紅魔館の、冷たく暗い地下の一室。そこでフランドールは、暇つぶしに躍起になっていた。
この500年程で、およそ考え得る暇つぶしは、あらかたやり尽くしてしまった。かと言って、館の外に出るのも面倒臭い。
何か面白そうな事はないだろうかと考えているうちに、フランドールの悪魔的頭脳は一つの妙案を導きだした。
「お姉様爆発しろ」
その頃、レミリアは。
テラスでいつもの様に、咲夜の淹れた紅茶を楽しんでいた。
「おいしいわぁ」
「感謝の極み」
上機嫌の主に対し、従者もまた笑顔で返す。
……が、暫くするとレミリアはうずくまり、ブルブルと震えだした。かわいい。
「えーと、お嬢様?」
「ホントにおいしすぎて、私……れみ、れみ、れみ☆りあべし!!」
「うわー汚い」
レミィ爆発した。
所変わって、ここは図書館。
パチュリーが知識の吸収に情熱を傾けていた所に、咲夜が乱入した。
「パチュリー様。お嬢様が爆発しました」
「ごめん、ちょっと何言ってるかわからない」
「お嬢様が……こんなお姿に。おいたわしや」
ちりとりの中のレミリア(元)を見せつける咲夜。
ホコリやタバコの吸い殻、その他もろもろのゴミにまみれ、見るも無残な有様だ。
「ちりとりってあたりが貴方の忠臣っぷりを物語ってるわね」
「ありがとうございます。とりあえず、組み立てないと。ニッパーとヤスリあります?」
「プラモじゃないんだから」
「あ、取説がありました。それとシールも」
「……そう」
レミリアはプラモだった。しかもMG。
そんなこんなで二人は、無駄に多いギミックにイライラしたり、シールを何枚かダメにしたりしながらも、順調にレミリアを組み立ててゆく。
――二時間ほど経っただろうか。二人がせっせと組み上げたそれは。そのボディを、誇らしげに曝け出していた。
その姿には、威厳すらも感じられる。
「完成しましたわ! 『1/1スケール レモリア』!」
「パチモンってレベルじゃねーぞ!」
説明しよう。レモリアとは。
ヤクルトから販売されている、薬臭いレモン味の変な飲み物である。ディスってごめんなさい。
「ちょっと見本と違いますけど、まぁ誤差の範囲です」
「固体から液体へのクラスチェンジが誤差であってたまるか!」
「ほら、こうやって目を細めれば、お嬢様に見えない事もないです」
「おかしいのは目と頭のどっちかしらね」
そんなやりとりの後、咲夜はレモリアを手に取った。
そして、慈しむ様な眼差しで見つめ、言った。
「……こうなってしまった以上、やる事は一つ」
「何を、するっていうの」
パチュリーはただならぬ雰囲気に圧倒されつつも、問うた。
「飲みます」
「でしょうね! レモリアだものねそれ!」
「私がこのお嬢様を飲み干せば、当然体外に排出されます。排出されたお嬢様は、蒸発し、天へと昇り、雲となります。
やがて、大量のお嬢様が雨の様に幻想郷に降り注ぐでしょう」
「なにその災厄」
言いながら、咲夜はキャップを開ける。そしてパチュリーに決意の籠もった眼差しを向けると同時。
グイッと勢い良く、レモリアをあおった。
ゴクンゴクンと、レモリアを嚥下する音が辺りに響く。
――レモリアが、その内容量を半分ほどに減らした時。
不意に、咲夜が顔を上げ、満足気に溜息を吐く。
「どうしたの?」
「飲んでみて下さい」
かつて親友と呼んだ清涼飲料水を飲みこむのは気が引けたパチュリーだが、隣のメイドが放つ重圧に負け、ボトルに口をつけた。
「……キリンレモンだ、コレ」
「おいしいですよね」
心底どうでもよかった。
「私にも一口」
「はい……あれ?」
かつて親友と呼んだプラモだった筈のレモリアの皮を被ったキリンレモンを、レミリアに手渡す。
