Coolier - 新生・東方創想話

ウルトララン 第五話

2005/02/06 01:12:11
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ここは紅魔館。
本来の活用目的は、レミリアお嬢様の御家である。
しかし今は、それ以外にも別の目的で活用されていた。

   ルーミア「ふあ~・・・・・。」
  ミスティア「こんな朝っぱらから呼び出すなんて・・・。私は夜行性なのに・・・。」

朝っぱらの紅魔館入り口付近。
姿を現したのは、以前怪獣になってしまった、ルーミアとミスティア。

     鈴仙「姫~、ちゃんと歩いてくださいよ~。」
     輝夜「zzzzz・・・・・・。」

怪獣化した鈴仙と、別に怪獣にはなってない輝夜。

    ルナサ「家の修復もしなきゃいけないのに、何で・・・。」
    リリカ「仕方ないよー。働かざる者、食うべからず。しっかり働かなきゃ。」
   メルラン「あんたも何かやりなさいよ。」

家無き子な、プリズムリバー三姉妹。

    リグル「・・・・何で私がここに?」

特に何もやってない、リグモンことリグル。
そういった面々が、収容されていた。
言ってしまえば、怪獣の監獄である。

     美鈴「みんな、集まったわね。」

門番の紅美鈴は、それらの生物を統括する役目を与えられていた。

     美鈴「番号~~!!」
   ルーミア「いち!」
    リグル「に!」
  ミスティア「さん!」
    ルナサ「4。」
   メルラン「5。」
    リリカ「ろく~。」
     鈴仙「七。」
     輝夜「ふああ~~ち~・・・・。」
     美鈴「全員確認。それでは、朝礼を始めます。」

体育会系の女子寮っぽい、そんな光景。

     美鈴「門番心得~~~!!復唱~~~~~~!!!」

朝礼とは、こんなもんらしい。

     美鈴「お客様は、笑顔でお出迎え~~~!!」
     全員「「「「お客様は、笑顔でお出迎え~~~!!」」」」
     美鈴「招かれざるお客様は、即刻撃退~!!」
     全員「「「「招かれざるお客様は、即刻撃退~!!」」」」
     美鈴「お嬢様には絶対服従~~!!」
     全員「「「「お嬢様には絶対服従~~!!」」」」
     美鈴「咲夜さんには逆らうな~~!!」
     全員「「「「咲夜さんには逆らうな~~!!」」」」
     美鈴「妹様には気をつけろ~~~!!」
     全員「「「「妹様には気をつけろ~~~!!」」」」

全員が、不気味なくらい、しかし忠実に復唱する。
しかしそれは、すぐに崩れ去った。

     美鈴「私を中国と呼ぶな~~~!!!」

これが、この一声が、全ての始まりであった。
それを彼女が、悟ることは、最期の時まで無かったが・・・。

     全員「・・・・・・・。」

この一声、誰も復唱することは無かった。

     美鈴「私を中国と呼ぶな~~~~!!!」
     全員「・・・・・・・。」

内心誰もが、『何を今更・・・』とか、『使い古されたネタね。』とか、思っていた。

     美鈴「わ・・・、私の名前は紅美鈴~~~!!!」

ついに職務を忘れ、自己アピールに走る自称『紅美鈴』。
門番心得というよりは、ただの願望と言うか我侭と言うか。
殆ど自爆である。

     輝夜「あなたの名前はちゅうご・・・・むぐむぐ・・・・・。」
     鈴仙「姫、それ禁句です。」

龍の逆鱗に触れるとは言うが、相手の強さはベビードラゴンくらいか。
だとしたら、そんなに恐くは無い。
そんなことを思ってか思わずか、輝夜は遠慮なく、禁句を発しようとした。

     美鈴「・・・・・・言いたいことがあるなら、どうぞ。」
     輝夜「わかってるくせに。」
     美鈴「とある家のやんごとなき御方でも、それはそれ。これはこれ。今は私の命に、従っていただきます!」
     輝夜「でもねぇ、門番心得って言っても、貴方の名前をどうこうって、そんなの心得でも何でもないんじゃない?」
     美鈴「う・・・・・。」

痛いところを突かれる美鈴。
これを皮切りに、その場に居る全員が、美鈴を攻撃し始めた。
   
  ミスティア「大体、何時までもそんな古いこと引っ張ってたら、作者がネタに詰まったとしか思われないじゃない。」
    ルナサ「確かに。色々含む所はあると思うけど、いい加減にしておかないと。」
   メルラン「いいじゃない、中国で。」
     美鈴「よくない!」
    リリカ「名前が無いより、よっぽどマシよね~。」
     美鈴「大妖精とか小悪魔とか!あっちの方がいい思いしてるわよ!」
     鈴仙「『ウドンゲイン』よりマシじゃん。贅沢言わないでよ。」
    リグル「そうそう。私なんてゴキブリ呼ばわりよ。我侭もいいところよね~。」
     美鈴「中国が贅沢だって言うの!?ねぇ!中国って贅沢なの!?」

