Coolier - 新生・東方創想話

文々白書

2010/04/10 12:21:36
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最近、ふと気付いた事がある。

「あやややや。霊夢さんばっかり撮り過ぎですねえ、どうしたことでしょう」

現像した写真の選別をしていると、やたらと霊夢さんの写真ばかりが出てくる。
いつの間にこんなに撮ってたのだろうか。
確かに記事になるし、巫女の生態を観察するだけでも面白い。
だが流石にどうでもいい写真ばかりを何十枚も無自覚に撮っていたなどというのは異常事態だ。

「無意識、無意識…。 古明地のこいしさんの仕業でしょうか?」

そんなわけはない。







「それは恋ですね、先輩。取材をしているうちに目覚めた恋心、取材という名目で頻繁に会いに行きいつしか二人は…。
    あの~、文様?  スペカ取り出すのやめてもらえませんか? 冗談ですよ、じょうだん。あははは」


「んー、そういうこともあるんじゃない? 頻繁に顔を見る人に好意を抱きやすくなるし、サブリミナル効果とか絶大だし。
 巫女の取材もいっつも命がけでしょ? だったらつり橋効果とかバッチリ当てはまるじゃん」

「文様、こうなったら今すぐ結婚の申し込みに行けばいいと思います。明日の朝刊の見出しは決まりですね!
 え、あ、ちょっと待って。調子乗ってました、ごめんなさい。       あの…、 それ以上いけないッ!!!!」

「一度会いに行って自分の気持ちを確かめてみたらー? 盗撮ばっかしてても気持ち悪がられるよ」


そんなこんなで頭がお花畑の犬に焼きを入れ、覗き見趣味の河童に別れを告げて博麗神社へ向かうことにした。




いやまさか、私が恋をしてるなんてありえない。
しかも相手がよりにもよって霊夢さんとは。命がいくつあっても足りないじゃないですか。
記者として常に傍観者の立場でいなければいけないはずなのに…。
我が文々。新聞創刊以来最大の危機です。
ただの思い過ごしであることを期待しましょう。












「霊夢さん、本日はお日柄もよく」
「帰れ」
「いえ、あの、 今日は...」
「新聞勧誘お断り」
「ですから」
「新聞勧誘お断り」
「…」

駄目だ、取り付く島もありはしない。
今にも塩を撒かれそうな見事な邪険っぷり。
というか、流石にその反応は傷つくんですけど霊夢さん。
泣きますよ?


この程度の拒絶で諦めるようならば記者なんて務まりません。
難攻不落な強敵と親密になる方法などいくらでもあるのです。


「上等の玉露と高級な羊羹をお持ちしたのですが…」
「いらっしゃい、ゆっくりしていくといいわ」

手土産を差し出すと、さっきまでの険悪さが嘘のように快く招き入れてくれた。百面相もびっくりの瞬間芸である。
さすがは金にあざといと評判の貧乏巫女。ぱねえ。
笑顔が輝いてます、霊夢さん。
この変わり身の速さは見習わねばなりませんね。



・・・・・・



お茶の用意が出来るまでの待ち時間、一人茶の間に残される。
霊夢さんの家。
今日に限って何故か無性に意識してしまう。
別にやましいことがあるわけでもないのに…。
勢いで来てはみたものの、一体何を話せばいいやら。



「お待たせ。本当にいいところのお茶を持ってきたみたいね、香りが凄いわ」

お盆を持ってやってくる霊夢さん。やけにご機嫌なご様子。可愛いです。
……。
いかん、意識しすぎだ。
それもこれも椛とにとりが変なことを言うせいだ。

「あ、ありがとうございます」
「それで、今日は何しに来たの?」
「え、ええと、休暇です。たまにはのんびりお話もいいかなと思いまして」
「本音は?」
「これが本音ですって」
「ふぅん」

なんだか凄い胡散臭いものを見るような眼で見られてる。
いや、まあ、普段が普段ですし、裏があると思われるのは致し方ないというか何と言うか。

「まぁそれなりのもの貰っちゃったし、今日くらいは付き合ってあげるわ」
「ありがとうございます」

祝・第一関門突破。









- 三時間後 -

「それで鬼が帰ってからもまた大変で」
「天狗も面倒くさいことしてんのねぇ」

実に当たり障りのない会話。
ネタはいくらでもあるから困らないのだが、何かが違う気がする。
一体何をしに来たんだったか。


「あ、雨」
「え? 私が飛んで来たときは晴れてましたよ」
「でも、ほら」
「あ」

ぽつり、ぽつりと、大粒の雨が空から降り始め、あっという間に土砂降りに変わってしまう。

「大雨ですね」
「そうね」



会話が止まる。
空から落ちる音。雨樋を叩く音。敷石で跳ねる音。地面を流れる音。
雨の音に耳を傾ける。
神社という場所のせいか、それだけのことなのにやけに風情がある。
ここはとても居心地がいい。
時間を忘れ、つい長居してしまいたくなる。








「今日は泊まってく?」















………………………………え?

