鼻息があらい。
鼻血がでそうだ、と私は頭のなかで呟いた。興奮するとすぐに鼻の粘膜がやぶれて血がでる、そういう体質は結局、大人になっても治らなかった。
――月がでている、満月だ……いい夜だ。吸血鬼を倒すのに、これ以上はない。
そんなことを同類のヴァンパイア・ハンターにいうと、いっそう気ちがいのように見られる。昼間ですら吸血鬼は人間をはるかに超える体力と知恵を発揮するのに、夜もそれも満月ともなれば人間の手におえるものではないから。
私は、その最高のコンディションにある吸血鬼を退治することに魅せられていた。吸血鬼が格下と、指を動かすのと同じぐらいたやすく殺せると思っている人間に、圧倒され、床に這いつくばらされたときの表情は、たまらない。実にたまらない。――ああ、だから、私は狂っているというのは的をえてるのかもしれない。
目の前に赤い屋敷がある。
夜だからといって闇に身を潜めるようなことはしない。相手は真の暗闇でも見通すことができるのだから、物陰にかくれてこそこそして、自分から視界を悪くするのは愚策だ。正面堂々と、押し入り強盗のようにやるのが私の流儀だ。
屋敷をぐるりと囲む背のたかい壁、返しの向きは中に向かっていた。おそらく、館の主人である吸血鬼の食料が、逃げだせないようにしているのだ。
鉄格子の門がある。
門の前には、ひとりの女が立っていた。背が高い、私よりも頭の一つ二つは高いだろう。周囲に絶えず気をくばっているのが表情から読みとれる。
中華風ドレスのようなものを着ている。最近の流行(シノワズリ)に乗って、その恰好を選んでいる……わけではなさそうだ。着慣れている印象がある。
その女は私に気づくと、にっこりと微笑んだ。
私はゆっくりと女に近づいていく。声のとどく距離になると彼女は、
「夜の散歩ですか。感心しませんね、この屋敷には――彼女は口を大きく開き、尖った歯を見せて――人食いがいます。すぐに引きかえしてください」
「その人食いに用がある」
彼女は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして、すぐに表情をひきしめた。思いつくところがあるのか、腰を落として、
「復讐なら考えるだけ無駄です。お嬢さまには指一本触れさせませんよ」
私はじっと彼女の顔を見あげ、背に隠した銀のナイフを取りだした。手のうちで遊ばせながら、逆手に握りしめる。ほどよい重さが腕の筋肉を緊張させる。彼女は器用に片目だけを動かして、私の手のナイフを確認して、
「帰っていただけませんか」
と懇願するような声音でいった。立場が逆転しているような錯覚におちいって、調子が狂いそうになる。
「あなたには用がない。だから、殺さないであげる」
惑わされずにきっぱりと否定すると、目の前の彼女は唐突に笑みをうかべた。なにやら嬉しそうに、
「私は紅美鈴と申します。久々に骨のある人間です……ね!」
美鈴は私の顔面に手のひらを突きだす。迫る手のひら目がけて、ナイフを振る。手の肉を裂く感触……は伝わらない。鉄でも叩いたかのような反発。混乱する思考を放りなげて、ナイフから手を放し、その場で回転して横にずれる。自分がいた場所にするどい突きが放たれる。手のひらをフェイントにしての攻撃の、空気を裂く鋭さに血の気がひいた。並の吸血鬼をはるかに超えるスピードだ。
距離を取るために後ろに跳ねる。美鈴は私の動きに難なく追従する。
隠し持っているナイフのうちの一本を、引抜く勢いのまま目の前にせまった美鈴の顔に投擲する。美鈴はそれを片手で払い、払いながらその手を蛇のように私の首に伸ばす。
捕まったら、首を折られる。
もし相手が人間なら、こちらから頭突きをするところだけれど、こいつを相手にそれをしたら、おそらく頭蓋骨を砕かれる。
圧倒的に不利だ。神を呪いたくなるぐらい不公平だ。美鈴をいくら切りつけても彼女は創ひとつ負わない、私は美鈴の攻撃が掠っただけ致命傷だ。どくり、と心臓が高鳴る。血が全身に行渡って、興奮する。
鼻血がでそうだ。もう目の前に美鈴の手がせまっている。おそらく後ろに飛んでも、横に転んでもチェックメイトだ。後ろに飛んだら、地面に着地した瞬間に美鈴の蹴りが私の腹を貫くだろう――彼女の片足はすでに踏みこむ一歩手前にある。腰の辺りで構えられた片手が、横に飛んだ場合は伸びてくる。一瞬でも動きを止めればアウト、だから、私は……!