次々と、突っ込みを入れられる美鈴。
美鈴は攻撃を受ける度に、どんどんいっぱいいっぱいになって行く。
そして、ルーミアが、トドメをさした。

   ルーミア「ていうか、名前、中国じゃなかったの?」


 ぷち・・・・


この言葉の瞬間、彼女の中で、何かがキレた。
そして・・・。

     美鈴「中国じゃないわよぉおおおお~~~~!!!!」

悲劇は、始まった。
     
 ・
 ・
 ・

さて、丁度その頃、紅魔館の一室。

     霊夢「う~ん、メイド服ってのも、しっくりこないわねえ。」
     
少女着せ替え中と言うか何と言うか。
博麗霊夢は、メイド服を着ていた。
巫女巫女メイドとは、よく言ったものだ。

     咲夜「どう?サイズは合うかしら?」

同じようにメイド服を着た十六夜咲夜が現れた。
咲夜は普段からメイド服ではあるが。

     霊夢「う~ん、ちょっと余裕があるわね。・・・・咲夜、太った?」
     咲夜「貴方がちんちくりんなだけよ。」
     霊夢「ち・・・、ちんちくりんは無いでしょ!」
     咲夜「太った、よりはマシでしょ。」
   レミリア「あはははは。体型なんかを気にするなんて、若い若い。」
     霊夢「お子様は黙ってなさい!」

館の主人、レミリアを交えての体型罵倒大会。
ナイスバデイともぺったんことも噂される咲夜、大体ちんちくりんの霊夢、お子様レミリア。
誰が一番かと言われると、それは、まぁ、人それぞれなので・・・。

     霊夢「もう・・・。で、仕事っていうのは?」
     咲夜「あら、素直じゃない。」
     霊夢「働かざる者食うべからず、でしょ?食住の分は働くわよ。」
     咲夜「『衣』が入ってないのは気になるけど、まぁいい心がけね。」

神社は壊され、居候先として定めた永遠亭も破壊され、
困った霊夢は、この困った館に世話になることにしたのだ。

     咲夜「とりあえず・・・・・どうします?」
   レミリア「う~ん、それじゃあ、『あいつ』の相手でもしてもらおうかしら。」
     咲夜「それはいい考えですわ!」
     霊夢「断固拒否するわ。」

『あいつ』とは、レミリアの妹、フランドールのことである。
「あんなのを毎日相手にしてたら、疲れるじゃない」と、霊夢は思った。

   レミリア「いい考えだと思ったのに。」
     咲夜「それでは、お嬢様の・・・・。」
     霊夢「謹んで、辞退させていただくわ。」
     咲夜「最後まで聞きなさいよ。」
     霊夢「食事の世話、でしょ?三食血ィ吸われるなんて、真っ平御免だわ。」
     咲夜「・・・違うわよ。私たちも、そこまで鬼じゃないですよ、ねぇ?」
   レミリア「・・・そうそう。私らを何だと思ってるのかしら?」
     霊夢「その、若干の間は何なの?」

食事の度に血を分けていたら、貧血になる。
この家で、鉄分豊富なほうれん草が沢山出るとも思えないので、霊夢はこれも拒否した。

     霊夢「もっと、マシな仕事は無いの?」
   レミリア「そもそも、仕事を選好み出来る立場だと、思ってるのかしら?」
     咲夜「お嬢様。霊夢がそんなこと、考えてるはずありませんわ。」
     霊夢「そういうことよ。さ、何かいい仕事頂戴。」
     咲夜「威張って言うことじゃないでしょ、まったく。」

楽な仕事を要求する霊夢に、咲夜は少し呆れ気味だ。
どっか掃除する場所でもあったかなと、咲夜が考えていた、そのときである!


 どどど~~~ん!!!


   レミリア「ん?」
     咲夜「何・・・・?」

館全体に、大きな音が響き渡った。
少々の揺れも感じる。
とにかく、大きな音である。

     霊夢「爆発音?」
     咲夜「外で何かあったのかしら?」
     霊夢「魔理沙がうっかり、マスタースパークでも撃ったのかしら。」
     咲夜「うっかり撃てるもんなのかしら?」   
   レミリア「咲夜!霊夢!行くわよ。」
     咲夜「はい。」
     霊夢「え?ちょっと、このままで行けって言うの!?」

メイド一人、何ちゃってメイド一人(本業:巫女)を引き連れて、
レミリアは、爆発のした方へと向かっていった。
館に何が起こったのか、それを確かめるために。

     霊夢「とと・・・!ちょっと!この服動き難いわよ!」

着慣れない服に対し、不満を発する霊夢。
果たして、靴が脱げそうになったのか、
服がずれそうになったのか、スカートがずれそうになったのか。
その辺は、秘密だ。

 ・
 ・
 ・

時を同じくして、紅魔館名物大図書館。
魔法の森の魔法使い二人は、調べ物をしていた。
今回ばかりは、メイド長及び図書館主の了承を得ているので、
不法侵入等ではなく、合法である。
     
    アリス「で、どうなの?」
    魔理沙「駄目だな。」

合法的に入ってきた時に限って、成果が得られないのは、何かの皮肉か。
二人の調べ物は、いっこうに進まない。

    魔理沙「おお~い、そっちはどうだ~?」

魔理沙は奥に向かって声をかける。

  パチュリー「大声あげない。進むモノも進まないわ。」
     慧音「進まんモノも、進まんがな。」

奥からは、幻想郷屈指の知識人であろうと思われる二人、
パチュリー・ノーレッジと上白沢慧音が姿を現した。

    魔理沙「む~・・・。そう簡単に、暴けるもんじゃないか。」

四人は、昨今の巨大妖怪出現の原因を探っていた。
紅魔館には膨大な資料が有り、加えて現在は、それなりのサンプルも有る。
一連の事件の原因を調べるのに、今の紅魔館は非常に都合がいい。

