Coolier - 新生・東方創想話

魔法僧侶 まじかる☆ヒジリン            ~貴方の八苦をニルヴァーナ~

2010/05/16 23:07:14
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 静謐な堂にて瞑想をすること、七十二時間。

「――これしか、ないようですね」

 聖白蓮が選んだ道は、只一つであった。


































 第一話 魔法僧侶まじかる☆ヒジリン 光臨!!



「ぎゃおー! たーべちゃーうぞー!」

 なんてことのない昼間の人里にショートケーキのようなワガママ系美幼女ボイスが響き渡った。

「性的な意味で、たーべちゃーうぞー!」

 だがしかしその声に含まれる幼さとは真逆に、叫び放たれる言の葉はオトナのソレ。
 そう、この咆哮の主こそ“永遠に紅い幼き月”、レミリア・スカーレットなのだ。
「吸血鬼は人里への不可侵攻条約が結ばれていた筈なのに……!」という人々の気持ちをガンスル―して、レミリアは遂に里の大地へと降り立った。

「できれば私は処女をたーべたーいぞー?」

 ジロリ、と周囲に立つ人々を見回し、生娘の姿を探す吸血鬼。
「コイツ、処女厨かよ……」という暗い想いが人々の胸に溢れる。そして瞬時に昼の人里は変な空気になった。
 それはまさに悪夢のような光景。
 そのような状況下で、上白沢慧音は一人、強く心に思った。

(妹紅は何が起きてもリザレクションする度に生娘となるんだ……!)



 ――瞬間、



 天より一筋の光が大地に着弾し、爆撃のような白い光と轟音、そして衝撃が周囲を薙ぎ倒した。



「な、なんだッ!?」

 家屋がバタバタと吹き飛ぶ中で、吸血鬼がロリボイスを響かせた。
 そして、着弾点にて輝き続ける光に目を向ける。
 そこには、一つの人影が在った。

「だ、誰だお前は!」

 その場にいた全ての者が人影に視線を集中させる。
 吹いたのは、ザァッという一陣の風。
 そして光は散り――、



「私の名は、魔法僧侶まじかる☆ヒジリン! 仏に代わって、お仕置きです!」



 彼女は姿を現した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 民衆はその姿を見て歓喜の叫びを轟かせた。
 ――魔法僧侶まじかる☆ヒジリン。
 フリフリの黒コートを羽織り、股下10センチという超ミニの白ワンピに身を包んだ美少女のルックスは、大きなお友達をスタンディングオベーションさせるのに十分過ぎる破壊力を持っているのである。
 そして、人々は己の内から湧きたつ衝動に身を任せ、大音量のヒジリンコールを叫んだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 傍らで吸血鬼も叫んでいた。
 フリフリファンシーなそのルックスはもちろん幼女の心もガッチリと捉えるのだ。

「カワイイ! カワイイ! ヤバいなにこのマントとか超カワイイんだけど!! 素材は何で出来てるの!?」
「韓国海苔です」
「なにそれスゲーヤバい!」

 魔法僧侶から発せられるオーラにあてられて思わずギャル言葉を漏らす幼女に、まじかる☆ヒジリンは聖女の笑顔を向ける。
 そう、彼女は気付いたのだ。
 この吸血鬼は己の意思で悪事を働いたわけではない。
 誤って己が築いてしまった“恐ろしい吸血鬼”のイメージから、彼女は今回の様な蛮行を働いてしまったのだろう。
 この吸血鬼もまた、被害者なのだ。
 だが、しかし、

「……どのような理由があっても、自らが犯した罪から逃げることは許されないのです」

 周囲に散らばる、家屋の残骸。
 これ程の大きな被害を出して、それでいて無罪判決を下すわけにはいかないのである。
 目の前には韓国海苔をハムハムとしゃぶる無垢な幼女の姿があるばかり。
 不意に、心が痛んだ。
 たとえ彼女がギャル口調の使い手であったとしても、その正体はたった500歳の幼女なのだ。必殺の一撃を与えるには、あまりに不憫。
 ケジメは着けてもらう。
 しかし、――それは程度の軽いもので良いだろう。
 導き出されたその答えに、魔法僧侶はひとり満足をしたように微笑む。
 そして、幼女のおでこにスッと手を近付け、ピンッ! と小さく指を弾いた。

「滅っ☆」

 爆光が人里を包んだ。




















 第二話 必殺の一撃、南無三砲!!



