景色が、真っ暗闇を上下に割いた。瞼の中に種が入っていたとするのなら、それは露を払って、芽吹いたのだった。
渓流、杉の立ち並ぶ場所で、古明地こいしは自分の顔を撫でた。川面に顔を映して、洗う。小鳥が、その音に今更のように驚いて、パタパタと空に昇っていた。
ハンカチで顔を拭って、今度はそのハンカチを濯ぐ。
水を切れるだけ切ってから適当な岩の上に広げ、小石を重石にして乾かす。妖力によって、汚れから守られているとはいえ、洗えるものは洗いたいし、干せるものは干したい。そうした機微こそが当人を守っているのは、人間にも言えた。
しかし、こいしは妖怪の中でも、特殊な部類だろう。唯一、姉とは同じでいたのに、その姉からも、ずれてしまった。
泳ぐ鳥のようだ。
こいしは、自分のことをそんな風に思う。
姉と一緒に羽を動かしていたはずなのに、空の青と、水の青とに、分かれてしまった。
姉は地底にいるのに、姉を想えば、空を見上げる。
今日もそうしてみてから、帽子を木の下に置いたままにしておいたのを、思い出した。
「忘れ物も、無意識の裡なのでしょうかね」
こいしには一瞬、帽子が問いかけたように思えたが、声の後に、木陰から人影が現れた。
「ああ、閻魔様。――おはよう」
「おはようございます、こいしさん」
まだ早朝だのに、四季映姫は、制服の襟を立たせ、大きな帽子を被っている。浮世の時間の概念がどこまで通じるものかも、怪しいのだけれど。
映姫はこいしに帽子を手渡すと、隣に立ち、川面を眺め始めた。
「何の用事?」
閻魔が暇なわけは無い。結果として暇になることはあっても、自分から暇を弄ぶようなことは無い。暇を利用して、説教を垂れる。
こいしは、映姫と面識がある。自身の経験上、妖怪よりも神や仏の類の方が自分とは相性は良い、と、こいしは思っている。それは、彼らが本質的に、人妖の無意識に滑り込む存在だからかもしれない。
こいしは無意識を操れるが、そのものを取り払ったりは出来ない。それが出来たなら、さぞ恐れられていたろうが、彼女は何せ、泳ぐ鳥だった。猛禽でも鳳凰でもない。
映姫は川面に視線を浮かべたままで、答えた。
「しばらく、地底に戻っていてもらいたいのです」
「何で?」
「あなたは少し、無意識を操り過ぎた。人を恐れさせるのは妖怪の本分ですし、あまり五月蠅いことは言っても仕方ないのですが、近頃は鵺なんてものまで地上に出て来ましてね。あなたと鵺の性質が合わさると、恐れが倍増しかねないのですよ」
「それで、しばらく引っ込んでろ、って?」
「はっきり言えばそうですね。鵺の方は、どうも同業者っぽい者が唾を付けていまして、下手に関われないのです。あくまでも『同業者っぽい』ですよ。全くの同業ではないです」
「白蓮とか言う尼さんのことでしょ。私も知ってるよ。あの人、影がぐらぐら煮え立ってて、面白いんだ」
「そう思うなら、尚更ですね」
最初から、お願いではないのだろう。与し易い方に、先に交渉に来た。そう取った方が、間違いが無さそうだった。
自分が格下に思われているようで、こいしは少し癪に障った。要は、人間ではなく妖怪だけを狙えば……何なら鵺や白蓮を相手に遊べば、閻魔も納得できるのではないか。
「――最後に地底に戻ったのは、いつですか?」
こいしは自分の帽子のつばを指で撫でた。唐突に問われて、窮したためでもあったが、他にも理由があった。
「三ヶ月ぐらい前……かな」
「嘘はおよしなさい」
「……半年」
半年もの間、こいしは地上に出ずっぱりだった。
地下のエネルギー革命の恩恵で、地上でも冬の間、寒さで凍えなくても済むことが多くなった。無意識を操れば、人間に恐れられることなく里で暖を取れたし、温泉に浸かることもできた。
しかし、操られた側の違和感だけは残り、積もり積もって、こうして映姫が足を運ぶことになってしまったらしい。映姫のお節介な性格が多分に影響しているとはいえ、だ。
「でも、春が来たら、帰ろうと思ってたんだ。ううん、いつだって、気付いたら帰ってたんだよ。それだのに、今は……」
こいしの憤る様を見て、映姫が初めて視線を合わせた。
「お姉さんの、さとりさんの無意識に呼ばれなくなった、ということでしょうか?」
「わかんない、わかんないよ。そうだったら、怖いけど……怖い? ああ、これが怖いっていうの? 朝起きると目に涙が溜まっているようになったのも?」
「ふむ――」
映姫は沈思して、自分の口元に手を当てる。
「とりあえず、落ち着きなさい。半年も家に帰らなかったら、心細くなるのは当たり前なんですから……そうですね、ハンカチでも洗ってもらうついでに、気軽に帰ってみると良いでしょう」
