「ァリィス、ヲツカァレ」「オツカレー」
「ただいま、上海、蓬莱。」
この日もなんとか無事に試合を終えて、自宅に帰ってきた。
一息ついて、何気なく人形たちを眺める。
・・・そういえば、この子達も試合に参加したのよね・・・
最初は・・・予選・・・
上海人形、蓬莱人形の持ち主であるアリス・マーガトロイドが記憶を振り返る。
-------------------------------------
魔法の森のとある家。
今日は特別な日。
朝からその家の持ち主である、アリス・マーガトロイドは忙しかった。
「ん~、これも違うわね・・・」
そう言って手に持っていた服を脇に置いて、別の服を手に取る。
年頃の女の子だ。
着飾るのも楽しみの一つだ。
だが、別にアリスが着る訳ではない。
彼女の所有する人形が着るのだ。
ベッドに腰掛ける上海人形と蓬莱人形
アリスのお気に入りの人形達。
今日は最も萌えるキャラクターを選ぶというお祭りのフリー枠の予選だ。
もちろんアリスは体の一部とも言えるほど自分のお気に入りな彼女達をエントリーさせた。
そして、エントリーさせたからには枠に入らなければ意味が無い。
アリスは真剣だった。
どうすれば、この子達の魅力を引き出せるんだろう?
悩んでは服を着せ、それを眺めて、また悩んだら脱がし、次の服を着せる。
「アリィス、マァダー?」「アリス、マダー?」
長い時間待たされている人形二人はそんなアリスの悩みなんて気にしない。
お着替えは嬉しいけれど、もう随分時間が経つ。
「あ~ん、もうちょっとで決まると思うから、もう少し待ってて・・・
上海は・・こっちのフリルがたくさんのにしてみようか?」
そう言って上海を着替えさせる。
「ゥン!」
もそもそと、服を脱ぐ上海。
それを隣で見ている蓬莱が
「ホライモォ~」
と足をパタパタさせてアリスにねだる。
「はいはい、まっててね」
手早く上海に着せ替えると、
その姿を眺める。
「んー・・・・・うん、いいわ。」
「ィイ?」
「シャハーイ、カワイイヨー」
アリスもうんうんと頷くと
ゴソゴソと何かを探しだす。
「んー、蓬莱には・・・あったあった!」
探していたのはリボン。
「蓬莱は、これを飾って完成ね。」
蓬莱にリボンを結んであげようとした時、
玄関の方から鐘が鳴るのが聞こえた。
「あら?誰かしら・・・上海、蓬莱に結んであげて、」
リボンを渡された上海がコクリと頷く。
アリスはすぐに戻るからね、と部屋を出て行った。
残された二人。
「ホォラィ、コチムイテ」「ウン」
上海は、言われたとおりに結んであげる事にした。
□◆□◆□
「はい、どなた・・・って、メイド長じゃない・・・どうしたのよ?」
なんと、訪問者自体珍しいのに、さらにその訪問者まで珍しかった。
紅魔館のメイド長十六夜 咲夜その人だった。
「ぅ・・・あ、その、貴女の人形がエントリーするって聞いて、ね」
何故かそわそわしている、あのメイド長にしては挙動が不振すぎる。
それに、何か持ってきてるし・・
そういえば、メイド長の魔法の宝玉?(五芒星の描かれたアレ)もエントリーしてたような・・・
「それの中身は何かしら?」
とりあえず、紙袋の中を確認しておく。
「あ、これは・・・」
ガサッ、
中を見せる。
「・・・服?」
フリルが多めの小さな服が二着。
「えぇ、あ、あれよ、敵に塩を送るって奴よ。」
んー、見た感じ、生地は上物みたいね・・・
本当に塩を送るって事かしら?
