「お嬢様!」
バタン! と部屋に響く大きな音。
レミリア・スカーレットは不愉快そうに眉を吊り上げた。
「なんだ咲夜。騒々しい……」
「また私のプリン・ア・ラ・モードを勝手に食べましたね!」
飛び込んできた従者、十六夜咲夜は大声で叫んだ。
「…………」
するとレミリアは実に気まずそうな表情を浮かべ、ついっと従者から目を逸らした。
「あーっ! 目を逸らした! やっぱりお嬢様だったんですね!」
「……うるさいなあ。お腹がすいてたんだよ」
ごにょごにょと、ばつの悪そうに呟くレミリア。
咲夜はそのまま一気に詰め寄ると、機関銃のようにまくし立てた。
「なんでいつもいつもそうやって人のおやつを食べるんですか! すっごく楽しみにしてたのに!」
「……いつもってことないだろ。たまにじゃないか」
「たまにでもダメです!」
うがーっと声を荒げる咲夜に対し、レミリアは心底めんどくさそうに対応する。
「…………」
「…………」
そんなガチバトルを繰り広げる一組の主従を前に、無言で顔を見合わせる、これまた一組の主従がいた。
レミリアとのティータイムを愉しんでいた、パチュリーと小悪魔の二人である。
普段のティータイムはパチュリーとレミリアの二人だけで催されるのが通例だが、「たまにはあんたも来なさい」というパチュリーの気まぐれ的提案によって、今日に限っては小悪魔も同席していた。
そんな小悪魔はおろおろとしながら、パチュリーに小声で話し掛ける。
「ど、どうしましょう。パチュリー様」
「堂島翔? 誰そのイケメン」
「いや、人名じゃないですからね!? しかもなんでイケメン前提!?」
「ちっち。これがいわゆるノーレッジジョークよ。ンフフ」
「……はあ」
無駄にいい顔で指を振るパチュリーを前に、小悪魔は大きく息を吐いた。
もっとも、このようなパチュリーの奇矯な言動は今に始まったことではない。
少し前なんて、「フランのフはファイトのフ」とか言いながらフランドールの帽子をボフボフ叩いて、あやうくきゅっとしてドカーンされかけていた。
あのときのフランドールの侮蔑に満ちた眼差しが、小悪魔の脳裏にこびり付いて離れない。
閑話休題。
小悪魔は、肝心なときに役に立たない主から視線を外すと、再びレミリアと咲夜の動静を見やった。
「あーもう、うるさいな! 咲夜だって、昔私のチーズケーキ勝手に食べたことあっただろ!」
「い、いつの話ですか! そんなずっと前の話!」
「私にとってはごく最近の話だ!」
「知りませんよそんなこと!」
悪化していた。
(うわぁ……なんかめんどくさいことになってきたなぁ)
小悪魔は半笑いを浮かべつつ、ちらちらと周りを見渡した。
諍いが自分の方へと飛び火してくるよりも前に、さっさと逃げてしまおうという算段である。
しかし、小悪魔が逃げ出すよりも早く、事態は思わぬ方向へと転んだ。
「―――もういい! そんな勝手なことばっかり言うような従者はいらん!」
「っ!?」
「今すぐ、この館から出て行け!」
「…………!」
びしっ、と扉を指差すレミリア。
咲夜は大きく目を見開きながら、無言でレミリアを睨みつけている。
(こ、これは……)
予想を超える事態の悪化ぶりに狼狽した小悪魔は、再びパチュリーに小声で話し掛けた。
「な、なんか変なことになってきましたよ。パチュリー様」
「あら。貴女の頭に付いてるその変な付け羽根よりはマシよ」
「ひどっ!? っていうかこれ付け羽根じゃないですから! 地羽根ですから!」
アピールするように頭の羽根をピコピコと動かしてみせる小悪魔。
するとパチュリーはあらあらムキになっちゃって可愛い子ねと言いながらその羽根をぐいぐい引っ張る。
小悪魔はあうあうやめてくださいと言いつつ満更でもなさそうだった。
―――そんな和やかな空気をかき消すように、咲夜の静かな声が部屋に響いた。
「……わかりました」
「!」
レミリアの眉がぴくりと動いた。
しかし咲夜は淡々と、それでいて力強く言う。
「……長い間、お世話になりました」
「…………!」
そう言って深く頭を下げる咲夜。
レミリアは何も言うことができず、ただその場に立ち尽くすのみ。
やがて咲夜は顔を上げると、そのままレミリアに背を向け、呆然と二人のやりとりを眺めていた小悪魔の方へと歩いてきた。
