……以上の例は、北欧におけるヴァイキングの広汎な進出等に確認される、”自己触媒作用”の好例と見ることが出来る。化学反応の中には生成物そのものが触媒として働くものがある。ゼロから始まった反応速度は何らかの物質が生成されていくにつれて上がり続ける。さらに物質が増殖して、反応速度が増す。ヴァイキングの進出の触媒となったものは九百七十三年のリンディスファーン修道院襲撃で大量の略奪品を手にしたことが刺激となって、翌年もかの悪名高き略奪と陵辱が続いたのである。
奇妙な噂が、地底の巷間に流れていた。というのも人々の心臟からチクタクと音がするのだそうだ。腹の中から、頭の中から、足の中から、肩の邉りから。またある者は額の邉りから角のような金屬片が生えていたりするのだそうだ。まるで鬼だ。鬼。黴の香りがする。黴がこのところ増加傾向にあるのだ。
ぼくの元に小さな封筒が屆いた。なんだろうと空けてみると數枚の寫眞。裸の女が二人で、菩提樹の木蔭で抱き合っている。顏は墨のようなもので塗りつぶされている。寫眞の表面を指でなぞり、ぼくはポケットに滑り込ませた。ぼくはどうしようもない劣情な気分に陥っていた。それはギュズターブ・モローの暗さと、マルク・シャガールの色彩に溢れたイヤラシサだった。気がつくとぼくはあのイラヤシイ行為に耽っている。臍の下の奇妙な距離と、裸体の有する匿名性と、写真から伝わる乳房の弾力にぼくはイヤラシイ行為を加速させた。いや、そもそもぼくは誰なんだろう。誰?こういった疑問は、背徳感に皮膚と肉の間がえらくそわそわそそわと焦っているときに、ぼくは背徳を忘れ去ろうと考える。ぼくって誰?一番単純で誰もが考えうるそれなりに知的な質問というわけだ。白濁とした飛沫。二度と燈らない信号機。
「おい、さっさと出て來い!!この××××!!もうすっかりお前らは包圍されているんだよ!!」
地底は暗い。暗いのは濕っぽい。どろどろと私の皮膚を濕氣の氣配が流れ、服の内側にたまっていくのだ。私は布團から拔け出した。一日のうちで最も明るい時間。私の顏の中で一番高い場所に浮んだ汗が落ちた。今日は暑そうだ。
髮を整え、服をつけて外に出る。一日中燈っている電燈が、我々を照らし出している。最近地底に大きな工場が出來た。私はそこで勤めている。蒲鉾工場だ。地底湖で取れる怪物じみた小魚は、そのままでは不味いから加工して食べるのだ。何しろ危機的な食糧難が來ているのだ。私が橋を通ると、そこに一角の鬼の女がいた。一瞬目を合ったが、お互い背けてしまった。仕方が無いのだ。あんなことがあったのだ。あれは一週間前の夜だった。どこかの家であった盛大な結婚式で、その一角の鬼と會ったのだ。何しろ久しぶりだったので、二人で話しこんだ。私達は鬼であり、橋姫であり、また地底の住民なのだ。私達は忌み嫌われているがそれなりに樂しく暮らしていた。
鬼が云うには、最近地上から水が漏れ出していて、地底の中心に落ちているという。それはまるで《蜘蛛の絲》のようだという。天井から細い瀧のように落ちてくる絲である。そういった話をしているうちに、眠くなってしまった。眠くなったのかい?そんなら寢ればいいよ。
氣がつくと私と彼女は菩提樹の木蔭で抱き合っていた。丸裸で。私の胸の中に顏をうずめている。押しのけようとするけれど彼女の力が強くて無理だった。角が私の身體に突き刺さらないように氣を使っているらしいのか、身體を横にしている。
「やめてよ……お願いだから。」
「やだやだやだ。」
「何でわたしのこと、いじめるの。」
「いじめてないよ。好きなんだよ、ずっと好きだったんだよ。」
「何で好きなの。」
「理由なんか無いさ。好きなんだよ。何だって××××するのに理由がいるんだよ。」
そう云うと私の頬を三發立て續けに毆った。口の中に血の味が廣がった。「いい加減默れったら、人が 來ちゃうでしょ。」
そんな風にたっぷりといやらしい行爲にふけっていたのだ。
「いやぁ參りましたよ。最近漸く地底との交流が出來てきて、何か良いネタが無いかなぁと思いまして。それで地底の空を飛んでいたんです。でも、地底の空って何だかおかしい云い方ですね。そんなことはどうでもいいのです。そこで何だか騷ぎがあって。あぁ冠婚葬祭ですね。こういう亂 癡氣騷ぎには何かと破廉恥な事件が起こりますからね。そして案の序、見つけた。星熊勇儀氏があなたを擔いで菩提樹の木の下にずんずん歩いている。そしたら、その、云いづらいですけど、あの、當は男と女が番いになってする奴……御鬼樣が無理やり始めて。でも、貴方だって段々乘り氣になってきたじゃないですか。仕舞いにはあんなにいやらしくなってたじゃないですか。私も惡黨ですけど、あんたも惡黨ですよ。外であんないらやしい格好になってたじゃないですか。力は絶對なんですよ。そして私生活を切り取るのがわたしの力です。貴方が一回いらやらしいところを披瀝してしまったから、また私、撮りますよ。貴方のこと、見張っていますからね。だってぜったい、次も貴方、いやらしいことするでしょう?するんですよ。もうこれ以上鬼にでかい顏させませし、貴方のえっちな身體が、大人氣なんですよ。大丈夫、そんな感じで顏は黒くして隱してますから。鬼にチクッたら顏のぼかしをとってばら撒きますよ。だからね、これからもヤッて欲しいんですよ。え、何を?決まっているじゃないですか、あのイヤラシイやつ。」
