ここは亡霊の姫とその従者が住む白玉楼。
今日、この屋敷には数人の少女が集まっていた。
「今日は来ていただきありがとうございます」
この屋敷に住む魂魄妖夢は集まった面々に対して感謝の言葉を述べる。
「いえいえ、今日はお招きいただきありがとうございます」
そう返すのは紅魔館のメイドである十六夜咲夜。
妖夢の目の前には他にも鈴仙・優曇華院・イナバ、八雲藍がいる。
「さて、今日集まってもらったのは他でもありません…」
妖夢の言葉に全員が体を固くした。
「これから苦労人同盟の集会を開催いたします」
…ここで苦労人同盟について説明しておこう。
苦労人同盟とは普段苦労をしている人たちが集まって愚痴を言い合ったり、悩みを打ち明けたりする場のことである。
ちなみに現在の会員は上記の4名である。
彼女たちの共通点は「仕えるべき主人がいること」、そして「苦労人であること」だ。
妖夢は全員を軽く見渡す。
「さて、まずは咲夜さんから近況などをどうぞ」
リーダー格である妖夢は咲夜のほうを見て言った。
「そうねぇ…最近はこんなことがあったわ」
あれはいつの日だったかしら。
いつものようにお嬢様にお茶を持って行った時のことでした。
「ねぇ、咲夜」
「なんですか、お嬢様?」
お嬢様は静かにお茶を飲みながら言いました。
「四つ葉のクローバーって見つけたら確か幸せになれるんだったわよね?」
「ええ、そうですけど」
「だったら今から見つけてきてくれるかしら?」
「は?」
私は何を言っているんだと思いながらお嬢様を見つめていました。
「だから、今から四つ葉のクローバーを見つけてきなさい」
「お、お嬢様…それは自分から見つけないと意味が無いんですよ?」
「うるさい! さっさと見つけてきなさい! いいわね!?」
そう叫ぶとお嬢様は怒りながら自分の部屋に帰っていきました…
はぁ、しょうがない…
お嬢様の機嫌を直すためにも取って来るしかなさそうね…
私は表に飛び出しました。
「確かあの辺りで取れたかしらね」
私は紅魔館を出て、少し離れたところにある原っぱにやってきた。
「ここでなら見つかりそうね」
辺りにはクローバーがたくさん咲いている。
「さて、探すとしますか…」
私は地面に顔を近づけて一つ一つ確認していく。
「えーと、これは三つ葉…これも…これも…」
探したことがある人ならわかるかもしれないけど、四つ葉を見つけるのって意外と大変なのよね。
探し始めてから2時間くらいは経過しようとした時でした。
「や、やった! 四つ葉を見つけたわ!」
私が手に取ったのは紛れもない四つ葉のクローバー!
「それにしてもものすごく疲れたわね…でもこれを急いでお嬢様に持っていかなくちゃ」
私は急いで紅魔館に帰ることにした。
「お嬢様ー! お嬢様、どこですか?」
屋敷の中に入ると私はそう叫んだ。
「…なによ、うるさいわね。おかげで目が覚めちゃったわ…」
「お、お嬢様! ついに見つけましたよ! ほら!」
私は持っていた四つ葉のクローバーをお嬢様に手渡した。
「…なんか、どうでも良くなったわ」
え?
「いや、今になって思えば何で四つ葉のクローバーとか言ったのかしらね?」
「さ、さあ…」
「とりあえずそれはもういいわ。とりあえずお腹が空いたからご飯にして頂戴」
「で、でもこれは…私の苦労は…?」
お嬢様は振り返って答えた。
「捨てるか、フランにあげるかすればいいんじゃない? あの子なら多分大喜びするわよ」
お、お嬢様…苦労して取ってきたのにそれは無いですよ…
「とまぁ、こんなことがあったわね…」
咲夜が語り終えると鈴仙が慰めの言葉をかける。
「それは…大変でしたね…」
「ええ、せっかく取ってきたのに…」
そう言って肩を落とす咲夜。
藍は苦笑しながら言った。
「まあ、あそこの主は気まぐれで有名だからな…」
「そうですね。面白そうだからって理由で何か事件を起こしたりしますし…
それでは次は藍さん、お願いします。」
「え、私なのか?」
藍は少し戸惑った顔を見せた。
「ええ、そうですよ」
鈴仙は藍を見ながら答える。
「そうか…それじゃあこんなのとかどうだろう」
「らんー…」
あの声は…
私は台所から飛び出して紫様の寝室へと向かった。
「どうしました?」
布団の中でまだ横になっている紫様の近くに座り込んで聞いてみる。
「起こしてー…」
…はい?
