Coolier - 新生・東方創想話

夏、帰る場所底1

2010/04/27 14:48:12
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注意オリキャラと設定が出てます。一部、作者の趣味が入っています。それとボリュームがすごいのでお茶やコーヒー、甘いお菓子等があれば良いかもしれません。作者的には緑茶と饅頭でさわやかな曲がお勧めです。




激務的な実習の中の休み、一時帰省を考えていたが、マスターからの連絡で紫さんからのバイトの要請を受け実家に帰ることをあきらめた。指定された時間前にカフェ三笠に着き、マスターが最近研究しているコーヒーを1杯貰い待っているところだ。
「ずいぶんと早めに来たな」
「ええまあ」
マスターの問いかけに軽く答え一口、コーヒーの違いを解るという段階まで来ていないため、評価することができないが、苦味が少なく飲みやすい。芳醇な香りが口を通して鼻へ通る。





30分前幻想郷守屋神社
「それでは、行ってまいります」
「ああ、気をつけてな」
神奈子様がおっしゃり、
「早苗、お土産たのむよ~」
諏訪子様はお土産を求めた。
「わかっていますよ」
私は答えた。今日はいつもの風祝の服装ではなく、キャミワンピースと大きめの帽子。外の世界から持ってきた、一番お気に入りの服。
「久しぶりに、その姿見るけど合っているな」
「ほんと、良い感じね」
「ありがとうございます」
いつにもまして笑顔が自然と出る。ただ、これが褒めてもらった嬉しさなのか、それともこれから帰るのに言い知れない恐怖をごまかすための物か。
「恐がることはないさ、両親は何時だって子供を迎えてくれる。どんなときでさえも」
「そう、恐がることなんてちっともないよ」
どうやら、2神は私の心中を察したらしく、勇気の言葉を言ってくれた。
「わかりました、加奈子様、諏訪子様、それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
「お土産、たのむよ~」
「わかっていま~す」



早苗が荷物を持って飛んでいく。一旦博麗神社に行ってから、向こうに出るそうだ。
「いっちゃったね」
「そうだな」
「どんな顔して帰ってくるんだろうな、神奈子」
「さあ、帰ってこないと分かんないさ、諏訪子」
二人で、早苗が飛んでいった空を見ている。いつもと変わらないが、何か少しだけ変わった空気が流れる。
「そういえば、」
「うん?」
「紫がなんか、今日早苗の代わりの人連れてくると言っていたな」
「え、食事に関してはお梅さんがやってくれる手筈になっているのに」
「誰連れてくるだろう」
「さあ~て、でも今日はふもとの神社で宴会だったはず」



博麗神社
「うちで、待ち合わせというのは困るんだけどね」
「はは・・・、すいません、でも紫さんがここを指定してきましたもので」
「とりあえず、まあいいけどね」
霊夢さんがあきらめた口調でお茶を一杯飲んだ。
「早苗、あなたその服もしかして」
「ええ、外の服です」
「へえ、結構似合うっているわね」
「ありがとうございます、もしかして外の服に興味あるんですか?」
「まあ、あるけど、ただ」
嫌なことを思い出しているような顔に霊夢さんがうなる。
「ただ?」
「以前外来人を外に帰した時に、残していったファッションカタログを、何となく見ていた時に紫が来て」
「来て?」
「ファッションショーしたよのね~、あの時の霊夢かわいかったわ~」
「迷惑よ!私はあんたの着せ替え人形か!」
紫さんが急にスキマから表れ、その一言に霊夢さんが激昂した。
「う~ん、超お気に入りよ」
「もう勘弁して」
「はは・・・」
霊夢さんに紫さんが抱きつく、もう私は笑うしかなかった。
ちょっとすぎてから、霊夢さんから紫さんが離れた。霊夢さんはぐったりとした表情だ。そして、紫さんが私の方を向き、
「さて、準備できているわね」
「ええ、まあ」
すでに準備万端です。
「一応、向こうでの移動手段とお金の心配はいらないから」
「良いんですか、移動手段はともかくお金まで面倒見てもらえるのですか?」
「ええ、貸しにしとくわ、またお菓子作ったらチャラにするから」
「わかりました」
「それじゃ、行こうかしら。忘れ去られし者の帰還」
そう言い、紫さんがスキマを開ける。空間に穴が開く、その中にあるのは多数の目で恐怖を感じてしまう。先に紫さんがいつも使っているためか迷いなく入ってしまい、私はちょっと迷ったが、一気に踏み込んだ。
「行っちゃったか。さて、宴会の準備をしないと」