「ハンカチ、もう洗っちゃったよ」
こいしが俯く。そんな些細なことでも落ち込むことに、映姫も母性のようなものをくすぐられたのかもしれない。大事な笏を置くと、おもむろにこいしの頬に片手を添えた。
「ほら、ちょっと上を向いてください」
もう片方の手で自分のハンカチを取り出し、こいしの顔を拭ってやる。こいしのハンカチよりも柔らかいそれは、彼女の顔を撫でるだけ撫でて、彼女の手に握らされた。
「これで理由が出来たでしょう? たまには、帰ろうと思って、帰ってごらんなさい」
「……はい」
「よろしい。いつもそれぐらい素直なら良いのですがね」
最後の最後で説教めいたことを言って、映姫は去った。岩の上に広げてあったハンカチも、どこかに行ってしまっていた。
地底の春は長い。地上よりも陽気と陰気の入れ替わりがゆっくりとしているから、というのは好事家の弁だが、「お空が季節を忘れるから」と考えている者も結構いる。それだけ、お空のエネルギーが及ぼす影響は絶大なのだった。
地上との友好の証とかいう触れ込みで桜が植えられた公園は、花見客で賑わっていた。
実際は、地上まで花見をしに来ないように、という意味合いが強い。もっとも、それを指摘する者も、拘泥したりはしない。
そこに桜があるのだ。花見をしない理由はどこにもない。
そういった漠然とした歓楽に、こいしは引き寄せられた。気付くと、公園の外れの蕎麦屋で蕎麦を啜りつつ、地下水が流れる川の向こう、桜の立ち並ぶ様を、眺めていた。
地下水で打たれた蕎麦は、噛むと、プチンと切れるのが魅力である。
豪快に啜って、噛み切り、存分に歯ごたえを楽しんでいるのは、さとりのペットである、お燐だった。
「うーん、泥を腹に詰めたこの感じが、地底の蕎麦ですねえ」
隣に座っていたこいしは、適当に首肯し、帽子を被り直した。お互い、移動の多い性分だから、こうしてよくかち合う。
「お姉ちゃんはどうしてる?」
「この時期ですからねえ。例年通り、ふらふら出歩いてるみたいですよ」
ある程度以上の力を付けないと、こいしのペット達も、ケダモノと変わらない。春は、発情期に入ってしまう。襲われることは無いのだが、気が立っているのも確かである。一緒にいても、落ち着かない。
「みたいですよ、ってことは、あなたも出歩いてばかりってことだよね」
「あははっ、こいし様にそれを注意されるとは思いませんでしたよ」
お燐に悪気は無い。笑うだけ笑って、卓に二人分の勘定を置いた。
死体漁りをしているために、金には困らない。ただし、それが目的ではないから、必要以上には取らない。
二人は、川沿いに歩きながら、話すことにした。お燐が照れ臭そうに尻尾を振って、今度は自分の疑問をこいしにぶつけた。
「前から聞こうと思っていたんですけど、さとり様とこいし様って、閻魔様とはどういう間柄なんですか?」
こいしは、閻魔に言われて戻ってきた程度のことは、食事中に話してあった。隠すようなことは、何一つ無い。
「間柄って程のものは無いよ。私達が地底に来ないとならなくなったとき、地獄も移さないとならなくなったわけ。そのとき、あの人も色々と仕事が増えて、それを片付けるついでに、家とか世話してくれただけ」
「さとり様についてはそうなんでしょうけど、それだけじゃ、こいし様に声をかける理由がわからないですよね」
「お姉ちゃんより私の方が気安いんじゃないかなあ。――お姉ちゃんに聞けば? 一発でわかるよ」
「閻魔様の心中とか聞きたくないですよ……」
「我儘だなあ」
そうは言ったものの、こいしも気にはなっているのである。良い機会だし、自分から姉に聞いてみるのも良いかもしれない。
いずれにしろ、家には帰るのだし、――
「あっ、お姉ちゃん、今は家にいないんだっけ」
「探してきましょうか? 地上に出るなんてことは無いはずですから、すぐに見付かるはずですよ」
「うーん……お姉ちゃんの行く所なんてたかが知れてるから、自分で探すよ」
「はーい。じゃ、私はそろそろ行きますね」
お燐がスカートを翻すと、その陰から猫車が現れる。彼女が桜の枝を掠めて飛んで行くのを見送って、こいしは辺りを見回した。
いざ帰って来てみれば、不安なんて霧散してしまうものらしい。特に無意識を操るでもなく、姉はどこにいるだろうかと想像を働かせる、浮かれた自分がいる。
肝心の姉の行き先だが、遊び歩くのが苦手な所為で、かなり限定されてくる。
遊び歩かないからといって、迷惑にならないわけでもない。
人に会わないよう移動しながら飲み続けた所為で、悪酔いし、路地でぶっ倒れている所を発見されたことがある。