「今なんて言いました?」
「だから起こしてって言ってるの」
とりあえず私は無言で紫様を起こしてやった。
「ありがと…」
紫様はまだ半分寝ぼけているようだ。
目を何度もこすっている。
「それじゃあ私は料理に戻りますので」
そう言って私はまた台所に向かった。
それから手早く料理を済ませると配膳を済ませていく。
さて、これで料理は出来た。
ちなみに橙は外に出かけていったので今日は私と紫様の二人分の料理が置いてある。
「紫さまー、朝食が出来たのでこちらにおいでくださいー!」
そう叫ぶも返事は返ってこなかった。
…もしや。
「やっぱり…」
寝室に入ってみると紫様は上半身を起こした状態で眠っていた。
「紫様! 起きてください!」
体をガクガクと揺らして起こす。
「ん、何…?」
「朝食が出来ましたよ! こちらに来てください!」
「…運んでいって」
この人は普段は本当にぐうたらだな…
ビシッと決めるところはビシッとしてくれるのだけれど。
「わかりましたよ…」
私は紫様の腕の下に手を入れて抱えて居間へと連れて行く。
…あまりこういうことは言いたくないのだけれど、重い。
また太りましたね、紫様…
「はい、着きましたよ!」
「食べさせて…」
少しずつ頭に血が登ってくるのがわかったが、ここはひたすら我慢だ。
「はい、どうぞ」
私は紫様に食事を食べさせてやる。
…まるで赤ん坊の世話をする母親か、年老いた母を介護する子供のようだ。
「はい、これで終わりです。今日も仕事がたくさんあるんですからしっかりと起きて…」
私の言葉はそこで遮られた。
「…私、まだ寝るから仕事、お願いね」
「ちょ、ちょっと!?」
「それじゃあ、また寝室に連れて行って…」
あぁ、もうこの人は何でこんなにものぐさなんだろう…
そう思いながら私はまた紫様を寝室へと運んで行った。
「うん、こんな感じだな」
ため息をつきながら話を終える藍。
「紫さんって普段こんななのね…」
咲夜は驚いている。
「うちの姫様に似てるような感じがしますね」
鈴仙は藍の境遇がわかるのか、小さく笑っていた。
「まったく、あのあとに一人で仕事しなくてはいけなかったし、大変だったよ…
どうやったらあそこまでぐうたらになれるのか…」
「あはは、それでは次は…私が話しましょうか」
妖夢はそう笑ってから語り始める。
私はいつものように庭の手入れをしていました。
「妖夢、ちょっといいかしら?」
「あ、幽々子様。なんですか?」
「そろそろお昼にしない?」
おっと、そういえばそろそろ昼食の時間でした。
「そうですね。それじゃあ今から作りますのでしばらく待っていてくださいね」
私は道具を片付けてから急いで台所へと向かう。
「できるだけ急いでねー」
後ろからそう声をかけられた。
「はい、わかりました!」
それからすぐに料理を作る。
これならば幽々子様も満足してくれるはずだ。
「お待たせいたしました」
「待ってたわよ」
幽々子様はすでにテーブルの前で座っている。
私は幽々子様の前に食事を降ろした。
「いただきます!」
私が座るより早く幽々子様は食事に手をつけていた。
「ゆ、幽々子様…まだ私が食べる準備できていなかったんですけど…」
私はそう言ったが今の幽々子様には聞こえていないみたいだ…
「とりあえず私も早く食べ終わって仕事に戻らないと」
私はゆっくりと料理を食べ始めた…
私も幽々子様も食事が終わったことを確認してから食器を流しに持っていく。
「それでは私は仕事に戻りますので何かあったら声をかけてくださいね」
「うん、わかったわ」
幽々子様はお茶を飲みながら答える。
さて、仕事に戻ろう。
剪定用のハサミを手にとって庭の木の枝を刈り取っていく。
…そんな作業を始めてから1時間くらい経ったときだったかな?
「ようむー」
「あれ、幽々子様、どうしました?」
「お腹すいた」
…またですか。
「戸棚に羊羹があったはずなのでそれでも食べてください」
「ありがとうね、それじゃあ頂くことにするわ」
そう返して台所へと向かう幽々子様。
「…あ、そういえば羊羹はたくさんあるけど一つだけにしてくださいって言うの忘れてた。
ま、さすがの幽々子様でも全部は食べないかな…」
ええ、さすがに羊羹すべて食べつくすのはさすがの幽々子様でもしない…
そう思っていた私が甘かったです…
仕事がやっと終わってから、私も羊羹を少しもらおうと思いました。
「仕事も終わったしお茶にしようっと」
私は鼻歌を歌いながら戸棚に向かいました。
そしてと棚をあけたときに見たんです…
たくさんあった羊羹がすべて無くなっているのを…
「え!?」
そ、そんな…買い置きしてあった羊羹が…
「ゆ、幽々子様!?」
そう叫んで居間に飛び込んだ私が見たものは満足そうな顔をした幽々子様と積み重なった羊羹の空き箱でした…
「あら、妖夢。羊羹、おいしかったわよー」
「幽々子様…あの羊羹、1週間分の羊羹だったんですよ…」
「そうだったの? でも…」
「でも…なんですか?」
「また買ってくればいいのよ」
私はそこで一瞬だけ意識がとんだ。
「も、もう羊羹を買えるだけのお金なんて残ってませんよ!