小悪魔はおろおろとしながらも、とりあえず咲夜に声を掛ける。
「さ、咲夜さん」
「……今までお世話になったわね。小悪魔」
「や、やだなあ、何言って……」
小悪魔が乾いた笑いを浮かべていると、咲夜はすぐ傍にいたパチュリーの方へと顔を向けた。
「……パチュリー様。今までありがとうごさいました」
「ああ、うん。元気でね」
「ちょっ!?」
最後の声は小悪魔である。
パチュリーがあまりにもあっさりと咲夜を見送ろうとしたため、思わず変な声を上げてしまった。
「……それでは、二人ともお元気で」
しかし咲夜は構わず、それだけ言うと、そのまま部屋を出て行ってしまった。
その後ろ姿を暫し呆然と見送った後、小悪魔はパチュリーの方へと振り向いた。
「パチュリー様!? 一体どういう……」
「あら小悪魔。鼻毛出てるわよ」
「えっ!? ウソ!?」
思わず鼻に手を当てる小悪魔。
「ウソよ」
「…………」
ニヤニヤと笑うパチュリー。
小悪魔は頬を引き攣らせ拳を握り締めながらも、今は他に言うべきことがあると自分を抑える。
「……どういうことですか」
「何が?」
「咲夜さんですよ! この館を出て行くって言ってるのに、なんで引き止めないんですか!?」
「…………」
詰問するような口調でパチュリーに問い掛ける小悪魔。
そんな従者を、いつもの眠そうな目で眺めるパチュリー。
「……はあ」
パチュリーは溜め息を一つ零すと、すっくと椅子から立ち上がり、そのまま部屋の外へと出ていった。
「あ、パ、パチュリー様!」
慌てて後を追う小悪魔。
部屋を出る間際、彼女はちらりと、レミリアの姿を視界の端に捉えた。
―――部屋に一人残された彼女は、ぼんやりと窓の外を眺めているようだった。
廊下を歩きながら、小悪魔は再度パチュリーに話し掛ける。
「パチュリー様。どうして咲夜さんを……」
「小悪魔」
しかしそれを、パチュリーが静かな声で遮った。
「な、なんですか」
「……レミィが何故、咲夜と契約を結んでいないか、知ってるかしら」
「契約……ですか」
「そう。契約」
一呼吸置いて、パチュリーは続ける。
「普通、吸血鬼のように支配欲の強い悪魔の場合、ほとんど例外なく、自身の僕と何らかの契約を結んでいる。いえ、正確には、誓約といった方が適切かしら」
「……自身に対し、絶対的な忠誠を誓わせる、誓約……ですか」
「そう。そうすることで、僕を自分の絶対的な支配下に置く。いかな強大な力を有する僕であろうと、自分の意のままに支配できるように」
言い含むように話すパチュリー。
小悪魔は顎に手を当て、考え込む素振りを見せた。
「……それを、お嬢様は咲夜さんとは結んでいない……」
「そう。何故だか、分かる?」
「……えっと」
「はい時間切れ」
「早いですよ!?」
反射的にツッコむ小悪魔。
しかしパチュリーは動じない。
「……それはね」
「…………」
小悪魔はもう何も言わず、ただ主の答えを待った。
そしてパチュリーは、いつになく優しい声でそれを告げた。
「―――あの二人の間には、契約を超えた絶対的な信頼関係があるからよ」
◇ ◇ ◇
紅魔館の門前。
そこには、いわずと知れた門番・紅美鈴と、その彼女に肩車してもらっている、一匹の吸血鬼がいた。
大きな日傘を差して笑っているその彼女こそが、フランドール・スカーレット。
通称“悪魔の妹”。
しかしそんな恐ろしげな二つ名とは裏腹に、彼女の無垢な笑顔は、そんじょそこらの少女のそれと何ら変わるところはなかった。
つい最近になって、ようやく「門前までなら自由に行動してよい」とのお墨付きを、姉であるレミリアから与えられた彼女にとっては、毎日が楽しみと驚きの連続だった。
「美鈴! 美鈴!」
「はいはい、なんですか妹様」
「こら、はいは一回でしょ」
「あはは、すみません」
ぺちんとフランドールに頭を叩かれ、思わず苦笑する美鈴。
「で、どうしたんですか」
「うん。咲夜が来るよ」
「えっ」
フランドールを肩車したまま、美鈴が館の方へと振り返る。
すると、見るからに仏頂面を浮かべた咲夜が、ずんずんとこちらに向かって歩いてきているではないか。
「…………」
美鈴は、そんな咲夜の表情を見て、
(……なるほど)