夕飯の買い物に行かせたペットが戻らないから、と、探しに出て、池のほとりで朝まで飲んでいたこともある。
そういうことをしていても、覚り妖怪としての自分を貫いているから、それなりに恐れられているし、本人も楽しんでいるわけだ。
川の上流、桜よりも杉が多い辺りに、さとりはいた。桜の蕩けた匂いより、緑のそれが、酒に合うのだろう。
さとりは濁酒が得意で、気心の知れたペットだけを供に、楽しんでいた。
「あら、久しぶり」
「うん」
さとりは詩集に筆を走らせていた。こいしが傍に座ると、目の真っ赤な黒毛の大型犬が、咥えた盃を渡してくれた。
この犬もこいしぐらいの大きさがあるのだが、さとりが背もたれにしている青鹿毛の犬はもっと大きく、熊ぐらいもある。いつもおねむで、今日も体を丸めて、寝息を立てている。
四つ足では他に、狸と木曽馬がいて、鳥類はもっと多い。ノドジロが草の上を跳ね回り、どこから来て住みついたものか、鶴や朱鷺が川端で羽を休めている。地底には燕も多くいる。
全て挙げていてはきりがないが、さとりはこの全ての心を、いつでも汲んでいる。彼女自身が、この流れゆく川のようなものだとも言える。
こいしは、そういう光景を傍から見なければならない。姉自身が、まるで自然の中に消えてしまったような錯覚を覚えるときもある。それでもやはり姉は姉で、横顔を覗くだけで、口元は緩んだ。
犬に注いでもらった酒を傾けると、こいしの頬はすぐに赤くなった。
「こいしは、お酒に弱くなったのかしら?」
「かもしんない。ご相伴には与るけど」
「近頃は、どこにお邪魔しているの?」
「やっぱり、山の辺りが一番多いかな。吸血鬼の所とかは勝手がわからないし、それ以外だと、かつかつな所ばかりだしね。長居できないんだ」
「あなたも、人の生活のことは考えるのね」
「ぎすぎすしてる連中は、意識に余裕が無いからだよ」
「ああ、なるほどね……あら」
さとりが急にくすくすと笑い出して、背もたれにしている青鹿毛の犬の腹を撫でる。
「この子は余裕がたっぷりのようね。いつも、楽しい夢を見せてくれるわ。今は鳥になって、大蛇の腹の中を突いて回っているわね」
「お姉ちゃんに見てもらいたいとか」
「それは夢のある話だわ」
犬が起きない程度に撫でるだけ撫でて、さとりは盃に口を付け直す。一度飲み始めると、一杯、また一杯、盃を空けた。
彼女は結構、酒好きだった。
「お酒、そんなに美味しい?」
こいしが訊ねると、さとりは黙ってしまった。気分を害したわけではなく、どれが自分の思考なのか、頭の中で整理するためだった。
彼女が黙りこんだのに合わせて、周囲の獣達の息遣いが、密やかなものになった。さとりの迷惑になることを嫌ってのことだろう。
さとりは、余計な気兼ねをするなと手を振り、こいしに顔を向けた。
「酒で酔えるのは、妖怪と人の特権だわ。この子達と一緒なのは、とてもとても楽しいけれど、その中でこそ、私は私として、楽しんでいたいときがあるのかもしれないわ。お燐やお空とは、あまり飲まないもの」
「孤独なのが良いの?」
「そうじゃないのよ。ただ、自分の心が動く様を、自覚したいのだわね」
「今のお姉ちゃんは、どんなお姉ちゃんなの?」
「『お姉ちゃん』かしらね」
「ふうん……」
誤魔化されたのか、本音なのか。こいしは盃を空にして、姉と同じように、犬にもたれかかった。
しばらく、姉との時間を共有する。
眠気は無い。川と緑の匂いがそうさせるのか、頭の中が透き通っている。
姉は黙々と筆を走らせていて、これまた、冴えているらしい。
「こいし」
急に呼ばれて、こいしは膝上に置いていた帽子を落としてしまう。
「なあに?」
「珍しく、あなたの帰ってきた理由がわかるわ」
「ふうん」
こちらが姉の行動をある程度わかるように、姉もまた妹のことを熟知している。
地底も過ごし易いが、地上はもっと過ごし易い時期である。そういうときに戻ってきたこいしの裏に、さとりは閻魔の影を見て取っていた。
その上で、変わったことを訊ねた。
「こいしは、自分と私とでどちらが、業が深いと思う?」
「お姉ちゃん」
「少しは迷いなさいよ。でも、正解だわ」
妖怪の本性を隠すことも無く、自分の好きなように暮らしている。たまたま地底という安住の地に居着いているが、これが地上だったなら、人にはさぞ迷惑がられたことだろう。
しかし、それよりも、
「あのね、こいし。私は近頃、あなたのことが、あまり、心配でないのよ」
「……」
わかっていたことだが、こうして口にされると、こいしは惨めな気がした。
そんな妹の姿も、見てみたかったのか。さとりは、許しを与えるように、頬を綻ばせた。