あの羊羹もしっかり計算した上で買ってあったんですから!」
「そうだったの…それじゃあ今月一杯、お菓子は…」
「ええ、ありませんよ」
「えー! お菓子が無い生活なんて耐えられないー!」
そう叫んで騒ぐ幽々子様。
彼女を落ち着かせるのにはかなりの時間を要しました…
「…なんか大体の予想は出来る展開だったわね」
「うんうん」
「確かに…」
咲夜、鈴仙、藍の3人はそう頷きあっていた。
「な、なんでですか!?」
「だって…」
「妖夢が話すときは大体幽々子さんが食べ過ぎた的な内容なんだもの…」
咲夜の言葉を鈴仙が引き継ぐ。
「みょ、みょーん…」
「まあまあ、落ち込むな」
藍は妖夢の肩をぽんぽんと叩きながら慰めている。
「うう…それでは最後に鈴仙さんお願いします…」
「ご、ごめん、謝るから泣かないで!」
鈴仙はなんとか妖夢の機嫌を直してから語り始めた。
「ウドンゲ、頼んでいた仕事は終わったかしら?」
「あ、まだ終わってません!」
私が頼まれていた仕事。
それは師匠の資料の整理だ。
「ふぅ、全く。まだ終わっていないの?」
「いや、終わっていないも何も…」
…これって一人でするには量が多すぎませんかね?
「さすがに多すぎると思うんですけど…」
「しょうがないじゃない。あなたしか働ける人はいないんだし。
それでも手伝って欲しいならてゐにでも頼みなさい。それじゃ、頑張って」
あ、行っちゃった…
しょうがない、てゐに手伝ってもらおう。
「てゐー! 手伝ってもらえないかしら?」
とたとたという足音をさせて、てゐが走ってきた。
「…私が『うん、いいよ』って言うと思ってる?」
「…でしょうね。もういいわ…」
結局一人でやらなければいけないみたい…
目を閉じて深呼吸をする。
「よし、すぐに終わらせるわよ!」
私はさっそく仕事の続きに取り掛かった。
…それにしても多いなぁ。
おっと、いけない。
そんなことを考えたら余計につらくなるわ。
ここは簡単とかまだまだ少ないとか前向きに考えるのよ!
「あー、ほんとにこの仕事余裕だなぁ!」
そう言ってみると少しだけど楽になった気がする。
よし、この調子でドンドン行けば…
「あら、余裕なの? だったらこれが終わったら屋敷の掃除しておいてね」
「え? ちょ、ちょっと待ってください…!」
私の独り言は師匠に聞かれてしまっていた…
うぅ、この仕事だけでも大変なのにさらに掃除まで追加されちゃうとは…
資料の整理を何とか終わらせた私は心の中で泣きながら掃除道具を手にとっていた。
「はぁ、何でこんな目に…」
ぼやきながら掃除を始める私。
そこへ…
「あ、鈴仙! 凄いもの見つけたよー!」
「凄いもの?」
てゐの声が聞こえてきた。
声のしたほうに目をやるとてゐが手を振っていた。
「鈴仙、こっちにきてよー!」
「一体何が…?」
私は掃除道具を置いててゐのほうに駆けていく。
すると…
「うお!」
落とし穴に落ちた。
「くくく、見事に引っかかったね!」
「し、しまったぁ…」
忘れていた。こいつは嘘をよくつくことを…
「それじゃあ頑張って出ておいでー!」
少しずつてゐの笑い声が遠ざかっていく。
「と、とにかく早く出よう…」
落とし穴は意外に深く、脱出は困難を極めた。
落ちてから数十分後。
私は何とか脱出することに成功した。
「くっそー、てゐめ…覚えてなさいよ…」
服についた汚れをはたきながらそんなことを呟くと、目の前が少し暗くなった。
…嫌な予感。
私が恐る恐る顔を上げると、目の前にはにっこりと笑った師匠がいた。
「…ウドンゲ、ここで何をしているのかしら?