「たーべちゃーうわー!」

 なんてことのない昼間の人里に桜餅のような天然系美少女ボイスが響き渡った

「物理的な意味で、たーべちゃーうわー!」

 だがしかしその声に多量に含まれるおっとり成分に反し、叫び放たれる言の葉はあまりに物騒であった。
 そう、この咆哮の主こそ“天衣無縫の亡霊”、西行寺幽々子なのだ。
「亡霊は食事なんていらない筈なのに……!」という人々の気持ちをガンスル―して、幽々子は遂に里の大地へと降り立った。

「あら、美味しそうな焼き芋」

 偶然道端で焼き芋を売り歩いていた秋神に目を向ける亡霊。
「ヒィ!?」と叫び声を上げる彼女に、しかしその様相を見ていた里人の誰もが助けの手を伸ばすことができずにいた。
 里人たちは皆、先日の光爆により倒壊した建物の復旧作業に追われているのだ。
 亡霊を止める程の余裕が在る者など誰一人としていないのである。
 そのような状況下で、上白沢慧音は一人、強く心に思った。

(妹紅が焼き芋を食べる時の舌使いはやけに興奮するんだ……!)



 ――瞬間、



 天より一筋の光が大地に着弾し、爆撃のような白い光と轟音、そして衝撃が周囲を薙ぎ倒した。



「な、なに!?」

 木材がバタバタと吹き飛ぶ中で、亡霊がおっとりボイスを響かせた。
 そして、着弾点にて輝き続ける光に目を向ける。
 そこには、一つの人影が在った。

「だ、誰よ貴方は!」

 その場にいた全ての者が人影に視線を集中させる。
 吹いたのは、ザァッという一陣の風。
 そして光は散り――、



「私の名は、魔法僧侶まじかる☆ヒジリン! 仏に代わって、お仕置きです!」



 彼女は姿を現した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 民衆はその姿を見て歓喜の叫びを轟かせた。
 ――魔法僧侶まじかる☆ヒジリン。
 フリフリの黒コートを羽織り、股下10センチという超ミニの白ワンピに身を包んだ美少女のルックスは、大きなお友達をスタンディングオベーションさせるのに十分過ぎる破壊力を持っているのである。
 そして、人々は己の内から湧きたつ衝動に身を任せ、大音量のヒジリンコールを叫んだ。

「……貴方が魔法僧侶まじかる☆ヒジリンね。噂は聞いているわぁ」

 言って、亡霊はスゥと目を細め、そして焼き芋を飲み込んだ。

(――焼き芋を飲み込む瞬間が、見えなかった!?)

 魔法僧侶は額に汗を垂らす。

(のんびりとした風貌に見せかけ、彼女はその実かなりのスピードファイター。生半可な攻撃ではダメージを与える前に全て胃の中に収められてしまうでしょう……!)

 警戒。
 相手が不意に見せた動作から最善の一手を即座に探すべく静かに考えを巡らせる。
 その姿を見た人々は、固唾を飲みながら地面に寝転んでシャッターを切っていた。
 そうこうしている間にも亡霊は次から次へと焼き芋を消費していく。
 もはや秋神の経営破綻は目前であった。
 どうする……。どうする……!
 焦慮の念に駆られる魔法僧侶に、刹那、



(ヒジリン、ヒジリン。私の声が聞こえますか?)



 天から声が降った。


「――ハッ、この声は、毘沙門天の御使い様!」

(はい、私です。寅丸です。あなたに伝えたいことがあり、参上しました)

 そして、天よりの声はコホンと一つ咳をして、言った。

(今晩は豆腐ハンバーグを作るつもりなのですが、うっかりお豆腐を買い忘れてしまったのです。なので、お手数を掛けますが帰りにお豆腐を三丁ばかり買ってきて頂けませんでしょうか)

「毘沙門天の御使い様……! はいっ! 分かりました!」

(では、私から伝えることは以上です。ご武運をお祈りしますよ。あなたならきっと、あ、ちょ、ちょっと、やめてください、ナズーリン、今は聖と話してる際中で、あぁ、そんな――)

 そして天からの声は途切れた。
 しかして、魔法僧侶の眼に浮かぶのは不退転の輝き。
 自分の帰りを待ってくれている、大切な仲間。
 そんな仲間の存在が、彼女に限界を超えさせたのだ!

