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因幡 てゐ氏、永遠亭について語る~竹林にて~

2010/05/04 00:27:58
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【超解釈につき注意】
時期的には、花映塚の後、文花帖の前あたりなつもりです。もしかしたら、これが文花帖のインタビューと
同じインタビューかもしれません。


 あれ、いつかの天狗じゃない。どうしたの? こんな竹林の奥深くで。――私を覚えてない? 花
が咲き乱れたころに会ったでしょ? いつのことかって、今回のに決まってるじゃない。天狗になっ
ても、鳥頭は変わらないものなの? まあ、思い出せないなら別にいいけどね。
 それで、こんなところで何してるのよ。――永遠亭に? 自力でたどり着くのは不可能よ、薄々気
付いてるみたいだけど。だって、空から見つけられなかったから、わざわざ歩いて探しているんで
しょう? ――私は知っているわよ。でも、ただじゃ教えてあげない。まずは、私にインタビューして
みるのはどう? 最後まで私の話を聞いてくれたら、永遠亭に案内してあげる。

=======================================================================

 昔、――だいたい1000年くらい前だったかしら――あるところに、裕福な貴族の男が、妻と、幾
人かの使用人と、かわいい娘と一緒に、住んでいました。彼らは、それなりに裕福な暮らしをしてい
ました。しかしある日彼は、天皇も出席した重要な会で、大変な失敗をしてしまったのです。それが
元で、彼は職を解かれ、今までの裕福な生活が嘘のように、貧しい暮らしを余儀なくされました。―
―もちろん、職を解かれても貴族は貴族、出費さえ切り詰めれば――たとえば、使用人を解雇す
る、とか――今までどおりの優雅な暮らしを続けていくこともできたでしょう。でも彼は、そうしません
でした。できなかったというほうが正しいかもしれません、とにかく彼は、そうしないで、貧しい生活
をすることを選びました。使用人と娘には今までどおりの生活をさせ、自分と妻は質素倹約に努め
たのです。その吝嗇家ぶりといったら、屋敷の周囲に生えていた竹を、色々なことに使うほどでし
た。
 彼がそのような生活をし始めて、十数年が経ちました。そのころには、娘もたいそう美しく成長し、
そろそろ会にも出席させなくてはならない年齢に達しようとしていました。彼――今では、周りの人
間から「竹取の翁」などと呼ばれるようになっていました――は、娘を歌会に連れて行きました。そ
う、「この子は、竹の中で見つけた」と言って。数日と経たないうちに、その大層美しい少女のうわさ
は、都中に伝わりました。毎日、その姿を一目見ようと大勢の貴族が屋敷に押しかけました。「ぜひ、
嫁に欲しい」と、金を渡すものもありました。彼は、みるみるうちに、大金持ちになりました。貴族た
ちの中には、突然羽振りがよくなったことを訝しむ声もありましたが、「竹を切ったら中から金が出て
きた」と説明すると、皆引き下がりました。何人か、納得しない人間もいましたが、彼は彼らに小金
を持たせることで解決しました。
 あるとき、彼は、渡した金が最も多い五人の皇子――中には、藤原不比等もいました――を集め
ました。そして彼は、彼女にこう言いました。「五人の皇子達に、絶対に解けない難題を出せ」と。
彼の目論見では、全員があきらめるか事故で死ぬはずだったのでしょうが、たった一人、藤原不比
等だけは、本物の蓬莱の玉の枝を持ち帰りました。あのときの、不比等の誇らしげな顔は、今でも
私の記憶に残っています。不比等が、見知らぬ職人に糾弾されたときの顔も。そうです。彼は、町
の職人に金を渡して、公衆の面前で不比等に濡れ衣を着せたのです。すべて、娘を他人に渡し
たくないがために。
 しかし、これだけの騒ぎが、帝の耳に入らぬはずもなく、帝も、しきりにあってみたいとおっしゃっ
ていました。彼は、娘が会いたくないと言っているの一点張りで、どうしても帝と娘を引き合わせよう
としませんでした。しかし、いつの間にか、娘は帝と文通をするようになりました。それでも、彼は娘
の結婚を許そうとはしませんでした。それどころか、少しずつ、周囲に「実は彼女は月の人間で、も
うすぐ月に帰らなくてはならない」などという噂を流すことで、さりげなく娘を亡き者にしようとまで考
えていました。きっと彼は、自分のついた嘘が娘から他人に知られるのが怖かったんだと思います。
 そんなときです。娘が死にました。彼が陥れた藤原不比等の、その娘の手によって。不比等の家
は、あの事件によって、ぼろぼろになっていました。家主が信用を失い、地位を失った家は、簡単
に壊れていきました。「全て、あの娘が悪いんだ」そう彼女が思ったとしても、不思議はないでしょう。
その娘は死罪になり、帝には「月へ帰ってしまった」と伝えました。帝なら、使わずに燃やしてしまう
と見込んでか、薬の入った小瓶まで渡して。


 ――うん? 肝心の、月の主従の話が出ていないじゃないかって? この話には、続きがあるの
よ。まあ、文句を言うのは最後まで聞いてから、ね?

 彼は知りました、自分のしたことの意味を。彼は気付きました、自分は何を望んでいたのかという
ことを。彼は初めは、ただ娘を幸せにしたかっただけなのです。彼は悔やみました、なぜ自分は、
ただ一人難題を解いた不比等を、娘の婿に選ばなかったのかと。彼は夢見ました、この屋敷で、
自分の娘と不比等と、そしてその娘が幸せに暮らしているのを。できれば、誰か一人、優秀な護衛
かつ従者がいればいい。そんなことを。彼は夢見ました。彼は夢見ました。彼は夢見続けました。
そしてそのまま、死にました。
 いつしかその竹林も忘れ去られ、幻想の場所となりました。そしていつの日か、その屋敷に奇妙
な人影が見られるようになりました。その人影は、確かに四つ。幸せそうに、暮らしていたそうです。

====================================================================

 ――はい、私の話はここまで。じゃあ行こうか、永遠亭に。――え? 今の話が本当かって? さ
あねえ。で、どうする? それでも、永遠亭に行ってみる?
 はい。プリズムリバー三姉妹と同じ、霊です。霊体です。でも、てゐの言うことなので、信じないほうがいいと思います。

以上です。お疲れ様でした。
さとうとしお
[email protected]
https://twitter.com/sugarAsalt
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コメント



0.210簡易評価
1.70名前が無い程度の能力削除
やっぱり、似たようなこと思いますよね。

あるいは、幻想郷そのものについてとか。
5.80名前が無い程度の能力削除
今までちらりとも思いつかなかった設定です。

まあ、てゐの言うことだから最初からでまかせかもわかりませんね。
7.80ずわいがに削除
竹取物語を覆す設定
これは確かに俺には思い付きませんでした
あっぱれです