※パールスィー族の少女には見えていなかったけれども、その四方をステンドグラスに囲まれた部屋には言葉が降り積もっていた。当て所ない言葉の濁流に、目がちかちかとしていた。それは彼女がさとり妖怪でだからである。地底中の住民達の怨念、そして死者の言葉が灰となって降り積もっている。それはありとあらゆる物に化粧を施す役割を負っている。言葉の灰はパンやテーブル、電灯にまで積もり、染み付いている。言葉の呪いである。我々は過去の言葉によって構成される生き物であることを、さとり妖怪の少女はこうした経験から知りえていた。
「助けて下さい。」
「嫌です。私だって忙しいのです。」
「貴方の讀心術で、私の不安を覗いて下さい。それで私に忠告をして欲しいのです。やっかいな新聞屋につきまとわれているのです。」
「汚らしいパールスィーの女。父無し子。遠く滿州から渡ってきた貴方には申し譯ないけれども、私は助けになれないわ。だって私は貴方方の神や信仰のことなんて存じ上げないから。私がどうして修道女のような眞似をしているかわかるかしら。この世に神樣などいません。神樣はいると信じたい人々のために、私は人々の心を讀んでやっているのです。それに貴方、さっき天狗がちらりと見せた寫眞があるのだけれども、あれは貴方でしょう?顏は見えないけど。地底の住民の何人かに渡っているようですよ。尤も彼らは好き勝手に、好きな顏を妄想して自慰に耽ったり、何か譯のわからない藝術に打ち込んだり。匿名の裸に、好き勝手に想いを馳せているのよ。」
私は地靈殿にいた。ありとあらゆる壁にステンドグラスがはめ込まれ、木漏れ日のように搖れる光の中、その主は語る。拒絶され、所在無く沈默するしかない一日のうちでもっとも辛い。そこに彼女の妹がやってきた。彼女の妹はニッコリ嗤って姉の頭を指した。そこには細長い金屬の棒が生えていた。彼女はそこに意味を見出していた。そこが我々常人とは違うところなのだ。そのアンテナは、いつかどこからか發射された電波をキャッチする筈だった。それはいつかトマス・ピンチョンがノーベル賞をとった曉に有效用されるはずだった。なぜ彼女が姉の頭にアンテナを生やすことが出來たの。彼女が無意識の域を歩むことが可能だからだ。それは我々が認識不能な域を歩く伎倆なのだ。無意識は自然との融合で初めて可能だ。だから彼女が歩く樣は幽玄だ。私のような汚らしいものの心を癒す歌のようなものだ。それは別世界の生き物の呼吸を繰り返しながら、姉のおっぱいをつんつんしたり、阿呆な惡戲を繰り返しているのだ。主觀と客觀の區別なき絶對の境地をよねんなく遊ぶ少女は美しく、まるで狂人だ。今際の際に糞をたれる樂觀主義だ。ただそこに一遍の眞實を見出せずにはいられないのだ。それはじゃまな部分を取り拂って初めて現れる芯なのだ。
「あとね、みんなの身體の中に、目覺まし時計を設えたの。」
私は思わず涙を流した。
「どうして、そんなことしたの。私には時間なんていらないのよ。」
「何でって。時間は必要でしょ。私にもお姉ちゃんにも星熊勇儀ちゃんにも、パルスィちゃんにも。ほら、お姉ちゃんは頭の中、貴方はお腹の中。時間を持つの、あなた」
いよいよ、無意識の少女の悪戯における危険度は、そして地底の運命はそこはかとなく最終局面を迎えようとしていたらしい。地底の生き物達に本来不必要な時計やアンテナを無意識のうちに取り付けている。いったい彼女を駆り立てるものは何なのか。恰も神がかりのように、使命感を持っていた。考えてみると彼女の阿呆な行いを促進させていたのは、あの《蜘蛛の絲》では無かったか。あの臈長けたる細い水の綫が、何かのきっかけとなった。そう考えるべきではないか。
誰もあれが仏様が伸ばして下さった救いの手であるという発想を抱かなかった。不思議なものだった。彼女達は逼塞した空気から出たがっている筈だったが。只管、彼らは敵意と殺意を抱かずにはいられなかった。
