「椛、ちょっとコレ見てもらえないかしら?」
麗らかな午後の昼下がり、妖怪の山のとある広場。
そこで、河童の河城にとりと将棋を指していた犬走椛の元に訪れた鴉天狗―――射命丸文の言葉に、二人は目を瞬かせた。
いつに無く真剣な表情だったということもあるし、何よりどこかピリピリとした雰囲気すら感じられたから。
いつもなら軽くあしらうなり何なりする椛だったが、彼女の真剣な様子を目の当たりにして、静かに首を縦に振って、ソレを受け取った。
『文々。新聞』、という見出しが書かれたその紙の束に、「あぁ」とどこか納得した様子で言葉をこぼした椛は、しばらく真剣な表情でその新聞を眺めた。
にとりの方は良くわからないといった様子だったが、黙ってことの成り行きを見守っている。
やがて椛は新聞をとじると、丁寧に手折って彼女に向き直り、その新聞を彼女の手に手渡した。
「少し文章が簡素すぎるかもしれませんね。どの文章がどの写真のことに対してなのか、一部曖昧な所がありましたから、そこを直せばいいと思いますよ」
「そ、ありがと」
丁寧な椛の指摘に、文は簡素な返事だけを残してあっという間に飛び去っていった。
幻想郷最速と謳われるだけあって、飛び去った衝撃で将棋の駒が吹き飛び、あたりの木々ががさがさと揺れる。
「うわわわ!!?」なんて悲鳴がにとりから上がったが、椛は彼女が飛び去った方角を目を細めて眺めていた。
視界にもう移らない鴉天狗の姿を見送り、椛はやれやれと小さくため息をついて盤上に視線を向ける。
もっとも、盤上の駒は吹き飛んでしまって、最早勝負どころの騒ぎではなくなってしまっていたが。
「悪いね、にとり。もう一度最初からやろうか」
「うぅ、しょうがないねぇ。せっかく勝ってたのにさぁ」
帽子を押さえて、どこかふてくされたように言葉にする友人が可笑しくて、椛は「運が無いね」なんて言葉にして苦笑した。
あたりに散らばった駒を集めるさなか、「そういえばさ」とにとりが不思議そうに問いかけてくる。
「文の奴、どうしたんだろうね。いつもならさ、もっとこう……」
「『もふもふさせろー!!』って言って抱きついてきますからね。その時は遠慮なくブン投げてましたがね、盤上に」
「そう、それ!! ……あれ、どっちにしろ文が来た時点で勝負がおじゃんになってたってこと、それ?」
「さぁ? どうですかね」
しれっとはぐらかす椛の言葉に、にとりは疲れたようにため息をつく。
別に、友人のこの性格には慣れてるもので、こういう性格だと知っていて友人などしているのだ。
そこに今更怒ったりしないし、今はもっと別に聞きたいことがあった。
「まぁ、その事については後ほど問い詰めるにしてもさ……、近々何かあるのかい? 妙にピリピリしてたけど」
「うーん、ある程度は予想してるんだけど、私もあそこまでピリピリしてる文さんは初めてだなぁ」
何しろ、椛が見る文の顔といえば「えへへ~」だとか緩い笑顔を浮かべてる表情だったり、あるいは得意げにしてる余裕たっぷりの表情だったり。
心当たりはある。心当たりはあるがしかし、あの射命丸文がその『心当たり』のイベントを前にしてピリピリとするような人物にはどうしても思えなかったのだ。
そんな事を思っていると、空からまた別の鴉天狗が姿を見せて―――あぁ、なるほどと、椛が先ほどまで感じていた疑問が氷解した。
「椛、悪いんだけどさー、私の新聞見てくれない?」
最近知り合った鴉天狗、姫海棠はたて嬢のご登場である。
空から降り立ってにべも無く新聞を差し出してくる彼女に苦笑しながら、椛は新聞を受け取ってその紙面を眺めて行く。
