「――なぁ、あいつはいつもあそこにいるのかい?」
雪…いや、どちらかというとマリンスノーという表現に近いようなささめ雪が旧地獄街道にひらひらと積もり始めた時の事である。
尚も気温は下がる一方で、この新雪の中半袖で闊歩する彼女がとても目立っていたのは言うまでもない。
彼女が目立つのはその格好からだけでなく、その種族そのものに対する畏怖からも来てはいるのだが。
この半袖娘の名は星熊勇儀。鬼である
大昔は萃香や他2人と共に山の四天王として、幻想郷は妖怪の山を支配していた彼女であるが
とある事件から人間を嫌うようになり、人間が近づかないだろう地底に大帝国を作り、そこで地上の嫌われ者達を引き連れて共に暮らしていた。
街道を通りかかる住民達に何度も同じ質問を繰り返す彼女に対し、住人達は顔を上下させる対応しか返事を知らなかった。
決して彼女自身は悪い妖怪ではない事は皆重々承知しているのだが、その喧嘩っ腰の早さを考慮すると当然の対応ではあった。
「そうか、あいつはいつもあんな寒い所に1人でいるのか」
特に町民達の反応に違和感も覚えず、気付けば旧地獄街道から3里ほど先にある橋へと足を運んでいた。
彼女が探していた相手はいつもの事のように降りしきる雪の中、半袖にマフラーというなんとも不自然な格好をし
吐く息を白く吹き上げ、両肘を橋の手すり置き寄りかかっていた。
空を見上げる彼女は、まるで雪がどこから来ているのかを模索しているようだった。
「よぉ、橋姫様」
「…星熊?なんでここに居る」
彼女らは地底で有る程度名を馳せている妖怪達であるが、名前以上に彼女らは顔見知りであるようだった。
勇儀が橋姫の本名を知っているかどうかは定かで無いが。
「どうもこうも、ただ最近地獄街道の連中の付き合いが悪くてねぇ、どうだい?一杯」
「『どうもこうも』じゃないよ。用がそれだけならとっとと帰りな、現在橋姫は絶賛お仕事中よ」
「仕事をしてるようには見えないがねぇ」
「セキュリティが一番働いてる時は、何のアラートも鳴らなかった時。じゃなくて?」
「電源が切れてちゃ仕方ないだろうが」
「私はこの橋を守るので手一杯なのよ。酒の相手なら他をあたりなさい」
もう1人の半袖娘の名は水橋パルスィ。橋姫である。
主に嫉妬心を操る程度の能力を持ち、彼女自身も嫉妬深い妖怪である為、あまり好まれる妖怪ではない
橋の番人として通行人を見送り、お迎えをするのが彼女の仕事であると彼女は勝手に思っているが
特に誰から仕事を任されたわけでもなく、彼女が勝手にやっていることだった
しょっちゅう行き交う人達にちょっかいを出したりと、番人として役に立ってるのか立ってないのかがさだかでない有り様である。
「ういしょ」
「人の話を聞きなさい。妬ましいわね」
「話は聞いてるさね。その上での行動だ」
勇儀はその場に胡座をかき、そしてどこからともなく取り出した鬼の瓢箪を取り出し
中に入っている酒をこれまたどこから取り出したのやら、漆塗りの杯の中にトクトクと独酌しだした。
「今年ももう雪見酒が出来る季節になったか、季節の移ろいというのは早いモンだ」
「…」
「今までこの地底で何百年と生きてきたが、毎年必ず雪は降って来る。おまえさんよ、これは何故だか分かるかい?」
「…」
「そりゃおまえさん、毎年冬が来るんだから雪も毎年降るのも当然さね!あっはっは!」
「…うるさいなぁ」
橋姫はだんだん腹が立ってきた。元々彼女はマイペースな性格であるが、
こうもズカズカ自分のスペースに用もなく入ってきて腹が立たない人というのも珍しいだろう
「…ねぇ」
「なんさね?呑む気になったのかい?」
「…うるさいのだけれど。そこに居ても良いからせめて静かにしてくれないかしら。」
「…」
トクトクと、開いた盃に瓢箪から酒を注ぐ。
「なぁ」
「なによ」
「おまえさん、昔は鬼だったんだって?」
「……」
橋姫は一瞬瞬きするのを忘れたがすぐに元の体制に戻り、星熊の発言を頭の中でなんども繰り返しその発言の真意を探った。
鬼には二種類の鬼が居る。星熊や伊吹のようにそもそも生まれ付き鬼である、種族の鬼と
橋姫のように、とある負の感情が幾重にも重なり鬼となる、変身譚系の鬼とがある
