よりも、アリスのほうを択ぶに決まっているじゃない」
アリスは、自分と較べて明るくて、外に出ていっぱい遊べて……。
それと比べて自分はどうだろうか?
いつも図書館に閉じこもり、暗くて……。
そんな私に、あの自由な魔理沙が隣に立ってくれるはずがない。
私は、彼女を奪われたくない思いで、魔理沙に嫌われるようなことをしてしまった。
「自分が、嫌になる!うっ、ごほごほっ……」
喘息。
私の体は、どうしてこんなにも……。
赤い赤い……紅魔館内、パチュリー自室。
幻想郷随一の薬剤師である八意永琳の診察を受けたパチュリーは自室で、ベットで横たわっていた。天井の薄暗い光を見ながら、パチュリーは、誰にも今の顔を見せたくなくて、布団の中に顔を隠していた。パチュリーの容態を心配する小悪魔が、声をかける。
「パチュリー様、喘息持ちなんですから、無理をしてはいけないですよ?……なにかあったんですか?」
パチュリーの様子に異変を感じたのか、小悪魔が問いかける。だが、パチュリーは、何も答えたくはなかった。一緒にいたかった。ただそれだけだったのに……。どうしてこんなことに!?パチュリーの頭に浮かぶ1人の女……アリス・マーガロイド。彼女が自分の邪魔をして……彼女が全部悪い!いや、違う。そんなことはない。だって、彼女は、私と同じ思いを持つ人なのだから。魔理沙に惹かれた、別の場所にいるもう1人の自分なのだ。
「……ごほごほっ」
咳がでる……。
おかしなもの。
いつもなら、こんな咳ぐらいいつものことだから、どうとでもなるのに。今回のはいつにも増して、苦しく感じる。
「魔理沙……、アリス。ごめんなさい」
パチュリーは毛布の中で頬に熱い涙を流す。
「……」
アリスは、家に戻っても、どうしても、パチュリーのあの顔が忘れられないでいた。彼女のあの、表情は哀しみ、苦痛それらが混じっていたものであった。そして、彼女はあれから姿を見せていない。魔理沙がいつものように泥棒に入ると、どうやら風邪を引いているようで、面会謝絶ということらしい。魔理沙はあのときのことなんかもうとっくに忘れているし、許している。だけど、パチュリーは自分が許せないのだろう。
「どうしたんだ?アリス?ぼーっとして」
「ん?あ、別になんでもないわ」
今日は魔理沙と2人で、魔法の本を読んでいる。
2人でいるのはとても楽しい、魔理沙と一緒だから……。だけど、なぜだろう。この心に詰まる感じは。素直に喜べない。本当なら、ここに要るはずの人がいないから。
「おーい、アリス?ここわかる?」
「え、ここは……えーっと……」
「なんだ?アリスもわからないのか」
「そ、そんなことないわよ!」
「こういうとき、パチュリーがいればなぁ……本の読み込みならアリスよりもパチュリーのほうが凄いもんな」
アリスは、魔理沙がパチュリーのことを話すときの嬉しそうな表情を見て、自分もなんだか安堵した。やっぱり必要だ。彼女が。この場所に。私達の間に。だから、私は、彼女をたたき起こしに行くことにした。
紅魔館、パチュリー自室。
面会謝絶の扉の前に紅魔館の主レミリア・スカーレットがいた。彼女もパチュリーを心配で見にきたのである。レミリアはパチュリーに声をかける。パチュリーは返事もせず、ベットで横たわっていた。
「何があったのか、問いかけるつもりはない。だが、待っていても何も解決はしない」
「……」
「お前の世界である図書館をさらに縮め、今はそのベットの中。パチュリー、お前が欲しているものは、そこにあるのか?」
「……」
「運命とは、自分で切り開くものであることを忘れるな」
レミリアはそれだけ告げると、扉から離れていく。パチュリーにとって、レミリアの言葉は、あまりにも大きいものであった。そんな勇気があれば、もっとはやく、彼女に思いを告げている。だけど、私にはそんな勇気は愚か、この部屋から出る勇気さえ今はない。大切な人を傷つけてしまうことしか出来ないのなら……。
「パチュリー様。お客様です」