紫さんの後について歩いていくと、急にどこかの部屋に出てきた。蛍光灯に懐かしい西暦のカレンダー、ロッカー等が置いてある。外から音楽が流れている、どっかで聞いたことのあるものだと思うけど。
「ここは?」
「外の世界にある私のなじみの店、その一部屋、昔あなたが住んでいた隣の市よ」
「えっ、」
私が昔住んでいた町について、誰にも詳しい事は言っていないはず。大体のイメージで教えた程度で。少し驚いてしまったのを見透かされて
「新聞に書いてあったのよ、あなたの事が。地方紙だからね」
「書かれていたのですか、一体どういう風に」
愕然とした。自分の事が新聞に書かれるなんて。
「落ち着きなさい、そう大きい扱いはされていないし、当時は大きい事故が県内で発生していたから、扱いも小さいものだったわ」
「そうですか」
久しぶりの家、帰ることについて何か、何故か恐かった。2柱に大丈夫と言われたのに。加えて新聞に載っているということを知り、血の気が引くのを感じ得体の知れない恐怖が私を襲う、が
「冗談よ」
「えっ、」
またしても、紫さんの発言に驚愕させられてしまった。
「どうしてですか」
「新聞で失踪関係が扱われる場合、事件性の有る可能性が高い場合か、有名人しか扱わないからよ」
「本当ですか?」
睨み気味で紫さんの顔を見てしまう。
「そう睨まないでよ、顔にしわが寄るわよ。気になるのならここのマスターとバイトの塚越君にでも聞いてみたら?二人ともまじめな性格よ、嘘をつくようなタイプじゃないし」
「わかりました。聞いてみます」
「それでよろしい」
聞いてみよう、本当に新聞に載ったかどうかを。



時間になったので、とりあえず立って待つことにした。
「時間ですね、マスターごちそうさまでした」
「感想は」
「香りがなんとも言えないですね」
とりあえず、第一印象を言うことにした。突っ込まれたら答えられない。
「他には?」
「う~ん、まだ味比べの技量は無いので無理です」
「そうか、常連さんに聞いてみるよ」
「その方が無難ですね」
そんな話をしている最中にガチャ、といつもの部屋のドアが開き紫さんともう一人、初見のお客様が入ってこられた。
「「いらっしゃいませ、ようこそカフェ三笠へ」」
マスターと僕の声が重なる。



紫さんの後について、部屋を出るとコーヒーの香りが鼻に流れ込み、ジャズだろうか、部屋全体に流れている。カウンターには40代位の人と私と同い年位な人がいる。
「「いらっしゃいませ、ようこそカフェ三笠へ」」
急に声をかけられ少し驚いてしまう。
「おはよう、マスターに塚越君、今日はよろしくね」
「おはようございます紫さん、こちらこそよろしくお願いします。えっと後ろの方は?」
一歩前に出て
「東風谷早苗です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、僕はバイトの塚越琢磨です」
「マスターの道上弘だ、よろしく。紫さん、試作のコーヒーどうですか?」
「いただくわ」
そう紫さんが言って、近くの席に座った。私も反対側に座り、塚越さんがメニューを持ってきてくれた。それを開くと懐かしい名前が数多く並び帰ってきたことを実感する。
「東風谷さんはどうします?」
塚越さんが、紫さんが注文したコーヒーを持ってきたようだ。
「えっと、アイスティーストレートでそれと」
「それと?」
「私の名前、早苗でいいわ、東風谷だと言い難いでしょ」
「そうですね、わかりました。それでは早苗さんと呼ばせてもらいます」
「お願いね」
「はい、それから僕の事も琢磨で呼んでくれて良いですよ」
そう言い、彼はカウンターの中に入って行った。その様子を目で追っていたら、
「好みのタイプ?」
「ち、違います」
急に紫さんが声をかけてきた。
「あら、そう。でも彼、結構貴女と同じ具合にいじりがいが有って面白いわ」
「そうですか」
となると、私と同じ真面目なタイプなのかな。ただ、私より落ち着いている雰囲気がある。
「お待たせしました。アイスティーと、私からのクッキーのおまけです」
話している間に、琢磨君が持ってきた。
「ありがとうございます」
「いえ」
塚越君がカウンターに戻り、紫さんはマスターがいる方に移って何か話をしているようだ。とりあえず久しぶりのアイスティーを一口。
「あれ?」
この味、高校の時に何度もお世話になった味のような気がするのだけど・・・
「琢磨君、これってもしかして」
「たぶん早苗さんの思っていると通りの物ですよ」
「やっぱり」
あの紅茶でしたか、午Oの紅茶。
「あったかい方なら、茶葉は少しあるから淹れたてを出すんだけどね」
「そうなんですか」
「まあね、僕が大学に入ってからそういうお店何軒か見たことあるし」
皮肉っぽく答えてくれて。
「あれ、大学生なんですか?」
「そうだよ、市内にある月吉野福祉大学の3年生」
聞いた事があるような無いような大学名だった。
「月吉野福祉大学ですか?すいませんちょっと聞いたことが無いような。私隣の八剣市に住んでいたんですけど、月吉野市にある大学といえば、国立の繊維学部があったような気がするんですけど」
「あはは・・・、まあ某ゼミの文系私立の偏差値は50以下だからね、伝統はあるけど。それも県内の福祉関係の職に対してのパイプは結構強力だから実習や就職には強い面もあるから悪くはないけどね」
琢磨君が自分の大学についての特徴を話してくれた。
「そうなんですか、私は考古学について学べる大学に行こうかなと考えていたんで、県外の大学に進学するつもりでしたから」
「考古学ね、小学校の時にあこがれたけど、色んな意味で無理そうだったから僕はやめたな」
「ふ~ん、そう言えばいま大学3年生ですよね」
「そうだけど、どうかしたの?」
「いえ、ちょっと気になったもので」
同じ位と思っていたけど、年上とは。
クッキーを一枚つまむ、紅魔館のメイド長が作るクッキーよりは味が一段くらい落ちるけど、美味しい。