「まぁ、立ち話もなんだし、上がって。」
何故かメイド長の顔が晴れやかになる。
「ありがとう、お邪魔するわ。」
□◆□◆□
咲夜を案内しながら部屋に向う。
「上海、蓬莱、お待たせ~。
着替えは出来たかしら?」
カチャリ
ドアを開けた途端、助けを求める声。
「ア、アリィス、タスゥケテェ」「タスケテー」
「な、上海、蓬莱、なにやってるのよ~」
アリスは慌てて二人の元に駆け寄る。
「な、何かしたのら?」
ひょっこり覗いてみる。
何故か上海と蓬莱は、
「カラマチャタァ・・・」「チャッタ・・・」
二人ともリボンに絡まっていた。
プシッ
何かの噴出音。
その後、バタッと大きな音。
「ぷしッ?・・・、」
おかしな音に振り向く。
肩の辺りが真っ赤である。
「・・・って、ちょ、貴女、なんで鼻血だしてるのよぉお!?」
その音は、満足げな顔をして倒れた咲夜の出した音だった。
その後、息を切らせて現れた中華風の門番が何度も何度も謝りながら、後始末をしていったのだった。
-------------------------------------
「ぅ・・・いやな光景思い出しちゃったわ」
まさか、あのメイドがあんな状態になるなんてね・・・
以前この子達に話を聞いていたけど、本当だったとわ・・・
ブンブンと頭を振って、嫌な記憶を吹き飛ばす。
次は本戦・・・
-------------------------------------
「♪~♪~~」
アリスがとても嬉しそうに私と蓬莱に服を着せてくれる。
なんだか私も嬉しくなる。
隣の蓬莱も嬉しそうだ。
「♪~、これで・・・どうかしら?」
「ォワタァノ?」「オワッタノ?」
「えぇ、はい、見てごらん。」
そういってアリスが鏡に映してくれる。
ん・・・正直、良くわからない。
そうだ、蓬莱に聞いてみよう。
「ホラィ、ドゥ?」
「…」
クキッと首を傾げて、
「アリス、ドウ?」
蓬莱もわかんないみたいだ。
「む・・・私に振ってもね~、
ハァ、もう少し魔理沙が居てくれれば良かったんだけど・・・
仕方ないか、上海、蓬莱、次の服を着てみましょう。
相手はあのメイド長なんだし・・・」
「ゥン」「ウン」
試合開始まで時間は十分にある。
今日は、上海人形の晴れ舞台。
アリスの服選びも慎重になる。
ましてや相手がメイド長である。
正直、勝ち目は薄いがやれるだけの事はしておきたい。
そして、時間が過ぎてゆく。
暫くたち、アリスがあれこれと考え、着せ替えなどをしていると
コンコンと、ドアをノックされる。
「・・・・誰かしら?」
随分前に魔理沙は帰ったはずだし、まぁいいか、
「どうぞ~」
カチャリとドアが開く。
部屋の中から声がした。
アリスの声だ。
「お邪魔するわ。」
「・・・珍しいわね、なんの用かしら、
永琳さんとそのお弟子さん?」
アリスが少しだけ警戒して私とうどんげを睨む。
「む、折角きてあげたのに・・」
「ふふ、様子を見に来た・・・じゃダメかしら?」
うどんげを宥めつつ、アリスに返事をする。
「まぁ、何でもいいわ。
それより、コレでどうかしら?」
そう言ってアリスが上海人形を抱えて、私に見せる。
目標発見。
「わ・・可愛いですね、師匠。」
「しゃ、上海ちゃん、・・・あら?」
「ンム…」
何故か両手で口を塞いでいる。
「・・・上海、どうしたの?」
「シラーナィヒト、シャベチャダァメ。」「ダメー。」
傍らで蓬莱も同じ事をしている。
(・・・・ダ、・・・ダメ、
可愛い、可愛すぎる!)