扉のノックの音と供に聞こえて来る小悪魔の言葉に、パチュリーは体を起こす。誰とも会いたくない。自分は人を傷つけることしか出来ないんだから。だから、誰と会っても、私は。
「言っているでしょ?誰とも会いたくないわ。申し訳ないけど、そのままお帰りになってもら……」
パチュリーの言葉の途中で彼女の部屋の扉が吹き飛ばされる。驚いたパチュリーの前に立っているのは、アリスである。
「なにしにきたの?私を嘲笑いにきたのかしら?」
「……」
「貴女の勝ちよ。魔理沙とお幸せに……私の事はもう放っておいて」
「……ない」
「え?」
アリスの小声にパチュリーは再度聞きなおした。アリスはパチュリーに掴みかからんばかりの勢いでベットで寝ている彼女に詰め寄る。
「ふざけるじゃないわよ!なに言ってるのよ!!」
「なにって……私は……」
「楽しくなかったのよ……」
アリスの言葉にパチュリーは、アリスを見つめる。アリスは、パチュリーを見つめながら、ゆっくりと言葉を口から出していく。
「楽しくなかった。魔理沙と過ごすのはとても楽しい。だけどね、足りないのよ」
「足りない?」
「ええ、そうよ……貴女がいない」
「……」
「私ね。わかったの。魔理沙と2人でいるだけじゃ駄目だって……貴女と2人で魔理沙を口喧嘩しながら、競い合うことが……必要だって」
「アリス……」
「だから、このままじゃ納得行かないのよ!あんたに譲られたみたいで。むしゃくしゃするの!私にしかないもの、あんたにしかないもの……それで、しっかりと勝負しましょう」
アリスの言葉に、パチュリーは微笑む。
気がついていなかったのは、自分のほうだ。そうか……自分が求めているのは、魔理沙1人に限らない。自分と同じ思いを持ち、笑ったり、悩んだりする、そんな自分と同じ気持ちを共有できる相手。自分に持っていないもの、それは決して僻むものじゃない、相手にないものはないもの。だから、そんな相手がなくて、自分の持っているものを見せていけば良い。
「ねぇ、アリス?」
ベットの上で、隣に座りあう二人の魔女。
「なによ……」
「私達、似ているわよね」
「……嬉しくない」
「ふふ……私も」
私たちは、同じ人を好きになった宿敵だけれど、いなくてはならない友達。
きっと、それは誰にでもある普通のこと。
だけど、私は、そんな相手がいることを幸せに思う。
魔理沙。
貴女がしっかりと、どちらか択ばないと……私達が仲良くなっちゃうわ。
ね?アリス……。
宿敵と書いて、友と呼ぶ
「ちょっと!パチュリー!なんであんたがいるのよ!?」
「私がここにいちゃいけない理由でもあるの?」
ある晴れた日の午後。
『気分転換しようぜ~』と一方的に告げられて、そのまま魔理沙に連れられて外に飛び出した魔女、パチュリー・ノーレッジは、魔理沙の箒に乗せられて、魔法の森にとやってきていた。普段は紅魔館の大図書館で一日を過ごすパチュリーにとって、彼女にとって特別な存在である霧雨魔理沙とこうして、外にとやってきたことは、とても嬉しいことであった。こんなことなら、メイドである咲夜に頼んでお弁当でもつくってもらえばよかったと思いながら、キノコ採集を始めている魔理沙の背中を見つめている。
「パチュリー!お前も、一緒にキノコを探してくれよ?」
「知ってるでしょ?私はあんまり運動は得意じゃ……」
「運動は、得意不得意でなんて決め付けるもんじゃないぜ!慣れれば、すぐに動けるもんだ」
パチュリーを見る魔理沙。
彼女の満面の笑みは、図書館という狭い世界でしかいなかった、自分に新しい発見をさせてくれる。本は書かれてあることが全てであり、それは変化はしない。だが、魔理沙は、一つ一つの表情が全て違う。咲夜や、レミィなんかよりも、彼女の表情はいろいろなことを物語ってくれる。私は、彼女という本をもっと読みたい。もっと知りたい。
「魔理沙、あんたこんなところでなにし……ぱ、パチュリー!?」
偶然やってきたのは、アリス・マーガトロイド。彼女は上海人形と一緒にどうやら森を散歩していたようだった。
「おう!アリス。今日はキノコ博士の、パチュリーと一緒に探検しているんだぜ」
「……」
「……」