20分後
「さて、塚越君」
「了解です。エンジン温めてきます」
そう言って琢磨君が出ていく。
何やら動き出したようだ、そういえば買い物に行くと言っていたような。
「えっと、どこに行くんですか紫さん」
「近くのデパートよ」
「デパートですか」
また、懐かしい単語出てきた。
「本当はちょっと遠いモールにでも行こうかなと考えていたんだけどね」
「すいません、私のために」
少し申し訳ない気持ちになった。
「別にいいのよたまには近い所でも、それに今日はマスターのコーヒーを吟味したいから」
「そうなんですか」
この妖怪、どれだけコーヒーが好きなんだか。外から甲高いエンジン音が聞こえる、どこかで聞いたことがある気がする。

少し経ってから、琢磨君が戻ってきた。
「準備できましたので、車の方へ」
「わかったわ、マスターちょっと出かけてくるわ」
そう言って、紫さんが席を立つ。そういえば、普段の服装じゃなかった。
「わかりました、戻ってくるまでに少しパターンを用意しておきます。塚越、粗相のないようにな」
「了解です、それじゃあ行きましょうか」
「そうね」
「はい」
私達は外に出ていく。荷物は置いていくことにした。じめっとした暑さが肌にまとわりつく幻想郷から温暖化の進んでいる外の世界に帰ってきた事を改めて感じる。
「車はトレノ?それともインプレッサ?」
「インプレッサですよ、今日は暑いですし」
階段を降りるなかで、前からそんな会話が聞こえる。そういえばインプレッサといえば、
「インプレッサに乗っているんですか?」
「一応、僕のではなく紫さんがマスターのために買った物なんだけどね」
「そうなんですか、そういえばWRCでスバルは今どうなっていますか」
ラリーが好きな、先生が中学にいたため私自身興味を持ち始め、BSで見ていため気になっっていた。琢磨君が少し驚いた表情をした。
「珍しいですね、女性でラリーが好きというのは。2008年シーズンをもって撤退してしまった。去年起きた、アメリカ発の経済恐慌も有るけど、以前から成績が降下気味でここ数年優勝もできていなかったからね。」
「そうなんですか」
「まあね、ラリー好きなの?」
「はい、お父さんが車が大好きでよくラリーの番組を見ていたので」
「へえ~、僕はサーキットの方が好きだね。スーパーGTやF1、Fニッポンとか。ラリーも大学に来る前まではテレビで見ていたけどね、はい着きましたよ」
ガレージに車がたくさん並んでいる。一台が静かにエンジンをアイドリングさせ待っている。スバルのコーポレイトカラーでブルーマイカでライトの所が丸目になっている。
「気付いたと思うけど、これは元ラリー車の開発を行っていた所が開発したものよ、本社の倉庫に眠っていたから、格安で買ってきたのよ」
紫さんが簡単にこの車について簡単に説明してくれた。
「ついでに言うと、マスター今まで隣のトレノに乗っていたんだ。まあこの車が人気になったネタを知っている人は少ないと思うけど」
塚越君が言った方に目を向けると一台の車があった。これがトレノという車なのかな?白黒で、何かで見たことあるような気がするけど。
「それではどうぞ」
「ええ」
「はい」
琢磨君の呼び声で私と紫さんは車の後部座席に入ると、エアコンがしっかりと効いていてちょっと寒い気もした。シートはソファーみたいに柔らかめだった。
「えっと、温度の方は大丈夫ですか?」
運転席にいる塚越君が確認をしてくる。
「ちょっと弱めてくれないかしら」
「そうですね、寒すぎるわけではないのですが少し弱くしてください」
「わかりました、ちょっと弱めますね」
そういい、琢磨君が温度の所をいじっている。
「このぐらいで良いですかね」
車内の温度が丁度良くなった。
「ちょうどいいかな」
「そうですね」
「それでは、行きますか」
そういい、車が動き出した。久しぶりに聞く機械が発する音はけたたましく、五月蠅いけどそれでも力強い音だった。



