歩く足を止めて空を仰げば見えるのは青色ではなく薄暗い灰色。
今日は生憎の曇り空。
雲は灰色に染められ今にも雫を降らせそうな天気。
まあ、雨が降ろうが降るまいが関係ない事だけれども。
吹き抜ける一陣の風に慌てて両手でしっかり傘を握り締め直す。
私の身体に対してやや大きめのそれは茄子色をしており、なかなか奇抜なデザインをしている。
最早、私の身体の一部とでも言うべきこれはどこに行くときも決して手放した事はない。
さてさて今、私はいつもの様に誰かを驚かせようと色々と巡り歩いてはいるのだが、どうにも運が悪いらしく誰にも出会う事はなかった。
辺りは鬱蒼とした木々に満ち溢れており奥まで見通す事はできず人を驚かすには絶好の場所だろう。
けれど、こんな天気の日に出掛ける人はそうそういない様で視界に一度も人影を捉える事はなかった。
時間だけが無駄に過ぎて行く。
何も焦る事はないのだが、如何せん退屈だ。
……仕方ない、こうなればどこか必ず人の居る場所に行こうか。
私の今居る場所から一番近いのは確かあの紅いお屋敷かな?
なんだか自ら驚かしに行くのは反則な気がしないでもないけど。
しかし、このまま誰とも会えず暇を持て余すよりは、妖怪だろうが妖精だろうが誰でもいいから驚かせたいというのが本音だ。
……確かあそこには緑色の帽子をかぶった門番がいたはずだ。
前に会った時は私の、みんなが古典的だと言う驚かし方にも引っかかってくれた。
何だか芝居臭さが漂っていたが……
まあ、この際それは置いておくとしよう。
纏わりつく湿気た空気を切って私は歩く速度を速めたのだった。
――大きな門が見える。厳めしい雰囲気のそれは見る人へ威圧感を感じさせる事だろう。
しかし、隅々に凝らされた洒落た装飾のおかげか決して悪い印象は受けなかった。
そして、その脇に緑の帽子が見える。
それは下を向いたまま腕を組みつつ塀に寄りかかっていた。
私が近付いても全く身じろぎの一つすらない。
耳元で声を掛けると、やっと顔を上げるのだった。
目を擦りながら
こんにちは
と言う門番さんの姿を見ていると何だか拍子抜けしてしまい、驚かせようという気も失せてしまった。
「今日はどうしたの?」
何か用かと尋ねられるが、素直に驚かせに来たと言うのはなんだか気恥ずかしかった。
だから、適当に取り繕っておくとしよう。
「いやー、別に用とかは無いんだけど、近くに来たから挨拶でもしとこうかなと思って」
「……じゃあ、お客様ですね」
先程までのフランクな雰囲気はどこへやら、背筋を伸ばして 引き締まった感じだ。
所謂、仕事モードと言うやつだろうか?
「取りあえず中へどうぞ」
門番さんについて行くと門の内側のすぐ横にあった小屋に通された。
来客の目につかない位置に建てられた小屋。
その木造の壁はどことなく古ぼけていたが、それがかえって庭の景観を損なわせるのを防いでいる様だった。
「ちょっと待ってて下さいね」
門番さんはそう言うと本館の方へと歩いて行った。
小屋の中をぐるりと見渡したが実に質素なもので、木で作られた椅子とテーブル、それに幾つかの食器類の納められた、やや小さめの棚がある程度で何も目新しい物は見当たらない。
仕方なしに私は椅子に座ってじっとしていたが、手持ち無沙汰は意外と苦痛で窓から庭を眺める事にした。
窓から見える景色は花壇一面を覆う彩り豊かな花や綺麗に切り揃えられた生け垣などであった。
ふっと、息をついて窓枠に肘をついていると、生け垣の上からちらりと覗く物があるのに気がついた。
何だろう?
時々揺れ動くそれはまるで私を誘っているのだろうか?
一度気になると、早々簡単に無視できるものではない。
目を凝らして見るが微妙に距離があるせいか、どうにも見辛い。
うーん。近くに行って見ようかなあ?