思わず、にやりと笑った。
「? どうしたの? 美鈴」
不思議そうな表情を浮かべたフランドールが、ずいっと、肩越しに美鈴の顔を覗き込む。
「えーっと、そうですね……」
美鈴がどう説明したものかと頬をぽりぽりと掻いているうち、咲夜が二人の前へとやってきた。
咲夜は少しだけ表情を崩して、二人に話し掛ける。
「……妹様。美鈴」
「……咲夜?」
なんとなくいつもと違う雰囲気の咲夜に、フランドールは首を傾げる。
美鈴は、咲夜の言葉の続きを待っているようで何も言わない。
「今まで、お世話になりました」
「えっ」
「…………」
いきなり頭を下げた咲夜に、フランドールは虚を突かれたような声を出した。
一方美鈴は、表情一つ変えないでいる。
「私は、今日限りでこの館を出て行くことになりました」
「…………」
咲夜の言葉を、信じられないといった面持ちで見つめているフランドール。
しかし咲夜は淡々と、別れの言葉を紡いでいく。
「妹様。美鈴。いつまでも、お元気で」
「……いや、何言ってんの? 咲夜」
「はい。咲夜さんもお元気で」
「美鈴!?」
やっと口を開いたかと思えば、実にいい笑顔で別れの挨拶をする美鈴。
フランドールが再びその顔を覗き込む。
「……それでは」
しかし咲夜は構わず、二人に背を向けると、そのままさっさと歩き始めてしまった。
暫しの間呆然と、その後ろ姿を見つめるフランドール。
やがて、彼女の口から低い声が響いた。
「……美鈴の」
「え?」
美鈴が頭上を見上げたとき、既にフランドールは自身の肩の上にはいなかった。
そして再び正面を向くと、いつのまにか地面に降りていたフランドールと目が合った。
ぞくり。美鈴の背中を嫌な汗が伝う。
「い、妹様……?」
「……バカァァァァ!!」
「そまっぷ!?」
フランドールの渾身の右ストレートが美鈴の鳩尾を直撃した。
バキボキギギギ……と肋骨が嫌な音を立てる。
「……な、何するんですか妹様……」
「それはこっちの台詞だよ!」
むきーっと、フランドールが顔を真っ赤にして怒鳴る。
ちなみに美鈴の顔は真っ青である。
「何あっさり見送ってんのさ!? 咲夜がこの館を出て行くって言ってんのに!」
「あー……」
急速で肋骨を再生しながら、美鈴はゆっくりと立ち上がる。
そしていつものように頬を掻いた。
「……妹様」
「なにさ?」
噛み付くような表情のフランドールに、美鈴は後ずさりながら言う。
「咲夜さん、なんで時を止めて移動しなかったんだと思います?」
「? ……どういうこと?」
「館からこの門まで、普通に歩いてきてたでしょう? 普段なら、時を止めて一瞬で移動するのに」
「あー……言われてみれば」
フランドールはこくこくと頷く。
確かに咲夜は、一歩一歩踏みしめるように、館からここまで歩いてきていた。
そして今も、歩いてこの紅魔館から離れていった。
時を止めることも、空を飛ぶことすらもなく。
その事実を前に、フランドールの脳裏にハテナマークが浮かんだ。
「……なんで?」
「答えは簡単です」
首を傾げるフランドールに、美鈴は諭すように言う。
「……引き止めてほしかったからですよ」
「……誰に?」
「それはもちろん―――……」
美鈴はそこで言葉を切って、くいっと上を指差した。
つられて見上げるフランドール。
するとその視線の先には、大きな日傘を片手に、バルコニーから飛び立つレミリアの姿があった。
その飛び去る方向は、先ほど咲夜が去っていった方向と同じである。
「……そういうことです」
「…………?」
にっこり笑って言う美鈴を前に、フランドールはいまいち分かっていないような表情で、再び首を傾げた。
◇ ◇ ◇
人里の団子屋にて。
その軒先の長椅子に腰掛け、一心不乱に団子を食い続けている一人のメイドがいた。
まるでリスのように頬を膨らませている彼女は、既に十皿ほどの団子を平らげている。
いかな甘党の者でも、胸焼けを起こしそうなほどの食いっぷりであった。
彼女は十一皿目を空けると、おそるおそる様子を伺っていた店の主人に声を掛けた。
「……もう一皿、下さるかしら」
「……いやあ、もうそのへんにしときなよ、お客さん。お腹壊すよ」
「……もう一皿、下さるかしら」
「……へぇ」
主人は説得を諦め、黙って団子を皿に乗せた。