「今なら、やれる……。いえ、やってみせる!」

 取り出したるは、光を放つエア巻物。
 そしてそこに膨大な魔力が集まり、そのプレッシャーから大気は激しく震動する。
 吹き荒ぶ風。
 巻き起こる砂煙。
 鳴り響くシャッター音。
 減り続ける焼き芋。
 それらの全てを背景に、魔法僧侶の魔力は目まぐるしく迸り続けた。

「エア巻物! ジェノサイダーモード、展開!」

 手にしていた巻物が魔法僧侶の宣言と共に、変形。
 魔力の収縮により巨大化したソレは瞬く間に巨大な砲塔と形を成し、そして発射口を神々しく光らせ――、膨大な魔光の束を噴射した!

「南無三砲ぉ!! デッドエンドシュート!!」

 放たれる魔砲から魔法僧侶の身体にかかる反動は例えようも無く強大。
 衝撃が広背筋を痛めつけ、額に浮かぶ汗は風圧により吹き飛ばされていく。二本の脚はジリジリとした後退を余儀なくされた。
 必殺と呼ばれるに相応しい、あまりにマクロなエネルギー。その破壊力は果たして如何程のものか。
 そのような光を正面に見据えて、亡霊はニヤリと笑い、両手に持っていた焼き芋を瞬時に飲み込み、そして叫んだ。

「良いでしょう! これ程の力を持つ者が相手ならば、この西行寺幽々子も本気を出せるというものでゲッホゲッホゲッホ!!」

 むせた。
 トントントントン、と必死に胸を叩くが、圧倒的なホクホク度を有する秋神の焼き芋は決して粘度を失うことなく執拗に喉に絡みつき、そうして遂に亡霊は呼吸困難によって地にパタリと倒れこむ。

「あ! だ、大丈夫ですか!?」

 喉を詰まらせた亡霊に、心優しき魔法僧侶は急いで駆け寄った。
 魔光を噴射し続ける南無三砲を投げ捨ててしまう程に急いで駆け寄った。

 そして、爆光が人里を包んだ。




















 第三話 敵か味方か、正体不明 ワンダー★ぬえ 登場!!



「たーべちゃーうわよー!」

 なんてことのない昼間の人里に月見団子のようなお姫様系美少女ボイスが響き渡った

「出番的な意味で、たーべちゃーうわよー!」

 だがしかしその声に多量に含まれるたおやかさに反し、叫び放たれる言の葉はあまりに不可解なものであった。
 そう、この咆哮の主こそ“永遠と須臾の罪人”、蓬莱山輝夜なのだ。
「え、コイツが他人の出番を食う程活躍したことって無くね……!?」という人々の気持ちをガンスル―して、輝夜は遂に里の大地へと降り立った。

「儚月抄の裏主人公である私にかかれば、どんなヤツが相手でもかませキャラになるのよー!」

 そう言って、根拠の見えない自信と共に周囲にいる人々を見回した。
「儚月抄でも全然目立たなかったじゃないですかぁ! 従者達の方が余程出番があったじゃないですかぁ!」という切ない想いが人々の胸に溢れる。そして瞬時に昼の人里は変な空気になった。
 それはまさに悪夢のような光景。
 そのような状況下で、上白沢慧音は一人、強く心に思った。

(妹紅の腹痛シーンだけでドンブリ三杯はイケるんだ……!)