でも勝手に出歩くのもいけない気もするしなあ……
腕組みをしてあれこれ考えてみるがどうにも考えが纏まる気がしない。
時間をかけてさんざん迷った結果、私は見に行く事にしたのだった。
――迷路の様な生け垣の間を進む。
曇り空にも関わらず青々とした鮮やかな色合いを失う事のない葉が目を潤す。
まるで蛇の胴の様に曲がりくねった道をあれを目印にどんどんと進んで行く。
そうして、それの下へと辿り着く。
……傘?
私の目の前に現れたのは薄い赤色の生地の傘だった。
クルクルとゆっくり回るその傘の両端からは、宝石の様な物がぶら下がった羽がはみ出していた。
あのクルクルと傘を回しているのは妖精だろうか?
今まで見てきた妖精の羽はどれも鮮やかな物が多かったし……
それに以前、門番さんが妖精達に庭の花を自慢しているのを見たことがある。
傘に隠れてはっきりとは分からないが、傘の高さから見て身長はさほど大きくはない、むしろ小さいと言えるのが見てとれる。
……これはチャンスかもしれない。
見たところあの妖精は私に気付いた様子は見られない。
やってみようか?
物音がしない様に息を殺し、気配を消して近付く。
人一人分の距離まで近寄っても妖精さんが私に気付かない。
妖精は総じて悪戯などの軽い冗談には寛大だ。むしろするのもされるのも楽しんでいる節が感じられる。
……よし、やるぞ!
意を決した私は一気に距離を詰めて妖精さんの横に並ぶ。
そのまま僅かの時間も開けずに耳元で言葉をやや大きめの声で声を掛けてやる。
すると妖精さんは喉を締められたら様な悲鳴だか呻き声だか分からない声を上げ、首だけを私の方に向ける。
私たちの目が合う。
と同時に私を見つめるその目は大きく見開かれ、それに呼応する様に身体も仰け反る。
しかし大きく反応し過ぎたせいか足が追い付いておらず、妖精さんは見惚れる様な綺麗なモーションで尻餅をつくのだった。
「……痛い」
明らかに不快だと思っていると分かる声色だが、私にはどこか今の状況を喜んでいる風にも聞こえた。
お尻を撫でながら立ち上がる妖精さんに先程の一連の動作のせいで投げ出された傘を手渡す。
「あ……ありがとう」
私から傘を受け取ると感謝の言葉を返してきた。
その言葉には一転してさっきまでの怒りの色はどこにも感じられなかった。
悪戯に関して大らかなところは流石は妖精と言ったところか。
私がそんな事を考えている内に妖精さんはスカートを払ったり、髪を手櫛で整えたりしていた。
やがて、満足したのか慌ただしい手は止まり、変わりに口が動く。
「……あなたは誰、私……あなたに恨まれる様な事したかしら?」
少し悲しそうな雰囲気で尋ねてくる妖精さん。
「人は思わぬところで恨みをかうものよ。でも、私のは軽い挨拶みたいなもんだから気にしないでね」
驚かせてごめんね
と謝ると妖精さんは眉をひそめて難しい顔をすると唸る様な低い声を出した。
「駄目、許さない」
「えっ!?」
思わぬ否定に驚いて一瞬思考が飛んだが妖精さんは
冗談だよ。驚いた?