  パチュリー「巨大化の秘術なんて・・・・・。沢山あって、どれが原因だか分かったものじゃないわ。」
     慧音「おい、この、『ミッシングパワー』って言うのはどうなんだ?」
    アリス「それ、本の著者を見た方がいいわ。」
     慧音「ん?」

慧音が持っている本は、(割と最近)著された、鬼についての文献である。
著者は、『Patchouli Knowledge』。

     慧音「ふうん。これはお前が書いたのか。凄いな。」
  パチュリー「まぁ、色々あったから。」
     慧音「梅雨、幻想郷に鬼が現る・・・、と。ふむふむ・・・・。」

目の前の魔女の著書とはいえ、鬼についての文献はこの世界では珍しい。
慧音は、その本を真剣に読み始めた。
一方、他の三人の話は、その鬼が犯人ではないかと言う方向に進んでゆく。

  パチュリー「鬼についてはまだまだ情報が足りないわ。力を他人に与えれるとか、できるのかしら?」
    魔理沙「萃香が犯人なら紫に言って呼び出し・・・・、ああ、あいつは今、冬眠中だ。」
    アリス「でもまぁ、その線は薄いでしょうけどね。」
    魔理沙「いや、わからんぜ?今の紅魔館を見ろ。えらく騒がしいじゃないか。」
  パチュリー「望ましい状態じゃあないわね。」   
    アリス「騒がしいって言っても、どんちゃん騒ぎってわけじゃないでしょ。」
    魔理沙「どんどんばん、ずば~ん!な騒ぎだな。」

議論はしても、結論は出ない。

    魔理沙「何か、重要な手がかりが掴めればなぁ・・・。」
    アリス「『重要』な手がかりだから、そう簡単には見つからないんでしょうね。」
  パチュリー「また出て行くのは面倒だから、この件は貴方達に任せるわ。」
    アリス「任せられてもねぇ。」
    魔理沙「だな。『魔理沙にお任せ!』なんて台詞、言えないぜ。」
    アリス「そんな台詞、誰も期待しちゃくれないわ。」

『アリスにお任せ!』とも、『パチェにお任せ!』とも、『けーねにお任せ!』とも言えない現状。
何かと頭を使う四人。
そんな時である!


 どどど~~~ん!!!


     慧音「ん?」
  パチュリー「何?」

館全体に、大きな音が響き渡った。

    魔理沙「おおっ!火事か喧嘩か?」
    アリス「あんたじゃないんだから。・・・でも、何かあったのかしら?」
  パチュリー「何かあったから、ああいう音がするんじゃないの?それに、この程度のこと・・・・・。」

割と日常茶飯事だし、これぐらいのことじゃ、私の書斎はビクともしない。
パチュリーが、そんな言葉を続けようとした矢先。


 ぐらぐらぐら・・・・


    アリス「あ!」

アリスは、『あること』に気付いた!

    魔理沙「いっ!」

魔理沙は、『あること』びっくりした!

     慧音「う・・・・・。」

慧音は、『あること』愕然とした!

  パチュリー「え?」

パチュリーは、『あること』に遅れて気付いた!
が、それは手遅れであった。

    魔理沙「お!」

魔理沙は、どうせだから『お』を付け加えた。
が、それでこれから起こる悲劇が、防げるわけではなかった。


 バサバサバサバサバサ!!


  パチュリー「ああぁぁぁ~・・・・・・・。」


揺れた拍子に、山積みにしてあった沢山の本が崩れ、一気にパチュリーに襲い掛かった!
哀れパチュリーは、本に埋もれて身動きが取れなくなってしまった。

  パチュリー「・・・・・・・・・。」
    魔理沙「お~い、生きてるか~?」
  パチュリー「・・・・助けてぇ~・・・・。」

辛うじて、言葉は出せるようだ。
しかし、魔法の詠唱は難しいし、自力で脱出しようにも本が重すぎる。
パチュリーは、外部に助けを求めるしかなかった。

    魔理沙「どうする?」
     慧音「どうするって・・・・、助けないわけにもいかんだろう。」
    アリス「まぁ、ここは魔理沙に任せるわ。私たちは、外を見てくる。」
  パチュリー「こんな危険分子、おいてかないで~・・・・。」
     慧音「じゃ、任せた。」
  
アリスと慧音は、パチュリーの救出は魔理沙に任せ、図書館を出て行った。

    魔理沙「さてと、鬼の居ぬ間になんとやら・・・・。」
  パチュリー「居るし、鬼じゃない~・・・・。」

パチュリーが救出されたのは、少ししてからだったそうな・・・。

   
 ・
 ・
 ・

さて、紅魔館のある場所から、変な爆発音がしてから数分。
いつもの面々が、現場に集まりつつあった。
現場は、紅魔館の玄関。

     霊夢「も~、何があったのよ一体!」
     慧音「おおい、何なんだ一体。」
    アリス「霊夢のその服装は、何なのよ一体。」
     咲夜「一体一体って、さっきから五月蝿いわよ三体。」
   レミリア「ねぇ、あれを見て、四体。」
 

 どど~ん!