それを受け取ると、メイドは再び団子にかじりついた。
「もぐもぐもぐ」
まるで親の敵でも噛み千切るかのように、団子を力強く咀嚼するメイド。
そのとき。
「…………」
彼女の正面に、人里には似つかわしくない妖怪が立ち止まった。
大きな日傘を差した、吸血鬼である。
その大きな傘は、メイドの手元にも影を落とした。
メイドはゆっくりと顔を上げた。
「もぐもぐもぐ」
「…………」
団子を咀嚼しながら、メイドは憮然とした表情で目の前の吸血鬼を見やった。
片や、吸血鬼は軽く息を吐いてから、メイドに静かに声を掛けた。
「……何やってんだ。こんなとこで」
「再就職先を探してるんです。もぐもぐもぐ」
「……ああ、そうかい」
「そうです。もぐもぐもぐ」
「…………」
「…………」
会話が途切れ、場を沈黙が包む。
しかし二人とも、互いに互いを見据えた視線は外さない。
吸血鬼が、溜め息混じりに訊ねた。
「……で、見つかったのか。新しい就職先は」
「……まだですけど。もぐもぐもぐ」
「…………」
「…………」
団子を食べ終えたメイドは、長椅子の上に置かれていた湯呑みを手に取り、ずずっと飲んだ。
それをどんっと置くと、再び眼前の吸血鬼に向けて、鋭い視線を飛ばした。
「おじょ……レミリア様こそ、何をしてるんですか。こんなとこで」
「ん……。スカウトに来たんだよ。新しいメイドの」
「……そーですか」
「そうだよ」
「…………」
「…………」
両者の視線がぶれることはない。
ただただ真っ直ぐに、互いを貫きあっている。
口をへの字に尖らせたメイドが、ぶっきらぼうに訊ねた。
「……で、見つかったんですか。新しいメイドは」
「いーや、まだだよ」
「…………」
「…………」
暫くの沈黙の後。
吸血鬼が、小さな箱をメイドに向かって差し出した。
「……ほら」
「……?」
メイドは黙ってそれを受け取る。
「……これは……」
それは、近くの洋菓子店のものだった。
中にはおそらく、一人分の菓子でも入っているのであろう、小さな箱。
「…………」
メイドはまじまじと、その箱を眺めている。
やがて顔を上げると、再び吸血鬼と視線がぶつかった。
「……あの……」
メイドの言葉を遮るように、吸血鬼は言った。
「……帰るぞ。……咲夜」
「…………」
瞬きひとつぶんだけ、メイドは返事を遅らせた。
「……はい。……お嬢様」
先ほどまでの仏頂面が嘘のように、メイドは実に穏やかな笑みを浮かべていた。
メイドは、何やら怯えた様子の主人に団子代を渡すと、吸血鬼に付き従ってその場を離れた。
―――そんな二人を少し離れた場所から見やる、四人の者達がいた。
「……な~んだ。いちいち心配して、損しちゃった」
フランドールが、盛大に脱力した表情で言う。
「ね? だから言ったじゃないですか」
美鈴がのんびり笑顔で言うと、フランドールはぶすっと頬を膨らませた。
「もう、めーりんのけち。こうなるって分かってたんなら、最初から言っておいてくれればいいのに」
「え、いや、一応言ったつもりだったんですけど……」
「わかりにくい」
「そ、そうですか……」
フランドールの言葉はいつも直球であった。
美鈴としては、あははと頭を掻いて誤魔化すしかない。
「いやはや、なんというか……」
一方こちらは、フランドールと同様に脱力していた小悪魔。
こんなときでも本を手離さない主人に向かって、やれやれと肩をすくめながら言う。
「……だから咲夜さん、お団子ばっかり食べてたんですね。……食べたかったプリン、じゃなくて」
「そういうこと。……これで分かったでしょう? レミィが咲夜と、契約を結ばない理由」
「……はい。とてもよく」
御見逸れしました、とでも言わんばかりに頭を下げる小悪魔。
するとパチュリーも、視線は本に落としたまま、よしよしとその頭を撫でてやった。
―――そんな和やかな雰囲気の中、美鈴がパンパン、と手を叩いた。
「さあ、早く館に戻りましょう。……っていうか先回りしとかないと、また私が咲夜さんに怒られちゃうんで」
「……それは別にいいんじゃないかな。私は困らないし」
「妹様!?」
容赦のないフランドールの言葉に、思わず涙目になる美鈴。
