ある部屋の中での話

部屋の中で、一人の少女が寝ている。

朝日が少女の顔を照らしだし、鳥達の歌声が少女に朝の訪れを知らせる。

やがて少女は目を覚ました。




少女はゆっくりと自分が寝ていたベッドから降り、扉へと向かう

トコトコ



ガチャ・・・

開かない

ガチャガチャ

やはり開かない、扉には鍵が掛けられているようだ。

・・・鍵穴はこちら側にある。・・・自分が閉めたのだろうか？

どうしようか、扉を壊すわけにもいかないし、壊せそうにもない。




トコトコ

窓のそばに歩いていく。行儀は悪いけど、窓から出よう、空も飛べるし。

ガタ・・・ガタガタ

・・・開かない。

鍵が閉まっている。

ググッ

・・・鍵は堅くて動かせない。




部屋の周りを見渡してみる。自分が寝ていたベッド、本が敷き詰められている本棚

壁に掛けられた振り子時計、大きめの机、そして一際目を引くたくさんの人形

が入れられている棚、それから小物がいくつか置かれている。

目に見えるところに鍵はないようだ。



どうしようか、とりあえず、もう少し詳しく部屋の中を探してみよう。

机に移動する。

机の上には、ノートが１冊、ペンが一つ、コンパス、定規、分度器、ハサミ、

デスクスタンド、鏡がある。

ノートを開くと最初のページに

「とじないかさ」

とだけ書かれている。他のページには何も書かれていない。

閉じない傘とはなんだろうか。

・・・・・・

他の場所をさがしてから考えることにしよう。




机の戸を開こうとする。

ガッガッ

・・・鍵が掛けられているようだ。




ベッドの周辺を探索してみる。

枕をひっくり返し、毛布も床まで引っ張る。シーツの中やベッドの下も探るが

何も見つからない。




本棚を探してみる。

「世界の人形」

「童謡の楽しみ」

「赤犬とドラゴン」

「２頭身のデフォルメ人形から７頭身の人形まで丸分かり」

・・・・・・

・・・

上の段には人形の本や劇の本が並んでいる。




中段には・・・

「上級魔術の先にあるもの」

「魂と輪廻」

「沼にひそみ死を誘う者」

・・・・・・

・・・

よく分からない本がならんでいる。



下段には、同じ大きさの色とりどりの本が並んでいた。背表紙には何も

書かれていない。


上段の本から一冊づつ本を抜き出していき、中をぱらぱらと捲っていく。

特に変わったところはない。

中段の本を調べてみる、

・・・

４冊目の本のページを捲っていると、最後のページに小さい鍵が貼り付けられていた。

多分机の戸の鍵だろう、鍵をポケットに入れて本の調査を続ける。



中段の本には他に何もなく、下段の本は取り出すことは出来たが開くことは出来なかった。

閉じ具などは付いていなかったが

・・・なにかあるのかもしれない。




とりあえず、小さな鍵で机の戸が開くか試してみる。



ガチャ・・・カチッ



開いた。中を見てみる。

・・・雑多に物が入れられているようだ。手探りで探してみるが扉の鍵は見つからない。

他の場所を探してみよう。



時計を調べてみる。小さい振り子時計だ、時間になると１２の文字の上にある扉から

何か出てくるのかもしれない。

時間は６時を指している。時計は止まっているようだ、振り子も動いていない。

・・・特に何もないようだ。




時計を壁から外すことはできるだろうか。

・・・外れない、しっかりと壁に貼り付けられている。




最後に人形の並べられている棚を調べることにする。

同じ人形は無く、大小様々な人形がある。国旗を持っているものや

鎌を掲げている人形、猫や生首のようなものもある。

人形達を棚から出し並べてみるが、鍵を持っている人形はいない。

メッセージを持っている人形もいないみたいだ。






ひととおり部屋の中の調査は終わった。




・・・さて、謎掛けに挑戦することにしよう。


机にあるノートを再び開く



「とじないかさ」


・・・


傘のこと・・・だろうか？


周りを見ると、普通の傘は見つからなかったが、折りたたみ式の傘が見つかった。

開いてみる。

バサッ

・・・何も無い。

・・・閉じてみる。

・・・開いてみる。

閉じる。

とりあえずこの傘は保留しておこう。




とじないかさ・・・



・・・・・・とじない・・・どうしてとじないのだろう。

・・・雨、だろうか？外は晴れている・・・

水に関係がありそうなものは部屋にはない・・・














・・・作り物だから？

傘を持っている人形がないか探してみる。

・・・あった、

人形の隅々を調べてみる。

・・・何もない。











うーん、考え方が悪いみたいだ、もう一回ノートを見てみよう。

「とじないかさ」

・・・うーん、

光に照らしてみようかと思い、デスクスタンドのスイッチを入れる。



カチッ



光は付かない

カチッ、カチッ

やはり付かない。何かあるのだろうか？


・・・・・・

・・・・・・

かさ・・・・・・デスクスタンドには、「かさ」が・・・ついている・・・

「とじないかさ」が付いている！！


デスクスタンドをよく見てみる、変わったデスクスタンドではない。

電球に何かあるのだろうか？電球をはずしてみる。

キュッ、キュッ

キュッ、キュッ

キュッ・・・カポ・・・


何も無い・・・




かさの上の部分が外せそうだ。

カリッ

カリッ

ガッ・・・パカッ・・・







・・・中には紙切れが入っていた。




「とけい」




時計か・・・一単語なのでそれ以上の意味はないだろう。

振り子時計の正面にたつ。



やはり何かがあるようには思えない。


針を動かしてみようか。

・・・逆方向には動かないみたいだ。正方向に長針を動かしていく。

６時から

・・・７時

８時

９時

１０

１１

１２・・・カチッ、ギィィ・・・

針を１２時まで進めると

振り子時計の扉が開いて看板を持った鳩が出てきた。