そしてこのさとり妖怪の妹。よりによって一角の鬼にアンテナをつけてしまった。これがいけなかった。巷で流れる噂を、そのアンテナがキャッチしてしまったのである。鬼は鬼なりにめちゃくちゃな情報を整理していた。そして一連の事件の発端が時分の軽率な行いにあることや、その裏で天狗が暗躍していることを知った。様々な死のイメージが同時に流れ込んできた。頭が痛くなった。
「おい、早くあいつを出せ!私のパルスィを苛めた糞マ○コ!よくもパルスィの時間に踏み込んだなぁ。パルスィの時間はパルスィと私の時間なのに、それをお前はずこずこと踏み込んだんだ!さっさと出せ。じゃないともっと殺すぞ、妖怪の山、絶滅!お前らのマ○コというマ○コを陵辱してやるのだ!出て來いマ○コ天狗!」
私にとって希望とは何だろうか。時折考えるのだ。例えば百年後、私が死んでしまった時、その生活の址を誰かが見つけて、あれこれ想像することではないだろうか。例えば私の安普請の址が出てきて、これは何か儀式の址かしら。とか。私の中にセットされた時計は確實に時を刻み、またあらゆる事象の到來を告げる。私の中のスケジューラーに、私は手を加えることが出來ない。それはただやってくるのだ。
「パルスィへ。こないだはもうしわけありませんでした。こんど、ご飯ごちそうします。どうぞ、わたしのおうちにきてください。ゆうぎ。」
「お父さんへ。そちらはどうでせうか。こちらは相變わらず元氣です。お父さんはどこに行つてしまったのかとんと見當がつきませんが、とりあえずこの手紙がいつか貴方の元に屆くと思ひます。氣がつくといなくなつていた貴方。上海租界の一角で生まれ、育つていった私は、いつも貴方の背中にいたような氣がします。地底はじめじめとしていて、私達が一緒に暮らしていた時代とは全く正反對です。でも私はここに來て直感したのです。ここが私の終の棲家であり、墓場であり、址であるということです。址であるというのは、私達が死した後、殘る物があるのです。それは無意識の少女が我々地底の住民に、時計やアンテナといった無機物のモニュメントを拵えているのです。私達の死體が灰燼と化しやがて風と一つになってしまう運命でも、あの日の突然に訪れた幸運。こうして圓形の劇場址の如く壯麗で汚物に沈んだ穴倉の中、時計やアンテナ、そして齒車の類に、未來の人々はどんな思いを馳せるのでせうか。」
しかし地底に住む蟲について話そうと思う。地底のショウジョウバエは死の氣配に引き寄せられるのだ。彼らの過疎的速やかな生殖速度に、我々は苦しめられてきた。何しろ喰い物をあっという間に喰い盡してしまう。彼らもまた、化け物めいた地底湖の川魚まで喰わねば飢えてしまう我々と似ている。實に馬鹿馬鹿しい生き物だが、そこが非常に我々と似ていて、愛らしい。その生きることに拘泥してしまう、生きるという脈動に關して、私は非常に愛着を抱いてしまう。アァ、我々はショウジョウバエの如き阿呆だ。死ねばいいのに。そしてそのショウジョウバエが、恐るべき鬼、星熊勇儀の家に集っているのだ。私は恐怖に震えながら、そっとその扉を開いた。その死の氣配が匂う瓦葺の要塞へ。
玄關をあける。彼女が鼻歌を歌いながら、うふふ、んふふと笑いながら包丁を振り回している。春に取れたキャベジを切っているらしい。香ばしい香りが邉りに滿ち滿ちている。私の氣配に氣がついたようだ。にっこり笑うとこう云った。今日はね、から揚げなんだ。あと少しで出來るからね。あ、でもちょっと憚りに行きたくなっちゃった。ちょっと火を見ていてね。彼女が恥ずかしそうにもじもじしながら出て行った。鍋の中に煮え立っている油の香りだった。それは靜かに氣泡が立ち、まだ何もあがっていない。私ははっと氣がついた。唐揚げ、と云った。私は周りを見渡して不自然なところを探った。そして一つだけ、見つけた。箱。しきりに左右に搖れている。
私はその巨大な箱を開けた。そこには龜甲縛りで身動きの取れなくなっている新聞屋の天狗が納まっていた。涙目で、なぜか首を横に振っている。必死になってもがいている。私は包丁で繩を解いてやった。その間、眞っ青になって身動き一つしなかった。
「早く逃げなさい。」
「はひっはひっ……。」という譯の判らない呻きをあげながら四つんばいになって逃げ出した。
厠の扉が開かれた。彼女の額から伸びた角が一瞬だが、四つに分かれた。それは朝顏の花瓣のように見えたし、あるいは、角の内側を走る毛細血管や筋肉質の生々しさから鑑み、化け物の口にみえた。
「あ~逃げたなぁ、マテェ。」
「早く逃げなさい!」
「パルスィは優しいから、逃がしたなぁ。そういうところも好きだよぉ。」
「はひぃ……。」
