Coolier - 新生・東方創想話

創想

2010/05/11 08:02:25
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まっくらだ。

何も見えないわけじゃない、けど、まわりにあるものは全てぼんやりと

暗闇に覆われていて、だからやっぱりまっくらなのだと思う。

まわりには、同じ子がずら~っと並んでいる。

みんな右目は閉じていて、左目には穴が開いている。

糸のようなものが空いた左目を貫いていて、それがみんなを繋いでいる。



  繋がっているということは大切なことだったのよ



女の人が言う。


私はみんなと繋がっていない


 
  それはあなたが自分から繋がりを解いたからよ

  すばらしいことだわ、あなたにはもう繋がりが必要ないのだから



女の人は笑顔でそう言った。




どうして目を開けるの?


  そうね、左目を閉じてみてちょうだい


何も見えない、まっくらだ


  それでいいのよ


・・・よく分からない


  開けるのはどちらの目でもよかったのだけどね

  空いた目は見えないものを見るためにあるのよ


・・・?


  くすくす・・・


女の人は笑っている。だからきっと左目が開いていることはいいことなのだろう。


  ええ、いいことよ。あなたが道を歩む上では特にね


みみは?


  うん?


みみは両方とも同じでいいの?


  ・・・おもしろい子ね、あなたは。

  耳はいいのよ。閉じても聞こえてしまうものだからね


両耳を閉じてみる

何も聞こえない、

耳を開けてもなにも聞こえないが、女の人の声が聞こえなくなってしまったら

いやなのでそのままにする


  くすくす・・・女の人が笑う声がする。

  あなたがかわいいからよ


そうなのだろうか、そうだったらうれしい



  こっちへ来てみてくれないかしら。


女の人が手招きしている

早くいかなきゃ



足はなかなか動かない


えいっ、えいっ


・・・動いた、女の人の傍へいく。

女の人はまた笑ってくれた。


  おめでとう、あなたは自分の意思で歩き出すことができたわ

  束縛から離れ、自由を選ぼうと踏み出せた子はあなただけよ


そうなのか、うれしい


私は女の人と手を繋いで歩き出した












しばらく進むと、目の前に扉が現れた。


女の人が扉を開く


手が離れてしまったのが少し残念


  さぁ、右目を開いてみて


女の人が期待している。

私は迷わず右目を開いた。





「えっ?」


女の人はいなくなっていた。

まわりが明るい、まっくらな空間はどこへいったのか。私の立っている地面は石でできていて、

右にも左にも緑が生い茂っている。

目の前にあるのは扉ではなく2つの赤い柱、その先には建物が見える。

風の音が聞こえる。




ここはどこだろう、あの人に会いたい。



「ちょっと、あんた誰よ。」

突然、後ろから声を掛けられた。

「私?」

「あんたしかいないでしょうが。」

私に話しかけてきた人は、真っ赤な服を着て真っ黒な髪をしていた。きれいな声だと思ったけど、

あの人の声のほうが好きだ。



赤黒の人は何も話さない私を訝しげに見ていたが、特に害もないと思ったのだろう。

「迷惑事は起こさないようにしなさいよね。それと、むやみに森の奥に行ったりはしないこと。

危険だからね。」

そう言って赤い柱の先にある建物の中へ入っていった。







「ううん?誰だ、お前?」

次に現れたのは黒い人だった。黒い服装の人というほうが正しいか、

帽子も服も黒、けれども腕は白くて髪は金色だ。



「私の事?」

「お前以外いないぜ。」

「知らない。」

「・・・はぁ?どういうことだ?」




「あなたは誰?」

「私か?私は霧雨魔理沙、見ての通り普通の魔法使いだぜ。」

黒い人は普通の魔法使いらしい

「・・・そう。」


「大丈夫か、お前?・・・ちょっと待ってろよ。」


そういうと、黒い人は柱の先にある建物の中へ飛んでいった。



しばらくすると、黒い人が先ほどの赤黒の人を連れてきた。

私の前に立つ。


「なぁ霊夢、こいつは一体誰なんだ?」

「知るわけないでしょが。」

「人間なのか?」

「人間・・・ではないと思う。妖気も感じないけど。神とも違うみたいね。」

「こいつの事はどうするつもりなんだ?」

「どうもしないわよ、面倒事を起こさなければね。」

「    」

「    」


「    」


「    」





2人は何かをしゃべっている、それなのに、2人は何も話をしていない

2つの音を交互に発しているだけだ。


・・・気持ちが悪い。



そうだ、右目を閉じて2人を見てみよう。この2人のことが何か分かるかもしれない。

右手で目を覆う










赤黒の人はいなくなっていた。

黒い人は、体中から無数の腕を生やしている。


  なあ、お前には名前とかはないのか?


突然、無数にある腕の一本が私に向かって伸びてきた。


「う、うわあああ!!」


慌てて後ろに下がる。


  どうしたんだ?何かあったのか?


             
  うさぎの所にでも運んどけばいいんじゃない?



いなくなったと思っていた赤黒の人は声だけが聞こえる、

黒い人の腕は私を掴もうと忙しなく動いている。




逃げなきゃ


この人たちは恐い、どこかへ・・・あの人のところへ還りたい



私は駆け出していた。脇目も振らず、ただひたすら走る


どこかへ、あの2人から離れなくちゃ


早く、速く











気がつくと、目の前には川が流れている。

近づいて、川を覗き込んでみる。



水に照らされて、何かが映し出される。

そこには・・・




「あぁあ・・・ああああああ、ああああああああああああああああああ!!!!」








































水晶玉から目を離してアリスのほうを見ると、アリスは涙を流していた。

「どうして泣いているの?」

と聞くと、

「我が子が産声をあげたのですもの。涙ぐらい流れるわ。」

そう言って指で涙を拭いた。

「この子はもう胎児には戻れない、器を手に入れてしまったから。この歪んだ世界の中で

この子は自分の道を歩まなければならない。男性になるのか、女性になるのか、性別を持たない

存在となるのか。狂ってしまうのかもしれないし、人里で暮らすようになるのかもしれない。

いつかは私と出会う事だってあるかもしれないわ。」



とても楽しみ。

夢をみるかのようにアリスは語る。

・・・たしかに、おもしろいかもしれない。







あの子の運命を操ったら、どれほど楽しいことだろう。

そう思い、吸血鬼は笑みを浮かべた。









水晶玉の中からは産声が聞こえている
器を作ってから魂を創るのではなくて、魂を創り、自立させてから器に入れる。
そんな感じです。
ひきにく
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コメント



0.370簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
こういう独特の雰囲気は好みです。
右目云々が理解できなかった読解力の無さが恨めしい。
8.80名前が無い程度の能力削除
こういう雰囲気好きです。
ただ、未回収の伏線だらけだったような…
もう一幕描いてくれたらと思いました。
9.100奇声を発する程度の能力削除
この少し狂気染みたお話は大好きです。
11.80ずわいがに削除
わからん……わからん!
でも面白かったです
しかしこれはもはや人形というかヒトですね、うむ
12.90名前が無い程度の能力削除
好きよ