 ――瞬間、



 天より一筋の光が大地に着弾し、爆撃のような白い光と轟音、そして衝撃が周囲を薙ぎ倒した。



「な、なに!?」

 瓦礫がバタバタと吹き飛ぶ中で、宇宙人がたおやかボイスを響かせた。
 そして、着弾点にて輝き続ける光に目を向ける。
 そこには、一つの人影が在った。

「だ、誰なの貴女は!」

 その場にいた全ての者が人影に視線を集中させる。
 吹いたのは、ザァッという一陣の風。
 そして光は散り――、



「私の名は、魔法僧侶まじかる☆ヒジリン! 仏に代わって、お仕置きです!」



 彼女は姿を現した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 民衆はその姿を見て歓喜の叫びを轟かせた。
 ――魔法僧侶まじかる☆ヒジリン。
 フリフリの黒コートを羽織り、股下10センチという超ミニの白ワンピに身を包んだ美少女のルックスは、大きなお友達をスタンディングオベーションさせるのに十分過ぎる破壊力を持っているのである。
 そして、人々は己の内から湧きたつ衝動に身を任せ、大音量のヒジリンコールを叫んだ。

「――違う」

 だがしかし、そこに冷静な声が一つ。

「ねぇちょっと、貴女、なんなの? 魔法少女を嘗めてるの?」
「なっ……?」

 その声の主は、冷めた目で魔法僧侶を見る宇宙人であった。
 魔法僧侶の顔に浮かぶのは困惑の色。
 過去に例の無かった展開に、思わず懐のトカレフに手が伸びる。
 なんだ、この者は? いったい何を言っている?
 そんな迷いが魔法僧侶の鼓動を速めた。

「派手なエフェクト&衝撃と共にカッコよく登場。まぁ嫌いじゃないんだけど、魔法少女はそうじゃないでしょう!?」

「なんだなんだ」と、民衆達が宇宙人の言葉に耳を傾け、そのイライラ顔に目を向ける。
 その渦中にあって、宇宙人は堂々と言った。



「貴女が真の魔法少女ならば、可愛らしい“変身シーン”があって然るべきなのよ!」



 想いを高らかに言い放つ宇宙人。

 そしてその声は、呆気にとられていた里人達の胸にも、少しずつ浸透していった。

「変身シーン……?」
「変身シーンだと!?」
「知っているのか、田吾作!」
「あぁ、聞いたことがあるぜ。変身シーンとは、魔法少女が日常の格好から戦闘用の装束に着替える際の、いわばお着替えシーン! そのシーンでは細部こそ見えぬが、少女はほぼ全裸になるという!」
「お着替えシーン……だと……!?」
「ヒジリンの全裸!?」
「ヒャア! 堪んねぇ!」
「ちっげぇよバカ! 全裸が良いんじゃねぇ! 重要なのは、美少女が目の前で服を一枚一枚脱いでくれることだ!」
「流石は田吾作! 雅な男だぜ!」
「美少女の衣擦れ音! 美少女の衣擦れ音!」
「そんなものが見れたら俺はマッハで即身仏だぁ!」

 次第に熱い息吹が渦を成していく里人の輪を見て、魔法僧侶はギリリと拳を握り、そして意を決してトカレフを抜いた。
 照準を宇宙人の眉間にセットし、叫ぶ。

「里の皆さんを洗脳するなんて。宇宙人め、卑怯ですよ!」
「ふふふー、言い掛かりは止してほしいわね。これは、貴女の怠慢が招いた状況じゃなくて?」
「くぅ……!」

 ――なっま着っ替え! なっま着っ替え!
 周囲では既に里人による生着替えコールが鳴り響いていた。

「十秒の猶予をあげます! おでこに換気口を設置されたくなければ、皆さんの洗脳を解きなさい!」
「例え私が死んでも、一度出来てしまったこの空気は覆せないと思うわ? さぁ、素直に変身シーンに入りなさい。天に誓っても私はその間に攻撃なんかしないから」

(くっ……! なんてこと……!)

 マズイ。このままでは、衆人慣習の下でお着替えをしなくてはならなくなる。
 そのような焦りから、思わずトカレフのグリップを握り潰してしまった魔法僧侶。

(かくなる上は……! 人里の皆さんの脳にショックを与えるしか……!)

 人目に触れず、記憶を消去させる。
“ライトニング・バイバイ”と呼ばれるその技は、魔法僧侶の108の秘奥義の一つであった。
 超人的な加速を以って対象者の後頭部に掌打を放つことによる記憶喪失発生の成功確率は100%。
 驚異的な技だ。
 それゆえに、消費するエネルギーも大きい。
 宇宙人と戦う前にそれだけの力を消耗することは、魔法少女にとってはあまりに分の悪い賭けである。
 しかし、そうこう悩んでいる間にも生着替えを望む人々の声はより一層大きなものとなっていく。
 どうする? どうする――!?
 葛藤を繰り返す魔法少女に、



「――悩むことはない! 脱ぐのよ、ヒジリン!」



 鵺的な声が天より投げ掛けられた。

「な、何者!?」

 突然の声に驚いたのは宇宙人。
 窮地に追いやられた魔法少女を救うにはまさに絶好のタイミングだった。
 はたして、鵺的な声の正体は?