掃除はまだ終わってないわよ…?」
「い、いや、師匠、これには深いわけがあって…」
「問答無用。さて、お仕置きしなくちゃね」
や、ヤバイ…これは非常にまずいわよ…
そう考えた時にはすでに私は師匠に襟をつかまれて引きずられていた。
「ふふふ、今日はどういう目にあわせてあげましょうかね…?」
「ひぃぃぃぃ!」
そのまま私は数日間寝込んだ…
「…終わり…です…」
鈴仙は元気の無い笑いを浮かべていた。
「…壮絶すぎるわね」
「ああ…」
「さすがはナンバーワン苦労人の鈴仙さん…」
周りの三人もガタガタと震えていた。
「結局あの日、何をされたのか覚えていないんですよ…
そこがまた怖いです…」
永琳のお仕置き、恐るべし。
「そ、それでは今日の苦労人同盟の集会はこれで終わりにしましょうか…」
「そうですね…」
「何か嫌な終わり方だったわね…」
「そうだな…なんかこっちまで鬱になってくるような…」
四人はそんな会話をしていた。
「それでは、今日もお疲れ様でした!」
妖夢の号令に対して他の三人も後に続いてお疲れ様でしたと言い合う。
「それにしても、私たちがこんな同盟を作っているのに対してお嬢様たちも
『主人同盟』とか作っていたりして…」
「あはは、なんかありそうですね!」
鈴仙は腹を抱えて笑っている。
妖夢も「もしかしたら…」なんて呟いていた。
「しかしまさかそんなことは…」
藍が苦笑しながらそう呟いた時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そんなこと…あったりしてねぇ…」
四人がぎょっとして振り返るとそこにはスキマから顔を出す紫、幽々子、レミリア、永琳がいた。
「し、師匠!?」
「お嬢様まで!?」
「紫様…!」
「なんで幽々子様や皆さんが!?」
四人は驚いて口々に叫んだ。
「咲夜のいう通りよ。私たちもあなたたちのような同盟を作っていたのよ…」
レミリアはクククと笑いながら言った。
「あ、ちなみにリーダーは私ね」
紫は笑いながら手を振る。
「まさか妖夢たちも作っていたとはねぇ」
幽々子は口に手を当ててふふふと笑っている。
「さて、みんな。
それよりもこの子達にどういうお仕置きをすればいいか思いつくかしら?」
永琳はニヤリと笑いながら三人に聞いた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何でお仕置きされなきゃ…」
叫ぶ鈴仙に対して永琳はこう答えた。
「だって…わたしたちのことを悪く言っていたでしょ?」
「うっ…」
永琳の一言に全員黙り込んでしまう。
「それじゃあ、期待して待ってなさいね。今からみんなで話し合ってくるから。
あ、逃げようとは思わないことね。どこにいても私にはお見通しだから…」
紫はそこまで言うとスキマを閉じて消えてしまった。
「…これってまずいですよね?」
「ええ…非常にまずいわよ…」
「うぅ、師匠から何をされるのか考えただけで失神しそうです…」
「紫様もああ見えてとても厳しい人だからな…私も何をされるのか…」
四人はひそひそと会話しながらぶるぶると震えていた。
このあとの四人に何があったのかは本人たちとお仕置きをした人たちしか知らない…
一つ分かることは…四人とも数日間寝込んだ…ということくらいだろうか。
今日、この屋敷には数人の少女が集まっていた。
「今日は来ていただきありがとうございます」
この屋敷に住む魂魄妖夢は集まった面々に対して感謝の言葉を述べる。
「いえいえ、今日はお招きいただきありがとうございます」
そう返すのは紅魔館のメイドである十六夜咲夜。
妖夢の目の前には他にも鈴仙・優曇華院・イナバ、八雲藍がいる。
「さて、今日集まってもらったのは他でもありません…」
妖夢の言葉に全員が体を固くした。
「これから苦労人同盟の集会を開催いたします」
…ここで苦労人同盟について説明しておこう。
苦労人同盟とは普段苦労をしている人たちが集まって愚痴を言い合ったり、悩みを打ち明けたりする場のことである。
ちなみに現在の会員は上記の4名である。
彼女たちの共通点は「仕えるべき主人がいること」、そして「苦労人であること」だ。
妖夢は全員を軽く見渡す。
「さて、まずは咲夜さんから近況などをどうぞ」
リーダー格である妖夢は咲夜のほうを見て言った。
「そうねぇ…最近はこんなことがあったわ」
あれはいつの日だったかしら。
いつものようにお嬢様にお茶を持って行った時のことでした。
「ねぇ、咲夜」
「なんですか、お嬢様?」
お嬢様は静かにお茶を飲みながら言いました。
「四つ葉のクローバーって見つけたら確か幸せになれるんだったわよね?」
「ええ、そうですけど」
「だったら今から見つけてきてくれるかしら?」
「は?」
私は何を言っているんだと思いながらお嬢様を見つめていました。
「だから、今から四つ葉のクローバーを見つけてきなさい」
「お、お嬢様…それは自分から見つけないと意味が無いんですよ?」
「うるさい! さっさと見つけてきなさい! いいわね!?」
そう叫ぶとお嬢様は怒りながら自分の部屋に帰っていきました…
はぁ、しょうがない…
お嬢様の機嫌を直すためにも取って来るしかなさそうね…
私は表に飛び出しました。
「確かあの辺りで取れたかしらね」
私は紅魔館を出て、少し離れたところにある原っぱにやってきた。
「ここでなら見つかりそうね」
辺りにはクローバーがたくさん咲いている。
「さて、探すとしますか…」
私は地面に顔を近づけて一つ一つ確認していく。
「えーと、これは三つ葉…これも…これも…」
探したことがある人ならわかるかもしれないけど、四つ葉を見つけるのって意外と大変なのよね。
探し始めてから2時間くらいは経過しようとした時でした。
「や、やった! 四つ葉を見つけたわ!」
私が手に取ったのは紛れもない四つ葉のクローバー!