とおどけた様に言うと小さく笑う。
まったく性質の悪い冗談だ。
まあ、私が言えた事ではないが……
でも、どうやら許してくれた様だし、よしとしようか。
ひとしきり笑うと妖精さんは私の事をじっと見つめてくる。
「ねえ、それ……傘?」
彼女は私の頭上を指差す。
そうだ、と私が頷けば
変わった傘だね
と言いながら私の横まで歩いてきて、傘の中に収まった。
私の身長と妖精さんの背丈が上手い具合にバランスが取れていて、なんだかしっくりくる。
横に来るのは良いんだけど……
何か変わった仕掛けがある訳でも無いのに、内側から傘をまじまじと眺める妖精さんに少し戸惑う。
なんだかこそばゆい感じがして身悶えしそうだ。
その時、ぽたっと何かが傘の生地を打った。
ぽたりぽたりという音が続き、緩やかな振動が傘の柄から伝わってくる。
雨だ。
まるで見計らったかの様に雨が降ってきたのだ。
やがて勢いを強めた雫はぱらぱらと傘を打ち、地を打つ微かな雨音が耳に響く。
雨粒が次々に地面へと染み込んで行き、茶色い土を黒へと染め直す。
色を変えてゆく地面へと目を向けていると不意に腕に何かが触れた。
何だろうと思えば妖精さんが濡れない様に私の腕にすり寄ってきたのだ。
「ごめんね、これ日傘なんだ……」
そう言って妖精さんは手にした傘を軽く揺らして見せる。
まあ、それなら仕方ないかな?
相合い傘はなんだか気恥ずかしかったが、別に私が困る事があるわけでもないので構わないだろう。
取りあえず小屋にでも戻ろうか……
と思ったが此処に来るときは妖精さんの傘を目印に来たから帰り方が分からない。
困ったなあ……
どうしようかと思案をしていると妖精さんがゆっくりと歩き始めた。
どこに行くのかは分からないけど、何故かついて行かなければならない様な気がして、私は慌ててそれに続くのだった。
――雨の中を歩く。
妖精さんは傘を打つ雨の音が気に入ったのか鼻歌を歌ってみたり随分と上機嫌に見える。
「ねえ、どこに行くの?」
けれど、そんな態度に逆に不安になって、当て所なく歩いているのではと勘ぐって尋ねてみる。
「任せておいてよ。良いもの見せてあげる」
私の心配を余所にそう言って妖精さんは私の顔を見つめるのだった。
――少女が足を止めて、ある方向を指差す。
私もそれに合わせ足を止めその方向へ目を向ければ、淡い紫色が目についた。
紫陽花?
近くへ寄って見れば、それは確信へと変わった。
今にも消えそうな泡を思わせる花弁の色づきに対してその身体は絢爛なシャンデリアの様な豪華さを内包している。
「綺麗でしょ……」
自分に語りかける様な妖精さんの言葉に私も頷き返す。
薄い紫色の装飾花が集まる様はまるで小さな花束を思わせる。
確かに綺麗だ。
だが私はどうしてもこの花が好きになれない。
赤から青まで色を変えるその様子は自分の在るべき姿を見失っている様に思えるのだ……
その時、ふっと視界がぼやけた気がして右目を擦ってみる。
けれども視界が晴れることはなく、左目を擦ってみても変わる事はない。
おかしいな……
と思ったが冷静に考えてみれば雨足が強まっただけであった。
「ねえ、紫陽花の花言葉って知ってる?」
花言葉か……恥ずかしながら私はあまりそう言った洒落た事に詳しくなかったりする。
頭を掻く私を見て妖精さんはクスリと笑う。
「紫陽花の花言葉は辛抱強い愛情」
妖精さんはしゃがんで紫陽花に手を伸ばす。
しかし、花に直接触れる事はせずに花弁の少し上辺りで手を止めると、まるで赤子をあやす母親の様に優しく紫陽花を撫でるのだった。
その時の妖精さんの横顔は外見にそぐわない大人びたもので、花を見る目は私には到底推し量れる事などできない、深い澄んだものを宿していた。
そんな彼女になんと声を掛けていいのか分からずに、ただ立ち尽くすだけの私の耳にふと言葉が聞こえた。
――スキ
突然の語りかけに不意を突かれてうまく聞き取れなかった。
取りあえず小首を傾げて曖昧な返事をしておく。
すると妖精さんは立ち上がり私に触れるくらいに近い距離にまで顔を近付けてきた。
目の前の少女から威圧感の様なものを感じる。
外見とは裏腹に老獪な鷹を思わせる紅い瞳。
先程までは調度良いくらいの距離だと思えたのに、今はこの距離がとても恐ろしいものに感じられてならなかった。
けれど、傘の下では逃げ場所など何処にもありはしない。
妖精さんの目と私の目が合う。
紅い鋭い鷹の爪が私を捕らえる。
酷く乱暴なそれだけれど、私はその目に儚い紫陽花を見た気がした。
――再び少女が口を開く。
「あなたは……紫色は好き?」
何でもない少女の言葉。
しかし、何故だか分からないが私の心には鋭い棘の様に突き刺さるのだった。
私は少女の視線から逃れる様に上へと目をやる。
視界一杯に紫色の空が広がる。
それは私を押し潰すのではないかと思う程に圧迫感を抱かせるのだった。
いつもと同じなのに……
いつも見ているはずなのに……
それなのに……酷く不快に思えた。
――何度か考えた事がある。
もし、私が紫色でなければどうなっていたのだろうか?