正直、今すぐ持って帰りたい気分だが、その感情をグッと抑える。
こういう子達は素直だから・・・
「あ、アハハッ、私は、八意 永琳って言うのよ、よろしくね二人とも。」
と二人に手を差し出す。
「シャハーイダヨォ」「ホライダヨ」
小さな手が私の指を握る。
(ひょ、表情が・・・崩れそうになる。
あ・・頬の筋肉が・・・)
「し、師匠?」
「あぁ、なんでもないわ、なんでも・・・」
(ふぅ、平常心、平常心。
うどんげを連れて来て正解だったわ。
あの子が抑止力になってくれる。)
「ん・・・インパクトが足りないわね。」
「インパクト?」
「そう、相手は紅魔館のメイド長。
悪魔の犬とも言われているから、その気になれば・・・」
「その気になれば?」
ゴクリ、アリスの喉が鳴る。
「首輪に犬耳も辞さない筈よ。」
「ま、まさかッ・・・
あのメイド長、プライドが高そうなのに?」
「主の命令なら喜んでやるでしょうね」
「ッ・・・、どうすれば・・・」
「うどんげ、」
「はい。」
うどんげに持たせていた包みをアリスに渡すように促す。
「開けてみて」
ガサガサと包みを開ける。
「これはッ・・・」
「それは、魔力で動く代物よ。
ソレが動けば・・・」
「凄いわ、動けば十分な印象を与えられる。
・・・・でも、なんでこんな物を?」
「いい勝負がみたかった・・・じゃダメかしら?」
(いや、実際はつけたところが見たいんだけどね。)
少し格好良くしすぎたかな?
「あ・・ありがとう・・・流石、月の頭脳ね。」
アリスが興奮気味に私の手を両手で握る。
「師匠、そろそろ行きましょう。
姫がお待ちです。」
「それじゃ、頑張ってね、上海ちゃん」
にっこりと笑い、手を振ってあげる。
「ゥン、ガバル!」
上海と蓬莱が一緒に手を振っている。
(あぁ・・・幸せ・・・ッ)
ちなみに、蓬莱の分もあったりする。
流石は私、抜かりは無いわ。
試合後にまた様子を見に行けば二人セットで見られるしね・・・
そして、時間に。
「今日の試合は、紅魔館メイド長の十六夜 咲夜VS、
アリスの人形・上海人形です!
司会は永遠亭の姫、輝夜と、解説はもこでお送りします。」
「ちょ、なんで私が「もこ」だけなのよ!」
「もぅ・・・解説は藤原妹紅、これでいいかしら?」
「ふん、」
「それでは、青龍の方角から、咲夜さんの登場です。」
完全で瀟洒な従者らしく、颯爽と舞台に現れ・・・・無い。
「あれ?・・・咲夜さーん?」
先ほどまで入場門に居たと思ったが、いつの間にか姿が消えている。
「輝夜、もう居るわよ?」
妹紅が指差すのは舞台上
「え、あ、おぉーっと、時間を止めての入場のようです、流石はメイド長!」
そして、観客に丁寧にお辞儀をする。
どこか鋭利な刃物のような研ぎ澄まされた感がある。
「んー・・正統派ね。」
「え?何が正統派なの?」
「輝夜と違って、あのメイド長は小細工なしで戦うって事。
それだけ余裕って事よ。」
「キィーッ、ふん、次は、白虎の方角から上海人形の登場です!」
ふよふよと空中を飛びながらの入場である。
「お~、これは何とも可愛らしいですね。
肩に掛けた鞄もワンポイントです。」
「リボンも多いわね、目の付け所が流石ね。」
「・・・妹紅、貴女ってリボンマニア?(プッ」
「・・後で燃やすからね・・・(プチ」
「・・・燃やせればね?」
・・・殺伐とした解説と司会は置いておいこう。
舞台にたどり着くと、手を振る。
「ホラーイ、ァリィスー」
観客ではなく、蓬莱人形と、アリスに
「シャハーイ、ガンバレー!」
同じく着飾った蓬莱が手を振り返す。
「・・・・」
上海の仕草を見て、咲夜さんの目つきが、獲物を見る猛禽類のそれになる。
呼吸も少し、荒くなる。
観客の中で、この状態の咲夜を見て心配する存在が居た。
紅魔館門番・紅美鈴である。
(咲夜さん・・・大丈夫かな・・・)
「ハァ・・・フゥ・・・(・・・か、かわいぃーーーーッ・・)」
視線は上海人形に釘付けである。
手を振っている上海がハッと気がつく。
「ワァスレテタ」
ごそごそと、何やら鞄を探ると、
「ンショ、」
ソレを頭にかぶせる。
咲夜が一瞬仰け反る。
「!!!(ぅ、・・・うさみみぃいいいいッ!)」
仰け反った体を何とか戻すが、体が震えだす。
「くッ・・・フッ・・・ゥ・・」
手で顔を覆い、荒い呼吸を整えようとしている。
感情の制御でいっぱいいっぱいだ。
永琳の持ってきた物。
それはウサギのミミの着いたヘアバンドである。
柔らかそうな素材なのに、両の耳はピンと立っている。
ガクガク震える咲夜に、
さらに追い討ちが入る。
クィ。
ウサギのミミが、
手招きするように、
動いたのだ。
永琳が細工をして、魔力でウサミミを自由に動かせる。
つまり、伏せさせたり、ミミの半ばから折り曲げることが出来るのだ。
ソレを見た咲夜さん。
「だ・・・ダメ・・♪」
プシッ
その場で血を噴出しながらぶっ倒れる。
が、その瞬間、
(間に合えッ!)