キィン
と耳鳴りがした。
美鈴と私との距離がみるみるうちに開いていく。それはあまりに不自然で、美鈴は目を丸くした。悪夢のように手を伸ばしても伸ばしても相手に届かない。戸惑うのもつかの間で、美鈴はすぐに足に力を込めて、地面を蹴った。
何がどうであれ、相手が逃げる以上の速さで追えばいい。
単純にして最良の選択だ。私は笑いたくなる。人間であれば、その選択はありえない。私が距離を伸ばすのよりも速く動くことは、理から外れるということだ。人外の化物はその不可能を可能にするだけの力を持っている。だから、最適解が選択可能で、それゆえに先回りしやすい。
私はもう一つ銀のナイフを引抜き、突上げるのと同時に伸ばしていた距離を縮めた。私のできる最大の速さで! 美鈴の顔がゆがむ。失敗に気づいたのだ。全力で地面を蹴った反動に抗えば、自分の身体を壊しかねない。いまさら方向を変えることもできない。それでも判断に迷わず、相打ちで私を倒そうと覚悟を決めたのはさすが。
私の突きだしたナイフは、美鈴の突撃してくる速さと私自身の突きの速さを乗せて、美鈴の胸を貫いた。貫かれながらも、美鈴は私の胸に拳を打ちこもうとする。再び距離を伸ばして、美鈴の拳から逃れた。
美鈴はがくりと膝を落とし、胸にささったナイフを引抜こうと柄をつかむ。すると煙があがり、肉のこげる臭いがする。
「あー……やっぱり祝福されてますよね、痛いなぁ」といいながら、簡単に胸からナイフを引抜いて地面に捨てた。じわりと傷口から血があふれでる。
美鈴は上着を脱ぎ、それを切裂いて、ふわりと傷口に巻きつけた。あっという間に止血を済ませてしまう。
私はその動作をじっと見守っていた。止めを刺しに近づくにはあまりに無防備で、何かの罠にみえてしかたない。
「じゃあ人間さん、続きをしましょうか。と言いたいところですが、」
美鈴は背後に目をやった。そこにはいつの間にかに少女が立っていた。寝間着のような服を着た少女が眠そうな目をして立っている。赤い瞳がちらりと私に向けられる。心臓を鷲づかみにされたような恐怖におそわれる。
「美鈴、あなた負けたの?」
「一本取られました」
「夜に……満月の夜に、吸血鬼の従者がたかが人間の、しかも娘に負けるなんてね」
「すみません」
「いいわ。私は寛大だから、赦してあげる」
少女は私に顔をむけた。目鼻の形もまだハッキリしない子供の顔をしている、声も高すぎて幼くて、それでも声の調子に老獪さがにじんでいる。どうにもこうにも、嫌な予感しかしない。
「あなた、名前は何ていうの?」
「吸血鬼に名乗る名前なんて持ちあわせてない」
「そう。じゃあ、私が名前をつけてあげる」
「意味がわからない」
「今日は満月ね。本当にいい夜。でもね、東のほうの人は明日の月の方が美しいと言っていたのよ。だから、あなたは今日から十六夜と名乗りなさい」
恍惚と、少女が決めつける。その声を聞いているだけで、気持が昂ぶってくる。衝動が尾てい骨から背筋にかけあがってくる。コロセコロセコロセ、コロセという呪縛のような感情だ。冷静になれ。皮膚の感触が敏感になり、まるで裸でいるような気になる。服のいたるところに隠した銀のナイフの感触を確かめる。残る銀のナイフの数は十六で、それで目の前の二人の怪物を倒しきれる確信はない。
綱渡りですらない。塔の上から空に飛びこんで、生きて戻れというのに等しい。歯がなりそうになる興奮を噛みしめた。いまの全身全霊をかける、五体満足で帰れたら奇跡だ。
息を吸う、止める。
少女に近づく。進むのではなく、距離を縮めて。あっという間だ、だれも反応できないスピードだ。少女の心臓に向けて銀のナイフを突きだす。美鈴が咄嗟に私の手を払おうとする。
神経を集中する、地面に捨てられたままの銀のナイフと美鈴との距離が途端にゼロになる。ざくりと嫌な音がし、美鈴が目を丸くする。彼女の傷口にもう一度ナイフが刺さっている。美鈴のことを蹴りとばす。美鈴は地面を転がり、今度は起きあがらない。
「すごい!」
という少女の声は背後でした。距離をいじり、少女から離れる。
「十六夜、私の名前はレミリア・スカーレット。お前は名乗るに値する人間よ。まさか美鈴を、勝負ではなくて殺し合いで負かす人間がいるなんてね。褒めてあげるわ」
「それは……どうも」
従者がやられても動揺もしていない、焦ってすらいない。それは美鈴よりも彼女のほうが強いからだろう。
「お前がとても欲しいわ――レミリアは鼻をならす――見たところ処女のようだし、私の眷属になりなさい」
「なりません」
「性は十六夜、私の満月にちなんで名前は咲夜でどうかしら」
「話、聞いてますか」
「なんで私が人間ごときの意見を聞かなくちゃいけないの?」
吸血鬼は、だいたいこんなやつだ。傲慢で高慢で、人間なんてただの食料としか思っていない――私も人間なんて大嫌いだけれども。ただ、吸血鬼の異常にふくれあがった矜持をたたきつぶすのが、たまらないのだ。ぞわりと身体がふるえる。期待に喉の奥が鳴った。
頭に血がのぼる。神経がむき出しにされたかのように痛む、ズキズキと頭の芯が痛む。火花が散るように目の前がちらつき、私は大きく息を吐きだして、吸いこんだ。
時間が止まる。
色彩の欠落した、私だけの世界。息を止めていられる間だけ可能な空間。
そこでは距離も時間も私の思いのまま、ニュートンの林檎も空に落ちる!