20分後
私も知っているとある大手のデパートに着いて、今は駐車場に車を止めたところだ。
「着きましたよ」
「ありがとう」
「すいません」
そう言い、私達は外に出る。湿ったような暑さが体にまとわりつくが、屋内なので幾分かさっきよりはましだけど。
「中に入りますよ」
その掛け声とともに、私達は店内入口の方に向かった。エレベーターで下に降り、まず紫さんの方の用件を済ます。
「荷物持ち頼むね」
「わかっています」
その後、今度は私の番になった。紫さんの今回は日用品の買い足しで簡単に済んだ。
「久しぶりの買い物だからドキドキするな~」
「好きなだけいいわよ、ただし1万超えたら5千円事にお菓子作りの回数アップよ」
「・・・・注意します」
くぎを刺された。
「久しぶりに来たけど、色々と取り扱っているのよね」
手始めに、日用品を買うことにした。調味料を中心に、パン粉やバニラエッセンス等の洋菓子の材料を多めに買う。向こうでお梅さんと一緒に洋菓子を作るために。あと、ホットケーキミックスも。
「残り、7000円ね」
一度レジを行い、残額を確認。次に洋服の専門店へ
「ジーパンとスカートどっちがいいかな」
「スカートの方がいいと思うよ」
久しぶりの服選び、今回は服のセットを増やすより質の方を優先することにした。
「迷うわね」
「いざとなったら、少し代金出すよ」
「ありがとう」
琢磨君の助け舟で少し余裕が出た。
「まるで新婚さんね、羨ましいわ」
自分の用事が終わってしまい、暇そうにしていた紫さんにちゃちゃを入れられた。
「紫さん、僕はいつもの荷物持ちとしての仕事のつもりでいますけど」
琢磨君が、平静を装っているようにしているけど、
「あれ?そうかな、何時もよりちょっと嬉しそうに見えるのは気のせいかしら」
にやにや顔で突っ込まれた。
「気のせいだと思います」
「そ~お~」
「そうです!」
耐えきれなくなった琢磨君が顔を真赤にして答える。
「ふふ、本気になっちゃって、かわいいんだから」
「・・・・・」
琢磨君が顔を赤くして頭を下にしている。これが紫さんの手段の一つなのか。呆け目に見ていたら急に紫さんが顔を向けて、
「そういえばあなたも、嬉しそうに見えるのは気のせいかしら」
急にこちらに話がこちらに向けられた。
「それはまあ、・・・・久しぶりに普通の人と話せるものですから」
ありのままの感想を言うことにした。その方が相手の答えも予想がつきやすい。
「あら、そう」
見事にスルーされた、ある意味安心したけど。そのまま買い物を続け、琢磨君の言葉に甘えてもう一着買わせてもらった。
「ありがとうございます」
「紫さんのお客様だから当然のことですよ」
買い物を終え、紫さんが軽い食べ物を買ってくるということで、先に私達は車に向かっている。途中で荷物は琢磨君に持ってもらっている。
「荷物重たくないですか?」
「これくらいならまだ余裕のうちかな」
そう言い、塚越君が荷物を上下させてみた。
「ただ、袋で手が塞がっているからカギ開けるときは頼みます」
「それくらいお安いご用です」
エレべーターで車を停めた階まで上がり、車に向かう。
「あの、私が消えたことが新聞に乗っているって紫さんが言ってたんですけど、本当ですか?」
気になっていることについて、聞いてみることにした。
「え、消えたというのは?」
「えっと、私2年前に隣の市から別の場所に引っ越したんです」
「え~と、引っ越しだよね?引っ越しでは新聞に乗ることはないと思うけど・・・もしかして家出のほうかな?それなら警察が動くと思うけど」
ストレートに聞いてしまい、琢磨君が混乱しているようだ、失敗したかな。
「まあ、そういう形にはなりますね」
「それで、紫さんが新聞に乗っていたと言ったのは」
「たぶん冗談だと思うんですけど、気になったもので」
「う~ん、大学の図書館に行けば古い新聞をまとめたのがあるから、それを調べれば答えが出てくると思うから」
「そうですか、ありがとうございます」
とりあえず、答えを待つことになった。この様子だと、多分新聞には載ってないと思うけど、まだ心配。とか思いつつ、車が置いてある所に着いた。
「ちょっと、トランク開けるから荷物頼みます」
「はい」
軽いほうの荷物を渡され、琢磨君がトランクを開ける。ちょっと視線を周りの車の方に向けてみたら、丁度、通りすぎた車のドライバーが目に入った。
(あれ?)
時間が止まったかと思った。一瞬、目に写ったそのドライバーは、とても懐かしい顔だった。
(まさかお父さん?)
「どうかしたの?」
琢磨君の声で、現実に戻された。
「いえ、何も」
慌てて取り繕う
「う~ん、ならいいんだけど」
その後、紫さんが軽食を買って車に戻ってきて、この県の名産である蕎麦。しかも有名人の御用達のお店に。