にとりはその間も駒を拾い集めており、新聞を読むことでしばらく駒を捜さなくてよくなった椛を恨めしそうに視線を送っていたりする。
無論、先輩にすら問答無用でバックドロップを決めてのけるこの白狼天狗には、ちっとも堪えてはいなかったようではあるが、それはさておき。
「文章がくどすぎるところがちらほらありますかね。もうちょっと簡潔に、伝えたいことを判りやすくした方がいいと思いますけど」
「そっか。うん、ありがとう椛!」
椛の指摘を受け、どこか納得したように頷いて新聞を返してもらった彼女は、慌しく空へと舞い上がって去っていく。
なんとも、二人そろって忙しいことだと嘆息しながら、椛は最後のひとつになっていたらしい駒を拾い上げた。
「で、椛の予想は?」
「ずばり、新聞大会……ってところかな」
苦笑しながらにとりの言葉に答え、椛は盤上に駒を並べて行く。
その言葉に意外そうな表情を覗かせたにとりは、彼女と同じように盤上に駒を並べながら言葉をつむぐ。
「へぇ~、文にしては随分とやる気だね」
「ほら、はたてさんがいるからね。お互い友人であると同時にライバル視してるみたいだから、お互い負けたくないんじゃないかな」
「ほほぉ、なるほどね。なんだかんだといいながら、しっかりはたてのこと気にしてるんじゃないか、文の奴」
「素直じゃないからね、あの人は。はたてさんと違ってさ」
「辛辣だねぇ」
「事実だからね」
シレッと言ってのけてる間に、盤上には規則正しく将棋の駒が並び終えた。
椛のそんな言葉に「相変わらず手厳しい」なんて苦笑しながら、にとりは盤上の駒を眺めてどう責めてやろうか思考をめぐらせ始める。
そこでふと、椛は思いついたように手をポンッと叩いた。
そんな友人の様子に怪訝な表情を向けたにとりだったが、そんな彼女にお構いなしに椛は言葉を投げかける。
「にとり、今夜みんなでミスティアの屋台まで飲みに行きませんかね? 私たちと文さんとはたてさん、それから雛さんや早苗も連れて」
「そりゃいいけどさ、それにしても何でまた?」
「まぁ、なんというねぇ」
不思議そうに問い返したにとりに、椛は目を瞑って神妙な表情で唸ってみせる。
やがて、少しの間をおいて、椛は小さくため息をひとつつくと。
「ぶっちゃけると、結果が見え透いてるから慰めの下準備でもしておこうかと思って」
そんな、ある意味とんでもなく酷い言葉をこぼしていたのであった。
▼
さてさて、その日の夜、二人の鴉天狗がとぼとぼと帰路についていた。
射命丸文と姫海棠はたて。
二人は友人であり、そしてライバル同士でもあり、そうやってお互いの技術を高めあってきた仲である。
本日、毎度お馴染みの新聞大会にて、その成果が確かめられるはずだったのであるが。
「……ランク外だったわね」
「……うん」
「へへへ、うへへへ、今年もランク外かぁ。えへ、えへへへへ」
「文、しっかりしてよ。気持ちはわかるけどさ」
お互い涙がちょちょ切れそうであった。万年ランキング外の二人にはいつもの事だったりするのだが、こうやってライバル関係になった以上、結果がコレでは色々納得がいかない。
疲れたようにため息をついた二人だったが、ブンブンと首を振って、ぎゅっとこぶしを握り締める。
今回が駄目だったから何だというのだ。今回が駄目だったなら次を頑張ればいい。
こうやってライバル関係になった相手に、不甲斐ない自分をこれ以上見せ付けないためにも。
だから、前を向こう。前を向いて、もっともっとお互いの腕を研磨していけばいいのだ。
お互い、まったく同じ事を考えたあたり、存外に二人は似たもの同士なのかもしれない。
そんな二人の視線の奥の方に、小さな人影と提灯の明かりがいくつか見えて、彼女たちは首をかしげた。