観客席から乱入する緑と紅色の影が一つ。
その影が咲夜を抱きかかえる。
ギリギリ間に合い、観客は血の噴出の事を知らない。
「だ、大丈夫ですか、咲夜さん?」
影の正体は紅美鈴。
メイド長の鼻血シーン公開を間一髪で防ぐ事に成功した。
「美鈴・・・、うごいたの・・・クィって・・・くふぅ♪」
「咲夜さ・・・だ、誰かー、咲夜さん、体調不良です!」
「あーッ、乱入者です!
あッ、咲夜選手に抱きついています!
え、・・はい、そうですか・・
どうやら咲夜選手、体調不良のようで倒れたようです。
お、救護班が駆けつけています。」
同時に、観客席でもざわめきが起こる。
「って、観客席の方も騒がしいわね」
観客席のざわめきの中心部。
「し、師匠!
しっかりしてください、ねぇ、って、まだ出てる!?
って、見るなーーーッ」
観客席で、大声で悲鳴を上げる鈴仙。
覗こうとする観客を全員狂わせて、師匠を護る。
「ぅふふ・・うどんげ・・・もう、ウサミミ上海ちゃん・・・最高・・♪」
「し、ししょー!」
師匠が気を失う。
笑顔で、
鼻血を出して・・・
担架で担がれて退場する咲夜を眺めながら、
「ゥン?」
クィ、クィ、
と首とミミを傾げる上海だった。
この日、試合は1時間延期されてから再開になるのだった。
-------------------------------------
「って、相手はあのメイド長だったのよね・・・」
何の因果か。
まったく・・・八意永琳もあの試合で倒れたって聞いたし・・・
私の人形を好きなのは嬉しいけど、うーん・・
「結局、上海は負けちゃったけど、結構頑張ってたわね~」
私は上海の頭を撫でてあげる。
「ンュ?」「シャハーイ、イイナー」
蓬莱が自分も撫でて欲しいと目で訴える。
「ふふ、蓬莱も、いいこいいこ。」
「ィーコォ」「イイコイイコー」
撫でられている理由は判っていないが、兎に角嬉しいみたい。
二人でキャイキャイ遊び始めた。
まったく、二人とも可愛いんだから。
「上海、蓬莱、」
「ゥン?」「ナァニ?」
二人でなにやら遊んでいたようだけど、名前を呼ばれて私の方を向く。
「またお祭り出てみたい?」
私はトーナメントの事を簡単に「お祭り」とたとえてあげた。
普通に言っても判る筈だけど、新しい単語や、難しい単語を使うと会話に時間が掛ってしまうからだ。
「ゥン、マタデェタィー」「ウン、シャハーイトイッショーニデルー」
「ふふ、そうね、今度あったら、二人一緒に出れるといいわね。」
張り切る二人を見ていると、私にも元気が沸いてくる。
ありがとね、上海、蓬莱。
次の試合も頑張るね!
でも、二人一緒に出るとなると・・・私も危ないかな?