「私の名はワンダー★ぬえ! 正体不明の存在だ!」

 響く声は太陽の下。逆光の中で、その少女は高らかに名乗った。
 その姿はまさに珍妙。股下15センチの黒いミニワンピに同色のニーソを合わせ、背中からは形容し難い形の、赤と青の二色の羽を三対生やしていた。
 そして、ニーソックスの上方、ワンピースの中。
 里人達が見上げた先に映る乙女のヒミツの箇所は――

「も、モザイクぅ!?」

 純白か、ストライプか。そう期待した人々の想いを打ち破る結末がそこには在った。
 そう。それこそがぬえの持つ最大の力、“絶対領域”。
 見えそうで見えない! の極地であるモザイクこそが下劣な視線から乙女のヒミツを守る為の最強の盾であり、そして愚劣な民衆たちの心を砕く最強の矛なのである。

「さぁ、聖! じゃなかったヒジリン! 私を信じて脱ぎなさい!」

 その声には正体不明な響きを含みながらも確固たる自信が内包されていた。
 ワンダー★ぬえ。彼女が高い実力を有していることは誰の目にも明らかだった。
 ゆえに、魔法僧侶はあらん限りの勇気を放出した。

「ハァアアッ!」

 勢いよくコートを脱ぎ、ワンピースを擦り上げて露わにした裸身には――

「も、モザイクぅッ!?」

 ふともも以上、鎖骨以下。
 その範囲にわたって目の粗いモザイクが神々しく展開されていた。
 そして里人達の絶叫が高い空にこだまする。

「馬鹿な! 何故見えない!!」
「こんなことって! こんなことってぇえええええええ!!」
「うおおおおおおおお!! 砕け散れ! 俺のメガネぇええええええええ!!」
「なぜだ!? どうしてパンツの色すら判別できないのだ!」
「ま、まさか今日のヒジリンは!」
「穿 い て な い ! ! ?」

 そして、慟哭が響き渡る地にて、魔法僧侶はモードチェンジを完遂。
 その身から輝くのは、先程よりも一際強さを増した勇気の光である。

「私は、魔法僧侶まじかる☆ヒジリン! この砲塔の輝きを恐れぬのならば、かかってきなさい!」

 キュピンッとポーズを極めるまじかる☆ヒジリン。
 試練を乗り越え、更なる力を得た魔法僧侶がそこにいた。
 溢れんばかりの力をそのままに、チャージ済みの南無三砲をジャコン! と構える。

 だがしかしそこに見えたのは、打ち倒すべき宇宙人が地に倒れ伏している姿だった。

「なッ!?」

 急いで駆け寄る魔法僧侶。
 うつ伏せになった宇宙人の身体を手に取り起こすと、その顔、いや、その鼻からは大量の血が流れ出ていた。

「こ、これはいったい!?」

 驚きの顔を見せる魔法僧侶の腕の中で、宇宙人は静かに語り始めた。

「ふ、ふふ……。そのまんま見えちゃうよりも、モザイクがあった方が興奮する……。そういう者だっているのよ。良い勉強になったわね、ヒジリン」
「そんな! では、貴方は!」
「えぇ、私はもう、ここまでね……。最期に良いものを、見せてもらったわ」
「何を言うんです! 勝負はまだこれからじゃないですか! さぁ、立って! 立って下さい!」
「まじかる、☆ヒジリン……、貴女に出会えて……、良かっ、た……」
「宇宙人? 宇宙人!」

 花が落ちるように宇宙人の身体から力が消えた。
 ポトリと、小さな手が地面に落ちる。

 その儚き姿に何を感じたのだろうか。
 魔法少女はあらん限りの力を籠めて、宇宙人の身体をギュゥっと強く抱きしめた。

 そして、爆光が人里を包んだ。




















 最終話 まじかる☆ヒジリン フォーエバー!!