失語症同然の天狗は、恐怖の色を浮かべた。そして窓をよじ登って外へ逃げ出した。外は地底の闇に、外界の光が少しずつ混ざりこみ、曉闇と常闇のグラデイションが落ちている。私はその中を必死に驅けていく天狗の後ろ姿を見た。彼女は花畑の中を走っている。赤、青、ミドリ。さまざまな色のパレードが展開している。近くを通り過ぎる葬列がまるで筆で引かれた黒い綫だった。葬列は花畑から一輪ずつ摘み取っては花畑の中を歩いていく。
花畑の終わる所で、さとり妖怪の姉妹が座敷に座ってチェスに勤しんでいる。
「お姉ちゃん、ビショップが死んでるよ。」
「あぁ、待って、ちょっと……。」
「時間は待っちゃくれないよ、お姉ちゃん。」
「でも。」
「待ってたら、あっという間に私が追い越してしまうから。何しろ私とおねえちゃんは一緒なんだ。同じ時間軸にいる違う時間の存在なんだから。」
「だから私はあなたのことを何でも知っているけれども、貴方きっとは私の知っていることを何にも知らないんだ。」
「そういえば、私が萬引きしたナボコフの小説、どこに置いたっけ。」
「私が知るわけないわ。」
「私に勝ったら、頭についたアンテナ取って上げる。」
「約束よ。いつか、この、時計も、とって。」
天狗を追い掛け回す鬼がいる。葬列と田園のチェスと、そして巷間の人々が群がってきてこの奇妙奇天烈な鬼ごっこを見ている。私達は天狗が一向に飛ぼうとしないことに不振を抱いたが、すぐにその理由が明らかとなった。要は感情の問題なのだ。天狗は、あまりの恐怖に飛び方を、自分の羽の使い方を忘れてしまったのだ。何と愚かだろう。しかし刺身包丁を振り回す滿面の笑顏、星熊勇儀。
「飛んで!飛んで逃げなさい!」
「飛べ!さっさと飛べ!」
いったん天狗は大地をけって飛び跳ねたが、五尺程宙に浮んだと思ったら、地面に落ちてしまった。泥だらけになってしまい、ボロボロだ。私も必死に聲を張り上げ、「飛べ!飛べ!」と天狗に云うのだが、天狗は一旦宙に跳ぶのだが、一向に羽ばたけないらしいのだ。群集が輪になってこの鬼ごっこを見て、「跳べ!飛べ!」と叫ぶ。まるで、サーカスだ。
この見世物の果てには、地底の側壁が聳え、私たちは逼塞とした世界の空氣と原始の宵惑いを感じていた。火花が目の奧から爆ぜ、やがて意識の轍に落ちて火柱が立つ。まるで救いはやってこないのだと豪語されている。私達は永遠にこの地底に縛り附けられ、崩れ落ちるまで暮らすのだ。こうした茶番と亂癡氣騷ぎが設えられた舞臺で、糞塗れとなって永遠に閉じ込められた子供として、生きていくのだ。それは決して絶望ではない。外に横溢するあの、憎たらしい自由という名の放埓に置いていかれるくらいなら、ここでたった一つ時計、たった一つの時間だけを持つことによって、安寧の空間を、手に入れる。
その百年後、地上から流れ落ちる《蜘蛛の絲》が、突如決壞して地底の何もかもが土砂と泥水の中に沈んでしまうまで、こうした荒唐無稽は續くのだった。何にせよ、倒壞の前夜。私達が滅び、そこを訪れた人々が、いつかそこに殘された生活の址を辿る。そこに浪漫と希望、そして夢を見るのだ。址を發見した人々が見る、夢だ。如何にして滅びたのか、ではなく滅びるまで何が起こっていたのか。その時彼らの驚きと喜びの中、腦髓に蕩け出し悦に入る人間の妄云の綫と絡み合い、一つとなった。
曰く、
糞と土砂のうちに
見出したる數多の機械の動物
全能の神、嘲笑いて曰く
その先は聞こえなかった。
取り敢えず、時計の音が喧しいのである。
奇妙な噂が、地底の巷間に流れていた。というのも人々の心臟からチクタクと音がするのだそうだ。腹の中から、頭の中から、足の中から、肩の邉りから。またある者は額の邉りから角のような金屬片が生えていたりするのだそうだ。まるで鬼だ。鬼。黴の香りがする。黴がこのところ増加傾向にあるのだ。
ぼくの元に小さな封筒が屆いた。なんだろうと空けてみると數枚の寫眞。裸の女が二人で、菩提樹の木蔭で抱き合っている。顏は墨のようなもので塗りつぶされている。寫眞の表面を指でなぞり、ぼくはポケットに滑り込ませた。ぼくはどうしようもない劣情な気分に陥っていた。それはギュズターブ・モローの暗さと、マルク・シャガールの色彩に溢れたイヤラシサだった。気がつくとぼくはあのイラヤシイ行為に耽っている。臍の下の奇妙な距離と、裸体の有する匿名性と、写真から伝わる乳房の弾力にぼくはイヤラシイ行為を加速させた。いや、そもそもぼくは誰なんだろう。誰?こういった疑問は、背徳感に皮膚と肉の間がえらくそわそわそそわと焦っているときに、ぼくは背徳を忘れ去ろうと考える。ぼくって誰?一番単純で誰もが考えうるそれなりに知的な質問というわけだ。白濁とした飛沫。二度と燈らない信号機。
「おい、さっさと出て來い!!この××××!!もうすっかりお前らは包圍されているんだよ!!」