「それにしてもものすごく疲れたわね…でもこれを急いでお嬢様に持っていかなくちゃ」
私は急いで紅魔館に帰ることにした。
「お嬢様ー! お嬢様、どこですか?」
屋敷の中に入ると私はそう叫んだ。
「…なによ、うるさいわね。おかげで目が覚めちゃったわ…」
「お、お嬢様! ついに見つけましたよ! ほら!」
私は持っていた四つ葉のクローバーをお嬢様に手渡した。
「…なんか、どうでも良くなったわ」
え?
「いや、今になって思えば何で四つ葉のクローバーとか言ったのかしらね?」
「さ、さあ…」
「とりあえずそれはもういいわ。とりあえずお腹が空いたからご飯にして頂戴」
「で、でもこれは…私の苦労は…?」
お嬢様は振り返って答えた。
「捨てるか、フランにあげるかすればいいんじゃない? あの子なら多分大喜びするわよ」
お、お嬢様…苦労して取ってきたのにそれは無いですよ…
「とまぁ、こんなことがあったわね…」
咲夜が語り終えると鈴仙が慰めの言葉をかける。
「それは…大変でしたね…」
「ええ、せっかく取ってきたのに…」
そう言って肩を落とす咲夜。
藍は苦笑しながら言った。
「まあ、あそこの主は気まぐれで有名だからな…」
「そうですね。面白そうだからって理由で何か事件を起こしたりしますし…
それでは次は藍さん、お願いします。」
「え、私なのか?」
藍は少し戸惑った顔を見せた。
「ええ、そうですよ」
鈴仙は藍を見ながら答える。
「そうか…それじゃあこんなのとかどうだろう」
「らんー…」
あの声は…
私は台所から飛び出して紫様の寝室へと向かった。
「どうしました?」
布団の中でまだ横になっている紫様の近くに座り込んで聞いてみる。
「起こしてー…」
…はい?
「今なんて言いました?」
「だから起こしてって言ってるの」
とりあえず私は無言で紫様を起こしてやった。
「ありがと…」
紫様はまだ半分寝ぼけているようだ。
目を何度もこすっている。
「それじゃあ私は料理に戻りますので」
そう言って私はまた台所に向かった。
それから手早く料理を済ませると配膳を済ませていく。
さて、これで料理は出来た。
ちなみに橙は外に出かけていったので今日は私と紫様の二人分の料理が置いてある。
「紫さまー、朝食が出来たのでこちらにおいでくださいー!」
そう叫ぶも返事は返ってこなかった。
…もしや。
「やっぱり…」
寝室に入ってみると紫様は上半身を起こした状態で眠っていた。
「紫様! 起きてください!」
体をガクガクと揺らして起こす。
「ん、何…?」
「朝食が出来ましたよ! こちらに来てください!」
「…運んでいって」
この人は普段は本当にぐうたらだな…
ビシッと決めるところはビシッとしてくれるのだけれど。
「わかりましたよ…」
私は紫様の腕の下に手を入れて抱えて居間へと連れて行く。
…あまりこういうことは言いたくないのだけれど、重い。
また太りましたね、紫様…
「はい、着きましたよ!」
「食べさせて…」
少しずつ頭に血が登ってくるのがわかったが、ここはひたすら我慢だ。
「はい、どうぞ」
私は紫様に食事を食べさせてやる。
…まるで赤ん坊の世話をする母親か、年老いた母を介護する子供のようだ。
「はい、これで終わりです。今日も仕事がたくさんあるんですからしっかりと起きて…」
私の言葉はそこで遮られた。
「…私、まだ寝るから仕事、お願いね」
「ちょ、ちょっと!?」
「それじゃあ、また寝室に連れて行って…」
あぁ、もうこの人は何でこんなにものぐさなんだろう…
そう思いながら私はまた紫様を寝室へと運んで行った。
「うん、こんな感じだな」
ため息をつきながら話を終える藍。
「紫さんって普段こんななのね…」
咲夜は驚いている。
「うちの姫様に似てるような感じがしますね」
鈴仙は藍の境遇がわかるのか、小さく笑っていた。
「まったく、あのあとに一人で仕事しなくてはいけなかったし、大変だったよ…
どうやったらあそこまでぐうたらになれるのか…」
「あはは、それでは次は…私が話しましょうか」