魔理沙の笑みとは裏腹に互いを見るアリスとパチュリー。
その表情は、とても仲が良いとは言えないものである。
「こんなところにいると、またすぐ持ち前の喘息がでるから紅魔館に帰ったほうがいいんじゃない?」
「自分の体が自分が一番良く分かってるわ。貴方は、はやく友達の人形と一緒におうちに帰ればどう?」
「そっちこそ余計なお世話ね。私のほうがキノコをとりに魔理沙とは一緒に行っているんだから、私に任せてくれれば、魔理沙も満足してくれるわ」
「いつも捕りに行っているのに、私を頼ったっていうことは、普段きっと酷いものをつかまされているんでしょうね。私を頼ってくれて嬉しいわ。魔理沙」
「なっ……くぅ~~!!引きこもり女は、図書館にひきこもってればいいのよ!」
「!!……人形しか友達がいない哀れな女こそ、早く人形の友達が待つ家に帰ればどう?」
二人の目から火花が散るようになってくると、魔理沙は混乱しながら、二人の対立を止めようと、間に入ろうとする。
「お、落ち着け2人とも!」
「「魔理沙は黙っていて!!」」
そういって2人の拳が魔理沙を吹き飛ばす。
「こうなったら弾幕ごっこで勝負をつけてあげるわ!」
「望むところよ。負けたほうは、一ヶ月間、魔理沙に近づかないっていうことでどう?」
「あら?そんなこと言って良いの?自分の首を絞めるだけよ?」
「後で、泣いても知らないんだから」
アリスは上海人形を構えさせる。
パチュリーは、脇に抱えている本を掴み、詠唱を行う準備をする。
「行くわよ!赤符ドールミラセティ!」
「木符&火符フォレストブレイス」
「こんなところで弾幕ごっこなんかするな~~!!」
魔理沙の声がむなしく響く中、人形の弾幕と、本の弾幕が交互に二人を襲う。パチュリーとアリスは互いの弾幕を回避しながら、攻撃を続けてく。2人とも魔女なだけあり、攻撃方法は違えど、相手に対する攻め方は似ていたりする。
「やるわね……」
「貴方こそ」
二人の一進一退の攻防が続く中、アリスが弾幕を回避する中で、バランスを崩してしまう。そんなアリスに迫るパチュリーの弾幕。アリスは被弾してしまい、そのまま地面に倒れてしまう。アリスは息を呑む。パチュリーは被弾したアリスに止めとばかりに、魔法陣を展開する。
「これで……日符ロイヤルフレアー!!」
魔理沙のために……。
パチュリーは、そのことだけを考えて、彼女の中での最強のスペルカードのひとつを、打ち出す。巨大な光が、アリスを襲う。アリスはそれを避けきれないことを悟り、目を閉じて、身構える。だが、そんなアリスの前に立つ影。
「マスタースパーク!!!」
強力な光と供に、ロイヤルフレアーを弾き飛ばす。
パチュリーは、マスタースパークをなんとかかわす。マスタースパークは、青空にと飛んでいった。アリスとパチュリーそれぞれが魔理沙を見る。魔理沙は腰に手を当てて溜息をつく。
「2人ともいい加減にしろ!こんなことをするために、キノコ採集しに来たんじゃないんだからな。パチュリーも、あんな距離で弾幕なんかはって、アリスになにかあったらどうするんだ?弾幕はゲームだぜ。人を傷つけるものじゃないんだからな」
魔理沙はそういうと、パチュリーから視線を反らして倒れているアリスにと手をかける。
「大丈夫か?アリス?」
「あ、私は別に……」
アリスは魔理沙の背中で自分たちを見つめるパチュリーを見た。その表情は今まで見たことがなかった。目を見開いて、呆然とした表情……。アリスは彼女に声をかけようとした。だが、彼女は後ろを振り向いて、その場から走り去っていく。
パチュリーは、その2人のやり取りに、顔を背けた。そして、そのまま、森の中にと姿を消していった。パチュリーは、2人の間にいることが出来なかったのだ。自分は魔理沙に拒絶された。魔理沙はやはり、アリスが一番大事なのだと……。自分なんかよりも。今更、自分は何を思っていたのだ。
「……私よりも、アリスのほうを択ぶに決まっているじゃない」
アリスは、自分と較べて明るくて、外に出ていっぱい遊べて……。
それと比べて自分はどうだろうか?