もし、私が紫色でなければ傘としての本分を果たす事ができたのだろうか?
もし……いや、きっとだ。
きっと私が紫色でなければ捨てられる事もなかった。
いくら考えてもどうしようもない事。
しかし、考えずにはいられない事。
冷たい大地に一人で横たわる……それのなんと切ない事か。
陰鬱とした野で泥にまみれる……それの悲しい事か。
傘なのに雨を防ぐこともできずに濡れる。それのなんと情けない事か……
傘なのに柄に伝わるべき温もりを感じらんない。それのなんと寂しい事か。
止まない雨が紫陽花を、大地を、そして傘を打つ。
泥にまみれで一人見上げた夜空。
その無慈悲な牢獄の様な暗さを目の前のこの子は知らないだろう。きっと。
百年を数える永遠かとも思える寂寞の時。
その身を焦がす孤独の辛さをこの子は知らないだろう。絶対に。
恵みの雨が紫陽花に、大地に染み込む。けれども傘はそれを弾く。
目の前のいかにも幼い少女は何も知らないし、分からないだろう。
だからきっとあんな顔ができるのだろう。
紫陽花を愛でていた少女の横顔を思い出す。
私も……いつかあの表情を自然と浮かべる事ができるだろうか?
傘の生地を雨が打つ音だけが私の耳に届いた。
ああ……私はきっと紫色が……
――私の返答しようと口を開いた瞬間、それを遮るかの様に妖精さんが言葉を発した。
まるで私の答えなどとうに分かっているとでも言わんばかりの表情に私は口を閉じるのだった。
「私は紫色は好きよ。紫は高貴を表す色だしね。」
そう言うとくるりと私に背を向け、後ろで組んだ両の手でぽんぽんとお尻を叩く。
妖精さんの翼の宝石が淡い光を放っている。太陽は隠れているはずなのに……
中で光を乱反射させるそれはとても綺麗で、きっと見る者の心を奪う鷹なのだろう。
そう思うと傘の柄を握る手に力が入るのを止められなかった。
再び妖精さんが動く。
身体をひねって顔だけをこちらへと向ける。
「それに……なにより、紫陽花の色だしね」
満面の笑みを浮かべる少女に私は何か言葉を掛けようとするが、どんなに頭の中を探してもそれは見つからなかった。
「それに、私は好きだよ。この傘」
「どうして?」
私は純粋に疑問をぶつける。今までこの傘を悪趣味だと言う人こそいたが、気に入ったと言う人はいなかった。
「紫陽花の中に居るみたいでしょ」
そう言って少女は花を指差す。
見れば緩やかなドーム状に花を咲かせる紫陽花。
言われれば傘に見えなくもない。
少女の方を向き直れば彼女は上を見上げていた。紫色の空を。
そして一言ぽつりと呟いた。
「とても綺麗で素敵な花の傘ね」
その言葉を聞いた時、温かい何かが私の心を覆うのを確かに感じたのだった。
――小屋の前で傘の水気を軽くきる。
葉に溜まった雫が一つに集まりやがて大地へと落ちて行く。
先程まで降っていた雨は今は止んでいる。
しかし、未だに空は曇っていて、またいつ降り出してもおかしくはないだろう。
妖精さんは雨が止んでいる内に館へと入って行った。
また遊びに来てね
と言いながら手を振る姿はなんだか外見以上に幼い様に思えてならなかった。
随分と淡白な別れ方だったが、まあ仕方ないだろう。
そう言えばまだ名前も聞いていなかったな……
妖精さんが入って行った正面扉を見つめていると、その扉から門番さんが出てくるのが見えた。
そして私の姿を見たからか、手を振ってそのままこっちに駆けて来る。