隠し持っているナイフのすべてを全力で、目の前でふんぞり返っている少女に向けて投げつける。すべてが止まった空間で、私の位置をずらし、少女の背後にまわる。逃げられないように捕まえる。赤くなった火箸を突っこまれたように頭の中が熱い。ナイフの時間を加速させて、私だけの世界を開放した。
レミリアが背後にいる私に、
「あら、」
といった瞬間、目で追えないほど加速したナイフが突き刺さろうとする。けれど、先読みしていたかのように美鈴がレミリアの前に飛びこんで、一六あったうちの七つまで自分の身体で止め、そのうち四つを指の間にはさんで止めた。残った二本がレミリアの身体をつらぬく、はずだったのに、彼女はその瞬間身体を蝙蝠に変えた。ナイフはレミリアをすり抜け、私へ――もう一度時間を止めて、自分の飛ばしたナイフを避ける。美鈴のところまで駆けていき、目をまわしている彼女の身体に刺さっているナイフを引抜いて、両手に持つ。
蝙蝠になったレミリアを睨みあげながら、時間を再び動かす。ズ、という音がたしかに頭のなかでして、鼻から血がこぼれた。視界がわずかに霞んだ。目の前に蝙蝠が集まって、レミリアは人間の姿に戻った。
「そう、あなたは空間を、ということは時間と距離とを操れるのね」
「分かっていても、どうしようもない」
「そうでもないのよ。それに、その程度のことができなくて私の眷属が勤まるわけがない」
もう一度、息を――目の前にレミリアの手がせまっている。咄嗟にナイフを突きだす、それはレミリアの手によってガラス細工のように砕かれる。彼女の手から白い煙があがり、白い灰が風にながれる。ダメージがないわけじゃない。痛みでレミリアの動きが鈍った隙に、横に飛んで突進を交わす。同時、息をとめて距離を伸ばした……はずなのに、もうレミリアの手が私の腕をつかんでいる。
美鈴と戦ったときとは比べものにならない!
身体が宙に舞った、衝撃で肩がはずれた。空にいるという不確かな感触、綱渡りよりもたちのわるい賭け、仕掛けもなしに身投げをして生還を望むような心境だったのに、本当に身投げをしたかのような位置にいる。笑えないのに、顔が笑ってしまう。考えるよりも早く、レミリアが目の前にいて、口を大きく開け、小さな歯の、とがった犬歯が私の首筋に迫る。
死ぬ! 本能的に時間を止めた。後頭部を殴られたような衝撃がし、目の前がぐにゃりと揺れる。呼吸は強制的にとまり、肺がひっくりかえる。死にたくない。少しだけ冷静さを取りもどすと、世界がゆがんでいることに気づいた。うまく能力が発動できなくて、世界の軸がずれてしまっている。眠気と頭痛と空腹とがいっしょくたに襲ってくる。わけの分からないまま、距離をゼロにし、足の踏みしめる感触で地面を確認し、手探りで、指を刃で切りながら銀のナイフを手にし、思いっきり地面を蹴っ飛ばし、距離をあやつり、時間の停止しているレミリアの心臓に思いっきり……そこで、ぷつりと集中力が途ぎれた。
あと一歩だったのに……
レミリアは目の前で、ナイフを突きだす姿勢のまま意識を失う私に、子供のようにはしゃいだ顔を向けた。
「お前、本当にいいわ。こんなにわくわくしたのは何百年ぶりだろう。ご褒美に一つだけお願いを聞いてあげる」
朦朧とした意識で、とりとめなく拡散していく心の底から、
「人間をやめたくない」
とそれだけ言った。私は人間のことが嫌いなはずなのに、と思いながら意識を失くした。
それが最後の記憶になり、次に目を覚ますことはないと思っていたから、まぶたを開き、知らない赤い天井を見たときには、地獄に落ちたのだと思った。
「目を覚ましましたね」
と鈴のなるような声がした。美鈴がそばにいて、私のことを見下ろしていた。
「お嬢さまから、あなたを立派な従者に仕立てるようにと賜っています」
「何をいっているの」
「あなたはこれから、十六夜咲夜です。ヴァンパイア・ハンターだった×××はもういません。それがどういうことか、あなたなら分かりますね」
美鈴はじっと私の顔をみて、私が彼女のことばを理解していくのを表情でうかがう。
「失礼」
と美鈴は私が動くよりも早く、私の口の中に手をつきいれた。舌を噛もうとした歯が、美鈴のやわらかな指に食いこむ。
「じきに慣れます。それに十六夜、あなたは吸血鬼が憎くてハンターをしていたのではない」