歩み寄ってみれば徐々にその姿が明確になっていき、人影の正体が明らかになっていく。
「お疲れ様です、文さん、はたてさん」
「おー、待ちくたびれたよ二人ともー」
「うふふ、にとりったら退屈そうだったものね」
「雛さんの言うとおりですね。さっきまで愚痴こぼしてましたし」
「……私は早苗も人の事いえないんじゃないかなぁと思うんだけど」
「小傘さん、何かおっしゃいました?」
「いいえ、なんでもないですハイ!!」
犬走椛、河城にとり、鍵山雛、東風谷早苗、そして多々良小傘。
面識のある人物たちばかりが集まり、やんややんやと楽しそうに笑いあっている。約一名おびえていたが。
そんな彼女たちの登場にポカンとしていた二人に、椛がつかつかと歩み寄っていく。
「これからミスティアの屋台に飲みに行こうと思いましてね、二人もどうですか?」
「……椛、もしかして私たちのランキング、予想してた?」
「まぁ、ある程度は。ライバルが出来たからって急にランキングが上がるほど、新聞大会は楽なもんじゃないでしょう」
肩をすくめながら言葉にする椛に、文は「それもそうね」なんて苦笑する。
これはこれで、彼女なりの自分達に対する慰め方なんだろう。随分遠まわしな言い方でわかりにくいが、そこには確かに気遣いが感じられて、文は嬉しかった。
一方、はたての方はというと、納得がいかないといった様子で椛をジト目で睨みつけていたりする。
「じゃあ何さ、椛は私たちがランキングの乗らないってこと予想しながら、私たちの相談に乗ったわけ?」
「……あぁ、やっぱりランキング外だったわけですか。そもそも、お二人の新聞は天狗受けしないから、そうだろうとは思いましたけど」
「……あれ? 今の私、思いっきり墓穴掘った?」
うぅーっと唸りながら椛に視線を送るはたてだが、対する椛はどこ吹く風といったように涼しい顔だ。
そんな彼女たちのやり取りが可笑しくて、文はクスクスと苦笑をこぼしていた。
「それじゃ、あなたの誘いに乗ろうかしらね。はたて、今日は思いっきり飲むわよ!」
「望むところよ! 今日は朝まで飲んで飲んで飲みつくしてやるんだからー!!」
「……元気ですねぇ、二人とも」
肩を組んで意気込む二人を見て、椛は呆れたように言葉をこぼす。
でもまぁ―――その光景が微笑ましくて、なんだか自然と笑みがこぼれた。
ライバル関係といっても色々あるが、彼女たちのああいった関係は中々築ける物じゃないだろう。
椛は、二人がどういった経緯でライバル関係になったのかは知らない。
けれど、彼女たちはとても楽しそうで、満足そうで、だったらそれでいいんだろうって、椛は思う。
にとりたちのほうに合流した二人を見送りながら、ふと、自分にもライバルが居たらああいう関係になれるのだろうかと自問して、それが無意味なものだと悟って苦笑した。
もしかしたら、なんて考えても仕方が無い。二人の関係をうらやましく思っている自分が居ることに気が付いたけれど、あの関係は二人だけのものだ。
だから、自分は見守ってやるだけでいい。いざということがあったなら、自分が二人の背中を押してやるぐらいが丁度いいのだろう。
文とはたてが椛を呼ぶ。「今行きますよ」なんて苦笑をこぼしながら言葉にして、椛は仲間たちの元に足を向けたのだった。
麗らかな午後の昼下がり、妖怪の山のとある広場。
そこで、河童の河城にとりと将棋を指していた犬走椛の元に訪れた鴉天狗―――射命丸文の言葉に、二人は目を瞬かせた。
いつに無く真剣な表情だったということもあるし、何よりどこかピリピリとした雰囲気すら感じられたから。