地底は暗い。暗いのは濕っぽい。どろどろと私の皮膚を濕氣の氣配が流れ、服の内側にたまっていくのだ。私は布團から拔け出した。一日のうちで最も明るい時間。私の顏の中で一番高い場所に浮んだ汗が落ちた。今日は暑そうだ。
髮を整え、服をつけて外に出る。一日中燈っている電燈が、我々を照らし出している。最近地底に大きな工場が出來た。私はそこで勤めている。蒲鉾工場だ。地底湖で取れる怪物じみた小魚は、そのままでは不味いから加工して食べるのだ。何しろ危機的な食糧難が來ているのだ。私が橋を通ると、そこに一角の鬼の女がいた。一瞬目を合ったが、お互い背けてしまった。仕方が無いのだ。あんなことがあったのだ。あれは一週間前の夜だった。どこかの家であった盛大な結婚式で、その一角の鬼と會ったのだ。何しろ久しぶりだったので、二人で話しこんだ。私達は鬼であり、橋姫であり、また地底の住民なのだ。私達は忌み嫌われているがそれなりに樂しく暮らしていた。
鬼が云うには、最近地上から水が漏れ出していて、地底の中心に落ちているという。それはまるで《蜘蛛の絲》のようだという。天井から細い瀧のように落ちてくる絲である。そういった話をしているうちに、眠くなってしまった。眠くなったのかい?そんなら寢ればいいよ。
氣がつくと私と彼女は菩提樹の木蔭で抱き合っていた。丸裸で。私の胸の中に顏をうずめている。押しのけようとするけれど彼女の力が強くて無理だった。角が私の身體に突き刺さらないように氣を使っているらしいのか、身體を横にしている。
「やめてよ……お願いだから。」
「やだやだやだ。」
「何でわたしのこと、いじめるの。」
「いじめてないよ。好きなんだよ、ずっと好きだったんだよ。」
「何で好きなの。」
「理由なんか無いさ。好きなんだよ。何だって××××するのに理由がいるんだよ。」
そう云うと私の頬を三發立て續けに毆った。口の中に血の味が廣がった。「いい加減默れったら、人が 來ちゃうでしょ。」
そんな風にたっぷりといやらしい行爲にふけっていたのだ。
「いやぁ參りましたよ。最近漸く地底との交流が出來てきて、何か良いネタが無いかなぁと思いまして。それで地底の空を飛んでいたんです。でも、地底の空って何だかおかしい云い方ですね。そんなことはどうでもいいのです。そこで何だか騷ぎがあって。あぁ冠婚葬祭ですね。こういう亂 癡氣騷ぎには何かと破廉恥な事件が起こりますからね。そして案の序、見つけた。星熊勇儀氏があなたを擔いで菩提樹の木の下にずんずん歩いている。そしたら、その、云いづらいですけど、あの、當は男と女が番いになってする奴……御鬼樣が無理やり始めて。でも、貴方だって段々乘り氣になってきたじゃないですか。仕舞いにはあんなにいやらしくなってたじゃないですか。私も惡黨ですけど、あんたも惡黨ですよ。外であんないらやしい格好になってたじゃないですか。力は絶對なんですよ。そして私生活を切り取るのがわたしの力です。貴方が一回いらやらしいところを披瀝してしまったから、また私、撮りますよ。貴方のこと、見張っていますからね。だってぜったい、次も貴方、いやらしいことするでしょう?するんですよ。もうこれ以上鬼にでかい顏させませし、貴方のえっちな身體が、大人氣なんですよ。大丈夫、そんな感じで顏は黒くして隱してますから。鬼にチクッたら顏のぼかしをとってばら撒きますよ。だからね、これからもヤッて欲しいんですよ。え、何を?決まっているじゃないですか、あのイヤラシイやつ。」
※パールスィー族の少女には見えていなかったけれども、その四方をステンドグラスに囲まれた部屋には言葉が降り積もっていた。当て所ない言葉の濁流に、目がちかちかとしていた。それは彼女がさとり妖怪でだからである。地底中の住民達の怨念、そして死者の言葉が灰となって降り積もっている。それはありとあらゆる物に化粧を施す役割を負っている。言葉の灰はパンやテーブル、電灯にまで積もり、染み付いている。言葉の呪いである。我々は過去の言葉によって構成される生き物であることを、さとり妖怪の少女はこうした経験から知りえていた。
「助けて下さい。」
「嫌です。私だって忙しいのです。」
「貴方の讀心術で、私の不安を覗いて下さい。それで私に忠告をして欲しいのです。やっかいな新聞屋につきまとわれているのです。」
「汚らしいパールスィーの女。父無し子。遠く滿州から渡ってきた貴方には申し譯ないけれども、私は助けになれないわ。だって私は貴方方の神や信仰のことなんて存じ上げないから。私がどうして修道女のような眞似をしているかわかるかしら。この世に神樣などいません。神樣はいると信じたい人々のために、私は人々の心を讀んでやっているのです。それに貴方、さっき天狗がちらりと見せた寫眞があるのだけれども、あれは貴方でしょう?顏は見えないけど。地底の住民の何人かに渡っているようですよ。尤も彼らは好き勝手に、好きな顏を妄想して自慰に耽ったり、何か譯のわからない藝術に打ち込んだり。匿名の裸に、好き勝手に想いを馳せているのよ。」