は?






「え、あの…、   ぱあどぅん?」
「どこの言葉よ。
 この雨じゃ山まで帰るのも大変でしょ。傘を貸してもいいんだけど、あんたの場合役に立たなそうだし」

お茶を飲みながら、さも当然のことのように淡々と喋る霊夢さん。
ただの親切心から出た言葉だとしても、いきなりそう誘われたらびっくりするわけで。
心の準備も出来てないのにいきなりお泊りなんて無理!
まさか霊夢さんに誘われるとは想定外でした。
それは襲っちゃってもいいってことですかー?!

「いややややややや。流石にそれは失礼ですよ。帰ります。今すぐ帰ります!!!」
「そう? それじゃ、お気をつけて」
「お邪魔しました!」

脚が縺れそうになりながらも席を立つ。
霊夢さんも見送りについてくる。
いや、来なくていいです。これ以上パニクる前に一人にさせてくださいお願いです。






外に一歩足を踏み出すと、横殴りの雨の猛烈な歓迎を受ける。
あっというまに全身ずぶぬれ、濡れ鼠(鴉ですけど)になってしまう。
暗雲立ち込め、雷も鳴り響く。台風でも来てるのかという暴風雨。
ここを飛んで帰るのは相当骨が折れる。いや、 多分むり。

「雨がやむまで家で雨宿りしてったら?」
「あー…、お世話になります」

深々と頭を下げる。
お泊り決定ー。







「はい、タオルと浴衣。早く着替えてきなさい」
「お世話になります」


濡れて色々と透けてしまっている服を脱ぎ、浴衣に着替える。
下着はどうすれば…。やっぱり付けないのがマナーでしょうか?
てか、濡れちゃったんで着けてるのも気持ち悪いんですけどね。脱ぎ脱ぎ。
なんか、気が付かないうちに外堀が埋められているような…。




・・・


何だか落ち着かない。
いや、泊まるだけなんだからそわそわしても仕方がない。
いきなり襲われることはないと思う。多分。
いっそ襲っちゃう?いやいやいや。
十中八九夢想封印ですね。分かります。
でも何かの間違いでバッチコイ!!状態だったら?
据え膳食わねば何とやら、ここは襲ってみるのも一つの手か。
いやでも、            …うーん。
悶々。





「あんたと二人きりなんて随分珍しいわね」
「そうですねえ。こんなに長居するのは初めてかもしれません」

二人きり。その言葉に心臓が跳ねる。
意識しちゃいけない。自然に、自然に。

「カメラも持ってきてないみたいだし」
「あー、急いでたから忘れちゃいました」
「珍しい事もあるのね。今日は一体どういう風の吹き回し?」
「それは、まぁ…」

あはは~、と笑って誤魔化す。
あなたに恋をしているかもしれない、なんて間違っても言えるわけがないじゃないですか。




コツッ







…ん?




「熱はないみたいねえ。春になって頭がおかしくなったのかしら?」
「ちょ、ちょちょちょっと霊夢さん! 近い、顔が近い!!」


いつの間にか近付いておでこを合わせてくる霊夢さん。
他意はないのだろうけど、こんな近くに顔があるなんて無理。
慌てて距離を取り、後ろを向く。顔が火照ってる、こんな姿見せられないっ。

「ちょっと文。あんた、今日は色々とおかしいわよ?」


落ち着け、落ち着くのよ射命丸文。霊夢さんのおでこ。


「れ、霊夢さんの方こそおかしいですよ! 今日に限ってこんなに優しくしてくれるなんて」
「上等なお土産貰っちゃったし、今日くらいは面倒見るわよ」
「それだけですか?」
「それだけよ」
「本当に?」
「何が言いたいのよ」
「霊夢さんは私のことをどう思っていますか!」

だんっ、と畳を叩いて顔を寄せる。
女は度胸、ここが勝負だ射命丸文。

「どうって、迷惑な新聞記者でしょ」
「新聞記者じゃない私は?」
「そんな奴いるの?」
「う…、いないかも」
「外に出て頭冷やしてきた方がいいわよ」
「いえ、勢いでこのまま行かせて貰います。
 私は霊夢さんのことが好きかもしれません」
「どういう意味でよ」
「恋愛対象として、です」
「かもしれない、てのはどういうことさ」
「確かめてもいいですか?」
「は?」
「キスさせてください」
「はあ?」
「唇に! それかせめて腋にっ」
「ちょ、文…」
「霊夢さーんっ」





「夢想封印!!!!!!!」












「あの、   霊夢さん、      ごめんなさい」
「てるてる坊主よろしく簀巻きにして軒下に吊るしてやろうか」
「死んじゃいますから止めてください」
「反省してんの?」
「海よりも深く反省しております」


夢想封印からの華麗なコンボでボロ雑巾の如くにされたあげく、深々と土下座させられている。
テンパった挙句暴挙に出てしまった数分前の自分を殴りたい。
それもこれも霊夢さんが誘ってくるから!