妖夢はそう笑ってから語り始める。
私はいつものように庭の手入れをしていました。
「妖夢、ちょっといいかしら?」
「あ、幽々子様。なんですか?」
「そろそろお昼にしない?」
おっと、そういえばそろそろ昼食の時間でした。
「そうですね。それじゃあ今から作りますのでしばらく待っていてくださいね」
私は道具を片付けてから急いで台所へと向かう。
「できるだけ急いでねー」
後ろからそう声をかけられた。
「はい、わかりました!」
それからすぐに料理を作る。
これならば幽々子様も満足してくれるはずだ。
「お待たせいたしました」
「待ってたわよ」
幽々子様はすでにテーブルの前で座っている。
私は幽々子様の前に食事を降ろした。
「いただきます!」
私が座るより早く幽々子様は食事に手をつけていた。
「ゆ、幽々子様…まだ私が食べる準備できていなかったんですけど…」
私はそう言ったが今の幽々子様には聞こえていないみたいだ…
「とりあえず私も早く食べ終わって仕事に戻らないと」
私はゆっくりと料理を食べ始めた…
私も幽々子様も食事が終わったことを確認してから食器を流しに持っていく。
「それでは私は仕事に戻りますので何かあったら声をかけてくださいね」
「うん、わかったわ」
幽々子様はお茶を飲みながら答える。
さて、仕事に戻ろう。
剪定用のハサミを手にとって庭の木の枝を刈り取っていく。
…そんな作業を始めてから1時間くらい経ったときだったかな?
「ようむー」
「あれ、幽々子様、どうしました?」
「お腹すいた」
…またですか。
「戸棚に羊羹があったはずなのでそれでも食べてください」
「ありがとうね、それじゃあ頂くことにするわ」
そう返して台所へと向かう幽々子様。
「…あ、そういえば羊羹はたくさんあるけど一つだけにしてくださいって言うの忘れてた。
ま、さすがの幽々子様でも全部は食べないかな…」
ええ、さすがに羊羹すべて食べつくすのはさすがの幽々子様でもしない…
そう思っていた私が甘かったです…
仕事がやっと終わってから、私も羊羹を少しもらおうと思いました。
「仕事も終わったしお茶にしようっと」
私は鼻歌を歌いながら戸棚に向かいました。
そしてと棚をあけたときに見たんです…
たくさんあった羊羹がすべて無くなっているのを…
「え!?」
そ、そんな…買い置きしてあった羊羹が…
「ゆ、幽々子様!?」
そう叫んで居間に飛び込んだ私が見たものは満足そうな顔をした幽々子様と積み重なった羊羹の空き箱でした…
「あら、妖夢。羊羹、おいしかったわよー」
「幽々子様…あの羊羹、1週間分の羊羹だったんですよ…」
「そうだったの? でも…」
「でも…なんですか?」
「また買ってくればいいのよ」
私はそこで一瞬だけ意識がとんだ。
「も、もう羊羹を買えるだけのお金なんて残ってませんよ!
あの羊羹もしっかり計算した上で買ってあったんですから!」
「そうだったの…それじゃあ今月一杯、お菓子は…」
「ええ、ありませんよ」
「えー! お菓子が無い生活なんて耐えられないー!」
そう叫んで騒ぐ幽々子様。
彼女を落ち着かせるのにはかなりの時間を要しました…
「…なんか大体の予想は出来る展開だったわね」
「うんうん」
「確かに…」
咲夜、鈴仙、藍の3人はそう頷きあっていた。
「な、なんでですか!?」
「だって…」
「妖夢が話すときは大体幽々子さんが食べ過ぎた的な内容なんだもの…」
咲夜の言葉を鈴仙が引き継ぐ。
「みょ、みょーん…」
「まあまあ、落ち込むな」
藍は妖夢の肩をぽんぽんと叩きながら慰めている。
「うう…それでは最後に鈴仙さんお願いします…」
「ご、ごめん、謝るから泣かないで!」
鈴仙はなんとか妖夢の機嫌を直してから語り始めた。
「ウドンゲ、頼んでいた仕事は終わったかしら?」
「あ、まだ終わってません!」
私が頼まれていた仕事。
それは師匠の資料の整理だ。
「ふぅ、全く。まだ終わっていないの?」
「いや、終わっていないも何も…」
…これって一人でするには量が多すぎませんかね?
