九月二十四日
西の森で小鳥を見つけた。
小鳥と言うには語弊があるかもしれない。小さな小さな夜雀の子。
親とはぐれたのだろうかと木の上などを眺めるも、それらしき気配は全く無かった。
どうしたものかと思案していると、夜雀の子はちょこちょこと私の足元までやってきた。着物の裾をぎゅっと握って離さない。私を親と勘違いしているのだろうか。
夜雀にも刷り込みなんてあるとは思わなかった。
いかに妖怪と言えどもこの幼さで、一人生きていけるとも思えない。くいくいと裾を引っ張る姿があまりに可愛らしかったこともあり、この子を連れて帰ることにした。
親鳥(?)は……現れたらその時考えよう。
九月二十五日
昨日拾った夜雀の子のために着物を買ってきた。髪の色に合わせて赤みがかった茶色のものを選んでみた。少し変わった意匠の着物だ。
羽が出せるように背中を開けてやらなくては。自分の服で慣れているとは言え、肌が露出しないよう鋏を入れるのは難しい。とはいえあの子も女の子。気を使ってあげなくちゃね。
そういえばあの子の名前はなんと言うのだろう。言葉はまだ話せないようだし、親から貰った名も覚えていないかもしれない。暫定的にでも名付けてあげた方がいいかもしれない。
なんてのは言い訳。私、あの子に名前を付けてあげたい。けどそれはなんだか独占欲の表れのようで気が引けるから口実が欲しいのだ。
こんな自己分析も鬱になるからやめよう。明日になったらあの子に名前を付ける。うん、決めた。言い訳はもうなし。
九月二十六日
十三時間にわたる煩悶の末、ミスティアに決定。どうしてもぴったりの名前が思いつかずに一日唸り続けてしまった。家の前を通った人はさぞかし不審に思っただろう。
散々迷った挙句、結局古い友人の名前の韻を借りた。あんな別れ方をした彼女はいい顔をしないかもしれないけども。
ま、私の名前にも似ているし、悪くない。
眠っているミスティアを撫でつつ話しかけてみた。あなたの名前はミスティアよ、って。そうしたら私の手を抱きしめて、むぐむぐ言い出した。可愛い。
ずっとそうしていたかったけど、明日は収穫祭。仕事の日だ。心を鬼にして手を解いた。
九月二十七日
収穫祭。正直何の収穫を祝っているのか私には分からないが、私の歌が役立つ数少ない日だ。
元々この里は上白沢なる、人と神獣だか何だかのハーフが守護する里で、妖の類は立ち入れない。なのに私がここに住んでいられるのはこの歌のおかげだ。
祭りや祝い事を歌で盛り上げる。他に取り柄が無いので害が無い、ってのもあるんだろうけど、この歌を交換条件に私はあの風変わりな半人から居住権を手に入れたのだ。
祭りで下手を打って役立たずなんて言われたら追い出されかねない。今日もきっちりと私の有用性を里の皆に知らしめてやった。
……なんていうと灰色アウトサイダーを気取る流れの妖怪のように聞こえるが、別に私は斜に構えることもないし、顕示欲に燃えているわけでもない。里の皆は優しいし、年に数度の歌や演舞で食料まで分けて貰えるのだから、きっと破格の待遇なのだろう。
だから私も…って、日記に何を書いているんだ私は。神酒が回ってきたかな。この辺でお暇することとしよう。
十月三日
ミスティアがしゃべった。初めての言葉は『ママ』。もう可愛いったらない。ママだってママ。やっぱり私のこと親だと思ってたんだなあ。可愛さあまって抱きしめたら『ぎゅー』だって。あんまり可愛いんで抱きしめ続けてたら、里長の使いが血相を変えて飛び込んできた。いけないいけない。今日は里の婚姻の儀だった。
儀式も大詰め。そろそろ私の歌の出番。今日はいつも以上にいい声が出せそうだ。
十月十二日
ミスティアが危なげなく歩けるようになった。以前はよちよちとして、見ていてはらはらしたが今では軽く走ることも出来る。
まだ飛ぶことは出来ないようだが、妖怪の成長は早い。すぐに大空を舞うようになるだろう。今のふるふると揺れるだけの羽も可愛くて良いんだけど。
十月二十日
今日はミスティアを連れて買い物に行った。ミスティアは不安げに私の裾を掴んで、おっかなびっくり後をついてきた。
里の皆はミスティアを可愛がってくれた。頭を撫でたり、菓子をくれたり。これでミスティアも里を気に入ってくれるだろうか。
西の里と交易をしている男がミスティアに帽子をくれた。羽を模した飾りのついた、可愛らしい帽子だ。なんでもどこぞの物好きな神主の手作りだとか。
一歩離れてよく見ると、この子の羽と服にとてもよく合う帽子だ。只の交易商のくせに、なかなかどうしていい眼をしてる。あの男の婚儀では盛大に歌ってやることとしよう。…相手を探してやったほうが喜ぶか?