私達がカフェ三笠に戻った時、さっき見た車が上の駐車場に止まっている。ナンバープレートを見たら、実家の方の陸運局の名前が書いてあり、書いてある数字も実家の物だ。
(じゃあ、さっきのはやっぱりお父さん!)
体が急に寒くなるのを感じる、恐怖によるもかもしれない。でも、私にべったり・・・もとい優しくしてくれた、なら平気かも。お母さんは・・・要点だけ注意して終わりかも大学の先生だし。
(大丈夫、加奈子様と諏訪子様が言ったとおり、恐がることなんて何もない)
自分を奮い立たせ、店の中に入った。
「早苗~」
「きゃ」
いきなり、抱きつかれた。この匂い・・・・はお父さんの匂いだ。
「うお~、お父さんは、お父さんはお前の事が心配で心配でしょうがなかったんだ~」
「心配なのは、わかったからちょっと落ち着いて~」
締め付けがきつくなった。落ちるかも・・・・
「早苗のお父さん、ちょっと落ち着いてください」
「そうよ、自分の子供を殺すつもり?」
「そうだった」
締め付けがゆるくなった、けど意識がとうのいてしまった。


あれ、天井が見える・・・そっか気を失ちゃったのか。
「気付いた?」
塚越君が団扇を仰ぎながら、こっちの方を向いた。
「どう気分は」
「あんまり、良くないかも」
ちょっと、頭痛いかも。ふと、カフェオレの香りが漂ってきた。
「はい、カフェオレ。これ飲んで落ち着いて」
「ありがとうございます」
塚越君から渡されたコーヒーカップのカフェオレを一口もらう。体に温かさが広がり、気持ちが落ち着く。
「お父さんの方は?」
「今紫さんが、君が行った理由について説明している」
理由について、紫さんには話をしていないはず。どうして知っているんだろう?
「早苗さんのお父さん呼んでくるけど、いいかな?」
「ごめんちょっと待っていてくれる」
「了解」
気まずい、雰囲気を何とかするため、昔見ていたアニメの話をしてくれた。琢磨君が意外と少女っぽいの見ていたのはおどろいた。けれど心の準備はできた。
「私のお父さん、呼んできてもらってもいい?」
「ん、ああ」
そう言い、琢磨君が出て行った。少し心細くなったけど、すぐ戻ってきた。お父さんが私の前に座り、琢磨君は出ていった。
「今日お父さんがここに来たのは紫さんが手紙を送って来たからであり、そしてさっき早苗が向こうに行った理由も聞いた。うちの神社の2神のために行ったんだって」
私は頷く、それが事実だったから、紫さん色々手配してくれたんだ。
「一言言ってくれれば、早苗お前一人で行かせることなかったのに」
「えっ、どういうこと」
怒られるのかと思ったが、意外な言葉から話はじめた。
「相談してくれば、一緒に行ってやったのに」
「どうして?」
理由が分からない、
「うちの神社の分社は地域の子供の遊び場の中心、活発な子供たちがいれば神様だって自然と遊びに出てくる。信じられないかもしれないがお父さんとお母さんだって2神とは遊んだかもしれない、神様だってことは知らずに。だから神様は実は身近にいた、この神主の職に就いているのもあるが神様の存在を受け入れることはできる。だからあの2神は、友達みたいな関係は変かも知れないけど、でも困ったことがあれば助けるそれだけのことさ」
ちょっと、考えてから