彼女たちはどこまで知っているのだろう、と考えた。美鈴がことばを続ける。
「むしろ人間が憎くて堪らなかった。人間の味方のふりをしていたのは人間を狩るよりも、吸血鬼を狩るほうがスリリングだから。違いますか」
ロンドンでやんちゃしすぎて、居づらくなり海を渡った。踏みにじるために何かを壊していたのは本当だし、人間よりも吸血鬼のほうが踏みにじったときの感触がよかった。だから、ハンターをしていた。それは嘘じゃない。理由のひとつだ。
「否定しないってことは、本当なんですね」
と美鈴は辛そうな顔をした。私の口から手をひきぬくと、私のことを抱きしめた。唐突だったので、うまくものを考えられない。強く抱きしめられると、ふしぎと心が落ちついた。しばらくして美鈴は私を放し、
「ここには化物しかいません、私もその一人です。ここにいるかぎり、十六夜だけが化物ではない」
「まるで私が、寂しいからヴァンパイア・ハンターをしてるみたいな言い方ね」
「違うのかもしれませんが、違いません」
「そんなこと、あなたに分かるわけない」
「違いません」
「言い切らないで」
「たしかに私はまだ十六夜のことが分かりません。ですが、分かるようになります。十六夜もまだ私のこと、紅美鈴のことが分かりませんが、分かるようになります。私たちは分かりあう、絶対に」
「その自信、気味が悪いわ」
「お嬢さまがそうおっしゃったので、絶対です」
「妄信にもほどがある」
美鈴はにっこりと笑った。なんて幸せそうに笑うのだろうと思った。
「十六夜は、うちのお嬢さま方の可愛さを知らないから、そんなふうに思うんです」
「は? そんな会話してない」
「そういう話の流れでした」
「支離滅裂だ」
「十六夜のいままでの生き様に較べれば、まだ整然としている」
「揚げ足よ、それ」
美鈴はくすりと笑い、私の頭をなでた。
「元気になりましたね」
頬まで赤くなるのを感じた。
「そりゃあ、もう人間じゃないんだから」
美鈴は首を横にふった。
「お嬢さまは一度ことばにしたことを反古にする方ではありません。十六夜は人間ですよ」
え、と声が口からこぼれて、目から何故か、涙がこぼれた。わけが分からないけれど、すごく嬉しくて。
………………
私は目を覚ました。赤い天井が見える。いまではもう見慣れた天井だ。窓の外に視線をむける。湖が見える。以前の、このお屋敷に来た頃には見えなかった光景だ。
あれから……随分と経った。ベッドから出て、お仕着せのメイド服に着替える。結局、美鈴のことばのとおりに私は彼女と友達になれたし、孤独でなくなるとスリルを求めることもなくなった。いまでは、あの可愛らしいお嬢さまのお世話をできるのが、たまらなく嬉しい。自分にそんなやわらかな感情があることは、いまでも不思議に思う。
自分は怒りと絶望と、身体的な快楽で出来ているものだと思っていたから。
扉が軽くノックされる。
「どうぞ」
と言うと、扉を開いて美鈴が入ってきた。
「咲夜さん。湖のほうが騒がしいので、見てきても構いませんか」
「やっぱりそんな頃合かしら」
「黙って見過ごしてくれるはずありませんよ」
「そうね。ところで美鈴は、もうスペルカードを覚えた?」
「うう、あれは苦手です」
「郷に入れば郷にしたがえ」
「殴ったほうが手っとりばやい」
ぎゅうと美鈴は私の前で拳を固める。
「あなたが本気で殴ったら、死んじゃうかもしれないでしょ」
「手加減します」
「そんな器用なことできないくせに」
「……。とりあえず、行ってきます」
「行ってらっしゃい。無理なら負けてもいいのよ」
美鈴は黙ってうなずき、部屋から出ていった。見送れるように窓辺による。赤い霧が空を覆いかくしている。美鈴が血のように赤い満月を背景にして、飛んでいくのを小さくなるまで見つめた。
ぞくり、と懐かしい感触が全身を這いまわった。部屋の隅においていた昔の道具を引っ張り出してきて、メイド服のいたるところに隠した。
締めつけられるような緊張感がする。窓ガラスに映った私の顔は、微笑をうかべていた。微笑は微笑でも、お嬢さまを見守るときの表情ではない……残忍な顔で、懐かしくなった。
鼻血がでそうだ、と私は頭のなかで呟いた。興奮するとすぐに鼻の粘膜がやぶれて血がでる、そういう体質は結局、大人になっても治らなかった。