「で、まずは事の次第を説明してもらおうかしら」
「はい。霊夢さんのことを付け回していたら、いつの間にか淡い恋心が生まれてしまったようでして」
「色々とおかしいだろ」
「自分でもびっくりです」
「それで、あんたはどうしたいわけ?」
「お試しで付き合ってみませんか?」
「新聞売る感覚で告白するなバカ」
「だってぇ~」

あ、なんか悩んでるっぽい。
これはいけるか?
あれ? 霊夢さんに告白するために来たんだっけ?
あややや?


「私の記事を書かないこと、来るときは手土産を持ってくること、お賽銭を入れること。
 この三つが守れるなら、しばらく付き合ってもいいわよ」
「それって貢いでるだけなんじゃ…」
「嫌なら別にいいけど」
「いえ、遵守させてもらいます」
「よろしい」

霊夢さんと恋人(?)になりましたー。





・・・・・・



「あの、霊夢さん? これは流石に辛抱たまらんというか、何と言いますか」
「寒いのよ。仕方ないでしょ」
「私は熱いです」
「我慢しなさい」

夜も遅くなったので一緒の布団で寝ている。どうしてこうなった。
霊夢さんがこっちを向いて横になっている。近い近い、顔が近いですってば。
私の袖を掴んできて更にいじらしい。
こんなので朝まで我慢できるわけがないじゃないですか。



「霊夢さん、食べちゃってもいいですか?」
「無制限夢想天生するわよ」
「ごめんなさい。朝まで大人しくしてます」
「おやすみ」


すやすやと平和そうに寝息を立てる霊夢さん。
てか、寝付くの早すぎです。人の気も知らないで。
悶々。
寝られるわけがない。


霊夢さんの方に向き直る。
うぅ、可愛い。
本気で襲ってしまおうか。いやマジで。
せめてカメラを持ってくればよかったなぁ。
この寝顔を一面に載せれば我が文々。新聞も安泰だろうに…。


「少しは、信用してもらえてるということでしょうか?」

何だか急に冷めてしまった。
うん、今日のとこは大人しくしてよう。
別に焦る必要もないし。
この寝顔を独占できる幸せに浴して眠りにつくとしよう。
寝られる、か?










「おはよう」
「おはようございます」

霊夢さんは寝間着を確認し、布団を確認し、異常がないか調べている。
てか、一体なんの痕跡を探そうとしてるんですか。

「本当に何もしてこなかったみたいね」
「何かしちゃっても良かったんですか?」
「何かしてたら、今頃永眠してたわよ」
「ですよねー」

いや、うん。よく我慢した私。





「天気も良くなったようですし、そろそろ帰りますね」

風を起こして強引に乾かした自分の服に着替え、外に出る。
今にも空に飛び立とうとした時、霊夢さんから声がかかる。

「文、忘れ物」
「へ? 今回は特に持ってきたものもないと思いますけど」
「忘れ物よ。こっち来なさい」
「?」

言われるがまま、霊夢さんの方に近寄る。
文花帖もカメラも持ってきてないし、お土産は霊夢さんにあげる物だし、忘れ物って何だ?











ちゅっ








………………………………へ?




「キスしたいって言ってたでしょ」
「いや、でも、     ええええー!?!」
「次は賽銭も持ってきなさいよ」
「はははいっ!」

お邪魔しましたー!と言い切らないうちに超スピードで空へと消える。
幻想郷最速記録更新、まさに有頂天。
そして疑惑が確信に変わる。



私、射命丸文は   霊夢に恋してる。




Happy End...?
「文様ー。首尾はどうでしたー?」
「椛、わたし霊夢さんのとこに嫁ぎに行くわ」
「わっふぅ?!」



霊「しばらく食事の心配はしなくてよさそうね」

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一度意識しちゃうと止まらないよねってお話。ちょっと強引だったかな?
惚れっぽい文ちゃんも可愛いと思います。
ジゴロ霊夢マジ鬼畜。

『あやれいむ』タグ追加しました
みをしん
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コメント



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1.100名前が無い程度の能力削除
これは良いあやれいむ
4.100喚く削除
この俺が……ニヤニヤしている、だとッ……!?
14.100名前が無い程度の能力削除
よいあやれいむをありがとう!
17.80名前が無い程度の能力削除
せめて百合タグつけて下さい。面白かったけど
25.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤが止まらんwww
27.100名前が無い程度の能力削除
うおおおおぉぉぉぉぉ!!
素晴らしいあやれいむ!!
ニヤニヤが止まらない!!
57.90名前が無い程度の能力削除
ちょお待てw 最高だった!
60.80ずわいがに削除
犬ww

勘違いどころかもはや確信犯だろ!?最初から好きだったんだよこいつらは!
64.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤしてる俺きめえww
いいあやれいむをありがとう
後書きww霊夢鬼畜www
74.100名前が無い程度の能力削除
霊夢さんマジ鬼畜w
84.100名前が無い程度の能力削除
霊夢さん容赦ないっす
99.100名前が無い程度の能力削除
ありがてえ、ありがてえ