「えっと・・・つまり、昔、神奈子様と諏訪子様と遊んだことがあって、相談すれば、家族ごと向こうの世界に行くことになったかもと?」
「そうなるかな、・・・・でもお母さんは残ると言うかもしれないけど」
「そうだね、うちのお母さん物理学の超研究者だからね、研究ができなくなったら行かなそうだし」
私のお母さんは、工学系の学者でその筋では有名であり非科学的な幽霊や神様を扱っているお父さんとよく結婚できたものだ。しかも学会が近いと大学に泊まる日々が続き、その間はお父さんがご飯を作ってくれていた。
「それでどうするつもりだ、この後家に来るだろうその為に2神が時間をくれて帰ってきた。驚かないように時期を決めて」
まるで、神奈子様と諏訪子様の考えを知っているように言った。
「それは、帰るよあたりまえじゃない・・・ごめんお父さん、ちょっと泣いてもいい?」
「いいさ、お父さんの胸の中でなくかい?」
「いいよ、一人で泣きたい」
「そうか、じゃあお父さんは外に出ているから泣き終わったら来てな」
「わかった」
そう言い、お父さんが出ていく。こみ上げる、感情を抑えられず思いっきり泣いた。胸につまっていたものが消えるまで泣いた。


早苗さんが部屋から出てきた、どうやら落ち着いたようだ。泣き声がしたから心配したけど、早苗さんのお父さんの話を聞いて納得した。同じ状況になれば、僕も泣くかもしれない。
「すっきりしたか」
「ええまあ」
泣き終わったのか、清々しい顔で部屋から早苗さんが出てきた。
「それで、実家には帰るのでしょ?」
「帰りますよ、そのために来たんじゃないですか」
「それもそうね」
紫さんが早苗さんが実家に帰るかどうかの確認したようだ。その動きを見て早苗さんのお父さんが
「それじゃあ、私達はこれで帰らさせてもらいます」
「そう、迎えは2日後、送り盆の3時くらいに彼が迎えに行くかから」
そう紫さんが言い、僕を指した
「えっと、どこで待ち合わせにします?できるだけわかりやすい所でお願いしたいのですが?」
一応、地図で隣の市のページを開いておいたのを見せる。
「それじゃあ、ここでいいかな?道なりでもあるし」
そう言い、地図の上の一点を早苗のお父さんがさした。ここは、一度行ったことがあるから何とかなるかな。
「わかりました、ここにお迎えに上がります」
「お願いね」
「ええ」
確認を終えた。
「それじゃあ、2日後に」
「おねがしますね」
東風谷親子が確認し
「はい」
「久しぶりの、実家楽しんできなさない」
僕と紫さんが言い
「またのお越しをお待ちしています」
最後にマスターが閉めた。
「それでは、失礼します」
「失礼します」
東風谷親子が店を出て行った。
「行きましたね」
「そうね、塚越君」
「はい?何でしょうか紫さん」
「すまないけど、このメモの買いも頼んでいいかしら」
顔を向けそう言い、一枚のメモを取り出した。内容は酒(日本酒と麦酒)とつまみ、それとアイス。
「これらを買ってくればいいのですね?」
「頼むね、お金はこれから出してくれればいいから」
「はい」
財布を渡され、アイスボックスをマスターから借りそして車のカギも。甲高い音を残して出行く。
まず酒専門のお店に行き、つまみとビールを購入。日本酒は地酒専門店に向かい、店主のお勧めを購入。最後は大型店でアイスを購入。