十月二十二日
里の子供にミスティアと遊んでもらった。やはり夜雀といっても子供のうちは子供同士で遊ぶのがいいだろうと思ってのことだ。
里の子もミスティアも最初はおっかなびっくりだったがすぐに打ち解けたようだ。きゃあきゃあとはしゃぐ声が家にも届いた。
声が途切れるたびにそわそわと様子を見に行く私の姿は、やはり不審だったろうか……。
十月三十日
火で遊ぶミスティアを叱った。危険な物とそうでない物の区別がつかないのは拙い。里で生きるにしろ、森で妖怪として生きるにしろ、それは最低限必要な知識だ。無邪気に遊ぶミスティアを叱りつけるのは心が痛んだが、いつか大事に至っては後悔してもしきれない。
……なんだか本当に母親になった気分だなあ。乙女引退か?
ミスティアは拗ねて寝てしまった。
十一月九日
ミスティアはとても綺麗な声をしている。これなら私と同じ生き方が出来るかもしれない。と少し歌を教えてみた。
『すーずーめーのがっこーはー』
ああ、保母さんもいいなあなんて思ってしまったり。ぱくぱくと大きな口を開けて歌うミスティアが可愛くてつい何度も歌わせてしまった。お隣さん、迷惑だったかなあ。
十一月十四日
ミスティアと手を繋いで森に行った。既に実親の記憶は無いのか、顔を曇らせることも無く、ぱたぱたと元気に駆け回っていた。
帰りは転んで泣きだしたミスティアを負ぶった。驚くほど軽いミスティアは驚くほどあっさりと背中で寝こけてしまった。寝言で『ママ』と言う度に頬が緩むのを抑えられなかった。
「…慧音様、これが何か?」
分厚い日記帳のとば口を読み終えた里長が怪訝そうに問うた。
「…そのあたりはもういい。もっと後の方を読んでくれ」
「はあ…」
今朝早く里に現れた慧音は里長の挨拶も終わらぬうちに、これを読め、とぼろぼろの日記帳を突きつけた。
普段は朗らかに笑っている慧音がどこか険しい表情をしているのも、今日に限ってなんの知らせも無くやってきたことも、ましてや日記を読め、という命令の理由も里長にはさっぱり分からなかった。
だが他でもない慧音の言うことだ。自分のあずかり知らぬ筋が通ったものなのだろう、と里長は再び日記帳に目を落とす。
そこへ、
「里長ぁ、やぁっと消えましたぜ。悪魔が棲むと家まで性根が曲がるのか、しぶとく燃え続けやがって。家の庭木に燃え移ったら…」
「ご苦労。慧音様の御前だ。少し慎め」
「お…っと、これは慧音様。失礼いたしました」
「いやいい。ご苦労だった。…終わったのか?」
「へい。柱一本残っちゃいません」
「…そうか」
「壮一、下がっていいぞ。一の間に食事を用意させた。作業に当たっていた者達とゆっくり休め」
「あ、へい」
里長は報告に来た若者を下がらせると、再度古びた日記帳を開いた。
「では慧音様。失礼して…」
節くれだった指を繰り日記の終わりを探し当てる。目を閉じて頷く慧音を確認し、そこより数日分遡って読み始めた。
八月三日
名前は忘れたがもうじき鎮魂の儀だ。今年は新しい歌を用意してみた。明日にでも皆に聞いてもらって、いつもの歌とどちらがいいか選んでもらおう。
ミスティアの歌も随分うまくなった。あの子は音感がいい。指揮者にもなれるかもしれない、と言ったら小さな指を振って歌いだした。可愛かったので、指揮者は歌わないものだと教えるのが躊躇われた。また今度教えればいいよね。
八月四日
里の様子がおかしい。いや、私がおかしいのだろうか。里の皆が私を避ける。子供達は怯えるし大人は子供を庇って逃げていく。
私が何かしたのだろうか。それともここ数日外を歩かなかった間に里で何かあったのだろうか。ミスティアが帰ってきたら聞いてみよう。毎日のように里の子達と遊んでいるあの子の方が、私よりも里のことを良く知っているだろう。
結局今日は新曲を披露することは出来なかった。
八月五日
ミスティアが寂しそうに羽を撫でている。いつも外に遊びに行くので家での暇つぶしの術をあまり知らないのだろう。