私は地靈殿にいた。ありとあらゆる壁にステンドグラスがはめ込まれ、木漏れ日のように搖れる光の中、その主は語る。拒絶され、所在無く沈默するしかない一日のうちでもっとも辛い。そこに彼女の妹がやってきた。彼女の妹はニッコリ嗤って姉の頭を指した。そこには細長い金屬の棒が生えていた。彼女はそこに意味を見出していた。そこが我々常人とは違うところなのだ。そのアンテナは、いつかどこからか發射された電波をキャッチする筈だった。それはいつかトマス・ピンチョンがノーベル賞をとった曉に有效用されるはずだった。なぜ彼女が姉の頭にアンテナを生やすことが出來たの。彼女が無意識の域を歩むことが可能だからだ。それは我々が認識不能な域を歩く伎倆なのだ。無意識は自然との融合で初めて可能だ。だから彼女が歩く樣は幽玄だ。私のような汚らしいものの心を癒す歌のようなものだ。それは別世界の生き物の呼吸を繰り返しながら、姉のおっぱいをつんつんしたり、阿呆な惡戲を繰り返しているのだ。主觀と客觀の區別なき絶對の境地をよねんなく遊ぶ少女は美しく、まるで狂人だ。今際の際に糞をたれる樂觀主義だ。ただそこに一遍の眞實を見出せずにはいられないのだ。それはじゃまな部分を取り拂って初めて現れる芯なのだ。
「あとね、みんなの身體の中に、目覺まし時計を設えたの。」
私は思わず涙を流した。
「どうして、そんなことしたの。私には時間なんていらないのよ。」
「何でって。時間は必要でしょ。私にもお姉ちゃんにも星熊勇儀ちゃんにも、パルスィちゃんにも。ほら、お姉ちゃんは頭の中、貴方はお腹の中。時間を持つの、あなた」
いよいよ、無意識の少女の悪戯における危険度は、そして地底の運命はそこはかとなく最終局面を迎えようとしていたらしい。地底の生き物達に本来不必要な時計やアンテナを無意識のうちに取り付けている。いったい彼女を駆り立てるものは何なのか。恰も神がかりのように、使命感を持っていた。考えてみると彼女の阿呆な行いを促進させていたのは、あの《蜘蛛の絲》では無かったか。あの臈長けたる細い水の綫が、何かのきっかけとなった。そう考えるべきではないか。
誰もあれが仏様が伸ばして下さった救いの手であるという発想を抱かなかった。不思議なものだった。彼女達は逼塞した空気から出たがっている筈だったが。只管、彼らは敵意と殺意を抱かずにはいられなかった。
そしてこのさとり妖怪の妹。よりによって一角の鬼にアンテナをつけてしまった。これがいけなかった。巷で流れる噂を、そのアンテナがキャッチしてしまったのである。鬼は鬼なりにめちゃくちゃな情報を整理していた。そして一連の事件の発端が時分の軽率な行いにあることや、その裏で天狗が暗躍していることを知った。様々な死のイメージが同時に流れ込んできた。頭が痛くなった。
「おい、早くあいつを出せ!私のパルスィを苛めた糞マ○コ!よくもパルスィの時間に踏み込んだなぁ。パルスィの時間はパルスィと私の時間なのに、それをお前はずこずこと踏み込んだんだ!さっさと出せ。じゃないともっと殺すぞ、妖怪の山、絶滅!お前らのマ○コというマ○コを陵辱してやるのだ!出て來いマ○コ天狗!」
私にとって希望とは何だろうか。時折考えるのだ。例えば百年後、私が死んでしまった時、その生活の址を誰かが見つけて、あれこれ想像することではないだろうか。例えば私の安普請の址が出てきて、これは何か儀式の址かしら。とか。私の中にセットされた時計は確實に時を刻み、またあらゆる事象の到來を告げる。私の中のスケジューラーに、私は手を加えることが出來ない。それはただやってくるのだ。
「パルスィへ。こないだはもうしわけありませんでした。こんど、ご飯ごちそうします。どうぞ、わたしのおうちにきてください。ゆうぎ。」
「お父さんへ。そちらはどうでせうか。こちらは相變わらず元氣です。お父さんはどこに行つてしまったのかとんと見當がつきませんが、とりあえずこの手紙がいつか貴方の元に屆くと思ひます。氣がつくといなくなつていた貴方。上海租界の一角で生まれ、育つていった私は、いつも貴方の背中にいたような氣がします。地底はじめじめとしていて、私達が一緒に暮らしていた時代とは全く正反對です。でも私はここに來て直感したのです。ここが私の終の棲家であり、墓場であり、址であるということです。址であるというのは、私達が死した後、殘る物があるのです。それは無意識の少女が我々地底の住民に、時計やアンテナといった無機物のモニュメントを拵えているのです。私達の死體が灰燼と化しやがて風と一つになってしまう運命でも、あの日の突然に訪れた幸運。こうして圓形の劇場址の如く壯麗で汚物に沈んだ穴倉の中、時計やアンテナ、そして齒車の類に、未來の人々はどんな思いを馳せるのでせうか。」