変身というのだから、もとの妖怪に戻れる可能性もあるにはあるのだが
一端鬼化してしまえば元に戻るのは容易ではなく、その原因となる事柄を解決したからといって易々と元に戻れるわけではない。
とてつもなく長い時間が解決してくれる時もあるし、別の出来事によって消される時もある。元の姿に戻る・戻らないもその鬼によって千差万別である。
確かに、星熊の言うとおり、橋姫は大昔前には鬼であった。
「星熊…貴女、どこまで知ってるの?」
「えーと、ま、結構?」
橋姫はもう一度白い息を吐き出し頭をかかえ、半ば諦めたような仕草をした。
「…はぁ。まぁ別にいいのだけれどね
あまり気持ちの良い話ではないから、調子に乗って言いふらさないようにお願いね」
「鬼だった事が気持ち悪いとは心外さね。ここに今も楽しそうに鬼をやっているのが居るじゃないか」
「あんたと同類だったと思われたくないのよ」
「ひゃあ、酷い言いようだ。まぁそれでなんだ、ここんとこずっと地底の嫉妬心を萃めてるのも、その影響か?」
「……え?」
「私の友人に萃めるのが得意な酔っぱらいがいてね、この感覚には慣れてるんさ
元々うさんくさい連中や根暗な奴が多いこの地底がここまでにぎやかな時点で誰かしらが何かの手を加えているとは思ったが…
それがおまえさんだとはまぁ、気付いたのはついこの前だったがね。
何があったか皆に暴露しろとはいわんよ。ただ、少なくとも私に話す義務はあるんじゃないか?
知っているんだろう?『私の事』も。」
橋姫は一瞬何を言われているのかがわからなかった。
確かに、彼女は地底の嫉妬という嫉妬をかき萃めて我が物としていたが、それはとても他人に分かるような行為ではないし、秘密裏に行っている事だった。
現に殆どの妖怪は、彼女をのことは忌んで「余計な嫉妬心を当てられたくない」と、避けられるばかりであった。
彼女が萃めている「嫉妬」は、単に妬みの感情だけでなく、その嫉妬の大本、因果関係
そして嫉妬に至るまでのプロセスを纏めて『嫉妬』として萃めていたのである。
例え嫉妬心を萃めている事が分かったとしても、ここまで理解するのは到底出来ないはずである。
しばし呆然としている橋姫に対し、星熊は微笑を浮かべ話を再開した。
「ほら、やっぱりそうだ。相変わらずお前さんはわかりやすいねぇ、くっくっく」
「まさか…地霊殿の主に…?」
「いんや、私はあいつが嫌いだ。特に話をした覚えはない」
橋姫は、地霊殿の主であるさとり妖怪を疑った。彼女は人の心を読むことが出来る
(だから橋姫自身もあまり彼女に近づきたくは無かったのだが)
彼女と直接対峙したこととて無い物の、橋姫の事を知れるのは彼女ぐらいだろう
「ならば…いや…そんなはずはない…ならばその話を何故お前が知っているっ!?」
「あっはっは!落ち着け落ち着け、やっぱりこれは本当だったってわけかい」
「話をごまかさないでっ!何故?どうして?」
「簡単な話さね。私の能力は知っているだろう?」
「怪力乱神を持つ程度の能力…この前も言ったでしょう!」
「そう、そこさ。何故お前が私の能力を知っているのか?私はおまえさんには話してない。
だが私とて別に隠していたわけではない。だからおまえさんが伝聞で知る事は不可能でないにせよ、可能性は低い。
周知の通り、私もおまえさんも気軽に話せる友人みたいな存在は少ないからな。
とすればおまえさんのその能力を使って何かしら情報収集のまねごとのようなことをしてるのではないかと思っただけさね
そして以前「誰かがこの地底の嫉妬を萃めている」という事に気付いて、もしかしたらー?となったわけさ。
そしたらまぁ見事におまえさんが引っかかってくれた。って寸法だ」
「…」
「おおっと、勘違いするなよ、別におまえさんを攻める気はありゃせんよ
ただ私にだけ話してさえくれればいいんだ。そうすればこのことは黙っていよう」
なんだか橋姫は星熊に乗せられてるような気がしていた。そもそも鬼というのはそういう種族なのだ
このように相手を乗せる話術に特化した鬼はいずれ天狗と呼ばれるようになったが、それによって鬼自身の話術が劣るようになったわけでもない
「くっ…」
「よく考えるといい、おまえさんに話さないという選択肢はあると思うかね?