――月がでている、満月だ……いい夜だ。吸血鬼を倒すのに、これ以上はない。
そんなことを同類のヴァンパイア・ハンターにいうと、いっそう気ちがいのように見られる。昼間ですら吸血鬼は人間をはるかに超える体力と知恵を発揮するのに、夜もそれも満月ともなれば人間の手におえるものではないから。
私は、その最高のコンディションにある吸血鬼を退治することに魅せられていた。吸血鬼が格下と、指を動かすのと同じぐらいたやすく殺せると思っている人間に、圧倒され、床に這いつくばらされたときの表情は、たまらない。実にたまらない。――ああ、だから、私は狂っているというのは的をえてるのかもしれない。
目の前に赤い屋敷がある。
夜だからといって闇に身を潜めるようなことはしない。相手は真の暗闇でも見通すことができるのだから、物陰にかくれてこそこそして、自分から視界を悪くするのは愚策だ。正面堂々と、押し入り強盗のようにやるのが私の流儀だ。
屋敷をぐるりと囲む背のたかい壁、返しの向きは中に向かっていた。おそらく、館の主人である吸血鬼の食料が、逃げだせないようにしているのだ。
鉄格子の門がある。
門の前には、ひとりの女が立っていた。背が高い、私よりも頭の一つ二つは高いだろう。周囲に絶えず気をくばっているのが表情から読みとれる。
中華風ドレスのようなものを着ている。最近の流行(シノワズリ)に乗って、その恰好を選んでいる……わけではなさそうだ。着慣れている印象がある。
その女は私に気づくと、にっこりと微笑んだ。
私はゆっくりと女に近づいていく。声のとどく距離になると彼女は、
「夜の散歩ですか。感心しませんね、この屋敷には――彼女は口を大きく開き、尖った歯を見せて――人食いがいます。すぐに引きかえしてください」
「その人食いに用がある」
彼女は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして、すぐに表情をひきしめた。思いつくところがあるのか、腰を落として、
「復讐なら考えるだけ無駄です。お嬢さまには指一本触れさせませんよ」
私はじっと彼女の顔を見あげ、背に隠した銀のナイフを取りだした。手のうちで遊ばせながら、逆手に握りしめる。ほどよい重さが腕の筋肉を緊張させる。彼女は器用に片目だけを動かして、私の手のナイフを確認して、
「帰っていただけませんか」
と懇願するような声音でいった。立場が逆転しているような錯覚におちいって、調子が狂いそうになる。
「あなたには用がない。だから、殺さないであげる」
惑わされずにきっぱりと否定すると、目の前の彼女は唐突に笑みをうかべた。なにやら嬉しそうに、
「私は紅美鈴と申します。久々に骨のある人間です……ね!」
美鈴は私の顔面に手のひらを突きだす。迫る手のひら目がけて、ナイフを振る。手の肉を裂く感触……は伝わらない。鉄でも叩いたかのような反発。混乱する思考を放りなげて、ナイフから手を放し、その場で回転して横にずれる。自分がいた場所にするどい突きが放たれる。手のひらをフェイントにしての攻撃の、空気を裂く鋭さに血の気がひいた。並の吸血鬼をはるかに超えるスピードだ。
距離を取るために後ろに跳ねる。美鈴は私の動きに難なく追従する。
隠し持っているナイフのうちの一本を、引抜く勢いのまま目の前にせまった美鈴の顔に投擲する。美鈴はそれを片手で払い、払いながらその手を蛇のように私の首に伸ばす。
捕まったら、首を折られる。
もし相手が人間なら、こちらから頭突きをするところだけれど、こいつを相手にそれをしたら、おそらく頭蓋骨を砕かれる。
圧倒的に不利だ。神を呪いたくなるぐらい不公平だ。美鈴をいくら切りつけても彼女は創ひとつ負わない、私は美鈴の攻撃が掠っただけ致命傷だ。どくり、と心臓が高鳴る。血が全身に行渡って、興奮する。
鼻血がでそうだ。もう目の前に美鈴の手がせまっている。おそらく後ろに飛んでも、横に転んでもチェックメイトだ。後ろに飛んだら、地面に着地した瞬間に美鈴の蹴りが私の腹を貫くだろう――彼女の片足はすでに踏みこむ一歩手前にある。腰の辺りで構えられた片手が、横に飛んだ場合は伸びてくる。一瞬でも動きを止めればアウト、だから、私は……!