いつもなら軽くあしらうなり何なりする椛だったが、彼女の真剣な様子を目の当たりにして、静かに首を縦に振って、ソレを受け取った。
『文々。新聞』、という見出しが書かれたその紙の束に、「あぁ」とどこか納得した様子で言葉をこぼした椛は、しばらく真剣な表情でその新聞を眺めた。
にとりの方は良くわからないといった様子だったが、黙ってことの成り行きを見守っている。
やがて椛は新聞をとじると、丁寧に手折って彼女に向き直り、その新聞を彼女の手に手渡した。
「少し文章が簡素すぎるかもしれませんね。どの文章がどの写真のことに対してなのか、一部曖昧な所がありましたから、そこを直せばいいと思いますよ」
「そ、ありがと」
丁寧な椛の指摘に、文は簡素な返事だけを残してあっという間に飛び去っていった。
幻想郷最速と謳われるだけあって、飛び去った衝撃で将棋の駒が吹き飛び、あたりの木々ががさがさと揺れる。
「うわわわ!!?」なんて悲鳴がにとりから上がったが、椛は彼女が飛び去った方角を目を細めて眺めていた。
視界にもう移らない鴉天狗の姿を見送り、椛はやれやれと小さくため息をついて盤上に視線を向ける。
もっとも、盤上の駒は吹き飛んでしまって、最早勝負どころの騒ぎではなくなってしまっていたが。
「悪いね、にとり。もう一度最初からやろうか」
「うぅ、しょうがないねぇ。せっかく勝ってたのにさぁ」
帽子を押さえて、どこかふてくされたように言葉にする友人が可笑しくて、椛は「運が無いね」なんて言葉にして苦笑した。
あたりに散らばった駒を集めるさなか、「そういえばさ」とにとりが不思議そうに問いかけてくる。
「文の奴、どうしたんだろうね。いつもならさ、もっとこう……」
「『もふもふさせろー!!』って言って抱きついてきますからね。その時は遠慮なくブン投げてましたがね、盤上に」
「そう、それ!! ……あれ、どっちにしろ文が来た時点で勝負がおじゃんになってたってこと、それ?」
「さぁ? どうですかね」
しれっとはぐらかす椛の言葉に、にとりは疲れたようにため息をつく。
別に、友人のこの性格には慣れてるもので、こういう性格だと知っていて友人などしているのだ。
そこに今更怒ったりしないし、今はもっと別に聞きたいことがあった。
「まぁ、その事については後ほど問い詰めるにしてもさ……、近々何かあるのかい? 妙にピリピリしてたけど」
「うーん、ある程度は予想してるんだけど、私もあそこまでピリピリしてる文さんは初めてだなぁ」
何しろ、椛が見る文の顔といえば「えへへ~」だとか緩い笑顔を浮かべてる表情だったり、あるいは得意げにしてる余裕たっぷりの表情だったり。
心当たりはある。心当たりはあるがしかし、あの射命丸文がその『心当たり』のイベントを前にしてピリピリとするような人物にはどうしても思えなかったのだ。
そんな事を思っていると、空からまた別の鴉天狗が姿を見せて―――あぁ、なるほどと、椛が先ほどまで感じていた疑問が氷解した。
「椛、悪いんだけどさー、私の新聞見てくれない?」
最近知り合った鴉天狗、姫海棠はたて嬢のご登場である。
空から降り立ってにべも無く新聞を差し出してくる彼女に苦笑しながら、椛は新聞を受け取ってその紙面を眺めて行く。
にとりはその間も駒を拾い集めており、新聞を読むことでしばらく駒を捜さなくてよくなった椛を恨めしそうに視線を送っていたりする。
無論、先輩にすら問答無用でバックドロップを決めてのけるこの白狼天狗には、ちっとも堪えてはいなかったようではあるが、それはさておき。
「文章がくどすぎるところがちらほらありますかね。もうちょっと簡潔に、伝えたいことを判りやすくした方がいいと思いますけど」