このことが地底中に知られれば、誰も彼もがプライバシーの侵害だとこの橋に攻め入る事になるぞ
鬼火を落とされ、病に伏し、全てを露呈され、核の炎に飲み込まれ、もしまだ躰が残っていれば旅行が楽しめるかもしれんねぇ」
星熊は先ほどと上辺の表情はさほど変えず、だが明らかに怒りのの隠った表情で、橋姫を見下ろしていた。
気が付けば先ほどまで2人の距離は10尺ほどあったのが、すでに文字通り目と鼻の先にまで星熊は近づいていた
「わ…わかったわよ、そこまで凄まなくても」
「ん、わかればいいんだ」
そもそもどこから話せばいいのだろうか、橋姫はしばし考えた。
仮にも目の前に居るのは鬼である。万が一にでも彼女の怒りを買うようなことはあってはならない
しばし考えていると、勇儀の方が口を開いた
「と、その前に私もお前さんが何をしてきたか色々考えてきたんだ。それの答え合わせをしたいな。先に喋ってもいいかね?」
「…どうぞ」
そして散々橋姫を煽ったあげく制止させ、星熊は非常に一方的に語り出した
「――つまりお前さんはその一方的な興味本位と持っていた能力により、
地霊殿はおろか地底の皆の嫉妬にまつわるエピソードを萃めた。これに異論は無いか?」
「ええ、その通りよ」
「そしてその萃めたエピソードを棚に並べ、自宅で毎晩ニヤニヤしながら自慰行為に浸っている」
「異議有り。そこは否定するわ、」
「相変わらずノリが悪い」
そして星熊は問いつめた。まるで閻魔の様に、橋姫の悪行を、全て。
嫉妬心を操り地底にいるカップルを破局に至らせた事
自らの嫉妬心は常に橋を渡渉する連中に向けていた事
そして何よりも、橋姫こそが地底で最も妖怪について詳しくなった事。
嫉妬は怨恨となり、怨恨は力となり、そしてそれが幻想入りすれば能力となる。
嫉妬を知ればその妖怪を知る事にも繋がる。
今や橋姫は、地底で誰よりも、それこそさとり妖怪よりも地底を知るものとなっていた。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。彼女はもはや地底では敵無しであった。
目の前の一角を除けば。
「納得したかしら?これが私よ。さぁどうぞお好きなように」
「ふむ。納得した。じゃあ今の私が何に嫉妬しているのかお分かりか?」
橋姫は星熊から目を逸らしながらこう言った
「あなたが嫉妬?貴女は嫉妬するものなどないじゃない。
そもそも貴女の嫉妬というのは同僚の鬼に対する物しかないわ。他のものは眼中にないのかしら」
「分からないのかい?じゃあこれは嫉妬ではないのだろうな」
「でしょうね、嫉妬以外の感情を読めというのは無理な相談よ」
しかし橋姫は場の空気が変わったのを確かに感じた。
それを気のせいだと思い、星熊の方を一瞥した時、橋姫は驚愕した。
なんと、鬼の四天王、力の勇儀が、一筋の涙を流しているのだ。
「……星熊…?」
「水橋」
「……なによ」
「好きだ。結婚してくれ」
世界が、止まった。
「……え?」
「好きだ…好きだ大好きなんだ!!!私が!力の四天王、鬼の星熊勇儀が!水橋パルスィを!!!!
世界中の誰よりも!!汚したい嬲りたい抱きしめたい守りたい!!」
「ちょっ、あなた何を言っているの?」
表面張力でなんとか自らの形を保っていた水が臨界点を越え溢れ出したかのように、星熊の猛襲は止まらない。
そんな星熊に対し、とても愛の告白なんかをする流れではなかった中唐突にこうしたことを言われた橋姫は唖然。
「だから言ってるじゃないか…好きだと。好きだと!愛していると!私が!お前を!」
橋姫に疑問の余地を与えないよう、主語述語を強調して尚も水橋に詰め寄る。
「…お前は、私を見くびっているのか?力ばかりで愚鈍で馬鹿な鬼っころだと思っているのか?