いつも図書館に閉じこもり、暗くて……。
そんな私に、あの自由な魔理沙が隣に立ってくれるはずがない。
私は、彼女を奪われたくない思いで、魔理沙に嫌われるようなことをしてしまった。
「自分が、嫌になる!うっ、ごほごほっ……」
喘息。
私の体は、どうしてこんなにも……。
赤い赤い……紅魔館内、パチュリー自室。
幻想郷随一の薬剤師である八意永琳の診察を受けたパチュリーは自室で、ベットで横たわっていた。天井の薄暗い光を見ながら、パチュリーは、誰にも今の顔を見せたくなくて、布団の中に顔を隠していた。パチュリーの容態を心配する小悪魔が、声をかける。
「パチュリー様、喘息持ちなんですから、無理をしてはいけないですよ?……なにかあったんですか?」
パチュリーの様子に異変を感じたのか、小悪魔が問いかける。だが、パチュリーは、何も答えたくはなかった。一緒にいたかった。ただそれだけだったのに……。どうしてこんなことに!?パチュリーの頭に浮かぶ1人の女……アリス・マーガロイド。彼女が自分の邪魔をして……彼女が全部悪い!いや、違う。そんなことはない。だって、彼女は、私と同じ思いを持つ人なのだから。魔理沙に惹かれた、別の場所にいるもう1人の自分なのだ。
「……ごほごほっ」
咳がでる……。
おかしなもの。
いつもなら、こんな咳ぐらいいつものことだから、どうとでもなるのに。今回のはいつにも増して、苦しく感じる。
「魔理沙……、アリス。ごめんなさい」
パチュリーは毛布の中で頬に熱い涙を流す。
「……」
アリスは、家に戻っても、どうしても、パチュリーのあの顔が忘れられないでいた。彼女のあの、表情は哀しみ、苦痛それらが混じっていたものであった。そして、彼女はあれから姿を見せていない。魔理沙がいつものように泥棒に入ると、どうやら風邪を引いているようで、面会謝絶ということらしい。魔理沙はあのときのことなんかもうとっくに忘れているし、許している。だけど、パチュリーは自分が許せないのだろう。
「どうしたんだ?アリス?ぼーっとして」
「ん?あ、別になんでもないわ」
今日は魔理沙と2人で、魔法の本を読んでいる。
2人でいるのはとても楽しい、魔理沙と一緒だから……。だけど、なぜだろう。この心に詰まる感じは。素直に喜べない。本当なら、ここに要るはずの人がいないから。
「おーい、アリス?ここわかる?」
「え、ここは……えーっと……」
「なんだ?アリスもわからないのか」
「そ、そんなことないわよ!」
「こういうとき、パチュリーがいればなぁ……本の読み込みならアリスよりもパチュリーのほうが凄いもんな」
アリスは、魔理沙がパチュリーのことを話すときの嬉しそうな表情を見て、自分もなんだか安堵した。やっぱり必要だ。彼女が。この場所に。私達の間に。だから、私は、彼女をたたき起こしに行くことにした。
紅魔館、パチュリー自室。
面会謝絶の扉の前に紅魔館の主レミリア・スカーレットがいた。彼女もパチュリーを心配で見にきたのである。レミリアはパチュリーに声をかける。パチュリーは返事もせず、ベットで横たわっていた。
「何があったのか、問いかけるつもりはない。だが、待っていても何も解決はしない」
「……」
「お前の世界である図書館をさらに縮め、今はそのベットの中。パチュリー、お前が欲しているものは、そこにあるのか?」
「……」
「運命とは、自分で切り開くものであることを忘れるな」