キィン
と耳鳴りがした。
美鈴と私との距離がみるみるうちに開いていく。それはあまりに不自然で、美鈴は目を丸くした。悪夢のように手を伸ばしても伸ばしても相手に届かない。戸惑うのもつかの間で、美鈴はすぐに足に力を込めて、地面を蹴った。
何がどうであれ、相手が逃げる以上の速さで追えばいい。
単純にして最良の選択だ。私は笑いたくなる。人間であれば、その選択はありえない。私が距離を伸ばすのよりも速く動くことは、理から外れるということだ。人外の化物はその不可能を可能にするだけの力を持っている。だから、最適解が選択可能で、それゆえに先回りしやすい。
私はもう一つ銀のナイフを引抜き、突上げるのと同時に伸ばしていた距離を縮めた。私のできる最大の速さで! 美鈴の顔がゆがむ。失敗に気づいたのだ。全力で地面を蹴った反動に抗えば、自分の身体を壊しかねない。いまさら方向を変えることもできない。それでも判断に迷わず、相打ちで私を倒そうと覚悟を決めたのはさすが。
私の突きだしたナイフは、美鈴の突撃してくる速さと私自身の突きの速さを乗せて、美鈴の胸を貫いた。貫かれながらも、美鈴は私の胸に拳を打ちこもうとする。再び距離を伸ばして、美鈴の拳から逃れた。
美鈴はがくりと膝を落とし、胸にささったナイフを引抜こうと柄をつかむ。すると煙があがり、肉のこげる臭いがする。
「あー……やっぱり祝福されてますよね、痛いなぁ」といいながら、簡単に胸からナイフを引抜いて地面に捨てた。じわりと傷口から血があふれでる。
美鈴は上着を脱ぎ、それを切裂いて、ふわりと傷口に巻きつけた。あっという間に止血を済ませてしまう。
私はその動作をじっと見守っていた。止めを刺しに近づくにはあまりに無防備で、何かの罠にみえてしかたない。
「じゃあ人間さん、続きをしましょうか。と言いたいところですが、」
美鈴は背後に目をやった。そこにはいつの間にかに少女が立っていた。寝間着のような服を着た少女が眠そうな目をして立っている。赤い瞳がちらりと私に向けられる。心臓を鷲づかみにされたような恐怖におそわれる。
「美鈴、あなた負けたの?」
「一本取られました」
「夜に……満月の夜に、吸血鬼の従者がたかが人間の、しかも娘に負けるなんてね」
「すみません」
「いいわ。私は寛大だから、赦してあげる」
少女は私に顔をむけた。目鼻の形もまだハッキリしない子供の顔をしている、声も高すぎて幼くて、それでも声の調子に老獪さがにじんでいる。どうにもこうにも、嫌な予感しかしない。
「あなた、名前は何ていうの?」
「吸血鬼に名乗る名前なんて持ちあわせてない」
「そう。じゃあ、私が名前をつけてあげる」
「意味がわからない」
「今日は満月ね。本当にいい夜。でもね、東のほうの人は明日の月の方が美しいと言っていたのよ。だから、あなたは今日から十六夜と名乗りなさい」
恍惚と、少女が決めつける。その声を聞いているだけで、気持が昂ぶってくる。衝動が尾てい骨から背筋にかけあがってくる。コロセコロセコロセ、コロセという呪縛のような感情だ。冷静になれ。皮膚の感触が敏感になり、まるで裸でいるような気になる。服のいたるところに隠した銀のナイフの感触を確かめる。残る銀のナイフの数は十六で、それで目の前の二人の怪物を倒しきれる確信はない。
綱渡りですらない。塔の上から空に飛びこんで、生きて戻れというのに等しい。歯がなりそうになる興奮を噛みしめた。いまの全身全霊をかける、五体満足で帰れたら奇跡だ。
息を吸う、止める。
少女に近づく。進むのではなく、距離を縮めて。あっという間だ、だれも反応できないスピードだ。少女の心臓に向けて銀のナイフを突きだす。美鈴が咄嗟に私の手を払おうとする。
神経を集中する、地面に捨てられたままの銀のナイフと美鈴との距離が途端にゼロになる。ざくりと嫌な音がし、美鈴が目を丸くする。彼女の傷口にもう一度ナイフが刺さっている。美鈴のことを蹴りとばす。美鈴は地面を転がり、今度は起きあがらない。
「すごい!」
という少女の声は背後でした。距離をいじり、少女から離れる。
「十六夜、私の名前はレミリア・スカーレット。お前は名乗るに値する人間よ。まさか美鈴を、勝負ではなくて殺し合いで負かす人間がいるなんてね。褒めてあげるわ」
「それは……どうも」
従者がやられても動揺もしていない、焦ってすらいない。それは美鈴よりも彼女のほうが強いからだろう。
「お前がとても欲しいわ――レミリアは鼻をならす――見たところ処女のようだし、私の眷属になりなさい」
「なりません」
「性は十六夜、私の満月にちなんで名前は咲夜でどうかしら」
「話、聞いてますか」
「なんで私が人間ごときの意見を聞かなくちゃいけないの?」
吸血鬼は、だいたいこんなやつだ。傲慢で高慢で、人間なんてただの食料としか思っていない――私も人間なんて大嫌いだけれども。ただ、吸血鬼の異常にふくれあがった矜持をたたきつぶすのが、たまらないのだ。ぞわりと身体がふるえる。期待に喉の奥が鳴った。
頭に血がのぼる。神経がむき出しにされたかのように痛む、ズキズキと頭の芯が痛む。火花が散るように目の前がちらつき、私は大きく息を吐きだして、吸いこんだ。
時間が止まる。
色彩の欠落した、私だけの世界。息を止めていられる間だけ可能な空間。
そこでは距離も時間も私の思いのまま、ニュートンの林檎も空に落ちる!