「ただいま、上海、蓬莱。」
この日もなんとか無事に試合を終えて、自宅に帰ってきた。
一息ついて、何気なく人形たちを眺める。
・・・そういえば、この子達も試合に参加したのよね・・・
最初は・・・予選・・・
上海人形、蓬莱人形の持ち主であるアリス・マーガトロイドが記憶を振り返る。
-------------------------------------
魔法の森のとある家。
今日は特別な日。
朝からその家の持ち主である、アリス・マーガトロイドは忙しかった。
「ん~、これも違うわね・・・」
そう言って手に持っていた服を脇に置いて、別の服を手に取る。
年頃の女の子だ。
着飾るのも楽しみの一つだ。
だが、別にアリスが着る訳ではない。
彼女の所有する人形が着るのだ。
ベッドに腰掛ける上海人形と蓬莱人形
アリスのお気に入りの人形達。
今日は最も萌えるキャラクターを選ぶというお祭りのフリー枠の予選だ。
もちろんアリスは体の一部とも言えるほど自分のお気に入りな彼女達をエントリーさせた。
そして、エントリーさせたからには枠に入らなければ意味が無い。
アリスは真剣だった。
どうすれば、この子達の魅力を引き出せるんだろう?
悩んでは服を着せ、それを眺めて、また悩んだら脱がし、次の服を着せる。
「アリィス、マァダー?」「アリス、マダー?」
長い時間待たされている人形二人はそんなアリスの悩みなんて気にしない。
お着替えは嬉しいけれど、もう随分時間が経つ。
「あ~ん、もうちょっとで決まると思うから、もう少し待ってて・・・
上海は・・こっちのフリルがたくさんのにしてみようか?」
そう言って上海を着替えさせる。
「ゥン!」
もそもそと、服を脱ぐ上海。
それを隣で見ている蓬莱が
「ホライモォ~」
と足をパタパタさせてアリスにねだる。
「はいはい、まっててね」
手早く上海に着せ替えると、
その姿を眺める。
「んー・・・・・うん、いいわ。」
「ィイ?」
「シャハーイ、カワイイヨー」
アリスもうんうんと頷くと
ゴソゴソと何かを探しだす。
「んー、蓬莱には・・・あったあった!」
探していたのはリボン。
「蓬莱は、これを飾って完成ね。」
蓬莱にリボンを結んであげようとした時、
玄関の方から鐘が鳴るのが聞こえた。
「あら?誰かしら・・・上海、蓬莱に結んであげて、」
リボンを渡された上海がコクリと頷く。
アリスはすぐに戻るからね、と部屋を出て行った。
残された二人。
「ホォラィ、コチムイテ」「ウン」
上海は、言われたとおりに結んであげる事にした。
□◆□◆□
「はい、どなた・・・って、メイド長じゃない・・・どうしたのよ?」
なんと、訪問者自体珍しいのに、さらにその訪問者まで珍しかった。
紅魔館のメイド長十六夜 咲夜その人だった。
「ぅ・・・あ、その、貴女の人形がエントリーするって聞いて、ね」
何故かそわそわしている、あのメイド長にしては挙動が不振すぎる。
それに、何か持ってきてるし・・
そういえば、メイド長の魔法の宝玉?(五芒星の描かれたアレ)もエントリーしてたような・・・
「それの中身は何かしら?」
とりあえず、紙袋の中を確認しておく。
「あ、これは・・・」
ガサッ、
中を見せる。
「・・・服?」
フリルが多めの小さな服が二着。
「えぇ、あ、あれよ、敵に塩を送るって奴よ。」
んー、見た感じ、生地は上物みたいね・・・
本当に塩を送るって事かしら?