「こいし……ねえ、こいし……お姉ちゃんはここから出られないわ。この子達を裏切りたいとは思わないし、私自身、今を楽しんでいるのだもの」
「うん……わかるよ」
「あなたがこれから、覚り妖怪の本性を取り戻すか、今よりもっと別の存在になってしまうか、私にはわからないわ。でも、私が姉ということは変わらないのよ。どんなに間が開いても良いわ。どんな理由でも良い。理由が無くても良い。来られるときに、来たときに、顔を見せてちょうだい。私はそれで、十分だから」
一羽の鶴が飛び立つと、有象無象の気配が散って行った。残ったのは、犬が二頭と、数羽の小鳥。
今だけはさとりも、彼らの好意を咎めはしなかった。
さとりが振り向いたとき、こいしは既に、旅立っていた。ハンカチを一枚、残して。
瞼を閉じて、さとりは酒を飲んだ。目が熱いのは、酒の所為だろうか。
こいしが去って、じきのこと。寝ていた方の犬が目を覚ました。
なんだか地蔵でも乗っかったみたいに、体が重い。
クウン、と、巨体に似合わない声を出した。さとりはその背中をぽんぽんと撫でてやってから、犬の上に座っている客人に、顔を向け直した。
「珍しいですね、私の所に、仕事以外の用件で来られるなんて」
「あなたがこいしさんを追い返してしまった所為で、私の目算が狂ってしまいましたからね。お礼までに」
映姫は、さとりを見下ろしながら、口を薄らと笑わせた。
「あなたは少し、妹に優し過ぎますね。もっと自分に優しくしてはどうですか」
「これは仕方ないんです。閻魔に気に入られた妹が、不憫ですから」
「……いけませんね、閻魔の心を覗くのは」
「妖怪ですから」
泳ぐ鳥のようだとこいしは自身を評したが、映姫にしてみれば、歩き回る地蔵のようだった。
「こいしさんの、無意識を操る力は、大したものです。私心を加えて説教をすることは控えている私ですが、気になっているのは認めざるをえません。閉じた瞳にしか見えないものもあるのでしょう」
「私や、閻魔様の鏡とは、また別物ですからね。ただ――」
「ええ、強制するようなことはしませんよ。約束しましょう」
犬は、今にも走り出したい恐怖を感じていたが、重くて体が動かない。これが終わったら、さとり様に一杯、ふもふもしてもらおう。
現実には、そのさとり様こそが恐ろしい殺気を放っているのだが、犬にしてみると腹の辺りにいて、よくわからなかった。
「ああ、そうだ。これを渡しておかないと」
映姫が取り出したのは、こいしのハンカチだった。手渡されたさとりは、それをしげしげと眺める。それは糊がよくきいていて、新品のようだった。
「これは……」
既に、映姫は失せていた。
「こいしに自分から渡せば良いのに。何だか、あの方まで妹みたいな気がしてきたわ。――えいえい」
「ワフッ!」
腹の辺りをこれでもかとふもふもされて、犬はひっくり返った。
「よもや、二食連続でこいし様と相席になるとはねえ」
地上でも蕎麦を啜っていたお燐が、こいしに言う。
周辺では天狗蕎麦と呼ばれる、妖怪の山の湧水で作った蕎麦である。育てるのから打つのまで、同じ水なものだから、非常にまろやかな出来となっている。
この店自体、川沿いで営業していて、店主は無口な天狗である。客層はやはり天狗が多いのだが、河童もかなり多い。
こいしは七味を足しつつ、答えた。
「細く長くがモットーだからね、私は」
「へえ、そうだったんですか。じゃあ、地下に引っ込まなくても、騒ぎなんて起きませんね」
つい数時間前からのモットーであることは、お燐には教えない。
「お燐は少し、食べ過ぎじゃない?」
「あっはっは! そうかもしれませんね」
彼女を残して、こいしは先に店を出た。
既に日が落ちようとしているが、気がかりが無くなったことで、胸は熱かった。
「そうだ! どこかでお酒を飲もう」
こいしが以前よりも酒好きになったのは、確かなことのようだった。
渓流、杉の立ち並ぶ場所で、古明地こいしは自分の顔を撫でた。川面に顔を映して、洗う。小鳥が、その音に今更のように驚いて、パタパタと空に昇っていた。
ハンカチで顔を拭って、今度はそのハンカチを濯ぐ。
水を切れるだけ切ってから適当な岩の上に広げ、小石を重石にして乾かす。妖力によって、汚れから守られているとはいえ、洗えるものは洗いたいし、干せるものは干したい。そうした機微こそが当人を守っているのは、人間にも言えた。
しかし、こいしは妖怪の中でも、特殊な部類だろう。唯一、姉とは同じでいたのに、その姉からも、ずれてしまった。
泳ぐ鳥のようだ。
こいしは、自分のことをそんな風に思う。
姉と一緒に羽を動かしていたはずなのに、空の青と、水の青とに、分かれてしまった。