レミリアはそれだけ告げると、扉から離れていく。パチュリーにとって、レミリアの言葉は、あまりにも大きいものであった。そんな勇気があれば、もっとはやく、彼女に思いを告げている。だけど、私にはそんな勇気は愚か、この部屋から出る勇気さえ今はない。大切な人を傷つけてしまうことしか出来ないのなら……。
「パチュリー様。お客様です」
扉のノックの音と供に聞こえて来る小悪魔の言葉に、パチュリーは体を起こす。誰とも会いたくない。自分は人を傷つけることしか出来ないんだから。だから、誰と会っても、私は。
「言っているでしょ?誰とも会いたくないわ。申し訳ないけど、そのままお帰りになってもら……」
パチュリーの言葉の途中で彼女の部屋の扉が吹き飛ばされる。驚いたパチュリーの前に立っているのは、アリスである。
「なにしにきたの?私を嘲笑いにきたのかしら?」
「……」
「貴女の勝ちよ。魔理沙とお幸せに……私の事はもう放っておいて」
「……ない」
「え?」
アリスの小声にパチュリーは再度聞きなおした。アリスはパチュリーに掴みかからんばかりの勢いでベットで寝ている彼女に詰め寄る。
「ふざけるじゃないわよ!なに言ってるのよ!!」
「なにって……私は……」
「楽しくなかったのよ……」
アリスの言葉にパチュリーは、アリスを見つめる。アリスは、パチュリーを見つめながら、ゆっくりと言葉を口から出していく。
「楽しくなかった。魔理沙と過ごすのはとても楽しい。だけどね、足りないのよ」
「足りない?」
「ええ、そうよ……貴女がいない」
「……」
「私ね。わかったの。魔理沙と2人でいるだけじゃ駄目だって……貴女と2人で魔理沙を口喧嘩しながら、競い合うことが……必要だって」
「アリス……」
「だから、このままじゃ納得行かないのよ!あんたに譲られたみたいで。むしゃくしゃするの!私にしかないもの、あんたにしかないもの……それで、しっかりと勝負しましょう」
アリスの言葉に、パチュリーは微笑む。
気がついていなかったのは、自分のほうだ。そうか……自分が求めているのは、魔理沙1人に限らない。自分と同じ思いを持ち、笑ったり、悩んだりする、そんな自分と同じ気持ちを共有できる相手。自分に持っていないもの、それは決して僻むものじゃない、相手にないものはないもの。だから、そんな相手がなくて、自分の持っているものを見せていけば良い。
「ねぇ、アリス?」
ベットの上で、隣に座りあう二人の魔女。
「なによ……」
「私達、似ているわよね」
「……嬉しくない」
「ふふ……私も」
私たちは、同じ人を好きになった宿敵だけれど、いなくてはならない友達。
きっと、それは誰にでもある普通のこと。
だけど、私は、そんな相手がいることを幸せに思う。
魔理沙。
貴女がしっかりと、どちらか択ばないと……私達が仲良くなっちゃうわ。
ね?アリス……。
きっと推敲は念入りにしたのでしょう。
なので、ストーリーやキャラクター設定にもう一工夫あればなお良かったかな……それがレート10以上への壁なのかと思います。
ちょっとドキッとしましたが、うん、なかなか良い話の終わり方だと思います。
確かに今は正三角形に近いみたいですけど、魔理沙が優柔不断だと、
どんどん二等辺三角形に移行しそうですよね。
>強力な光と供に、ロイヤルフレアーを弾き飛ばす→光と共に、かな。あと、台詞の時は語尾をのばすのもありでしょうが、基本はロイヤルフレア、ですよね。
>私にはそんな勇気は愚か、この部屋から→勇気は疎か、ですね。
>「ふざけるじゃないわよ!なに言ってるのよ!!」→ふざけるんじゃないわよ、の方がしっくるくるような。
面白かったです。
>しっくるくるような→しっくり、だな自分。なんか変な病気みてーじゃねえか。