 どど~ん!

     
     咲夜「あ、あれは・・・・・!」
    
咲夜が目にした驚愕の光景、それは何と!

     中国「サイコーランブ!サイコーランブ!」


 くるくるくる~


っと回って、


 ドバババババババババババ!!


と、弾幕を放ち、


 どか~ん!!


 どか~ん!!


辺り構わず破壊活動を行う、哀れ巨大化した紅魔館門番の『紅美鈴』の姿であった。
便宜上、一先ずは中国とでも呼んでおこう。
中国の攻撃によって紅魔館の入り口付近は、既に壊滅的なダメージを受けている。

    リグル「ひええええ!!助けてぇ~~!!」
   ルーミア「わ、私が悪かった!悪かったから~~!!」
  ミスティア「食われるのは嫌ぁ~~!!」

その辺の妖怪たちは、己の浅はかさを呪いつつ、ただただ逃げ惑うしかなかった。

    リリカ「姉さん!今こそ再び巨大化して、あいつをやっつけるときよ!」
   メルラン「無茶言わないでよ。こっちだって、好きででっかくなったわけじゃないわ。」
    ルナサ「・・・・・私が矢面に立たされてる気がするのは、気のせいかな?」
    リリカ「気のせいだよ~。」
   メルラン「そうそう、気のせい気のせい。」
    ルナサ「じゃあ、とりあえず、その手を離しなさい。私が動ける程度に。」

姉が妹達をかばう、麗しき家族愛を見せるプリズムリバー三姉妹。

     輝夜「永琳!永琳たすけて永琳!」
     鈴仙「無理ですよ~!師匠は屋敷の建て直しで忙しいんですから~。」
     輝夜「イナバ、無理矢理にでも引っ張ってきて。それが出来ないならアレを・・・・。」
     鈴仙「仰りたい事は分からないでも無いですが、無理なもんは無理ですし、嫌なもんは嫌です。」
     輝夜「・・・・えーりんたすけてえーりん!」
     鈴仙「だから師匠は・・・・。もぅ、悪戯が過ぎますよ、姫・・・・・。」

戦える程度の力はあるのに、動こうとしない宇宙生物。
宇宙兎は少々呆れ気味だ。

     咲夜「何てこと・・・・。」

こうなっちゃあ、掃除が大変じゃない。
咲夜は、そう思った。

     咲夜「お嬢様・・・・。」
   レミリア「わかってる。こいつらのせいね。」

ジロリ、とレミリアは、とある場所を睨みつけた。
そこには、

   ルーミア「えええ!私らの責任~!?」
    リグル「何でよぉ!そっちの方にも加害者が居るでしょ~!?」
  ミスティア「何で私らだけ~!?」

固まって、必死に攻撃を防いでいる、ルーミア、リグル、ミスティアの三人が居た。
何かとんでもない状況で、いきなり責任を擦り付けられた三人は、レミリアに猛抗議した。
しかし、

   レミリア「・・・・黙ってろ。」


 ゴウ!


    リグル「ひっ・・・・!」

強大な妖気を放ち、レミリアは訴えを一蹴した。
昼間とは言え、レミリアのその力は、その辺の妖怪を圧倒する強さである。

   レミリア「言い訳だけは聞いてやる、だから黙れ。」
   ルーミア「い、言ってることがむじゅん・・・・・。」
   レミリア「黙れって、言ってるわ。」
   ルーミア「あわわわわ・・・・・。」
    リグル「ひええ・・・・・。」
   レミリア「黙って、遺言を言え。骨は、肉ごと煮込んでやるわ。」
  ミスティア「ぼ、暴君だ・・・・。」

巨大妖怪中国と、吸血鬼レミリア。
二重の恐怖に戦慄する妖怪たちは、肩を寄せ合って震えている。

     咲夜「お嬢様。この程度の奴らに脅しをかけなくても・・・。」
   レミリア「だから咲夜は甘いのよ。小さなことからコツコツと、よ。」
     咲夜「でも、大は小を兼ねるとも言いますわ。もっと強力な存在に圧力を・・・。」


 ごおおおおおおお!!


     咲夜「お嬢様!」
   レミリア「わっ!?」

理性を失ってか、それとも自分の存在を無視した展開に腹を立ててか。
中国は、自分の主であるはずのレミリアにまで攻撃を仕掛ける。
     
     中国「ガアアアアアアア!!!」     
   レミリア「危ないわねぇ。放っておいたら、ロクなことにならないわ。」
     咲夜「では、ずばっと退治しますか。」
   レミリア「任せたわ。私は、あいつらをシメておく。」
     咲夜「かしこまりました。」

咲夜は、暇得隊一党に向かって、指令を出した!