「まぁ、立ち話もなんだし、上がって。」
何故かメイド長の顔が晴れやかになる。
「ありがとう、お邪魔するわ。」
□◆□◆□
咲夜を案内しながら部屋に向う。
「上海、蓬莱、お待たせ~。
着替えは出来たかしら?」
カチャリ
ドアを開けた途端、助けを求める声。
「ア、アリィス、タスゥケテェ」「タスケテー」
「な、上海、蓬莱、なにやってるのよ~」
アリスは慌てて二人の元に駆け寄る。
「な、何かしたのら?」
ひょっこり覗いてみる。
何故か上海と蓬莱は、
「カラマチャタァ・・・」「チャッタ・・・」
二人ともリボンに絡まっていた。
プシッ
何かの噴出音。
その後、バタッと大きな音。
「ぷしッ?・・・、」
おかしな音に振り向く。
肩の辺りが真っ赤である。
「・・・って、ちょ、貴女、なんで鼻血だしてるのよぉお!?」
その音は、満足げな顔をして倒れた咲夜の出した音だった。
その後、息を切らせて現れた中華風の門番が何度も何度も謝りながら、後始末をしていったのだった。
-------------------------------------
「ぅ・・・いやな光景思い出しちゃったわ」
まさか、あのメイドがあんな状態になるなんてね・・・
以前この子達に話を聞いていたけど、本当だったとわ・・・
ブンブンと頭を振って、嫌な記憶を吹き飛ばす。
次は本戦・・・
-------------------------------------
「♪~♪~~」
アリスがとても嬉しそうに私と蓬莱に服を着せてくれる。
なんだか私も嬉しくなる。
隣の蓬莱も嬉しそうだ。
「♪~、これで・・・どうかしら?」
「ォワタァノ?」「オワッタノ?」
「えぇ、はい、見てごらん。」
そういってアリスが鏡に映してくれる。
ん・・・正直、良くわからない。
そうだ、蓬莱に聞いてみよう。
「ホラィ、ドゥ?」
「…」
クキッと首を傾げて、
「アリス、ドウ?」
蓬莱もわかんないみたいだ。
「む・・・私に振ってもね~、
ハァ、もう少し魔理沙が居てくれれば良かったんだけど・・・
仕方ないか、上海、蓬莱、次の服を着てみましょう。
相手はあのメイド長なんだし・・・」
「ゥン」「ウン」
試合開始まで時間は十分にある。
今日は、上海人形の晴れ舞台。
アリスの服選びも慎重になる。
ましてや相手がメイド長である。
正直、勝ち目は薄いがやれるだけの事はしておきたい。
そして、時間が過ぎてゆく。
暫くたち、アリスがあれこれと考え、着せ替えなどをしていると
コンコンと、ドアをノックされる。
「・・・・誰かしら?」
随分前に魔理沙は帰ったはずだし、まぁいいか、
「どうぞ~」
カチャリとドアが開く。
部屋の中から声がした。
アリスの声だ。
「お邪魔するわ。」
「・・・珍しいわね、なんの用かしら、
永琳さんとそのお弟子さん?」
アリスが少しだけ警戒して私とうどんげを睨む。
「む、折角きてあげたのに・・」
「ふふ、様子を見に来た・・・じゃダメかしら?」
うどんげを宥めつつ、アリスに返事をする。
「まぁ、何でもいいわ。
それより、コレでどうかしら?」
そう言ってアリスが上海人形を抱えて、私に見せる。
目標発見。
「わ・・可愛いですね、師匠。」
「しゃ、上海ちゃん、・・・あら?」
「ンム…」
何故か両手で口を塞いでいる。
「・・・上海、どうしたの?」
「シラーナィヒト、シャベチャダァメ。」「ダメー。」
傍らで蓬莱も同じ事をしている。
(・・・・ダ、・・・ダメ、
可愛い、可愛すぎる!)