水溜まりはちゃんと避けて、泥も跳ね上がった様子は見られない。
素直に器用だなあと感心する。
私には到底できそうもない。
門番さんは小屋までやってくると
「すみません! 咲夜さんもお嬢様も見つからなくて……」
と頭を下げてくる。
「そんなの気にしなくていいよ。今日は十分なくらい楽しめたしね」
そう言うと門番さんは不思議そうな顔をした。
しかし、それは良かったです。
とすぐに笑顔になるのだった。
――雨にぬかるんだ道を私は歩く。
あの後、すぐに門番さんに帰る旨を伝えると
おもてなしできなくてすみません
と言いながら丁寧に見送ってくれた。
木々の葉に残った水滴が光を鏡の様に反射して白く輝いている。
その眩しさに思わず目を細めてしまい、それを遮るために左手で目元を覆う。
雨の時とはまるで嘘の様に明瞭な視界は、何処までも見通せる気にさせるのだった。
右手で傘を握る。雨も風もないが、ぎゅっと。
傘の中には私一人だけ。
いつもと同じはずなのにその中は何故か広い様に感じた。
ふっと振り返り紅い館を見る。
雲の切れ間から差す一筋の光の帯が水に濡れた紅い屋根を照らしている。
なんとなく、私は館に向かって大きく手を振る。
妖精さんが窓から私を見ている気がしたから。
もちろん私からは彼女の姿が見えないから、やっぱり、ただなんとなくだが……
それでも、きっとあの子も手を振り返してくれている。
そんな気がするのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
薄暗い部屋。ランプに灯された明かりがゆらゆらと揺れている。
その淡い灯火は、長い間僅かな光さえ差し込む事のなかった、この暗闇の部屋を照らす数少ない物。
それはきっと夜空に浮かぶ一等星の様に闇を照らしてくれているに違いない。
私の部屋。
誰も訪れる事なく幾年を過ごした場所。
そこで私はおやつのケーキを掬いながら目の前の人へと声を掛けた。
「ねえ、咲夜お願いがあるんだけど……」
「はい、何でしょうか?」
人にお願いをするのはなんだか気恥ずかしくて、手に持ったフォークをくるくると回して気を紛らわせる。
「えっと、手品を教えて欲しいんだけど……いいかな?」
「別に構いませんけど……どうしてまた手品なんか?」
フォークと反対の手で紅茶を手に取る。
ひんやりとしたカップの取っ手と違い中のお茶は舌触りの良い温度。
「ちょっとね、驚かせたい子がいるんだ」
紅茶が喉を通って行く感触を楽しみながら、テーブルの真ん中へと目を向ける。
そこには一輪の紫陽花が置かれている。
少し前にお姉様から貰ったものだ。
茎から切り離されているにも関わらず一向に枯れる事のない花。
ちらりと横目で咲夜の方を伺うが、いつもと同じ微笑を浮かべるだけだった。
紫陽花の花言葉は辛抱強い愛情……
――そして、紫陽花のもう一つの花言葉。
元気な女性
あの子にはそっちの言葉が似合うだろう、きっと。
いつも見ているはずの紫陽花がこの時は何故か色鮮やかに見えた。
これから二人は、どんどん仲良しになっていくんだろうなぁ。
しかし小傘ちゃんよ、君の危機察知能力のあまりの低さ、お父さんはとても心配だよ。
雨の中を歩く吸血鬼。フランの幼さと妖艶さが感じられるシーンで、それを包み込む紫の傘、という図式がなんだか、気にいりました。
フランちゃん、なんか落ち着いた女性って感じで可愛いのぉ