     咲夜「これより、暇得隊の本業、怪獣退治を開始します!」
     霊夢「って、これ自体は副業でしょうが。」
     咲夜「ターゲットは・・・、そう・・・、う~ん・・・、アレよ!」

ビシっと指をさすが、『アレ』では何かキマらないなぁと思う咲夜。

    アリス「『中華怪獣チャイナ』。」
     咲夜「ターゲットは、中華怪獣チャイナよ!」

再び、ビシっと指をさす。
今度はキマったと思ったのか、満足気な表情をしている。

     霊夢「いいの?やっちゃって。」
    アリス「自分の家のことぐらい、自分で始末しなさいよ。」
     慧音「そも、あれはお前の仲間だろう?妖怪相手とはいえ、私は気が乗らないな。」
     咲夜「この際、止むを得ないわ。放っておいたら、私の仕事が大変になる。」
     慧音「それだけで・・・。」
     咲夜「ノリが悪いわねぇ。」

咲夜のキマり具合に反して、暇得隊の士気は低い。
そこで咲夜は、一計を案じた。
     
     咲夜「なお、この瞬間、下っ端メイド博麗霊夢の仕事は、玄関掃除に決定しました。」
     霊夢「ええ!?」
     咲夜「これは決定事項。これを拒否するなら、魔理沙の家でも掃除してることね。」
     霊夢「むむ・・・・。」
     咲夜「ちなみに、アレを早く始末しないと、この霊夢の仕事が大変なことに・・・。」
     霊夢「夢想封印!行け!」


 ごおおおおおおお!!


 どっか~~ん!!


   チャイナ「ガアアアアア!!」

霊夢の夢想封印がチャイナを直撃する。
しかし、効果は薄い。

     慧音「おい!いくらなんでも変わり身早すぎないか!?」
     霊夢「うっさい!早くあいつを退治するのよ!」
     咲夜「あ、そうそう。これが上手く片付いたら、図書館の出入り、パチュリー様に口を聞いてあげても・・・。」
    アリス「アーティフルサクリファイス!」


 どっか~ん!!


    チャイナ「ギャアアア!!」

アリスも手投げ人形爆弾で攻撃する。
が、やはり効果は無い。

     アリス「う~ん・・・・。」
      霊夢「時間無制限ミッシングパワーよ!手数で押すわ!」
      咲夜「それしか無いわね。」

咲夜もナイフを取り出し、攻撃する。
手数は暇得隊が圧倒的に多いが、チャイナの頑丈さは、その手数を物ともしない。
手こずる暇得隊の中で、慧音だけは何故か、その攻撃に加わろうとはしなかった。

      慧音「(何故だ・・・。あいつは妖怪。守る必要など、無い。)」

慧音は、突如自分の中に発生した感情に、戸惑っていた。
      
      慧音「何故・・・・、何故私は、あれを攻撃出来ない!」
      霊夢「そこ!サボらないの!」
    チャイナ「サイコーランブ!!」


 どばばばばばば!!


チャイナの、美しくも巨大な弾による弾幕!
攻撃が大味なので避けやすいが、当たればひとたまりも無い。

      霊夢「っと・・・!もう!毎度毎度、こういう手合いは、攻撃が効いてるように見えないわ!」
     アリス「魔理沙はまだ出てこないの!?あの力馬鹿の攻撃なら、少しは効くと思うのに!」
      咲夜「このままじゃ消耗戦ね・・・・。何か、手立ては・・・・。」


 ぴか~~~!!


     霊夢「!」
     咲夜「こ、これは・・・・・!」

唐突に、玄関の一角が光った。
そして!
 
 ウルトララン「ヘア!」

ウルトラランが現れた。
どうやら、本体である魔理沙が、図書館から出てきたようだ。

     慧音「ウルトララン・・・・!」
     霊夢「ウルトラランよ!」
     咲夜「ウルトララン!そいつを懲らしめてやって頂戴!・・・掃除が大変にならない程度に。」

ウルトララン現る所、廃墟と化す。
そんなことが囁かれているので、咲夜はそこが心配であった。
しかし、この場はウルトラランに頼らざるを得ない!
がんばれ、ウルトララン!
紅魔館を守るのだ!

 ウルトララン「・・・・・・・・・。」

だがウルトラランは、動こうとはしなかった。

   チャイナ「アチョ~!」
 ウルトララン「グ!」


 ガッ!

  
   チャイナ「ホゥ~!!」
 ウルトララン「ムウ!」


 ガッ!


動かないウルトラランを、一方的に攻撃するチャイナ。
ウルトラランは、攻撃を防御したり、避けたり、喰らったりである。
自分から攻撃を仕掛けることは、しない。

     咲夜「どういうこと?やられっぱなしじゃない。」

この行動は、咲夜にも読めなかった。

    魔理沙(おい!やられっぱなしじゃないか!反撃しろ!)
 ウルトララン「(気が・・・・、乗らないな。)」
    魔理沙(あ~?何言ってやがる。)
 ウルトララン「(・・・・・私には解るんだ。あいつの気持ちが、痛いほど・・・。)」
    魔理沙(そりゃあ、殴られると痛いのは解るけどな。)