姉は地底にいるのに、姉を想えば、空を見上げる。
今日もそうしてみてから、帽子を木の下に置いたままにしておいたのを、思い出した。
「忘れ物も、無意識の裡なのでしょうかね」
こいしには一瞬、帽子が問いかけたように思えたが、声の後に、木陰から人影が現れた。
「ああ、閻魔様。――おはよう」
「おはようございます、こいしさん」
まだ早朝だのに、四季映姫は、制服の襟を立たせ、大きな帽子を被っている。浮世の時間の概念がどこまで通じるものかも、怪しいのだけれど。
映姫はこいしに帽子を手渡すと、隣に立ち、川面を眺め始めた。
「何の用事?」
閻魔が暇なわけは無い。結果として暇になることはあっても、自分から暇を弄ぶようなことは無い。暇を利用して、説教を垂れる。
こいしは、映姫と面識がある。自身の経験上、妖怪よりも神や仏の類の方が自分とは相性は良い、と、こいしは思っている。それは、彼らが本質的に、人妖の無意識に滑り込む存在だからかもしれない。
こいしは無意識を操れるが、そのものを取り払ったりは出来ない。それが出来たなら、さぞ恐れられていたろうが、彼女は何せ、泳ぐ鳥だった。猛禽でも鳳凰でもない。
映姫は川面に視線を浮かべたままで、答えた。
「しばらく、地底に戻っていてもらいたいのです」
「何で?」
「あなたは少し、無意識を操り過ぎた。人を恐れさせるのは妖怪の本分ですし、あまり五月蠅いことは言っても仕方ないのですが、近頃は鵺なんてものまで地上に出て来ましてね。あなたと鵺の性質が合わさると、恐れが倍増しかねないのですよ」
「それで、しばらく引っ込んでろ、って?」
「はっきり言えばそうですね。鵺の方は、どうも同業者っぽい者が唾を付けていまして、下手に関われないのです。あくまでも『同業者っぽい』ですよ。全くの同業ではないです」
「白蓮とか言う尼さんのことでしょ。私も知ってるよ。あの人、影がぐらぐら煮え立ってて、面白いんだ」
「そう思うなら、尚更ですね」
最初から、お願いではないのだろう。与し易い方に、先に交渉に来た。そう取った方が、間違いが無さそうだった。
自分が格下に思われているようで、こいしは少し癪に障った。要は、人間ではなく妖怪だけを狙えば……何なら鵺や白蓮を相手に遊べば、閻魔も納得できるのではないか。
「――最後に地底に戻ったのは、いつですか?」
こいしは自分の帽子のつばを指で撫でた。唐突に問われて、窮したためでもあったが、他にも理由があった。
「三ヶ月ぐらい前……かな」
「嘘はおよしなさい」
「……半年」
半年もの間、こいしは地上に出ずっぱりだった。
地下のエネルギー革命の恩恵で、地上でも冬の間、寒さで凍えなくても済むことが多くなった。無意識を操れば、人間に恐れられることなく里で暖を取れたし、温泉に浸かることもできた。
しかし、操られた側の違和感だけは残り、積もり積もって、こうして映姫が足を運ぶことになってしまったらしい。映姫のお節介な性格が多分に影響しているとはいえ、だ。
「でも、春が来たら、帰ろうと思ってたんだ。ううん、いつだって、気付いたら帰ってたんだよ。それだのに、今は……」
こいしの憤る様を見て、映姫が初めて視線を合わせた。
「お姉さんの、さとりさんの無意識に呼ばれなくなった、ということでしょうか?」
「わかんない、わかんないよ。そうだったら、怖いけど……怖い? ああ、これが怖いっていうの? 朝起きると目に涙が溜まっているようになったのも?」
「ふむ――」
映姫は沈思して、自分の口元に手を当てる。
「とりあえず、落ち着きなさい。半年も家に帰らなかったら、心細くなるのは当たり前なんですから……そうですね、ハンカチでも洗ってもらうついでに、気軽に帰ってみると良いでしょう」
「ハンカチ、もう洗っちゃったよ」
こいしが俯く。そんな些細なことでも落ち込むことに、映姫も母性のようなものをくすぐられたのかもしれない。大事な笏を置くと、おもむろにこいしの頬に片手を添えた。
「ほら、ちょっと上を向いてください」
もう片方の手で自分のハンカチを取り出し、こいしの顔を拭ってやる。こいしのハンカチよりも柔らかいそれは、彼女の顔を撫でるだけ撫でて、彼女の手に握らされた。
「これで理由が出来たでしょう? たまには、帰ろうと思って、帰ってごらんなさい」
「……はい」
「よろしい。いつもそれぐらい素直なら良いのですがね」
最後の最後で説教めいたことを言って、映姫は去った。岩の上に広げてあったハンカチも、どこかに行ってしまっていた。
地底の春は長い。地上よりも陽気と陰気の入れ替わりがゆっくりとしているから、というのは好事家の弁だが、「お空が季節を忘れるから」と考えている者も結構いる。それだけ、お空のエネルギーが及ぼす影響は絶大なのだった。