それを受け取ったレミリアは、両手でボトルを持ち、ちびりと一口含んだ。かわいい。
「……ふふ、本当にキリンレモン。
惨めね。私はレモリアにすらなりきれない、無様な吸血鬼だよ……」
「お嬢様……」
「……おおおおおおおいィぃぃいいいいヴえっほごぼ!!」
咽せながらも、パチュリーは雄叫びをあげる。
「あー、喘息なのに無茶するから。大丈夫?」
未だ呼吸のままならないパチュリーの背中をさするレミリア。かわいい。
「……あー、ありがとう。じゃねぇよ! なんでレミィがここにいるのよ!」
「この館にお嬢様がいない方が不自然でしょう。変なパチュリー様ですね」
「パチェ、大丈夫? キリンレモンが脳に回った?」
「……ふざけないで!!」
突然の大声に、二人は射抜かれた様に立ちすくむ。
見れば、パチュリーの両目からは、大粒の涙が流れ出していた。
「私が、どれだけ心配したと……もう、レミィに会えないかと思ったんだから……!」
そう言って泣き崩れたパチュリーを見て、レミリアは優しく微笑んだ。
そして、パチュリーの頭を抱きかかえる。
「そっか。心配かけちゃったんだね。ごめんね、パチェ。
……パチェにはそんな顔、似合わないよ? 出来れば、笑ってほしいな」
「その通りです。パチュリー様、どうか笑ってくださいませんか?」
「笑って」
「笑って」
「「鋭くなって♪」」
「……なんでナンバガなのよ畜生バカ主従がアアアアアアアア!!」
『あははははは!! 面白い茶番だったよ? 三人とも!』
突然、凄いエコーのかかった声が図書館を覆った。
レミリアと咲夜が、勢い良く顔を上げる。
「ハッ! この声は! 悪魔の妹!!」
「恐ろしい波動!!!」
「「――即ち。フランドール・スカーレット」」
「えっ何このノリ」
フランドールが、カリスマをたっぷりと纏って降臨した。
その後ろで、小悪魔と妖精メイドが懐中電灯でフランドールを照らす。
「お前が全ての元凶だったのか!!」
レミリアが吠える。
「妹様。お覚悟を」
咲夜が構える。
「あ…? あ…?」
パチェが困る。
『ふふ……。お姉様。貴女の「あべし」は頂いたわ。今や私の戦闘力は、お姉様を遥かに上回っている。
幻想郷中の「ひでぶ」や「あべし」を集めて、救世主になるという私の計画は、成就したも同然!!』
「FC北斗かよ……ぐふっ」
息も絶え絶え、パチュリーが最後の力を振り絞ってツッコむ。
「そんな事はさせないわ!」
「ええ、私達がいる限り!!」
ザウッ、と音をたて、レミリアと咲夜がフランドールに飛び掛かってゆく。
――幻想郷の命運を賭けた戦いが、始まる。
「もうやだこの館」
紅魔館は今日も平和でした。
飲んだことないけど
ボーボボみたいだw
ここまで無茶な書き方してるのに何故か面白い!
あさっての方向へ飛んでる作品だが、そのパワーに拍手を贈る。
キリンレモンには劣るがな!
と書こうとしたら同じ感想多くてワロタ
あんた相当レミリア好きだなwww
もう笑いっぱなしでした。
レモリア勢に負けて涙目になって修正している姿を幻視してしまいましたよw
そんな貴方が愛おしくてたまらんw
お前は初投稿がこれでいいのかw
怖がらせてごめんね。次回作も楽しみにしてます
貴様、只者じゃないなッ!!
初投稿でこんなん書いちゃったら後々やばいぜ?(ニヤリ
特に俺からの期待がやばいです
面白いし俺はこの感じ好きです
あと、たまに入る かわいい が素敵でした
そして最後に・・・初投稿だ・・と・・?
拠点防衛型コンビニ店員・・・恐ろしい子っ!!!
俺もレミリアすきです
フランドール・スカーレット。恐ろしいやつよ(ゴクリ
パチュリーと一緒に「もうやだこの館」とリアルでつぶやいてしまった。