「――なんて、酷い」

 人里。いや、人里だった場所、と表した方が的確だろう。
 かつて人里と呼ばれていたソコは、今では瓦礫と資源ゴミが混在するだけの無残なストリートと成り果てていた。

「誰がこんなことを……!」

 呟き、魔法僧侶はその地に降り立つ。
「ヒジリンだ、ヒジリンだ!」という声と共に老若男女問わず、多くの民衆が彼女の下に集まってきた。
 そして、魔法僧侶はその一人一人にいい子いい子をしてあげる。
 世を救うべく存在する聖女。
 その慈愛の心は、パンケーキよりもデリシャスなのであった。



「見つけたわよ、まじかる☆ヒジリン」



 その憩いの空間に、突然の声。
 振り向けば、その空間には歪なスキマが生じていた。

「な、何者ですか!?」

 あまりに不気味な出来事に、魔法僧侶は声を張る。
 その緊張に民衆達は何かを感じたのか、そっと彼女の周囲から離れ、そして静かにシャッターを切っていた。

「私の名は八雲紫。妖怪の賢者にして、この世界の統制者です」

 そして、ヌルリとその女はスキマから身を現した。

 ――違う。

 魔法僧侶の頭に、突如として膨大な量のアラームが鳴り響く。
 この者は、これまでの敵と明らかに違う、と、
 生物としての純粋な部分が高らかに身の危険を叫んでいる。
 スキマ妖怪の一挙手一投足に魔法僧侶は目を凝らした。
 油断したら、殺られる。
 その確信を胸に、油断無く南無三砲をジャコン! と構える。

「そう。その力です」

 ツイ、と妖怪の賢者は扇子で砲塔を指した。

「その力が、この里をここまで崩壊させたのです」



 その一言に、里人達がザワリザワリと騒ぎ出した。



 動揺が、困惑が、

 少しずつ、だが確実に、

 人々の心に蔓延していく。



「お、おい。あのババァ、なんか変なことを言ってるぞ」
「まったくだ。何を根拠に言ってるんだか訳が分からねぇ」
「放っておいてやれ。おそらく、ただのアルツハイマーだろう」
「そうだ。これまで真剣に生きてきたからこそ、彼女は脳を酷使したんだ。お年寄りを馬鹿にするのはいけないぜ」
「え!? ちょ、貴方達なに言ってるの!?」


 途端に慌てふためく妖怪の賢者。


「な、なんで私がボケてるみたいな感じになってるのよ!」
「はいはいお婆ちゃん、お家はあっちですよー」
「ちょ、田吾作くん!? 私はボケてないってば!」
「おい、どうする? こういう時って警察に連絡した方が良いのか?」
「私の話を聞いてよ! っていうか誰がお婆ちゃんよ!! こんなにキュートな少女を相手に、よくそんなことが言えたものね!」
「へへ……、参ったな。目にゴミが入っちまったぜ」
「今の私のセリフは泣くところじゃないわよ!!」

 アタフタする妖怪の賢者。

 その光景を見ていた魔法僧侶の胸に、ジワリと暖かな想いが生まれた。

「妖怪の賢者よ。危うく私は貴方のまやかしに捕らわれるところでした」
「いやいやいや! まやかしじゃなくて、事実でしょう!?」
「だがしかし、里に住む皆さんが私に真実を気付かせてくれたのです!」
「いやだから! 貴方が里を壊しまくったのは事実でしょ!?」
「可哀そうな方です……。今、楽にしてあげますからね……?」
「ねぇ、なんで!? なんで皆して私をボケ老人扱いするの!?」
「独りは寂しいものです。すぐにお仲間の所へ送ってさしあげましょう」
「それに加えて独居老人扱い!? もう、いい加減にしなさいッ!!」

 瞬間、妖怪の賢者は長野電鉄木島線3500系を召喚し、猛烈な勢いでそれを突撃させた。
 ソレを真正面から捉えた魔法僧侶の眼は、

「南無三砲! 全力全壊!!」

 誰よりも強く、真っ直ぐであった!