昨日いつもより早く帰ってきたミスティアに里の様子を聞くと、沈んだ声で首を横に振った。里の子が遊んでくれなかったらしい。
避けられているのは私だけではないのか? どうにかして理由を聞き出さなければ。
あの子が笑っていないと、まるで日が差していないようだ。
八月六日
半日かけて里を回ってみた。皆は相変わらず私から逃げ出した。避けられるということがこんなに寂しいものだとは思わなかった。
ミスティアと仲の良かった子に挨拶をしたら泣いて逃げてしまった。心が痛い。ミスティアもこんな思いをしているのだろうか。
里を巡った感触としては、皆は私を嫌っているというよりも、私を見知らぬ妖魔だと思っているような気がする。
何年も傍で暮らしているのだ。何を莫迦な、と思う。だが皆の反応を見るとどうしてもそう感じるのだ。
皆、私の羽を見ると怯えて隠れてしまった。
八月八日
理由が分かった。上白沢の仕業だ。里の者が慧音様と敬うあの半人は過去の改竄が出来るらしい。里の皆の記憶から私達の事を削除したのだ。
でもどうして? 九年前、歌と交換にこの里に住まうことを許可したのは、上白沢慧音自身なのに。
……ミスティアだろうか。小さな夜雀が里にいることが気に入らないのだろうか。冗談じゃない。あの子が人間に危害を加えたことは一度も無い。それは里の皆も良く知っている。
だが上白沢はその記憶を消してしまったのだ。
悔しい。あの子が疎まれる理由なんて無いのに。
上白沢はこの里を見守る、と言っても普段何処に住んでいるのか誰も知らない。時折ふらりと里に現れるが、こちらが会いたいときは偶然に頼るしかない。直談判も出来ないのだ。皆に私達を忘れさせたのは、私達に里から出て行けということだろうか。
八月九日
皆が私達を忘れてしまったのならばこの羽を見て怖れるのも分かる。
それならまた知ってもらえばいい。私達に悪意の無いこと、同じ里の住人だということをこれから分かってもらえばいい。
今までだって出来たのだ。きっとすぐに打ち解けられる。
近所の人たちは皆家を空けて私達から遠ざかってしまったが、きっとまた帰ってきてくれる。
最初はつらいだろうがミスティアにも出来るだけ外で遊ばせよう。
八月十日
……なかなか上手くいかない。皆羽を見たとたん逃げ出してしまう。会話が出来ないのでは打ち解けようも無い。
ミスティアも子供達に逃げられてしまったらしい。
あの子はもう外に出たくないと言う。つらい。私もあの子をもう悲しませたくない。けどここで頑張らなければ里の皆と打ち解ける機会は二度と失われてしまう。
目に涙を溜めるミスティアを何とか励ました。里の者もきっと分かってくれるはずだ。
今日もあの子と抱き合って寝た。あの子は小さく丸まって、子猫のようだった。
八月十五日
ミスティアに帽子をくれた交易商の男と話が出来た。しばらくぶりに里に帰ってきたらしい。私たちの事は覚えていなかったが、商売柄柔軟な感性を持っているのだろうか。少し話すとすぐに以前の気さくさを見せてくれた。里にいる間、皆に私達が害意を持っていないことを話してくれるそうだ。良かった。これで皆との距離が縮まるだろう。
彼は食料も売ってくれた。備蓄が底をつきかけていたのでとても助かった。彼には感謝してもしきれない。
八月十七日
彼のおかげで会話の出来る者が若干増えた。向こうから話しかけてくれることは無いが、返事くらいはしてくれるようになった。
少しずつ以前の関係を取り戻していこう。
八月十八日
ミスティアが泣いて帰ってきた。里の子に苛められたらしい。
私達に敵意の無いことが伝わり、それが悪い方向に働いてしまったのか。
泣きじゃくるあの子は見ていられない。私から口を出すべきだろうか。子供同士のこと、と思うと躊躇われるものもあるのだが…。
八月二十日