地上との友好の証とかいう触れ込みで桜が植えられた公園は、花見客で賑わっていた。
実際は、地上まで花見をしに来ないように、という意味合いが強い。もっとも、それを指摘する者も、拘泥したりはしない。
そこに桜があるのだ。花見をしない理由はどこにもない。
そういった漠然とした歓楽に、こいしは引き寄せられた。気付くと、公園の外れの蕎麦屋で蕎麦を啜りつつ、地下水が流れる川の向こう、桜の立ち並ぶ様を、眺めていた。
地下水で打たれた蕎麦は、噛むと、プチンと切れるのが魅力である。
豪快に啜って、噛み切り、存分に歯ごたえを楽しんでいるのは、さとりのペットである、お燐だった。
「うーん、泥を腹に詰めたこの感じが、地底の蕎麦ですねえ」
隣に座っていたこいしは、適当に首肯し、帽子を被り直した。お互い、移動の多い性分だから、こうしてよくかち合う。
「お姉ちゃんはどうしてる?」
「この時期ですからねえ。例年通り、ふらふら出歩いてるみたいですよ」
ある程度以上の力を付けないと、こいしのペット達も、ケダモノと変わらない。春は、発情期に入ってしまう。襲われることは無いのだが、気が立っているのも確かである。一緒にいても、落ち着かない。
「みたいですよ、ってことは、あなたも出歩いてばかりってことだよね」
「あははっ、こいし様にそれを注意されるとは思いませんでしたよ」
お燐に悪気は無い。笑うだけ笑って、卓に二人分の勘定を置いた。
死体漁りをしているために、金には困らない。ただし、それが目的ではないから、必要以上には取らない。
二人は、川沿いに歩きながら、話すことにした。お燐が照れ臭そうに尻尾を振って、今度は自分の疑問をこいしにぶつけた。
「前から聞こうと思っていたんですけど、さとり様とこいし様って、閻魔様とはどういう間柄なんですか?」
こいしは、閻魔に言われて戻ってきた程度のことは、食事中に話してあった。隠すようなことは、何一つ無い。
「間柄って程のものは無いよ。私達が地底に来ないとならなくなったとき、地獄も移さないとならなくなったわけ。そのとき、あの人も色々と仕事が増えて、それを片付けるついでに、家とか世話してくれただけ」
「さとり様についてはそうなんでしょうけど、それだけじゃ、こいし様に声をかける理由がわからないですよね」
「お姉ちゃんより私の方が気安いんじゃないかなあ。――お姉ちゃんに聞けば? 一発でわかるよ」
「閻魔様の心中とか聞きたくないですよ……」
「我儘だなあ」
そうは言ったものの、こいしも気にはなっているのである。良い機会だし、自分から姉に聞いてみるのも良いかもしれない。
いずれにしろ、家には帰るのだし、――
「あっ、お姉ちゃん、今は家にいないんだっけ」
「探してきましょうか? 地上に出るなんてことは無いはずですから、すぐに見付かるはずですよ」
「うーん……お姉ちゃんの行く所なんてたかが知れてるから、自分で探すよ」
「はーい。じゃ、私はそろそろ行きますね」
お燐がスカートを翻すと、その陰から猫車が現れる。彼女が桜の枝を掠めて飛んで行くのを見送って、こいしは辺りを見回した。
いざ帰って来てみれば、不安なんて霧散してしまうものらしい。特に無意識を操るでもなく、姉はどこにいるだろうかと想像を働かせる、浮かれた自分がいる。
肝心の姉の行き先だが、遊び歩くのが苦手な所為で、かなり限定されてくる。
遊び歩かないからといって、迷惑にならないわけでもない。
人に会わないよう移動しながら飲み続けた所為で、悪酔いし、路地でぶっ倒れている所を発見されたことがある。
夕飯の買い物に行かせたペットが戻らないから、と、探しに出て、池のほとりで朝まで飲んでいたこともある。
そういうことをしていても、覚り妖怪としての自分を貫いているから、それなりに恐れられているし、本人も楽しんでいるわけだ。
川の上流、桜よりも杉が多い辺りに、さとりはいた。桜の蕩けた匂いより、緑のそれが、酒に合うのだろう。
さとりは濁酒が得意で、気心の知れたペットだけを供に、楽しんでいた。
「あら、久しぶり」
「うん」
さとりは詩集に筆を走らせていた。こいしが傍に座ると、目の真っ赤な黒毛の大型犬が、咥えた盃を渡してくれた。
この犬もこいしぐらいの大きさがあるのだが、さとりが背もたれにしている青鹿毛の犬はもっと大きく、熊ぐらいもある。いつもおねむで、今日も体を丸めて、寝息を立てている。
四つ足では他に、狸と木曽馬がいて、鳥類はもっと多い。ノドジロが草の上を跳ね回り、どこから来て住みついたものか、鶴や朱鷺が川端で羽を休めている。地底には燕も多くいる。