90分ほどの買い物となり、カフェ三笠に着いたのは4時前だった。
「買ってきましたよ~」
「ごくろうさま」
入ってきて早々に紫さんがねぎらいの言葉をかけてくれた。マスターは新しいコーヒーのブレンドに収穫を得たのか、少し顔が綻んでいる。
「荷物はどうすれば?」
「そうね・・・」
紫さんが少し考え込む。
「塚越君、準備はできているよね」
「ええまあ、どっかに泊まりに行くという件ですよね」
「ええ、あなたにとってはとても非日常の世界」
妖しい微笑みで、答えてくれる。
「非日常のですか、もしかして海外ですか?」
非日常この言葉を聞くと思い当たるのが、個人的に海外だ。特にベネチアとかあと北欧。
「ふふ、国内だけどちょっと違う場所よ」
「国内なんですか?日本に非日常の場所はなかったような」
旅行は好きだが、旅先に非日常を感じたことはない。あるとすれば、朝の伏見稲荷か。本気で異世界に行ってしまいそうと感じてしまった。
「それが、あるのよ」
「どこにあるのですか?」
「秘密、さあ準備して」
「はあ」
言われるがままに準備といっても、どでかい登山用のバックに宿泊セットは準備済みなので、休憩室に取りに行くだけですんだ。
「準備完了です」
「それじゃあ・・・その前にちょっと聞きたいのだけど」
「なんですか?」
「あなたは神様や妖怪の存在をどう考えているの?」
「神様や妖怪についてですか?」
「そう」
かなり真剣な顔で紫さんが聞いてくる。
「近くにいるけど見えなく触れられない存在ですかね」
「触れられない存在ね、どいうふうに?」
「見えなく、触ろうとしても触れず。しかし時として支えてくれたり助けたりしてくれる存在ではないでしょうか、あと偶然を発生させてくれる」
「偶然を発生させてくれる?」
「はい、小学生の時海で水中メガネ無しでテトラポットから浜に戻る最中に方向を見失って、それで息が苦しくなり上に向かい、偶然人の浮き輪借りられ助かったことがあったんです、あと小さい時から地域の祭りに関わっているのもありますが」
「そう、合格ね」
「合格?いったいどういう意味で」
「あなたなら、あんまり驚かなさそうね」
「はい?」
意味がわからい。
「さあ、行くわよあなたなら楽しめるわ」
「わかりました」
わからないけど、楽しめるということなら楽しませてもらおう。
「塚越」
「はい」
マスターに呼び止められ、タバコの箱を渡された。
「それを、持っていけ」
「僕、タバコは吸いませんが」
「何、持っていて損はない、ほれライターも」
「・・・・?わかりました」
腰下げのポケットに入れた。

この後、休憩室に入り紫さんが妖怪である事を告げられた、しかも最強クラスということを聞かされた。しかし、それを聞いて考えが変わるわけでもないことを伝えた。その上で、
「僕は年上の方と一緒にいる方が好きなので」
「嬉しいこと言ってくれるわね」
「ええ、まあ」
「それじゃあ、行きましょう、忘れ去られし者が集う世界に」
すっと空間が割れる、夏なのに寒気が体に走る。空間が割れる、昔読んだ漫画になんかこんなシーンがあった。しかし、目の前に見えているのは、目が一杯でしかも周りは血で染まったように真赤だ恐すぎる。やっぱり紫さんは妖怪なんだ。
「どうしたの、行くのやめにする?」
「行きます、ただ・・」
「ただ?」
大人になったとはいえ、恐怖に負けた。流れているはずの無い寒さが体を襲ったから。
「紫さん、手を繋いでもらってもいいですか?」
「ふふ、恐いのね良いわよ、お姉さんの手貸してあげる」
「すみません」
顔をすこし赤くしうつむいてしまう。
「ほら」
立場がなんか逆の立場で繋いでもらった。ここは喜ぶべきなのかそれとも恥じるべきなのか



幻想郷に着き色々と驚きの連続が続いた。
すみません、お待たせしました。
中々、自分で話を進ませることができず、半年ほど待たせる結果になったことをお詫びします。
一応全体は完成しているのですが、文量が多いので分割式で残りは出していきます。
豊香
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