この物語を読む前に、笑顔になってください。
ここ最近で一番楽しかったこと、嬉しかったことを思い出して笑顔になってください。
上手に笑えましたか?
それでは、どうぞ。
あなたは、森の中を歩いていると一人の少女が地面に横たわっているのが目に飛び込んだ。
あわてて駆け寄ってみると、その少女はぜえぜえと荒く息を吐きひどく衰弱しているようだ。
あなたは、その少女に声を掛けて様態を確認してみる。
「あ、あなたは誰ですか?」
あなたは、少女に促されて自らの身分を述べた。
少女は、あなたの自己紹介に返事をしながら、息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。
「そうですか。私は古明地さとり、只の覚り妖怪です」
あなたは、少女に軽く会釈するとどうしてここに倒れているのかを尋ねた。
さとりは、少し自嘲気味に笑って答える。
「ここで、死のうとしていたのですよ。誰にも悟られないように。
私には沢山の家族が居ました。だけど、誰一人として私の死期の事は伝えませんでした。
少し、馬鹿馬鹿しいプライドですけども、やはり私にとっては重要なことなのです」
そこまで言うと、彼女はその澄んだ瞳から涙を零し始めた。
あなたは、そっと懐より手ぬぐいを取り出して彼女の顔を拭いた。
彼女は、そんな涙など意に介さぬように話し続ける。
「ああ、皆は私の事を許してくれるかしら。散々心を読んでおきながら、
私の心は最後の最後まで向こうに伝えることは無かった、この傲慢なご主人様を。
ああ、空、燐、こいし……」
彼女は、うわ言の様にあなたの知らない名前を呟き始めた。
あなたは、彼女の罪悪感が胸に圧し掛かってくるような、そんな心地がした。
「ごめんなさいね、見ず知らずの貴方にこんな贖罪の真似事をして。
結局、わたしはどうのこうの言っても強くはなれなかった。寧ろ弱いからこそ逃げ出した」
あなたは、不意に堪えきれなくなって涙を流し始めた。あなたは、祈るように彼女の右手を握った。
さとりは、あなたの手を強く握り返しながら答えた。
「私のために泣いてくれているのですか?
こんな傲慢な私のために涙を流してくれているのですか?それとも自分のため?」
あなたは、何故だかわからないが君には生きていて欲しいということを懸命にさとりに伝えた。
しかし、彼女はゆっくりと横に首を振る。
「どうやら第三の目が寿命を迎えてしまったようで、もう貴方の心すら読めないのですよ。
今の私には、あなたがどんなつもりで涙を流しているのかわからない。
わからないからこそ、笑ってくれませんか。私は、心が読めない今だからこそ、人の笑顔をやっと純粋な気持ちで見れる。
人は、時に悪意で笑います。絶望で笑います。だけど、今なら……」
さとりは、ごほっと一つ嫌な咳をすると、口から黒い血を吐き出した。
あなたは、慌てて涙を拭いていた手ぬぐいで彼女の口元を拭った。
「もう、物を言う力すら無くなってきました。
少しずつ、五感が黒く塗りつぶされていくような感覚、これが死なのですね」
あなたは、今更ながら彼女を医者に連れて行こうと思い立ったが、既にそれが手遅れであることを悟った。
握っている手からも、少しづつ力が抜けていくのを感じる。
さとりが、不意に貴方の顔をじっと見つめた。そして、一つ何かを呟いた。
その呟きは声として発せられることは無かったが、口の動きで判った。
「笑って」
あなたは、この突然で残酷な死の手向けに必死で笑顔を作った。
それは、悲しみで歪んで涙で濡れてひどく歪なものに違いなかった。
さとりは、あなたのそんな笑顔を見ると、
「ありがとう」
と一つだけ呟いて、その命を遂に手放した。
短いのが残念、もっと読んでいたかったです。
よい作品でした。作者様の今後の成長に期待します。
あと『始めまして』ではなく『初めまして』もしくは『はじめまして』ではないでしょうか
凄いなあ、これ
面白かったです
この短さに詰め込まれたドラマを感じました
彼女の懺悔を二人称の形で表すとは……凄い
あとこの作品の前後の話を作ってほしいです
良い作品だからこそ、もっと読みたい!
そそわに来た貴方を、笑顔で迎えますぞ!
しかし、ペンネームがデビルサイダーを連想させて笑ってしまうま
二人称というアイデアがシンプルで高度でしたが、僕は感動できませんでした
ああそうですね、となったので
が、肝心の内容にあまり引き込まれませんでした。
キャラの死を扱うにしてはあまりにも中途半端な感が拭えません。
しかし、何故か心理テストの設問に見えてくるんですよねぇ。
しかしなんだろう。俺は今、笑顔だ。