隠し持っているナイフのすべてを全力で、目の前でふんぞり返っている少女に向けて投げつける。すべてが止まった空間で、私の位置をずらし、少女の背後にまわる。逃げられないように捕まえる。赤くなった火箸を突っこまれたように頭の中が熱い。ナイフの時間を加速させて、私だけの世界を開放した。
レミリアが背後にいる私に、
「あら、」
といった瞬間、目で追えないほど加速したナイフが突き刺さろうとする。けれど、先読みしていたかのように美鈴がレミリアの前に飛びこんで、一六あったうちの七つまで自分の身体で止め、そのうち四つを指の間にはさんで止めた。残った二本がレミリアの身体をつらぬく、はずだったのに、彼女はその瞬間身体を蝙蝠に変えた。ナイフはレミリアをすり抜け、私へ――もう一度時間を止めて、自分の飛ばしたナイフを避ける。美鈴のところまで駆けていき、目をまわしている彼女の身体に刺さっているナイフを引抜いて、両手に持つ。
蝙蝠になったレミリアを睨みあげながら、時間を再び動かす。ズ、という音がたしかに頭のなかでして、鼻から血がこぼれた。視界がわずかに霞んだ。目の前に蝙蝠が集まって、レミリアは人間の姿に戻った。
「そう、あなたは空間を、ということは時間と距離とを操れるのね」
「分かっていても、どうしようもない」
「そうでもないのよ。それに、その程度のことができなくて私の眷属が勤まるわけがない」
もう一度、息を――目の前にレミリアの手がせまっている。咄嗟にナイフを突きだす、それはレミリアの手によってガラス細工のように砕かれる。彼女の手から白い煙があがり、白い灰が風にながれる。ダメージがないわけじゃない。痛みでレミリアの動きが鈍った隙に、横に飛んで突進を交わす。同時、息をとめて距離を伸ばした……はずなのに、もうレミリアの手が私の腕をつかんでいる。
美鈴と戦ったときとは比べものにならない!
身体が宙に舞った、衝撃で肩がはずれた。空にいるという不確かな感触、綱渡りよりもたちのわるい賭け、仕掛けもなしに身投げをして生還を望むような心境だったのに、本当に身投げをしたかのような位置にいる。笑えないのに、顔が笑ってしまう。考えるよりも早く、レミリアが目の前にいて、口を大きく開け、小さな歯の、とがった犬歯が私の首筋に迫る。
死ぬ! 本能的に時間を止めた。後頭部を殴られたような衝撃がし、目の前がぐにゃりと揺れる。呼吸は強制的にとまり、肺がひっくりかえる。死にたくない。少しだけ冷静さを取りもどすと、世界がゆがんでいることに気づいた。うまく能力が発動できなくて、世界の軸がずれてしまっている。眠気と頭痛と空腹とがいっしょくたに襲ってくる。わけの分からないまま、距離をゼロにし、足の踏みしめる感触で地面を確認し、手探りで、指を刃で切りながら銀のナイフを手にし、思いっきり地面を蹴っ飛ばし、距離をあやつり、時間の停止しているレミリアの心臓に思いっきり……そこで、ぷつりと集中力が途ぎれた。
あと一歩だったのに……
レミリアは目の前で、ナイフを突きだす姿勢のまま意識を失う私に、子供のようにはしゃいだ顔を向けた。
「お前、本当にいいわ。こんなにわくわくしたのは何百年ぶりだろう。ご褒美に一つだけお願いを聞いてあげる」
朦朧とした意識で、とりとめなく拡散していく心の底から、
「人間をやめたくない」
とそれだけ言った。私は人間のことが嫌いなはずなのに、と思いながら意識を失くした。
それが最後の記憶になり、次に目を覚ますことはないと思っていたから、まぶたを開き、知らない赤い天井を見たときには、地獄に落ちたのだと思った。
「目を覚ましましたね」
と鈴のなるような声がした。美鈴がそばにいて、私のことを見下ろしていた。
「お嬢さまから、あなたを立派な従者に仕立てるようにと賜っています」
「何をいっているの」
「あなたはこれから、十六夜咲夜です。ヴァンパイア・ハンターだった×××はもういません。それがどういうことか、あなたなら分かりますね」
美鈴はじっと私の顔をみて、私が彼女のことばを理解していくのを表情でうかがう。
「失礼」
と美鈴は私が動くよりも早く、私の口の中に手をつきいれた。舌を噛もうとした歯が、美鈴のやわらかな指に食いこむ。
「じきに慣れます。それに十六夜、あなたは吸血鬼が憎くてハンターをしていたのではない」
彼女たちはどこまで知っているのだろう、と考えた。美鈴がことばを続ける。
「むしろ人間が憎くて堪らなかった。人間の味方のふりをしていたのは人間を狩るよりも、吸血鬼を狩るほうがスリリングだから。違いますか」
ロンドンでやんちゃしすぎて、居づらくなり海を渡った。踏みにじるために何かを壊していたのは本当だし、人間よりも吸血鬼のほうが踏みにじったときの感触がよかった。だから、ハンターをしていた。それは嘘じゃない。理由のひとつだ。
「否定しないってことは、本当なんですね」
と美鈴は辛そうな顔をした。私の口から手をひきぬくと、私のことを抱きしめた。唐突だったので、うまくものを考えられない。強く抱きしめられると、ふしぎと心が落ちついた。しばらくして美鈴は私を放し、