「　　は　　ず　　れ　　」




・・・・・・・・・

多分・・・そのままの意味ではずれなのだろう・・・








とけい・・・人形を見るが時計を持っている人形はいない・・・

他に時計なんてあるのだろうか・・・













部屋の周りを調べるが何も見つからない。

・・・・・・









・・・机の戸の中を入念に調べることにする。




・・・あった、革ベルトの腕時計が見つかった。




ただ、普通の腕時計である。皮の部分や文字盤にも何も書かれていない。

腕時計の時間は３時になっている。

・・・針は動かせない。




３になにか関係があるのだろうか？





３・・・さん・・・

カーテンのさんの部分を調べる。

・・・何も無い。






３・・・スリー・・・サード・・・三ボス・・・？

・・・・・・方角を指しているとか？

・・・それはないか

・・・机の戸の中には他に役立ちそうなものは無い




・・・腕時計を再び見る

・・・分度器で角度を測る。






３時・・・





振り子時計の針を動かしてみる。

１２時から

・・・１時

・・・２時

・・・３時



コトッ



何かが落ちて来た。

・・・紙切れだ

見ると、



「せかいはかこわれている、そのなかにはなにがある？」



と書かれている。



どうやら、腕時計の時間は振り子時計の時間を３時にしろという事だったみたいだ。

逆方向に針を動かせないようにしていたのはそのためだろう。

一回フェイクを混ぜられているので気づかなかった。






まあ、いい。この謎掛けを解こう。

世界は囲われている。それならその中にあるのは世界そのものだと思うけど・・・

だからどうした、という話か。

この部屋には地球儀はない。

人形は・・・国旗を持っている人形があった。

・・・隅々まで調べたが何も持ってはいない。



せかいはかこわれている・・・

この部屋のこと・・・？

囲われているのは・・・私？


・・・そもそも私が鍵を持っているなら苦労はしない・・・




世界を囲う・・・

・・・・・・

人形の棚・・・だろうか？様々な人形が囲われていた棚・・・



人形が並べられていた棚を調べてみる。

・・・何もない。






囲う・・・どうして「かこう」でなければならないのだろう？

文章に違和感を覚える部分だ。

世界を「覆う」でもなく「包む」でもなく、他の言葉ではだめな理由が

あるはずだ。




世界を囲うもの

・・・結界？

結界の中にあるものは

・・・里？・・・妖怪？



・・・違う気がする。





何かヒントになるものがないかと思い、本棚にある本を読んでみる。


「世界の人形」


本の中では、人形の名称や形、人形が誕生した国の事などについて

語られている・・・。


世界の人形・・・

世界・・・日本の人形・・・イギリスの人形・・・ロシアの人形・・・

スペイン・・・中国・・・

・・・

世界を囲うものは・・・国境？

国・・・

世界を「かこう」ものは・・・国だ！！

国の中にあるものは「玉」だ！！

玉の形をしている物がないかと周りを探す。

・・・玉のようなものは見当たらない。

机の戸の中を調べる。

ガサゴソ・・・

・・・あった。球形の形をした入れ物が見つかった。


開けてみる。




・・・空だ。



・・・玉・・・球形の玉ではなく、拳銃などの弾なのだろうか？



・・・部屋の中にそういうものはない。





答えが間違っていた・・・？

世界の中心・・・

国の中心・・・国の中心にいるのは、・・・「王」・・・？






王様の姿をした人形・・・あった。



隅々を調べてみる。



・・・何もない。



・・・王冠の部分も取り外せないし、人形が持っている杖に付いている玉

の部分にも何もない・・・


足の先から指で押していく・・・

グニグニ

グニグニ


足・・・胴体・・・杖・・・頭を押していく。

グニグニ

グニグニ

目の部分にさしかかった。

グイグイ

だめだ、目玉に何かあるかもしれないと思ったけど、取れそうにない。




目「玉」か・・・

国の中が「王」ではなく「玉」なら・・・

他の人形に入れられている可能性は・・・ある？




グイグイ

グイグイ

グイグイ


・・・・・・


・・・


だめ・・・どの人形の目も取り外せそうにない。


























ふと、机の上に出ている鏡が視界に入った。

鏡には自分の姿が映されている。

・・・・・・




世界の中にいる私








右目に触れてみる・・・

グイグイ

・・・取れない。

左目は・・・








グイ・・・ズルッ・・・スポッ

ズルズル・・・

チャリン




鍵だ・・・左目に繋がれて鍵が出てきた。





扉のほうへ向かう。

鍵を差し込む・・・


ガチャ

ガチャ





・・・・・・カチャリ





開いた！！




扉を開けた人形は急いで扉の外へと飛び出していった・・・・・・
































終

「上海を部屋から脱出させアリスになでなでしてもらうゲーム」

バイオハザードじゃないんですけど、脱出系のゲームをＳＳで書いたらどうなるのかなぁ、と思って書いたものです。

一部屋って狭すぎない？とか問題少ない、レベル低い。という方は、アリスが人形用に作ったものだから、ということでお願いします。・・・すいません。一つの家でこれを書く技量もトリック考える能力もないだけです。

部屋の中に鍵穴があるのは仕様ということでお願いします。

出来る限り考えて書いたものではあるのですが、実際、このＳＳが他の人にとってどういう風に読まれているのかまったく想像できません。
出来れば、このＳＳに関して「意味は分かるけどおもしろくはないよ」とか「ここの部分わかりづらい、改善するべし」というような感想、批評をお願いします。