「そっか。うん、ありがとう椛!」
椛の指摘を受け、どこか納得したように頷いて新聞を返してもらった彼女は、慌しく空へと舞い上がって去っていく。
なんとも、二人そろって忙しいことだと嘆息しながら、椛は最後のひとつになっていたらしい駒を拾い上げた。
「で、椛の予想は?」
「ずばり、新聞大会……ってところかな」
苦笑しながらにとりの言葉に答え、椛は盤上に駒を並べて行く。
その言葉に意外そうな表情を覗かせたにとりは、彼女と同じように盤上に駒を並べながら言葉をつむぐ。
「へぇ~、文にしては随分とやる気だね」
「ほら、はたてさんがいるからね。お互い友人であると同時にライバル視してるみたいだから、お互い負けたくないんじゃないかな」
「ほほぉ、なるほどね。なんだかんだといいながら、しっかりはたてのこと気にしてるんじゃないか、文の奴」
「素直じゃないからね、あの人は。はたてさんと違ってさ」
「辛辣だねぇ」
「事実だからね」
シレッと言ってのけてる間に、盤上には規則正しく将棋の駒が並び終えた。
椛のそんな言葉に「相変わらず手厳しい」なんて苦笑しながら、にとりは盤上の駒を眺めてどう責めてやろうか思考をめぐらせ始める。
そこでふと、椛は思いついたように手をポンッと叩いた。
そんな友人の様子に怪訝な表情を向けたにとりだったが、そんな彼女にお構いなしに椛は言葉を投げかける。
「にとり、今夜みんなでミスティアの屋台まで飲みに行きませんかね? 私たちと文さんとはたてさん、それから雛さんや早苗も連れて」
「そりゃいいけどさ、それにしても何でまた?」
「まぁ、なんというねぇ」
不思議そうに問い返したにとりに、椛は目を瞑って神妙な表情で唸ってみせる。
やがて、少しの間をおいて、椛は小さくため息をひとつつくと。
「ぶっちゃけると、結果が見え透いてるから慰めの下準備でもしておこうかと思って」
そんな、ある意味とんでもなく酷い言葉をこぼしていたのであった。
▼
さてさて、その日の夜、二人の鴉天狗がとぼとぼと帰路についていた。
射命丸文と姫海棠はたて。
二人は友人であり、そしてライバル同士でもあり、そうやってお互いの技術を高めあってきた仲である。
本日、毎度お馴染みの新聞大会にて、その成果が確かめられるはずだったのであるが。
「……ランク外だったわね」
「……うん」
「へへへ、うへへへ、今年もランク外かぁ。えへ、えへへへへ」
「文、しっかりしてよ。気持ちはわかるけどさ」
お互い涙がちょちょ切れそうであった。万年ランキング外の二人にはいつもの事だったりするのだが、こうやってライバル関係になった以上、結果がコレでは色々納得がいかない。
疲れたようにため息をついた二人だったが、ブンブンと首を振って、ぎゅっとこぶしを握り締める。
今回が駄目だったから何だというのだ。今回が駄目だったなら次を頑張ればいい。
こうやってライバル関係になった相手に、不甲斐ない自分をこれ以上見せ付けないためにも。
だから、前を向こう。前を向いて、もっともっとお互いの腕を研磨していけばいいのだ。
お互い、まったく同じ事を考えたあたり、存外に二人は似たもの同士なのかもしれない。
そんな二人の視線の奥の方に、小さな人影と提灯の明かりがいくつか見えて、彼女たちは首をかしげた。
歩み寄ってみれば徐々にその姿が明確になっていき、人影の正体が明らかになっていく。
「お疲れ様です、文さん、はたてさん」
「おー、待ちくたびれたよ二人ともー」
「うふふ、にとりったら退屈そうだったものね」
「雛さんの言うとおりですね。さっきまで愚痴こぼしてましたし」