とにかく、私を巻き添えにするのは勘弁してくれ。
魔理沙は、そう思った。

     慧音「・・・・・・あいつ、まさか・・・・!」

慧音は、あることに気が付いた。
その表情は、全ての謎を解いた探偵のようであった。

     慧音「そうか・・・・。そういうことだったのか・・・・。」
     咲夜「ん?」
     慧音「私やウルトラランが、アレに攻撃出来ない理由だ。」
    アリス「理由?何言ってるのよ?」
     慧音「あいつは、わかってるんだよ。」
     霊夢「何を?」
     慧音「ネタキャラにされた悲しさだ。本来のキャラを壊され、わけのわからんネタを押し付けられた。
        しかもそれが、殆ど公式化してるんだ。その悲しみ、苦しみ・・・・・・・・。ケヒヒや鼻血、
        人形だけが友達などなど、そんな一部にしか通じないネタとは、問題のならん辛さだ。私だって、
        変身した途端、やれ『バッファローマン』だ、やれ『きもいけーね』だと言われ、未だにきもい
        きもいと言われ続け・・・・・・。あいつだって、スッパテンコーだ・・・・。だがな・・・。
        私達など、永く、ずっと『中国』と言われ、迫害されてきたあいつに比べれば、幾らかはマシだ!
        あいつは・・・・。あいつはこの苦しみに、ずっと耐えてきたんだ!」

ネタキャラの苦しみを語り、美鈴の苦悩を代弁する慧音。
その言葉は、悲哀に満ちていた。

     慧音「お前らに!お前らなんかに!この苦しみがわかってたまるか!」
     霊夢「そこまで思いつめなくても・・・・。」
     慧音「五月蝿い!あいつを追い詰めたのはお前達だ!」

慧音は、チャイナの方に駆け出した。

     慧音「おいそこの!暴れると、益々バカにされるぞ!やめろ!」
   チャイナ「ホオォゥゥゥウウウ~~!!」


 どど~ん!!!!


チャイナが、震脚を放った!

     慧音「う・・・・・・く・・・・・!」

空気が震え、慧音の動きが止まる。

   チャイナ「メェェ~~~~リィィイイ~~~ン!!」
     慧音「そこまで堕ちたか!この、馬鹿者が!!くそ!」

最早、慧音の悲痛な叫びも、チャイナこと美鈴には、届かなかった。
チャイナは、目の前のウルトラランに、尚も攻撃をしかける!!

   チャイナ「アタタタタタタタタ!!」
 ウルトララン「イタタタタタタタタ!!」


 ドガガガガガガガガ!!!


   チャイナ「ホアッチャア!!」
 ウルトララン「アバッ!」


 ずず~ん・・・・


チャイナの猛攻は、ウルトラランのガードを崩すまでに強かった!。
乱舞を喰らったウルトラランは、とうとうダウンしてしまった!

 ウルトララン「グ・・・・ウ・・・。」    
    魔理沙(おい!防戦一方じゃないか!)
 ウルトララン「(私には、あいつを攻撃することは出来ない・・・・・!)」
    魔理沙(ああもう!このままじゃあ、また大怪我だ!)

この期に及んで、スッパテンコーの宿命を背負わされたウルトラランこと八雲藍。
ネタを持たされた者として、藍は彼女を、どうしても攻撃することは出来なかった。
どうすれば、こいつを救えるか?
慧音も、藍も、それを考えていた。

   レミリア「意外と情けないわね。形はでかいのに。」
     咲夜「あ、お嬢様。お仕置きは済みましたか?」

レミリアが、割とすっきりした顔で出てきた。
小骨に煩わされてない以上、ミスティアを喰ったりはしていないようだ。

   レミリア「適当に殴って、フランドールの部屋に押し込めてきたわ。」
     咲夜「じゃあ、これが終わったら、出してやりますか。人手は必要ですから。」
   レミリア「そうね。・・・・で、これを終わらせる手段は有るのかしら?」
     慧音「手段など、無い。手詰まりだ。あいつが、全ての怨念を吐き出すまでは、止まらんだろう。」
   レミリア「それじゃあ、困るのよ。もっと、手早く、後味すっきりに・・・。」
     霊夢「そんな手段、有るの?」
   レミリア「沢山有るわ。どれも実行不可、だけどね。」
    アリス「駄目じゃない。」
   
沢山有る、と言うのは、ハッタリだろうと、一同は思った。
と、そんな時である。

  パチュリー「やれやれ・・・、やっと出られたわ。」
   レミリア「あ、パチェ。いいところに来てくれたわ。」
  パチュリー「いいところ?う~ん、どっちかと言うと、悪いところに来た気がしてならないわ。」

本に埋もれていたパチュリーが、ようやく現場に姿を現した。
レミリアはすかさず、パチュリーに尋ねた。

   レミリア「パチェ。あいつの名前、今すぐに調べられる?」
  パチュリー「調べるも何も・・・・。『ホンメイリン』でしょ?」

皆に忘れられた存在を、さらりと言ってしまうあたりは、流石知識人である。

   チャイナ「!?」
 ウルトララン「・・・・ム?」

どうしたことか、パチュリーの言葉で、チャイナの動きが止まった。

     咲夜「動きが、止まった?」
   レミリア「やっぱりね。」
     咲夜「どういうことです?」
     慧音「あいつは、自分の本名に執着している。故に、自分の本名を呼ばれると、ついつい反応してしまう・・・。」
   レミリア「つまり、今のあいつは、自分の本名が最大の弱点なのよ!」
  パチュリー「流石ね、レミィ。」
     咲夜「お嬢様の慧眼、感服致しましたわ。」
   レミリア「はっはっは。もっと褒めなさい。遠慮なく。」
     霊夢「まあ、その肝心の部分を忘れてたわけだけどね。」
   レミリア「そこ。余計なこと言わない。」
    アリス「でも、弱点がわかったところで、それをどう効果的に使えるか、よね。」
     咲夜「う~ん・・・・。」

弱点が分かっても実行出来なければ、意味が無い。

     慧音「・・・・策なら・・・ある!あいつを、救う為のな。」
     咲夜「あるの?」
     霊夢「私は、早く終わってくれれば、それに越したことはないけど。」
  パチュリー「何もしないよりはマシね。さっさと実行に移した方がいいわ。」
     咲夜「指揮は、任せてあげるわ。」
     慧音「心得た!」

指揮が慧音に移る。
慧音は早速、暇得隊に指示を出す!