全て挙げていてはきりがないが、さとりはこの全ての心を、いつでも汲んでいる。彼女自身が、この流れゆく川のようなものだとも言える。
こいしは、そういう光景を傍から見なければならない。姉自身が、まるで自然の中に消えてしまったような錯覚を覚えるときもある。それでもやはり姉は姉で、横顔を覗くだけで、口元は緩んだ。
犬に注いでもらった酒を傾けると、こいしの頬はすぐに赤くなった。
「こいしは、お酒に弱くなったのかしら?」
「かもしんない。ご相伴には与るけど」
「近頃は、どこにお邪魔しているの?」
「やっぱり、山の辺りが一番多いかな。吸血鬼の所とかは勝手がわからないし、それ以外だと、かつかつな所ばかりだしね。長居できないんだ」
「あなたも、人の生活のことは考えるのね」
「ぎすぎすしてる連中は、意識に余裕が無いからだよ」
「ああ、なるほどね……あら」
さとりが急にくすくすと笑い出して、背もたれにしている青鹿毛の犬の腹を撫でる。
「この子は余裕がたっぷりのようね。いつも、楽しい夢を見せてくれるわ。今は鳥になって、大蛇の腹の中を突いて回っているわね」
「お姉ちゃんに見てもらいたいとか」
「それは夢のある話だわ」
犬が起きない程度に撫でるだけ撫でて、さとりは盃に口を付け直す。一度飲み始めると、一杯、また一杯、盃を空けた。
彼女は結構、酒好きだった。
「お酒、そんなに美味しい?」
こいしが訊ねると、さとりは黙ってしまった。気分を害したわけではなく、どれが自分の思考なのか、頭の中で整理するためだった。
彼女が黙りこんだのに合わせて、周囲の獣達の息遣いが、密やかなものになった。さとりの迷惑になることを嫌ってのことだろう。
さとりは、余計な気兼ねをするなと手を振り、こいしに顔を向けた。
「酒で酔えるのは、妖怪と人の特権だわ。この子達と一緒なのは、とてもとても楽しいけれど、その中でこそ、私は私として、楽しんでいたいときがあるのかもしれないわ。お燐やお空とは、あまり飲まないもの」
「孤独なのが良いの?」
「そうじゃないのよ。ただ、自分の心が動く様を、自覚したいのだわね」
「今のお姉ちゃんは、どんなお姉ちゃんなの?」
「『お姉ちゃん』かしらね」
「ふうん……」
誤魔化されたのか、本音なのか。こいしは盃を空にして、姉と同じように、犬にもたれかかった。
しばらく、姉との時間を共有する。
眠気は無い。川と緑の匂いがそうさせるのか、頭の中が透き通っている。
姉は黙々と筆を走らせていて、これまた、冴えているらしい。
「こいし」
急に呼ばれて、こいしは膝上に置いていた帽子を落としてしまう。
「なあに?」
「珍しく、あなたの帰ってきた理由がわかるわ」
「ふうん」
こちらが姉の行動をある程度わかるように、姉もまた妹のことを熟知している。
地底も過ごし易いが、地上はもっと過ごし易い時期である。そういうときに戻ってきたこいしの裏に、さとりは閻魔の影を見て取っていた。
その上で、変わったことを訊ねた。
「こいしは、自分と私とでどちらが、業が深いと思う?」
「お姉ちゃん」
「少しは迷いなさいよ。でも、正解だわ」
妖怪の本性を隠すことも無く、自分の好きなように暮らしている。たまたま地底という安住の地に居着いているが、これが地上だったなら、人にはさぞ迷惑がられたことだろう。
しかし、それよりも、
「あのね、こいし。私は近頃、あなたのことが、あまり、心配でないのよ」
「……」
わかっていたことだが、こうして口にされると、こいしは惨めな気がした。
そんな妹の姿も、見てみたかったのか。さとりは、許しを与えるように、頬を綻ばせた。
「こいし……ねえ、こいし……お姉ちゃんはここから出られないわ。この子達を裏切りたいとは思わないし、私自身、今を楽しんでいるのだもの」
「うん……わかるよ」
「あなたがこれから、覚り妖怪の本性を取り戻すか、今よりもっと別の存在になってしまうか、私にはわからないわ。でも、私が姉ということは変わらないのよ。どんなに間が開いても良いわ。どんな理由でも良い。理由が無くても良い。来られるときに、来たときに、顔を見せてちょうだい。私はそれで、十分だから」
一羽の鶴が飛び立つと、有象無象の気配が散って行った。残ったのは、犬が二頭と、数羽の小鳥。
今だけはさとりも、彼らの好意を咎めはしなかった。
さとりが振り向いたとき、こいしは既に、旅立っていた。ハンカチを一枚、残して。
瞼を閉じて、さとりは酒を飲んだ。目が熱いのは、酒の所為だろうか。
こいしが去って、じきのこと。寝ていた方の犬が目を覚ました。