また皆が余所余所しくなった。交易商の男も私を見るとそそくさと逃げ出してしまった。
頭の固い連中に言いくるめられたのだろうか。それとも上白沢によるものか。
……振り出しに戻ってしまったのだろうか。
八月二十三日
湯浴みの際ミスティアの身体に痣を見つけた。…石を投げられたらしい。大人まで一緒になって。
痛くない、と無理に笑うミスティアを見て涙が出た。この子が傷付けられなければいけない理由などない。
ミスティアを一人で外に出さないほうがいいかもしれない。
八月二十四日
なんとか上白沢に会えないかと今日も里長の家に行った。いつもどおり、武装した男達に囲まれた里長は恐怖と侮蔑を交えた目で出て行けと訴えるばかりだった。丁寧に取り繕った口調にも余裕はなく、周囲の男達をいつ嗾けてもおかしくない様子。仕方なく、上白沢が現れたら教えてくれと頼んで席を立った。
追い出されるように門を抜けるとミスティアがずぶ濡れで泣いていた。
捨てたはずの衝動が湧く。硬化しそうになる牙と羽を必死に抑えてミスティアを抱きしめた。
八月二十五日
里の者達は昔からこうだったろうか。私が気付かなかっただけで、彼らは子供を傷付けて喜ぶような輩だったろうか。
ミスティアは私から片時も離れなくなった。私ももはやこの子を一人歩きさせる気にはなれない。
今日はミスティアを抱きしめたまま一日過ごした。家にいても安心できないのか、ミスティアの震えが収まる事はなかった。
里から出て行ったほうがいいかもしれない。事態が良くなる兆しもないし、ミスティアはもう限界だろう。そもそも、私がそんなミスティアを見ていることに耐えられない。
明日、もう一度里長に談判して何も得られなければ、出て行くことを本気で考えよう。
八月二十六日
これが人か。泣き叫ぶあの子を見て何も感じないのか。
壊したい。誓いを壊して心を砕きたい。
あの子の苦痛を血と歌に乗せて一人残らず引き裂いてやりたい。
……今この子がここにいなければそうしただろう。後数分、ミスティアを見つけるのが遅ければそうしていただろう。
もう出て行こう。所詮は人の里。上白沢の箱庭だったのだ。
焼け残った羽は僅か一対。この子は再び飛べるようになるだろうか。
八月二十七日
夜が明ける前に里を出る。
里の外の暮らしにミスティアは喜ぶだろうか。……それとも寂しがるのだろうか。
ミスティアの背中の火傷が酷い。まず竹林の奥に住むという薬師を訪ねよう。
八月二十八日
八月二十九日
「……」
「……」
日記を読み終え、里長は言葉を探して逡巡する。手を伸ばした湯のみが冷め切っていることに舌を打ち、そこでやっと喉が渇いていることに気づいた。
「……これは、あの悪…いや、アメリアの?」
「ああ、そうだ」
「…これは真のことでしょうか」
「…ああ」
「……」
「……」
どちらともなく溜息をつく。それしか出来なかった。全ては過去のことであり、もはやなす術は無い。
「ではアメリアは突然住み着いた化物などではなく、長年の里の民だったのですか」
「ああ。私がアメリアの存在を抹消した。夜雀がアメリアの家に紛れ込んでいると報告を受けたのでな。気まぐれで住み着いた夜雀一匹、すぐに放り出すと踏んでいたのだが……まさか娘として育てていたとは思わなかった。アメリアにもお前達里の者にも、不快な思いをさせてしまったな」
「…いえ。我らのためを思っての事です。慧音様の気に病むことではありません」
「そういう訳にもいかん。いらぬ波風を立てたのだ。それにお前達にはともかく、アメリアとその子の辛苦については私が責められるべきだ」
「は……」
重い空気が澱の様に沈殿する。
手記の短い文章と、当時の民の所業に思いを巡らせ、里長は一際大きく息をついた。
「慧音様、この日記はどちらで…?」
「アメリアの家だ。今日中に取り壊す、と聞いてな。褒められた行為ではないが、誰にも読まれず焼け落ちるに任せるのも忍びないと思って失敬した」