しかし地底に住む蟲について話そうと思う。地底のショウジョウバエは死の氣配に引き寄せられるのだ。彼らの過疎的速やかな生殖速度に、我々は苦しめられてきた。何しろ喰い物をあっという間に喰い盡してしまう。彼らもまた、化け物めいた地底湖の川魚まで喰わねば飢えてしまう我々と似ている。實に馬鹿馬鹿しい生き物だが、そこが非常に我々と似ていて、愛らしい。その生きることに拘泥してしまう、生きるという脈動に關して、私は非常に愛着を抱いてしまう。アァ、我々はショウジョウバエの如き阿呆だ。死ねばいいのに。そしてそのショウジョウバエが、恐るべき鬼、星熊勇儀の家に集っているのだ。私は恐怖に震えながら、そっとその扉を開いた。その死の氣配が匂う瓦葺の要塞へ。
玄關をあける。彼女が鼻歌を歌いながら、うふふ、んふふと笑いながら包丁を振り回している。春に取れたキャベジを切っているらしい。香ばしい香りが邉りに滿ち滿ちている。私の氣配に氣がついたようだ。にっこり笑うとこう云った。今日はね、から揚げなんだ。あと少しで出來るからね。あ、でもちょっと憚りに行きたくなっちゃった。ちょっと火を見ていてね。彼女が恥ずかしそうにもじもじしながら出て行った。鍋の中に煮え立っている油の香りだった。それは靜かに氣泡が立ち、まだ何もあがっていない。私ははっと氣がついた。唐揚げ、と云った。私は周りを見渡して不自然なところを探った。そして一つだけ、見つけた。箱。しきりに左右に搖れている。
私はその巨大な箱を開けた。そこには龜甲縛りで身動きの取れなくなっている新聞屋の天狗が納まっていた。涙目で、なぜか首を横に振っている。必死になってもがいている。私は包丁で繩を解いてやった。その間、眞っ青になって身動き一つしなかった。
「早く逃げなさい。」
「はひっはひっ……。」という譯の判らない呻きをあげながら四つんばいになって逃げ出した。
厠の扉が開かれた。彼女の額から伸びた角が一瞬だが、四つに分かれた。それは朝顏の花瓣のように見えたし、あるいは、角の内側を走る毛細血管や筋肉質の生々しさから鑑み、化け物の口にみえた。
「あ~逃げたなぁ、マテェ。」
「早く逃げなさい!」
「パルスィは優しいから、逃がしたなぁ。そういうところも好きだよぉ。」
「はひぃ……。」
失語症同然の天狗は、恐怖の色を浮かべた。そして窓をよじ登って外へ逃げ出した。外は地底の闇に、外界の光が少しずつ混ざりこみ、曉闇と常闇のグラデイションが落ちている。私はその中を必死に驅けていく天狗の後ろ姿を見た。彼女は花畑の中を走っている。赤、青、ミドリ。さまざまな色のパレードが展開している。近くを通り過ぎる葬列がまるで筆で引かれた黒い綫だった。葬列は花畑から一輪ずつ摘み取っては花畑の中を歩いていく。
花畑の終わる所で、さとり妖怪の姉妹が座敷に座ってチェスに勤しんでいる。
「お姉ちゃん、ビショップが死んでるよ。」
「あぁ、待って、ちょっと……。」
「時間は待っちゃくれないよ、お姉ちゃん。」
「でも。」
「待ってたら、あっという間に私が追い越してしまうから。何しろ私とおねえちゃんは一緒なんだ。同じ時間軸にいる違う時間の存在なんだから。」
「だから私はあなたのことを何でも知っているけれども、貴方きっとは私の知っていることを何にも知らないんだ。」
「そういえば、私が萬引きしたナボコフの小説、どこに置いたっけ。」
「私が知るわけないわ。」
「私に勝ったら、頭についたアンテナ取って上げる。」
「約束よ。いつか、この、時計も、とって。」
天狗を追い掛け回す鬼がいる。葬列と田園のチェスと、そして巷間の人々が群がってきてこの奇妙奇天烈な鬼ごっこを見ている。私達は天狗が一向に飛ぼうとしないことに不振を抱いたが、すぐにその理由が明らかとなった。要は感情の問題なのだ。天狗は、あまりの恐怖に飛び方を、自分の羽の使い方を忘れてしまったのだ。何と愚かだろう。しかし刺身包丁を振り回す滿面の笑顏、星熊勇儀。
「飛んで!飛んで逃げなさい!」
「飛べ!さっさと飛べ!」
いったん天狗は大地をけって飛び跳ねたが、五尺程宙に浮んだと思ったら、地面に落ちてしまった。泥だらけになってしまい、ボロボロだ。私も必死に聲を張り上げ、「飛べ!飛べ!」と天狗に云うのだが、天狗は一旦宙に跳ぶのだが、一向に羽ばたけないらしいのだ。群集が輪になってこの鬼ごっこを見て、「跳べ!飛べ!」と叫ぶ。まるで、サーカスだ。