ああそうとも私は愚鈍で馬鹿さ!馬鹿だ!馬鹿だけど!お前の苦痛は分かるぞ!?
わかっているわかっている。嗚呼嫉妬に狂いそうになる!
愛しているとも愛しているとも。世界中でたった一人だ!うおおおおおお!」
ありったけの思いを勢いに任せぶつけた星熊は、広い肩を激しく上下させながら白い息をまるで炎の様に吐いていた。
一瞬の沈黙の後、尚も口を開くは星熊であった。
「なぁ…水橋…?お前、知っていたんだろう…?この想いを…。いや、知らないはずがないだろう。」
橋姫は星熊を見ず、尚も口を閉ざしたままだった。肯定の合図だった。
「振るのは結構だ。私の事が嫌いなら嫌いって言ってくれて構わない。
だが嘘は許さん。冗談はもっと許さん。本音で頼む……頼む…。」
今この懇願している姿は、誰が見ても「あの」星熊勇儀だとわからないだろう。そこまでに彼女は必死だった。
誰と対峙しても常に余裕しゃきしゃきで、本気を出す事など滅多に無い、あの星熊が、全身全霊の力を込め、橋姫に詰め寄っていた。
方言まじりの言葉遣いですら忘れていた。
「なぁ頼むよ水橋、答えておくれ。
私ばっかりこういう事を言うのは卑怯じゃないのか?」
雪が降りしきる音がこうこうと鳴り響く。
「足りないのか?お前が望むならいくらでも囁こう喚こう伝えよう。
好きだ。お前の事が好きなんだ。」
「何よ…あんたなんて好きなわけ……」
「本当か?」
「本当よ!!!あんたなんて鈍感で力任せで男勝りで!
私に勝てるところなんて何一つなくて!
鈍感で頭もよくて!スタイルもいいし美人だし!
あんたに想いを寄せてる妖怪がどれだけいると思ってるの?
そんなあんたが私なんかに告白?冗談もたいがいに」
ピシャッ
星熊の右手が、橋姫の右頬をはたいていた。
「質問に答えろ。水橋パルスィ。
いいか、私の事が嫌いなのか?
嫌いなのならいさぎよく身を引こう。
もし好いてくれているのなら、押し倒そう。
どちらでもないのなら、やっぱり押し倒そう。
問うぞ。私のことが嫌いなのか?嫌いじゃないのか?」
「この…………鈍感鬼が……」
橋姫の爆竹に火が着いた。あとは流れゆくままだった。ここからは、橋姫の本領発揮だった。
「この鈍感!!!!!!!!!!!!嫌いな訳ないじゃない!!!!!!ええそうですよ好きですよ大好きですよ!!!
地霊殿の烏が暴れて地上から人間たちが攻め行った時!!!!あなたはわざと負けてそそくさと私の元へ来てくれた!!!!
自分も勝てない人間なんだから私が勝てないのも仕方ないと慰めてくれた!!!!
知らないはずないじゃない!!!!!隠し通せてるとでも思ったの!!?馬鹿!馬鹿!!馬鹿鬼!!!!!!
ああ妬ましい妬ましい、貴方はこんな私をいつも気遣ってくれた!!
地底で友人一人いないこの私を!まるで自分も友人一人いないかのようにふるまってくれた!
ええ大好きよ大好きよ。水橋パルスィは、貴方、星熊勇儀の事が大好きよ!!!!!!
でも出来ることならあなたに好意なんて伝えたくなかった!好意なんて寄せてほしくなかった!
でもあなたは私のことを想ってくれた!だから雰囲気を作らないようにしてたのに!!!何で!!
無理よ!!!!!無理なの!!!!!私と貴方が相思相愛であっても、恋愛関係になんてなれっこないのよ!!!」
「水橋…」
水橋の表情は、全てを打ち明けた犯罪者のように、奇妙な笑みに溢れていた。
「あなた、ここまでいわせてまだ気付いてないの?