     慧音「紙と筆を持って来い!両方、出来るだけ大きいやつだ!」
     咲夜「はい、持って来たわ。」
     慧音「時間操作か!よし!それに、出来るだけ大きく、あいつの本名を書くんだ!
     霊夢「じゃあ、私が。」

普段、御札とかを自作しているであろう霊夢は、恐らく達筆だ。
綺麗な文字が期待できる。

     霊夢「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
     慧音「早くしろ!」
     霊夢「五月蝿いわね!あいつの名前を思い出してるのよ!」
     慧音「忘れてるなら名乗りを上げるな!」

霊夢は、何も考えていなかった。

     咲夜「ああもう!私が書くわ!」
     慧音「頼む!」

器用さならアリスにも負けない咲夜が、名乗りを上げた。
彼女もきっと、達筆だ。

     咲夜「ほん~・・・、み~・・・すず~・・・・・。出来た!」
     慧音「よし!」
  パチュリー「違ってるわ。」

正解は『ホンメイリン』であって、決して、『ホンミスズ』では無い。

     慧音「・・・・・・。」
     咲夜「・・・・・・・・パチュリー様、お願いします。」
  パチュリー「仕様が無いわね。」

仕方なく咲夜は、パチュリーにバトンタッチした。
仕方なくパチュリーは、それを引き受けた。
パチュリーなら、間違えることは、万に一つも無いだろう。

  パチュリー「ほん~・・・・・、メイ・・・・・・。」


 ふら~・・・・・


 ばった~ん!!!


筆を進める途中で、パチュリーは倒れてしまった。

     咲夜「パチュリー様!」
   レミリア「パチェ!」
  パチュリー「・・・・・・・うう・・・・・、貧血でもう駄目・・・・・。」
     慧音「ああもう!病人が無理するな!」
    リリカ「うちの姉さんも、半病人だよ~。」
     慧音「外野五月蝿い!」


 テンコー!テンコー!


     咲夜「テンコタイマーが!」

この状態でウルトラランがスッパテンコーしてしまったら、
目も当てられない地獄絵図が展開されることは間違い無い。

   チャイナ「メイリーン!メイリーン!」
    魔理沙(ああもう!あいつら何遊んでるんだ!)
 ウルトララン「(く・・・・!このままでは・・・!)」

このままでは、チャイナみたいに理性を失い、スッパテンコーして大変なことになってしまう!
ウルトラランは、哀しみ、欲望、焦り、様々な感情と戦っていた!

    アリス「はい出来た。これでいいでしょ?」
     咲夜「って、何時の間に。」
    アリス「あんた達がドタバタしてる間に、書いたのよ。」

見るに見かねたアリスは、ドタバタしている影で、さっさと文字を書き上げてしまったのだ。
器用さはピカイチ、頭脳派でもあるアリスなら、誤字の無い、素敵な文字が期待出来る。
最初から、コイツに頼んでおけばよかったな、慧音は、そう思った。

     咲夜「パチュリー様、ご確認を。」

ぶっ倒れたままのパチュリーに、それを見せる。
パチュリーは震える手を上げ、親指を立てた。
大丈夫、と言う所であろうが、本当に確認したかどうかは怪しい。

     慧音「よし、私が行く!人形に、その紙を持たせて、あいつの目の前に拡げろ!」
    アリス「ん。わかったわ。」
     慧音「ウルトララン!そいつの動きを止めろ!」
 ウルトララン「ヘア!」


 ガシ!


   チャイナ「グアアアアアア!!」

慧音の指示で、ウルトラランはチャイナを羽交い絞めにする。
そして慧音は、チャイナの目の前に飛び、声をあげた!

     慧音「中国よ!!お前の名前をここに記す!!鎮まり給え~~~~!!」
   チャイナ「!!?」

突然の叫びに、チャイナは驚いた。
と、同時に、自らの本名が書かれた紙が現れたことに、二度驚いた。

     慧音「中国よ!!鎮まり給え~~~~!!」
   チャイナ「オ・・・オ・・・。」

チャイナは戸惑い、そして徐々に、明るい顔になってゆく!
ここだ!と言わんばかりに、慧音は一声をあげた!

     慧音「お前の名前は、ぇぇと・・・『ホンメイリン』だぁ~~~!!!」
   チャイナ「ウオオ・・・・・、オ・・・・・。」

慧音の声と、目の前の文字に、チャイナは感動している!

     慧音「(このまま・・・。このまま、元に戻ってくれ!)」

慧音は、心の中で、そう叫んだ。


 ビリ!


     慧音「え?」

唐突に、その叫びを引き裂くような、そんな音がした。


 ビリビリビリ!!