正直、今すぐ持って帰りたい気分だが、その感情をグッと抑える。
こういう子達は素直だから・・・
「あ、アハハッ、私は、八意 永琳って言うのよ、よろしくね二人とも。」
と二人に手を差し出す。
「シャハーイダヨォ」「ホライダヨ」
小さな手が私の指を握る。
(ひょ、表情が・・・崩れそうになる。
あ・・頬の筋肉が・・・)
「し、師匠?」
「あぁ、なんでもないわ、なんでも・・・」
(ふぅ、平常心、平常心。
うどんげを連れて来て正解だったわ。
あの子が抑止力になってくれる。)
「ん・・・インパクトが足りないわね。」
「インパクト?」
「そう、相手は紅魔館のメイド長。
悪魔の犬とも言われているから、その気になれば・・・」
「その気になれば?」
ゴクリ、アリスの喉が鳴る。
「首輪に犬耳も辞さない筈よ。」
「ま、まさかッ・・・
あのメイド長、プライドが高そうなのに?」
「主の命令なら喜んでやるでしょうね」
「ッ・・・、どうすれば・・・」
「うどんげ、」
「はい。」
うどんげに持たせていた包みをアリスに渡すように促す。
「開けてみて」
ガサガサと包みを開ける。
「これはッ・・・」
「それは、魔力で動く代物よ。
ソレが動けば・・・」
「凄いわ、動けば十分な印象を与えられる。
・・・・でも、なんでこんな物を?」
「いい勝負がみたかった・・・じゃダメかしら?」
(いや、実際はつけたところが見たいんだけどね。)
少し格好良くしすぎたかな?
「あ・・ありがとう・・・流石、月の頭脳ね。」
アリスが興奮気味に私の手を両手で握る。
「師匠、そろそろ行きましょう。
姫がお待ちです。」
「それじゃ、頑張ってね、上海ちゃん」
にっこりと笑い、手を振ってあげる。
「ゥン、ガバル!」
上海と蓬莱が一緒に手を振っている。
(あぁ・・・幸せ・・・ッ)
ちなみに、蓬莱の分もあったりする。
流石は私、抜かりは無いわ。
試合後にまた様子を見に行けば二人セットで見られるしね・・・
そして、時間に。
「今日の試合は、紅魔館メイド長の十六夜 咲夜VS、
アリスの人形・上海人形です!
司会は永遠亭の姫、輝夜と、解説はもこでお送りします。」
「ちょ、なんで私が「もこ」だけなのよ!」
「もぅ・・・解説は藤原妹紅、これでいいかしら?」
「ふん、」
「それでは、青龍の方角から、咲夜さんの登場です。」
完全で瀟洒な従者らしく、颯爽と舞台に現れ・・・・無い。
「あれ?・・・咲夜さーん?」
先ほどまで入場門に居たと思ったが、いつの間にか姿が消えている。
「輝夜、もう居るわよ?」
妹紅が指差すのは舞台上
「え、あ、おぉーっと、時間を止めての入場のようです、流石はメイド長!」
そして、観客に丁寧にお辞儀をする。
どこか鋭利な刃物のような研ぎ澄まされた感がある。
「んー・・正統派ね。」
「え?何が正統派なの?」
「輝夜と違って、あのメイド長は小細工なしで戦うって事。
それだけ余裕って事よ。」
「キィーッ、ふん、次は、白虎の方角から上海人形の登場です!」
ふよふよと空中を飛びながらの入場である。
「お~、これは何とも可愛らしいですね。
肩に掛けた鞄もワンポイントです。」
「リボンも多いわね、目の付け所が流石ね。」
「・・・妹紅、貴女ってリボンマニア?(プッ」
「・・後で燃やすからね・・・(プチ」
「・・・燃やせればね?」
・・・殺伐とした解説と司会は置いておいこう。
舞台にたどり着くと、手を振る。
「ホラーイ、ァリィスー」
観客ではなく、蓬莱人形と、アリスに
「シャハーイ、ガンバレー!」
同じく着飾った蓬莱が手を振り返す。
「・・・・」
上海の仕草を見て、咲夜さんの目つきが、獲物を見る猛禽類のそれになる。
呼吸も少し、荒くなる。
観客の中で、この状態の咲夜を見て心配する存在が居た。
紅魔館門番・紅美鈴である。
(咲夜さん・・・大丈夫かな・・・)
「ハァ・・・フゥ・・・(・・・か、かわいぃーーーーッ・・)」
視線は上海人形に釘付けである。
手を振っている上海がハッと気がつく。
「ワァスレテタ」
ごそごそと、何やら鞄を探ると、
「ンショ、」
ソレを頭にかぶせる。
咲夜が一瞬仰け反る。
「!!!(ぅ、・・・うさみみぃいいいいッ!)」
仰け反った体を何とか戻すが、体が震えだす。
「くッ・・・フッ・・・ゥ・・」
手で顔を覆い、荒い呼吸を整えようとしている。
感情の制御でいっぱいいっぱいだ。
永琳の持ってきた物。
それはウサギのミミの着いたヘアバンドである。
柔らかそうな素材なのに、両の耳はピンと立っている。
ガクガク震える咲夜に、
さらに追い討ちが入る。
クィ。
ウサギのミミが、
手招きするように、
動いたのだ。
永琳が細工をして、魔力でウサミミを自由に動かせる。
つまり、伏せさせたり、ミミの半ばから折り曲げることが出来るのだ。
ソレを見た咲夜さん。
「だ・・・ダメ・・♪」
プシッ
その場で血を噴出しながらぶっ倒れる。
が、その瞬間、
(間に合えッ!)