なんだか地蔵でも乗っかったみたいに、体が重い。
クウン、と、巨体に似合わない声を出した。さとりはその背中をぽんぽんと撫でてやってから、犬の上に座っている客人に、顔を向け直した。
「珍しいですね、私の所に、仕事以外の用件で来られるなんて」
「あなたがこいしさんを追い返してしまった所為で、私の目算が狂ってしまいましたからね。お礼までに」
映姫は、さとりを見下ろしながら、口を薄らと笑わせた。
「あなたは少し、妹に優し過ぎますね。もっと自分に優しくしてはどうですか」
「これは仕方ないんです。閻魔に気に入られた妹が、不憫ですから」
「……いけませんね、閻魔の心を覗くのは」
「妖怪ですから」
泳ぐ鳥のようだとこいしは自身を評したが、映姫にしてみれば、歩き回る地蔵のようだった。
「こいしさんの、無意識を操る力は、大したものです。私心を加えて説教をすることは控えている私ですが、気になっているのは認めざるをえません。閉じた瞳にしか見えないものもあるのでしょう」
「私や、閻魔様の鏡とは、また別物ですからね。ただ――」
「ええ、強制するようなことはしませんよ。約束しましょう」
犬は、今にも走り出したい恐怖を感じていたが、重くて体が動かない。これが終わったら、さとり様に一杯、ふもふもしてもらおう。
現実には、そのさとり様こそが恐ろしい殺気を放っているのだが、犬にしてみると腹の辺りにいて、よくわからなかった。
「ああ、そうだ。これを渡しておかないと」
映姫が取り出したのは、こいしのハンカチだった。手渡されたさとりは、それをしげしげと眺める。それは糊がよくきいていて、新品のようだった。
「これは……」
既に、映姫は失せていた。
「こいしに自分から渡せば良いのに。何だか、あの方まで妹みたいな気がしてきたわ。――えいえい」
「ワフッ!」
腹の辺りをこれでもかとふもふもされて、犬はひっくり返った。
「よもや、二食連続でこいし様と相席になるとはねえ」
地上でも蕎麦を啜っていたお燐が、こいしに言う。
周辺では天狗蕎麦と呼ばれる、妖怪の山の湧水で作った蕎麦である。育てるのから打つのまで、同じ水なものだから、非常にまろやかな出来となっている。
この店自体、川沿いで営業していて、店主は無口な天狗である。客層はやはり天狗が多いのだが、河童もかなり多い。
こいしは七味を足しつつ、答えた。
「細く長くがモットーだからね、私は」
「へえ、そうだったんですか。じゃあ、地下に引っ込まなくても、騒ぎなんて起きませんね」
つい数時間前からのモットーであることは、お燐には教えない。
「お燐は少し、食べ過ぎじゃない?」
「あっはっは! そうかもしれませんね」
彼女を残して、こいしは先に店を出た。
既に日が落ちようとしているが、気がかりが無くなったことで、胸は熱かった。
「そうだ! どこかでお酒を飲もう」
こいしが以前よりも酒好きになったのは、確かなことのようだった。
それぞれのやり取りが、とても穏やかで、丁寧な筆致と相俟って読んでいて大変心地よい。
作中、さとりが川のようだという例えがとても印象的でした。
貴方の四季様をいつも楽しみにしています。
とはいえ、お忙しい折、ご体調等崩されないよう十分ご自愛のほどを。
次作ゆっくりお待ちしております。
心が読めるサトリ、世間一般で言われている心が読めるが故の苦悩とは一線を画し、いやさ飛び越えてその先を見据えている感じが実に良い。あと実にお姉ちゃんしてる。素晴らしい。
それと映姫がかっこかわいいので百億万点ですが、映姫がかっこかわいいのは当たり前ですので、そのままで。
どこまでも気分良く読めます。こんな文体ならどんな内容でもスッと受け入れられてしまいそうですねぇ。
姉特有のバランス感覚みたいなものはあるはずだなあ、と思い、つらつらとやってみました。もっと実務的な部分とかでさとりを書いてみたいなあ、とも。
> こいし
妖怪ですから、あんまり人間的な成長とかモラトリアムも無いのでしょうけれど、要所要所での判断とか、機微はあるはずなので、そこら辺は機会があれば詰めていきたいように思います。
> 映姫
他の作品でもそうですが、映姫の扱いには毎度、通り魔的なものというか、そういうものが欲しいので、悩みどころです。剣客小説の主役に近いかもしれない。
> ラヴコメ
妖怪である以上は、どこか突っ放した部分が出てこないとおかしいので、そういう部分で笑ってもらえたのだとしたら、大変に光栄なことです。
体調は煙草止めた上に運動量が増えてるので、むしろ良くなっている罠。
さとりとこいし、映姫が、各々「らしい」立ち位置と会話で、これはすごいな、と感じました。