「ここには化物しかいません、私もその一人です。ここにいるかぎり、十六夜だけが化物ではない」
「まるで私が、寂しいからヴァンパイア・ハンターをしてるみたいな言い方ね」
「違うのかもしれませんが、違いません」
「そんなこと、あなたに分かるわけない」
「違いません」
「言い切らないで」
「たしかに私はまだ十六夜のことが分かりません。ですが、分かるようになります。十六夜もまだ私のこと、紅美鈴のことが分かりませんが、分かるようになります。私たちは分かりあう、絶対に」
「その自信、気味が悪いわ」
「お嬢さまがそうおっしゃったので、絶対です」
「妄信にもほどがある」
美鈴はにっこりと笑った。なんて幸せそうに笑うのだろうと思った。
「十六夜は、うちのお嬢さま方の可愛さを知らないから、そんなふうに思うんです」
「は? そんな会話してない」
「そういう話の流れでした」
「支離滅裂だ」
「十六夜のいままでの生き様に較べれば、まだ整然としている」
「揚げ足よ、それ」
美鈴はくすりと笑い、私の頭をなでた。
「元気になりましたね」
頬まで赤くなるのを感じた。
「そりゃあ、もう人間じゃないんだから」
美鈴は首を横にふった。
「お嬢さまは一度ことばにしたことを反古にする方ではありません。十六夜は人間ですよ」
え、と声が口からこぼれて、目から何故か、涙がこぼれた。わけが分からないけれど、すごく嬉しくて。
………………
私は目を覚ました。赤い天井が見える。いまではもう見慣れた天井だ。窓の外に視線をむける。湖が見える。以前の、このお屋敷に来た頃には見えなかった光景だ。
あれから……随分と経った。ベッドから出て、お仕着せのメイド服に着替える。結局、美鈴のことばのとおりに私は彼女と友達になれたし、孤独でなくなるとスリルを求めることもなくなった。いまでは、あの可愛らしいお嬢さまのお世話をできるのが、たまらなく嬉しい。自分にそんなやわらかな感情があることは、いまでも不思議に思う。
自分は怒りと絶望と、身体的な快楽で出来ているものだと思っていたから。
扉が軽くノックされる。
「どうぞ」
と言うと、扉を開いて美鈴が入ってきた。
「咲夜さん。湖のほうが騒がしいので、見てきても構いませんか」
「やっぱりそんな頃合かしら」
「黙って見過ごしてくれるはずありませんよ」
「そうね。ところで美鈴は、もうスペルカードを覚えた?」
「うう、あれは苦手です」
「郷に入れば郷にしたがえ」
「殴ったほうが手っとりばやい」
ぎゅうと美鈴は私の前で拳を固める。
「あなたが本気で殴ったら、死んじゃうかもしれないでしょ」
「手加減します」
「そんな器用なことできないくせに」
「……。とりあえず、行ってきます」
「行ってらっしゃい。無理なら負けてもいいのよ」
美鈴は黙ってうなずき、部屋から出ていった。見送れるように窓辺による。赤い霧が空を覆いかくしている。美鈴が血のように赤い満月を背景にして、飛んでいくのを小さくなるまで見つめた。
ぞくり、と懐かしい感触が全身を這いまわった。部屋の隅においていた昔の道具を引っ張り出してきて、メイド服のいたるところに隠した。
締めつけられるような緊張感がする。窓ガラスに映った私の顔は、微笑をうかべていた。微笑は微笑でも、お嬢さまを見守るときの表情ではない……残忍な顔で、懐かしくなった。
いいんじゃないでしょうか!
キャラ崩壊・独自設定も二次創作の醍醐味ってもんですw
人間でいたい云々の部分が多少強引だった感はありますが面白かったです。
とても、おもしろかったです
ただ、
>「夜の散歩ですか。感心しませんね、この屋敷には――彼女は口を大きく開き、尖った歯を見せて――人食いがいます。すぐに引きかえしてください」
「」台詞内に、地の文を入れるのは、紛らわしいかな、と
>性は十六夜
姓
普段着ではなくよそ行き、といった感じでしょうか。
これからどんどん着古して、良い味が出てきて欲しいですねぇ。
咲夜さんへの愛を持ち続ければ、きっと大丈夫でしょう。
>的をえてるのかも→『的』は射るものです。得るのは『当』ですね。
>美鈴の攻撃が掠っただけ致命傷だ→掠っただけで、かな。
>私の眷属が勤まるわけがない→意味は通りますが、文脈的には務まる、かと。
>誤字
・・・時間を戻してでも直したいですね。不覚です。ご指摘、ありがとうございます。
>文章
振り回され気味・・・たしかに。
>過去をもっと
キャラ崩壊ががががが、と思って自重していました。ううん、たしかにもっと過去話に攻めこめばよかったかもしれませんでした。
>人間うんぬん
力技でした。本当に・・・反省です。
ただちょっと咲夜の心理の変化が追い切れないのと、過去話を切るのがちょっと早かったかなと思いました。
現在にいたるまでの過程をもっと膨らませたらより良かったように感じました。
戦闘シーンはかなり楽しめました。俺はバトル書けないので、素直に尊敬。
咲夜さんのエピソードではありますが、美鈴もレミさんも魅力的に描かれてて良かったです。