観客席から乱入する緑と紅色の影が一つ。
その影が咲夜を抱きかかえる。
ギリギリ間に合い、観客は血の噴出の事を知らない。
「だ、大丈夫ですか、咲夜さん?」
影の正体は紅美鈴。
メイド長の鼻血シーン公開を間一髪で防ぐ事に成功した。
「美鈴・・・、うごいたの・・・クィって・・・くふぅ♪」
「咲夜さ・・・だ、誰かー、咲夜さん、体調不良です!」
「あーッ、乱入者です!
あッ、咲夜選手に抱きついています!
え、・・はい、そうですか・・
どうやら咲夜選手、体調不良のようで倒れたようです。
お、救護班が駆けつけています。」
同時に、観客席でもざわめきが起こる。
「って、観客席の方も騒がしいわね」
観客席のざわめきの中心部。
「し、師匠!
しっかりしてください、ねぇ、って、まだ出てる!?
って、見るなーーーッ」
観客席で、大声で悲鳴を上げる鈴仙。
覗こうとする観客を全員狂わせて、師匠を護る。
「ぅふふ・・うどんげ・・・もう、ウサミミ上海ちゃん・・・最高・・♪」
「し、ししょー!」
師匠が気を失う。
笑顔で、
鼻血を出して・・・
担架で担がれて退場する咲夜を眺めながら、
「ゥン?」
クィ、クィ、
と首とミミを傾げる上海だった。
この日、試合は1時間延期されてから再開になるのだった。
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「って、相手はあのメイド長だったのよね・・・」
何の因果か。
まったく・・・八意永琳もあの試合で倒れたって聞いたし・・・
私の人形を好きなのは嬉しいけど、うーん・・
「結局、上海は負けちゃったけど、結構頑張ってたわね~」
私は上海の頭を撫でてあげる。
「ンュ?」「シャハーイ、イイナー」
蓬莱が自分も撫でて欲しいと目で訴える。
「ふふ、蓬莱も、いいこいいこ。」
「ィーコォ」「イイコイイコー」
撫でられている理由は判っていないが、兎に角嬉しいみたい。
二人でキャイキャイ遊び始めた。
まったく、二人とも可愛いんだから。
「上海、蓬莱、」
「ゥン?」「ナァニ?」
二人でなにやら遊んでいたようだけど、名前を呼ばれて私の方を向く。
「またお祭り出てみたい?」
私はトーナメントの事を簡単に「お祭り」とたとえてあげた。
普通に言っても判る筈だけど、新しい単語や、難しい単語を使うと会話に時間が掛ってしまうからだ。
「ゥン、マタデェタィー」「ウン、シャハーイトイッショーニデルー」
「ふふ、そうね、今度あったら、二人一緒に出れるといいわね。」
張り切る二人を見ていると、私にも元気が沸いてくる。
ありがとね、上海、蓬莱。
次の試合も頑張るね!
でも、二人一緒に出るとなると・・・私も危ないかな?
・・・こ、こ、こ・・・
この咲夜さん&師匠、萌えだぁぁぁぁぁっ!(鼻血フジヤマヴォルケイノ)
僕も同じ意見です。(是非コンビで♪