「……私は早苗も人の事いえないんじゃないかなぁと思うんだけど」
「小傘さん、何かおっしゃいました?」
「いいえ、なんでもないですハイ!!」
犬走椛、河城にとり、鍵山雛、東風谷早苗、そして多々良小傘。
面識のある人物たちばかりが集まり、やんややんやと楽しそうに笑いあっている。約一名おびえていたが。
そんな彼女たちの登場にポカンとしていた二人に、椛がつかつかと歩み寄っていく。
「これからミスティアの屋台に飲みに行こうと思いましてね、二人もどうですか?」
「……椛、もしかして私たちのランキング、予想してた?」
「まぁ、ある程度は。ライバルが出来たからって急にランキングが上がるほど、新聞大会は楽なもんじゃないでしょう」
肩をすくめながら言葉にする椛に、文は「それもそうね」なんて苦笑する。
これはこれで、彼女なりの自分達に対する慰め方なんだろう。随分遠まわしな言い方でわかりにくいが、そこには確かに気遣いが感じられて、文は嬉しかった。
一方、はたての方はというと、納得がいかないといった様子で椛をジト目で睨みつけていたりする。
「じゃあ何さ、椛は私たちがランキングの乗らないってこと予想しながら、私たちの相談に乗ったわけ?」
「……あぁ、やっぱりランキング外だったわけですか。そもそも、お二人の新聞は天狗受けしないから、そうだろうとは思いましたけど」
「……あれ? 今の私、思いっきり墓穴掘った?」
うぅーっと唸りながら椛に視線を送るはたてだが、対する椛はどこ吹く風といったように涼しい顔だ。
そんな彼女たちのやり取りが可笑しくて、文はクスクスと苦笑をこぼしていた。
「それじゃ、あなたの誘いに乗ろうかしらね。はたて、今日は思いっきり飲むわよ!」
「望むところよ! 今日は朝まで飲んで飲んで飲みつくしてやるんだからー!!」
「……元気ですねぇ、二人とも」
肩を組んで意気込む二人を見て、椛は呆れたように言葉をこぼす。
でもまぁ―――その光景が微笑ましくて、なんだか自然と笑みがこぼれた。
ライバル関係といっても色々あるが、彼女たちのああいった関係は中々築ける物じゃないだろう。
椛は、二人がどういった経緯でライバル関係になったのかは知らない。
けれど、彼女たちはとても楽しそうで、満足そうで、だったらそれでいいんだろうって、椛は思う。
にとりたちのほうに合流した二人を見送りながら、ふと、自分にもライバルが居たらああいう関係になれるのだろうかと自問して、それが無意味なものだと悟って苦笑した。
もしかしたら、なんて考えても仕方が無い。二人の関係をうらやましく思っている自分が居ることに気が付いたけれど、あの関係は二人だけのものだ。
だから、自分は見守ってやるだけでいい。いざということがあったなら、自分が二人の背中を押してやるぐらいが丁度いいのだろう。
文とはたてが椛を呼ぶ。「今行きますよ」なんて苦笑をこぼしながら言葉にして、椛は仲間たちの元に足を向けたのだった。
可愛いねぇ、はたて!
個人的に椛の通常は鬼畜だった
そして、解禁おめでとう御座います!
お燐とお空突破した時点で総合シーン満たしてた自分が悪者に思えちまいますよ。
これはますます作品がおもしろくなることを期待していいんですね?
>文のラストスペル
最初見たとき、「どうするの、これ?」ってなりました。普通に撮れるってのも、以外でしたがw
個人的には、カメラシャイローズが一番きつかったです。
インパクト部門では、某巫女の一枚目が一番でしたがww
椛「アウトオブ眼中」
俺「千里眼なのに!?」
ダブルスポイラー、自分もがんばってみようかな・・・
>>視界にもう移らない鴉天狗の姿を見送り
映らない?