「デッド! エンド! シュート!!」

 そして光の奔流は放たれた。

 魔光とローカル列車の衝突に、天は割れ、地が吠える。
 風が吹き荒び、スカートははためき、シャッター音は鳴り止まない。
 ラグナロクともアルマゲドンとも表現しても過小であろう光景が、里の中心でエネルギーを放出し続けていた。

「これが、再三にわたって里を破壊した魔光の力……! けど!」
「く、うぅ!」

 拮抗していたパワーバランスが、僅かながらに傾いた。
 押しているのは長野電鉄木島線3500系。
 八雲紫の力であった。

「教えてあげるわ、ヒジリン! 真実はいつも一つなのよ!」
「くッ!」
「これまでに里を壊したのも貴方! そして、この勝負に負けるのも貴方なのです!」
「ぁあああ!!」

 徐々に押し込まれる魔光は、既に魔法僧侶の3メートル手前まで迫っていた。
 それの意味するところは“ヒジリンの敗北まであと3メートル”という残虐な事実。
 絶望が、寸前まで差し迫っていた。

 ――その瞬間、

「がんばれ! ヒジリーン!」

 声が聞こえた。

「そうだ! がんばれ、ヒジリン!」
「負けるなー! ヒジリーン!!」
「愛してるぞ! ヒジリン!!」
「いっけぇえええええ!! ヒジリィイイイイイイン!!」

 声援。
 人里を全て包みこみ、天にまで届こうかという程の、大きな声援。
 そんな熱いエールが、その場にいる人々の全てから発せられていた。

「皆さん……!」

 それを受けた魔法僧侶の魂に、炎が灯る。

「皆さんの想い、確かに受け取りました!」

 そして、世界に『感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind』が高らかに鳴り響いた。
 その背に輝くは暁の如き後光。
 魔法僧侶の反撃の時がやってきたのである。
 威力を急激にブーストさせた魔光は、遂に長野電鉄木島線3500系を押し返し始めた。

「ば、バカな! こんなことが!?」

 理解できない。
 そんな顔をするのは妖怪の賢者、八雲紫である。

「なぜ!? なぜ里を木端微塵にした貴方がこんなにも人々に愛されているの!?」

 目の前に光が迫った状況でその質問を発せられるのは、紫が真の賢者であるからだろう。
 その誇り高い姿に敬意を表し、魔法僧侶は力を振り絞って、

「確かに私は里を壊したかもしれない! 聖人と名乗るには罪を犯し過ぎたかもしれない! けれど!」

 高らかに叫んだ!

「私と里の皆さんとの間にある絆は、その程度で壊れることはないのです!!」

 そのセリフに、賢者は愕然とした。
 そして、必死となって言葉を紡ぐ。

「なぜ貴方なの! 私だって皆の為に影で色んなことをやってきたのに、どうして皆は貴方を選んだのよ!」
「妖怪の賢者よ! 私に有って貴方に無かったもの! それは、露出ですッ!!」
「露出!?」
「具体的に言えば、ワンピースの丈の長さです!」
「な、なによそれ! 私に膝小僧を晒せっていうの!? そんなの恥ずかしい!」
「私だって恥ずかしいですよ!! でも、世の中には女の武器を有効活用しなければ成せないことだってあるのです!」
「やだ! 無理! 恥ずかしい!」
「それが私と貴方の差なのです!!」

 魔光が最後の輝きを見せた。

「来世では、ミニスカ姿の貴方が見たいですぅうううううう!!!」
「そんな……! そんなぁあああああああああああああああ!!!」

 光は統制者の身体を飲み込み、叫び声が天に響き渡った。





 そして、爆光が世界を包んだ。












































「――ぅむ?」



 そこで聖白蓮は目を覚ました。


 静謐な堂に籠ること、約七十二時間。
 求道に精神をすり減らせた僧侶が眠ってしまうのも仕方の無いことであった。

「……今の夢は、いったいなんだったのでしょうか」

 しかして生来真面目な聖は、ふーむ、と独り思考に更ける。
 ただの夢、と片付けるのは簡単だ。
 しかし、もし今の夢になんらかの意味が込められていたら。
 天啓の一種であったとしたら。
 そう考える聖は、ひたすらにその夢の細部を追う。