そんな二人のやりとりを見て、パチュリーと小悪魔も思わず笑みを零した。
◇ ◇ ◇
―――数週間後。
「お嬢様!」
バタン! と部屋に響く大きな音。
レミリア・スカーレットは不愉快そうに眉を吊り上げた。
「なんだ咲夜。騒々しい……」
「また私のチョコレートパフェを勝手に食べましたね!」
飛び込んできた従者、十六夜咲夜は大声で叫んだ。
レミリアは頭を掻き、いかにもめんどくさそうに応対する。
「……うるさいなあ。お腹がすいてたんだよ」
「なんでいつもいつもそうやって人のおやつを食べるんですか! すっごく楽しみにしてたのに!」
そんな感じで、何やら言い合いを始めた一組の主従。
「…………」
「…………」
そして、その場に居合わせたもう一組の主従―――パチュリーと小悪魔は顔を見合わせると、何も言わずに頷きあった。
咲夜の声が部屋に響く。
「もういいです! こんな館、今日限りでやめさせていただきます!」
「あーそうかい! 私だって、こんなワガママなメイドはもうこりごりだ!」
がるるると犬歯をむき出しにして火花を散らす二人を、パチュリーと小悪魔はババ抜きをしながら眺めていた。
やがて咲夜が、つかつかと二人の方へ歩いてくる。
「パチュリー様。小悪魔。今までどうもお世話になりました」
「ああ、うん。元気でね咲夜」
「これからもお元気で」
二人に見送られた咲夜は、そのままずんずんと部屋を出て行った。
間もなく、パチュリーが椅子から腰を上げる。
「さて、私達はそろそろお暇しましょうか」
「そうですね」
小悪魔もそれに続く。
(……私達がここにいたら、都合が悪いですもんね)
そう思い、小悪魔は去り際、ちらりとレミリアを視界の端に捉えた。
彼女はなんとなく、うずうずしているように見えた。
―――紅魔館の門前。
今日もフランドールは、美鈴に肩車をしてもらっていた。
大きな日傘を差して、弾むように笑っている。
そんな彼女が、あっ、と声を上げた。
「どうしましたか?」
美鈴の声に、フランドールは無言で館の方を指差す。
見ると、頬を膨らませた咲夜がずんずんと歩いてきていた。
「…………」
「…………」
無言で顔を見合わせる二人。
そして示し合わせたように、二人は揃って溜め息をついた。
そんな二人の前で立ち止まった咲夜が、少しだけ表情を崩して言う。
「……今までありがとうございました。妹様。美鈴」
「はい。咲夜さんもお元気で」
「咲夜、元気でね!」
二人に見送られた咲夜は、そのまま振り返ることなく歩いていった。
そんな彼女の後ろ姿を見ながら、フランドールは呟いた。
「……ねぇ、美鈴」
「はい」
「……平和だねぇ」
「はい」
微笑んだ美鈴が見上げた空を、一匹の吸血鬼が日傘を片手に飛び去っていった。
了
これは――愛だろ。
あとパチュリー自重。
なにより小悪魔が可愛いw
苦労人気質の小悪魔って最高ですね
飛び火して変な物に引火する前に逃げれて良かったね。
俺も小悪魔の頭の地羽根を引っ張りたいw
『私の目の前でメイドが団子をやけ食いしてたと思ったらいつのまにか吸血鬼と仲直りしていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが私も何が起こったのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
家族だとか絆だとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと素晴らしい紅魔館の片鱗を味わったぜ……
ってか咲夜さん甘いもの好きだねwww
まりまりささんのれみさくがかわいすぎて
いつも元気をいただいております
いいSSを読まさせていただきました。
気になって内容が頭に入ってきませんでした
パチュリー、今度は妹様をボフボフですか。
子供っぽい咲夜さんが可愛いなあ、なんて。
見せつけるねぇ…
甘いのに恋人ではなく、家族愛に溢れている
貴方のレミ咲が最高すぎる
まあどっちも最高ということで
感情を顕にしてる咲夜さんとても可愛かったです
愛だね
↑(色々感想は言いたいんだけど興奮し過ぎて言葉にならない)
初めて見たらそりゃ驚くよ!(小悪魔やフランみたいに)
いい息抜きさせていただきました。