この見世物の果てには、地底の側壁が聳え、私たちは逼塞とした世界の空氣と原始の宵惑いを感じていた。火花が目の奧から爆ぜ、やがて意識の轍に落ちて火柱が立つ。まるで救いはやってこないのだと豪語されている。私達は永遠にこの地底に縛り附けられ、崩れ落ちるまで暮らすのだ。こうした茶番と亂癡氣騷ぎが設えられた舞臺で、糞塗れとなって永遠に閉じ込められた子供として、生きていくのだ。それは決して絶望ではない。外に横溢するあの、憎たらしい自由という名の放埓に置いていかれるくらいなら、ここでたった一つ時計、たった一つの時間だけを持つことによって、安寧の空間を、手に入れる。
その百年後、地上から流れ落ちる《蜘蛛の絲》が、突如決壞して地底の何もかもが土砂と泥水の中に沈んでしまうまで、こうした荒唐無稽は續くのだった。何にせよ、倒壞の前夜。私達が滅び、そこを訪れた人々が、いつかそこに殘された生活の址を辿る。そこに浪漫と希望、そして夢を見るのだ。址を發見した人々が見る、夢だ。如何にして滅びたのか、ではなく滅びるまで何が起こっていたのか。その時彼らの驚きと喜びの中、腦髓に蕩け出し悦に入る人間の妄云の綫と絡み合い、一つとなった。
曰く、
糞と土砂のうちに
見出したる數多の機械の動物
全能の神、嘲笑いて曰く
その先は聞こえなかった。
取り敢えず、時計の音が喧しいのである。
そして次に凄いと思いました。いや、マジですげえ…
正直、ようわからんかったが、おもしろかったぞ。
無意味な人生だけど、意味があるんじゃないかと肯定している感じがする。そんな物語として読んだんだが、その読み方が正しいかどうかは不明だ。
あと文字が合体してて読みづらいのが現実的につらい。漢字も難しくて読みにくくてつらい。俺は凡人なんで、おそらく平均人もそう思うと思う。妥協できるなら平易にしておくれ。
貴方の幻想郷には常になまめかしい男女のそれがある。
たとい女同士であったとしても。
貴方の作品をいつも楽しみにしています。拝読できてとても嬉しい。
こういうお話はいい意味で電波だと思う。
もう二度と、東方じゃないな なんていえないな。
だから素晴らしいと魅力を感じてしまいました。点数?決まってる。百点を差し上げましょう。
「寺山っぽい」って言うのは陳腐な感想でしょうか。とにかく面白かったです。
ただ個人的な好みを言えば、いかにもな不条理物より「不条理ものと見せて、ベタに良い物語」
とかの方が好きかも。
勿論そこには味覚の根本的な違いがあるからだけれども。
でも、その味覚の大きな違いが、私にとても斬新で味わった事の無い美味さを与えてくれる。
とても美味しかったです。
またあなたの作品を読ませて頂きたいです。
さすが東方。
そして佐藤厚志さん、東方に手をつけてくれてありがとう。
ゴテゴテと過剰に装飾された文章が、いい感じで気味悪いですね。
こういうエロい書き方もある、か。
これは匿名評価で済ます訳にはいかない、と思いました。
ただただ、心臓がぐわんぐわんと、情け容赦なく揺さぶられたような気分でした。
情景がよく見えた
豪気だけどねじけていてさらに憎めないこんな奴らと喜劇を送るのもいいかもしれません。
きっと私はこの作品の何をも理解していないんでしょう。まったくもって遠すぎる。
だからこそ、この点数をこのお話にブン投げたくなったのです。
しかしこれはまさしく鬼であったり天狗であったり、妖怪のお話という感じでした。面白かった。
ただ、内容のネタ(R指定的要素)が苦手だったために、この作品を楽しみきることは出来ませんでしたかねぇ;
私自身、わかったふりをしているだけなんでしょう。
堪能しました
ふと二回目読んでみた。
なんだか面白く感じたので、点数を入れてみます。
時計が埋め込まれたらわたしだったら狂って死ぬ
ただでさえぐたごたな地底がさらにワケワカランことになって、なおも当座楽しもうとする連中がバカ騒ぎして、狙い済ましたかのようにどうしようもなくなったあたりで滅びる、のか? 水難で? 失われた文明っていつもそうだよね。いやホントに爆弾抱えてるよあの子は。
反応は分子と分子が出会うことで生じそれを律速する要因は多々あるのだけど系全体を見渡した時には対数的に加速して対数的に減速するんだったか、自己触媒作用の場合どうかは解らないけど反応が終息した先にあるのが破滅ならクリープのが近いのかな。こいしはあるいはまったく善意から奇行に走ったのかもしれない、有限の時間を思い出させることで停滞した反応を進めようとしたのか、でもそれだと最初の示唆に合わない気がする。
正直勇パルと時計の相関が見えなくてどう評価しようもないのだけど、あんまりにも見えてこないもんなのでとりあえずこの点数で。