「そうですか…」
「あれから二年か……。その後、二人の話など耳に入ってはいないか?」
「いえ、全く…。旅人が夜道で夜雀に遊ばれた、といった話ならば少々御座いますが……」
「…そうか。アメリアの子、…ミスティアだと良いな、というのは勝手か」
「正直可能性は低いかと。おそらくは人に強く恨みを持っているでしょう。夜道で出会った人間を無事で帰すとは…」
「そうか…そうだな。だがあのアメリアの子だ。もしかしたら、とな……」
「……」
「もしあの子が姿を見せたなら、…多少の悪戯は大目に見てやれ。それとすまないが里の者を集めて誤解を解いてやってくれ。歴史の修正によって記憶を還すのは、……さすがに礼を失しているからな」
「は…。では早速使いを出してまいります」
「ああ、頼んだ」
「それでは失礼いたします」
頭を下げ里長が出て行く。それを見送り、慧音は悲しげに眉をひそめた。
「…アメリア・ローレライ、血を吸わない吸血鬼か。全く、もう少し賢く生きることもできるだろうに」
いや、とかぶりを振る。己を貫き子を守る彼女は賞賛されるべきだ。全ては自分の浅慮の結果なのだ。
すまなかった、と幾度目かの謝罪を心で呟く。
何度悔いようと心が晴れないであろう事は慧音自身よく分かっている。喉に刺さった小骨のように心に鉤を引っ掛けたまま、この里を見守っていくことしか出来ないのだ。
◇
うーん。今日は何して遊ぼうかなあ。
真っ暗にして人をからかうのも飽きたし、一緒に歌ってくれる人もあんまりいないし。…そもそも誰も通りかからないなあ。
うー……お?
なんだかすごい力があっちから飛んで来る。
んー?
なんだろ。ひらひらした服のお姉ちゃんと羽の生えた女の子だ。楽しそうにおしゃべりしてるなあ。
うん、今日はあの子達と遊ぼうっと。
「ちょ、ちょっとまって~」
「急いでるのよ。動きながらなら聞いてあげるわ」
あれ?なんだか冷たいなあ。私と遊ぶの嫌なのかなあ。
「ふん、餓鬼が夜遊びか?」
なんだかこの子、ママに似てる。髪の色とか羽の形とか。
ママの友達かなあ。それだったらきっと優しい子だよね。いきなり声をかけたから警戒してるんだ。
小さな子だし、私がお姉さん役になってあげなくちゃ。
「ね、私ミスティア・ローレライ。一緒に遊ばない?」
「悪いけど急いでるんだ。さっさと…ん、ローレライ?」
「お知り合いですか?お嬢様」
「…いや知らないな。似た名前の知り合いがいたのよ」
「あら初耳ですわ。ヴァンパイアのお仲間ですか」
「半分正解。あいつは吸血鬼とサイレンとか言う水妖の混血だったな」
「サイレンと言うと歌声で船乗りを惑わせるという?」
「ああ。能力も足して二で割ったようなものでな。音を媒介にして色々出来た。殺傷力過多で本家からは期待されてたんだが、本人が変わり者でね。歌で心を癒す、とか訳の分からない事を言って本家から出て行ってしまった」
「まあ。フランドール様の情操教育によろしいのではないですか? セラピストもかねて」
「いらないわ。あいつが何処にいるかなんて知らないし、歌なんかで精神が治癒されるとは思えないもの」
「そうでもありませんよお嬢様。いいですか? 例えば胎児に…」
「迷信よ。大体あいつは血も吸わないんだ。どこぞでのたれ…」
「それから心に傷を負った子供が音楽家によって…」
「それは曲じゃなくて音楽家自身の…」
うー。どうして私を放って話し込んじゃうのよう。
こんなに近くにいるんだから私も混ぜてくれたっていいのにー。
よーし。それじゃ奥の手。
私達の歌を聴いたら一緒に遊びたくって仕方なくなるよね。ママも私の歌、褒めてくれたもの。
「ね、ママが言ってたの。上手に歌えたら皆が優しくしてくれるって。お姉ちゃん達もそうでしょう?」
うん、やっぱりママがいつも歌ってくれたこの歌にしよう。
今日は特別に第四合唱の後で四重唱のサービス!