 けれども、分からない。

 まったく分からない。
 分からないが、

 しかし――

「今の夢を見たことになんの意味も無かったとも思えません」

 どこか吹っ切れた様子で言の葉を発し、
 そして、決意する。

「とりあえず、やってみましょうか」

 そう言って、よっこいしょと板敷きから腰を上げ、そして戸を開けた。


「魔法僧侶、私にできるかしら」


 ひとり呟き、そしてフワリと笑う。


 開けた世界には、五月の青い空がどこまでも広がっていた。


 聖の新たな門出を祝福するかのように、


 どこまでも、どこまでも空は広く澄み渡っていたのであった。










 
 ついに現の世界へと降り立ったまじかる☆ヒジリン。
 だがしかし、そこで出会ったのは奇跡風祝 みらくる☆サナエンと名乗る少女であった。
 ヒジリンの言葉に耳を貸すことなく襲い来るサナエン。抵抗をするも、その発音し辛い名称にヒジリンは思わぬ苦戦を強いられる。
 己の弱さを再確認したヒジリンは、仲間達と共に早口言葉の修行を開始したのであった――。

 まじかる☆ヒジリン セカンドシーズン
 魔法僧侶 まじかる☆ヒジリン ~宗教戦争~
 第一話 「バスガスばくはちゅ」

 2010年 4月4日 午前二時より放送スタート!








 ※もちろん続きません。 
 
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コメント



0.2590簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
やはり夢オチだったか。
5.80名前が無い程度の能力削除
第一話の二行目から、「この表現力は読まざるを得ない」と引き込まれてしまいました。
スピードファイターあたりで爆笑してお腹に壮大なダメージを受けました。
6.100奇声を発する程度の能力削除
何か何処から突っ込めばwwwww慧音が残念過ぎるwwwwww
アニメとか余り見ないのですがこれは見てみたい!!
8.90ナルスフ削除
ひどいノリを見たw
なんというお約束のノリ・・・!
そんで慧音先生www
9.100名前が無い程度の能力削除
この慧音先生と出会えたなら、きっと人生ガンダム
10.100名前が無い程度の能力削除
韓国海苔で引き込まれた
11.80名前が無い程度の能力削除
おぜうなむなむー
しかしレミリアは昼に外出できないです
日傘を差しているような描写もないし、そこだけが残念です

ライトニング・バイバイwww
17.100名前が無い程度の能力削除
夢の出来事とは言え、ゆかりんかわいそうすぎるwww
21.90アイス削除
デッドエンドシュート

…イングラム?
22.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとようつべにうpされてるかどうか見てくる!
29.100ぺ・四潤削除
もう放送終わってるじゃねえか!!再放送はいつだ!!!!
南無三砲とか砲塔とか魔法僧侶が使うもんじゃねえwwww
ぬえですら股下15センチなのにひじりんは10センチだと……!!
ヒャアッ! 我慢できねえ! ビデオカメラと業務用扇風機抱えて人里に行ってくるぜ!!
31.100名前が無い程度の能力削除
あんた…プロだよ…
ギャグ小説のプロだよッ!!
読者を引き込むインパクトのあるネタッ!!
同じ流れで笑いをとる鉄板技術ッ!!
さりげない脇役の素晴らしい輝きッ!!
敵や脇役との心温まるストーリーッ!!
そしてッ!!何よりッ!!
ミニスカ魔法僧侶という大きなお友達の心を掴んで離さない設定ッ!!
これこそッ!!真のギャグSS作家だッ!!
32.100やばスやばオ削除
やばいよ、マジで、けーねが特に、
どれくらいかって言うと、空中土下座しながらサマーソルトしてる感じ。
マジやばい、ちょうやばい、おもしろかったw
33.90名前が無い程度の能力削除
天丼のお手本みたいなお話ですね。
34.90名前が無い程度の能力削除
せんせー、ツッコミどころが多くて追いつきません
48.80削除
もう駄目ねこの魔女。
53.70名前が無い程度の能力削除
おもしろかった
54.90名前が無い程度の能力削除
ゆかりんのミニスカ姿も見たいで(ピチューン
71.90名前が無い程度の能力削除
即身仏にやられた。
しかしゆかりん可哀想で泣ける。俺は、膝小僧なんかなくたって……!!
しかし、端々に見られる語感のセンスが半端無いな。