私は地底中の嫉妬心を萃めている、何倍も何万倍も、嫉妬深い妖怪だってこと……うぶっ」
星熊が橋姫の顔程ある大きな手で、口を塞いだ。
「知っている」
「…っぶぅっ!!」
橋姫はありったけの力で、自身の発する言葉を邪魔するその手を除けた。
「知っているならなおの事でしょう!決して私と付き合ったってロクな関係築けっこないって!」
「お前さん……辛かっただろう」
先程の表情とは打って変わって、穏やかな表情を取り戻した勇儀が諭す。
「地底中の嫉妬心を萃めたのは……愛してくれていたんだろう?私たちの作った、この地底を
そして嫉妬を操るお前は、この地底がどれだけ嫉妬に満ちているか知っていたんだろう?」
「……ほし…ぐ…ま…?」
「地底を代表させて礼を言わせて貰う。この地底を守ってくれて、ありがとう。
お前が居なかったら、嫉妬狂いの妖怪達によってこの地は荒れ果てていただろう。
お前が嫉妬心を萃めてくれたからこそ、地底は平和な世界を維持出来ている。
皆幸せだ。お前のおかげだ。お前一人を除いて、な。
そんなお前を誰が不幸になんてさせるものか
嫉妬心なんて全て私にぶつけてくるがいい
嫉妬に狂って刃物でも持ち出してくるがいい
寝込みを襲うがいい
毒を仕込むがいい
首をくくらせるがいい
爆薬を仕込むがいい
満月の中でも、狂ったお前を、私は愛そう。
愛して、全てを受け入れて、どんな嫉妬にも耐えてみせよう
片道切符しかない死体旅行に連れていかれても、駆け足で帰ってこよう。
愛そう。緑目のお前を
愛そう。犬に翻弄されるお前を
愛そう。大きな籠を選んでしまったお前を
望むなら、お前に七日間五寸釘を打ち込まれるのも悪くない。
ありがとう。私の愛したこいつらを、愛してくれてありがとう。
そして馬鹿野郎。辛いのを全て一人請け負おうとしたんだな?
私は創始者として失格だ。本来その役目は私が負うべきだ」
「……うぇ……ひっく…ひっく…」
気がつくと、橋姫の涙腺は決壊寸前だった。
星熊はそっと橋姫を抱き寄せる。
何の抵抗もなく、橋姫は星熊に引き寄せられる。大きな嗚咽と共に。
「ほしぐま……ごめん……ごめん……ひっく…うわあああん」
「出来れば、私にも半分ほど嫉妬心を分けてくれないか。元来嫉妬心が薄い人間でね。
お前の為なら、嫉妬するのも悪くないさ。」
「……あなたに、迷惑……かけちゃ…」
「辛かったろう。散々忌避され続け、誰にも認められず孤独に嫉妬心を萃めていたのは。
それも今日までだ。私が生涯共に生きよう。生涯共に妬もう。
死が二人を分かつまで…いや、死んだ後も地底の猫に頼んで二人で旅行をしよう。
そして業火の火に焼け尽くされ、骨になった後も、二人一緒に雪のように降りしきろう。
迷惑?この私に迷惑な事を出来るのならやってみて欲しいもんさね!それもまた一興!」
「うぅっ……!うわあああん!うわあああああああん!
ほしぐ…勇儀、大好き、大好き。愛してる…」
「パルスィ……」
橋姫をだきよせた星熊は、再度両肩をつかみ橋姫を引き離す。
引き離して、左手を橋姫の下顎に乗せ、引き寄せるように口づけを交わした。
その一瞬は、水橋は永遠のように感じた。
彼らの頬に流れるは、溶けた雪だろうか。
二人とも魅力的で素敵でした!!
酒でも飲んでなきゃあやってらんない、って感じですね。
二人ともなんか凄く不器用でなんとまあかわいいことか。
ぱるぱるも可愛くてにやにやとまらないです。
流石姐さん格好良い
この作品の後半はまさにそれが爆発したような感じでしたね。
今こそ手を上げ 戦うべきは 世界を覆いつくす Jealousy !!
やや不謹慎ながら-鬼火を落とされ~-の下りで吹いた
並べるほどにさとりの能力が戦闘向きでないのがよくわかる…
地底の為に能力を人知れず使っているパルスィ、というのがとても良かったです。
後半、若干唐突すぎかなとも思いましたが勇儀らしくて良いと思います。
これからも頑張って下さい。