「さすがに多すぎると思うんですけど…」
「しょうがないじゃない。あなたしか働ける人はいないんだし。
それでも手伝って欲しいならてゐにでも頼みなさい。それじゃ、頑張って」
あ、行っちゃった…
しょうがない、てゐに手伝ってもらおう。
「てゐー! 手伝ってもらえないかしら?」
とたとたという足音をさせて、てゐが走ってきた。
「…私が『うん、いいよ』って言うと思ってる?」
「…でしょうね。もういいわ…」
結局一人でやらなければいけないみたい…
目を閉じて深呼吸をする。
「よし、すぐに終わらせるわよ!」
私はさっそく仕事の続きに取り掛かった。
…それにしても多いなぁ。
おっと、いけない。
そんなことを考えたら余計につらくなるわ。
ここは簡単とかまだまだ少ないとか前向きに考えるのよ!
「あー、ほんとにこの仕事余裕だなぁ!」
そう言ってみると少しだけど楽になった気がする。
よし、この調子でドンドン行けば…
「あら、余裕なの? だったらこれが終わったら屋敷の掃除しておいてね」
「え? ちょ、ちょっと待ってください…!」
私の独り言は師匠に聞かれてしまっていた…
うぅ、この仕事だけでも大変なのにさらに掃除まで追加されちゃうとは…
資料の整理を何とか終わらせた私は心の中で泣きながら掃除道具を手にとっていた。
「はぁ、何でこんな目に…」
ぼやきながら掃除を始める私。
そこへ…
「あ、鈴仙! 凄いもの見つけたよー!」
「凄いもの?」
てゐの声が聞こえてきた。
声のしたほうに目をやるとてゐが手を振っていた。
「鈴仙、こっちにきてよー!」
「一体何が…?」
私は掃除道具を置いててゐのほうに駆けていく。
すると…
「うお!」
落とし穴に落ちた。
「くくく、見事に引っかかったね!」
「し、しまったぁ…」
忘れていた。こいつは嘘をよくつくことを…
「それじゃあ頑張って出ておいでー!」
少しずつてゐの笑い声が遠ざかっていく。
「と、とにかく早く出よう…」
落とし穴は意外に深く、脱出は困難を極めた。
落ちてから数十分後。
私は何とか脱出することに成功した。
「くっそー、てゐめ…覚えてなさいよ…」
服についた汚れをはたきながらそんなことを呟くと、目の前が少し暗くなった。
…嫌な予感。
私が恐る恐る顔を上げると、目の前にはにっこりと笑った師匠がいた。
「…ウドンゲ、ここで何をしているのかしら?
掃除はまだ終わってないわよ…?」
「い、いや、師匠、これには深いわけがあって…」
「問答無用。さて、お仕置きしなくちゃね」
や、ヤバイ…これは非常にまずいわよ…
そう考えた時にはすでに私は師匠に襟をつかまれて引きずられていた。
「ふふふ、今日はどういう目にあわせてあげましょうかね…?」
「ひぃぃぃぃ!」
そのまま私は数日間寝込んだ…
「…終わり…です…」
鈴仙は元気の無い笑いを浮かべていた。
「…壮絶すぎるわね」
「ああ…」
「さすがはナンバーワン苦労人の鈴仙さん…」
周りの三人もガタガタと震えていた。
「結局あの日、何をされたのか覚えていないんですよ…
そこがまた怖いです…」
永琳のお仕置き、恐るべし。
「そ、それでは今日の苦労人同盟の集会はこれで終わりにしましょうか…」
「そうですね…」
「何か嫌な終わり方だったわね…」
「そうだな…なんかこっちまで鬱になってくるような…」
四人はそんな会話をしていた。
「それでは、今日もお疲れ様でした!」
妖夢の号令に対して他の三人も後に続いてお疲れ様でしたと言い合う。
「それにしても、私たちがこんな同盟を作っているのに対してお嬢様たちも
『主人同盟』とか作っていたりして…」
「あはは、なんかありそうですね!」
鈴仙は腹を抱えて笑っている。
妖夢も「もしかしたら…」なんて呟いていた。
「しかしまさかそんなことは…」
藍が苦笑しながらそう呟いた時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そんなこと…あったりしてねぇ…」
四人がぎょっとして振り返るとそこにはスキマから顔を出す紫、幽々子、レミリア、永琳がいた。
「し、師匠!?」
「お嬢様まで!?」
「紫様…!」
「なんで幽々子様や皆さんが!?」
四人は驚いて口々に叫んだ。
「咲夜のいう通りよ。私たちもあなたたちのような同盟を作っていたのよ…」
レミリアはクククと笑いながら言った。
「あ、ちなみにリーダーは私ね」
紫は笑いながら手を振る。
「まさか妖夢たちも作っていたとはねぇ」
幽々子は口に手を当ててふふふと笑っている。
「さて、みんな。
それよりもこの子達にどういうお仕置きをすればいいか思いつくかしら?」
永琳はニヤリと笑いながら三人に聞いた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何でお仕置きされなきゃ…」
叫ぶ鈴仙に対して永琳はこう答えた。
「だって…わたしたちのことを悪く言っていたでしょ?」
「うっ…」
永琳の一言に全員黙り込んでしまう。
「それじゃあ、期待して待ってなさいね。今からみんなで話し合ってくるから。
あ、逃げようとは思わないことね。どこにいても私にはお見通しだから…」
紫はそこまで言うとスキマを閉じて消えてしまった。
「…これってまずいですよね?」
「ええ…非常にまずいわよ…」
「うぅ、師匠から何をされるのか考えただけで失神しそうです…」
「紫様もああ見えてとても厳しい人だからな…私も何をされるのか…」
四人はひそひそと会話しながらぶるぶると震えていた。
このあとの四人に何があったのかは本人たちとお仕置きをした人たちしか知らない…
一つ分かることは…四人とも数日間寝込んだ…ということくらいだろうか。
おはようからおやすみまで、付きっきりで!