    アリス「あ・・・・・。」


何と、紙を持っていたアリスの人形が、紙を引っ張りすぎてしまったのだ!
『ホンメイリン』と書かれた大きな紙は、無惨にも真っ二つに引き裂かれてしまった!

   チャイナ「ア・・・・ア・・・・・アア・・・・!!」


驚愕するチャイナ。
その目から、何やら液体が分泌され始めた。
涙腺から分泌される、塩分を含んだ液体である。


 ドドドドドドド!!


   チャイナ「オ~イオイオイオイオイオイ・・・・・。」

チャイナは、滝のように涙を流し、泣き崩れた。
涙は川となり、そこらに散乱した瓦礫を流してゆく。

     咲夜「お嬢様、高台に。」
   レミリア「わかってるわ。」

吸血鬼は、流れ水の中は動けない。
他のメンバーも、高台に上る。

     慧音「・・・・・・・・・・。」

その光景を、慧音は呆然と眺めている。

     霊夢「・・・・アリス。」
    アリス「しゃ、しゃんは~い・・・・。」
     咲夜「あ~あ・・・・。」
    アリス「ほ、ほら~い・・・・。」

アリスは些か、居心地が悪そうだ。

   チャイナ「ホン・・・・、メイ・・・・、リン・・・・。」


 しおしおしおしお・・・・


チャイナが、見る見るうちに縮んでゆく。

     美鈴「・・・・・・・・・・・・・・・。」

そこには、本名『ホンメイリン』が、静かに横たわっていた。

 ウルトララン「・・・・・・・・・・。」
     慧音「ウルトララン・・・・。」


 テンコー! テンコー!


このような中でも、テンコー音は容赦なく響き渡る。

 ウルトララン「デュワ!」

このまま居るのも滑稽と思ったか、テンコーをやりたくないからなのか。
ウルトラランは、そのまま何処かに飛んで行った。

 ・
 ・
 ・

別に死んでは居ないが、何故か美鈴は土葬された。
立派な墓も建てられた。

     慧音「許せ・・・。私は、お前を救ってはやれなかった・・・・。」

アリスが書き、人形が真っ二つに破ってしまった紙がくっつけられ、
墓前に捧げられている。

 『 イリン ホンメ』

     慧音「・・・・・・誰の名前だよ・・・・。」

一人、ツッコむ慧音。
 
     慧音「犠牲者はみんなこうだ。ネタキャラにされると、戻ってはこれない・・・。」

慧音は独り、墓に手を合わせた。
明日は己が身・・・・。
そう、思いながら。


 ボコ!


     美鈴「私は・・・・・!死なない!」
     慧音「うお!」
     美鈴「この名前を・・・!幻想郷中に広めるまでは!」

土の中から、美鈴が這い出てきた。
そう、彼女は帰ってきたのだ。
サイズは元に、怨念はそのままに。


 バッ!


美鈴は、墓前に供えられていた紙を手に取った!

     美鈴「この名前!紅き美しい鈴!この名を・・・!!」
     慧音「やめろ!それは・・・・!」

それは、間違って『 イリン ホンメ』と補修されてしまった紙だ。
このまま彼女が行ってしまえば、『 イリン ホンメ』の名が広がってしまう!
慧音は、美鈴を止めようとした。

     美鈴「邪魔をする気!?」
     慧音「その紙をよく見ろ!その紙は!」
     美鈴「邪魔をするなら、貴方を倒す!」

狂気に取り憑かれた美鈴に、慧音の声は届かなかった。

     慧音「・・・・是非も、無し!」

美鈴を止めるには、これしかない。
慧音は、『歴史を食べる程度の能力』を発動させた!

     美鈴「く・・・・!」
     慧音「今日のことは、全て無かった事になる・・・・。お前の中では、な。」
     美鈴「あ・・・・。」


 ばた・・・・


美鈴は、意識を失った。

     慧音「今日は、何も無かった。悲劇も、惨劇も、何も・・・・、な。」

慧音は、間違って補修された紙をグシャグシャに丸めて捨てると、
美鈴を抱えて、紅魔館の中に入って行った。
忌まわしき歴史は闇に葬られ、今日の記憶を失った美鈴は、
次の日には何事も無かったかのように、業務をこなしていた。

     美鈴「中国じゃないわよぉおおおおおおお!!!」
     慧音「やめろ~~~~!!!」

そして、歴史は繰り返す・・・・・。


と、いうわけで今回のお話は、あの有名なところから持って来ました。
元ネタ同様、救い様の無いお話になってしまいましたが…。

…長い。色々書いてるうちに、長くなりすぎてしまいました。これまで私が投稿してきた作品中、最も長くなってしまったかもしれません。余計なものが多すぎたかと、反省。次に活かします。

それにしても、怪獣。音は同じなのに、語呂の悪いこと…。
あとウルトララン、活躍してない…。次こそは(そればっか)。
Piko
[email protected]
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コメント



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16.無評価七死削除
「アタタタタタタタタタタタ
「イタタタタタタタタタタタ

に笑いました。

それにしても、ウルトラランもさることながら、連載開始より
マリ者の影がみるみる薄くなってませんか^^; 
37.80名前が無い程度の能力削除
笑いどころがありすぎて
腹筋がー腹筋がーーーーー
38.70名前が無い程度の能力削除
頑張れウルトララン!
39.80名前が無い程度の能力削除
ジャミラだっけ?