第一合唱隊、ミミズクさん達、用意ー。
「ほら咲夜、夜遊びが始まったぞ」
「あらあら、それではさっさと終わらせて先を急ぎましょう」
――第一合唱 『木菟咆哮』
帰ったらママに教えてあげるんだ。ママとおんなじ羽の子と遊んだの、って。
「歌の後でいっぱいあそぼうねっ」
混声合唱曲 “もう歌しか聞こえない” ――開演。
ホントは100点にしたかったのですが里の人間に対する怒りから30マイナスしました
続き物みてないので間違いかもしれませんが精神年齢ガキなので^^;
>>続き物みてないので間違いかもしれませんが
メッセージ欄をご覧になって、続編があるのかと思われたのでしたら申し訳ない。
ミスティアと紅魔組との弾幕ごっこは続くのですが、SSとしては完結のつもりです。
紛らわしいコメントでしたね。ご迷惑おかけしました。
幻想郷の登場人物達はとても綺麗に見えます。里人は彼女達よりも現実の人間寄りのイメージで書いたので、怒りを覚えていただいた事は、実は嬉しかったりします。
話としては好きです オリキャラもいい味出してると思います ただアメリアに感情移入しすぎて↓2つ目の様な事を 書いてしまいました 済みませんでした
私がアメリアの様な力を持っていて慧音の様な好きなキャラがいなければ里の大人を皆殺しにしてしまうだろうと思います そんな事をしなかったアメリアはとても
素敵で儚い悪魔だと想いました 次回作楽しみにしていますw
私も娘がいるのでついつい感情移入してしまいました 餓鬼だなぁ^^; 自分
「ああ、これももう読み飽きた安易に悪役を捏造する作品か」
と思っていましたが、結果としては違いました。申し訳ありません。
誰が悪いというわけでもない、
人間と妖怪が共存できないことを前提とした幻想卿の日常茶飯事。
それは当然最後が悲劇となることは決まっているのに、期待してしまいました。
人と妖怪が末永く仲良く暮らしてしまったら、そこはもう幻想卿じゃないですからね。
しかし一人の読み手として、作家さんの内誰かがタブーを犯してくれることを期待します。
テーマは、「愛ゆえに」という具合でしょうか。
アメリアとミスティアの、ケーネから人間達への、人間達自身の。
でも悲しいことに、異質なものに対する村人達のこうした反応も、良くも悪くも「人間的」なものだろうと思います。
そして原因を作った慧音も、村人のために良かれと思って行っただけだった。そもそも彼女達と村人達の関係も最初は悪いものではなかった。誰か悪意を持った黒幕がいて、全てそいつが仕組んだというわけではなく。ボタンの掛け違えがこの悲劇を生んだ。ROMさんの仰るとおり誰が悪いわけでもない。このことにやりきれなさを感じます。
でも村人も慧音も最後は過ちに気付きました。ミスティアもアメリアも人間に復讐せずに生を楽しんでいるようで救われた気分です。これは傲慢な見方かも知れませんけど。
1000点超えるのも分かります、何気なくDLした体験版がこのような作品に出会えるきっかけになるなんて、運命ってなんて不思議なんだろう。私は創想話の末席を汚すSS書きらしき者ですが、こういった心を打つ作品を書けるようになりたいものです、これからもがんばって下さいませ。
百万回泣いた。
ローレライ親子の行く末に幸あれ。
オリキャラのアメリアがお嬢様と顔見知りという設定も好きです。
ストーリーの根幹になってしまいますが、慧音の浅慮が過ぎます。
アメリアに夜雀の子をどうかするかも聞かずに、危害の有無の考慮なしで、
一旦は受け入れたアメリアと共に放逐する動機の部分。
それと、自らの姿を隠しつつ、共に里を出て行ってほしいと言わずに
慧音自身の能力で村人を使い、陰湿極まりない方法で追い出した手段の部分。
で、悲壮感だけが残りました。
ただ、最後の段のレミリアつながりの設定は面白いです。
これに加えてアメリア&ミスチーの里からの放逐後の、辛いけどちょっと幸せ感のある
ストーリーを加えてカバーするなどしてもらえれば、もっと良かったかなと思います。
えっと、泣きました。ローレライ親子に幸あれ。
スベルカードルールが成立する前に人里に住めたのは凄い