一つだけ異議申し立てをしますが……一番の苦労人は、この場に居ない人物ですよ。
クィーン・オブ・苦労人!! 涙目の似合う幻想郷美人ランキング一位の、美鈴を忘れてもらっちゃあ困るなぁw
とても楽しく読ませてもらいました。
ナズとか椛とかルナサとか、まだまだ苦労人は沢山いるので会員が増えるよう願ってます!
それと前回のコメントで、アナタの作風のパターンについて少し触れましたけど、あくまでも話の展開の仕方についての事で、百合系統そのものについてではありませんし、アナタの百合話が嫌いな訳では決してありません。
誤解させるような発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。
どうかお気になさらず、続けて頂けると幸いです。
書きたい物を書くのが一番です。
前にも書いたのですが、アナタの百合話のセリフまわしや、雰囲気は個人的には大好きです。
>4様もコメントで触れていた通り、台詞廻しは達者ですし、お話も最後までスラスラと
読めました。ただ、苦労人達はネガティブに、ご主人様達は最後まで悪い所が目立つままに、
という注釈が入りますけどね。
当然作者様も東方キャラへの愛情がおありなのでしょうが、残念ながら今回のお話ではそれが
あまり見えてこなかったかな、と私は感じました。
美鈴を忘れていた・・・
いろいろと勘違いしてしまってすみません!
次回はまた百合を書くと思いますのでご期待ください^^
愛が足りない・・・
もう少し表現を細かくしたほうが良かったでしょうかね・・・
アドバイスありがとうございます!
単純に弱い立場の者が強い立場の者に虐められるというだけで終わってしまっては、キャラ虐めにしかなっていないとゆーか。
にしてもスキマ便利ですねー。
苦労人同盟ってのがモロかぶりで、内容的にも共通点はあるけど、二次創作では同じテーマを扱ったり、ネタがかぶる事なんて日常茶飯事ですしw
一発物か続き物かのスタイルの違いもあるし、ストーリー展開とかオチとかも異なりますからセフセフ。
二次での苦労人設定というのは多いんですが、うどんげはほぼ公式でこんな感じですからね・・・
他には閻魔様とかも苦労してそうです。
やはりこんな感じのネタは誰もが考え付きますよね^^;
でもネタ被りはしょうがないといってくださったおかげで気持ちが楽になりました。
ありがとうございます。
それにしても幻想郷って意外と苦労人多いですね・・・w
もちろんセーフですとも!!!
これからも頑張ってください!!
主人同盟はもしかして「この前はこういう感じであの子を弄ってあげたら、こんな反応しちゃって可愛かったわ」とかいうのを話し合ってるのかもね
かなり前の作品ですが、その作者様は、ご自分の初期の頃からの別の作品の設定を引き継いでお話を書く手法に優れていて、とても印象深いので記憶に残ってましたw
こういうネタは一発物でも充分面白いですが、あちらの場合は初期の作品から読んでいるとニヤリとできる場面が多く組み込んである分、お話の深みがでますね。
双角様とは作品のスタイルが異なりますが、未読であれば、最初から読んでみるのも良いかも知れません。
ありがとうございます^^
これからもがんばっていきたいので応援よろしくお願いしますね!
>>ずわいがにさん
それはありそうですよねw
何だかんだ言って主人のほうは従者たちを可愛がっているんですよw たぶん。
>>29
つまり続きもの的な感じであると・・・
いろいろ凄いお方ですね・・・