Coolier - 新生・東方創想話

冬に咲く桜

2010/04/07 22:23:55
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白玉楼の庭園にて侵入者有

白玉楼の庭師”魂魄妖夢”がそれに気が付いたのは寝ている時だった。
眠い目をこすりつつ侵入者に対する警戒心を解かず、寝巻のまま自分の得物を持ち立ち上がった。

侵入者は白玉楼の桜の木が密集して植えられているところだった。
妖夢は木の陰に隠れつつ侵入者の元に少しずつ近づいて行くと、ついに侵入者の影をとらえた。

どうやら侵入者は桜の木を物色しているようだ…

庭師である妖夢にとって桜の木は大切な物、それを盗まれるとあっては黙ってられない。
そう思った時はもうすでに刀を抜き、侵入者に切っ先を向けていた。

「貴様、何をしている!」
暗いため侵入者の影しか見えない…

背が小さく…頭にはリボン…先のとがった6つの羽根…そして

「な、何よ!あたいに何か用!?」
この口調…

「なんだ、チルノさんですか」
そこにはバツの悪そうな顔をしたチルノがいた。

「あんた…ここの庭師ね」
「そうですけど…こんな所で何しているんですか?」
「ちょうど良いわ、この桜私にちょうだい」
「だめです」
突然の妖精の発言に情景反射で答えた。

「そう言うと思ったわ」
「ならあきらめて帰ってくれますか?」
「そういう訳にはいかないのよ」
「そうですか…仕方ありません」
辺りに緊迫した雰囲気が包み、次の瞬間妖精と半人は空に飛び出した。

だが、力の差は歴然であっという間にチルノは追いつめられた。

「そろそろ訳を話してもいいでしょう?」
「…」
桜の木に体をもたれてかかっているチルノに切っ先を向けたまま妖夢はチルノに聞いた。
ボロボロのチルノは恨めしそうに妖夢を見上げたが観念したのか、少しずつ話し始めた。

少し前の冬

湖の淵に二つの影
氷妖精”チルノ”と冬の妖怪”レティ・ホワイトロック”だった。

「今日も良い天気ね」
「…そうね」
どことなくいつもの元気が無いチルノにレティは気が付いた。

「どうしたの?」
「…だってレティ…もうすぐいなくなっちゃうんでしょ?」
今年の冬も、もう終わる…
冬の妖怪レティは冬が終わると存在できなくなる。
冬の妖怪なら仕方の無いことだが…親しい者がいなくなるのはやっぱりさびしい

「それは…」
「レティ、桜って見たことある?」
「桜?」
言葉自体は聞いたことはあるが、見たことは無い。
桜は普通春に咲くものだから当然だった。

「あのね、ピンク色でね、たくさんあってね、とっても綺麗なんだよ」
「そうなの、でも私は…」
「でね、桜が咲いたらその下で花見ってのをしてとっても楽しくて…」
チルノの言葉が止まった。
どうしたのかとレティがチルノを見ると小刻みに肩が震えていた。

「一緒に…見たいよ」
「チルノ…」
チルノは顔を膝にうずめていたので顔が見えなかった。

「一緒に…レティと…見たいよ」
「…ごめんね私じゃどうしようもないの…その気持ちで十分よ」
チルノの肩に手をポンと置くといくらか元気を取り戻したようで、すくっと立ち上がりレティの方を向き

「なら、あたいがどうにかしてあげるわよ!」
「どうにかって…どうするの?」
「今年は無理でも…いつか絶対に見せてあげるから!」
チルノは自信満々に言い放った。

「だから…」
「?」

「早く…帰ってきてね」
「…ええ、約束するわ」

そして、季節は春を迎えた…


現刻

「そうですか…」
「そうよ…」
「ですが、桜を丸々一本持って行くのはどうかと思いますよ…それに」
「?」

「ここからあなたの住処に持って帰れるんですか?」
「…あ」
チルノは今さらそのことに気が付いたようだ。

「それならこれを持って行きなさい」
突然後ろの方から声がした。

「ゆ、幽々子様?!」
そこには、この白玉楼の主”西行寺幽々子”がいた。

「…それ、なによ?」
「あなたの願いが叶うかもしれない苗木よ」
幽々子の手には、まだ小さな苗木があった。

「そうねえ…ちょっと特殊な苗木だから大切に育てなさい」
そう言って差し出した苗木をチルノは静かに受け取った。

「…ありがと」
「ふふ、いいえ。どういたしまして」
お礼を言ったチルノは帰って行った。

「…あれ何の苗木なんですか?」
その苗木は庭師である妖夢も見たことが無かった。

「あれは、紫から貰った想いの強さで花が咲く苗木よ」
「はい?」
この人は何を言っているんだと言わんばかりに妖夢はじと―っと幽々子を見た。

「もう、せっかくかっこ良く言ったのに…」
「ああ、冗談ですか」
「ふふ、あながち冗談じゃないかもしれないわよ?何かを育てるのには心を込めないといけないもの。ねえ妖夢?」
「…なんですか」
にやにやと妖夢を見つめる幽々子に妖夢は至極冷静に答えた。

「あら、ついに妖夢も反抗期かしら…私、悲しいわ」
「変なこと言わないでください。もう寝ますよ」
と言って妖夢は先に屋敷を目指して歩き始めた。

「もう、待ってよ~」
「うひゃあ! そんなところつかまないでくださいよ」
「ふふ、たまには一緒に寝る?」
「! 結構です」
「ふふ」


次の日からチルノはその苗木の世話を毎日した。
的確な育て方などは人に聞いたりしたが、植えた場所は誰にも教えなかった。
それは、一番最初にそれを見てほしい人がいるから…

その苗木は、そのチルノの想いに応えたのかぐんぐんと成長していった。

そして

「久しぶり~レティ~!」
「ふふ、久しぶりチルノ。元気だった?」
「当然じゃない!」
いつも通りの元気なチルノにレティは安心した。

「それよりレティ!」
「どうしたの?」


「一緒に来てほしいの」

と言ってレティの服の裾をつかみ、走り出した。


その冬、どこからともなく桜の花びらが吹かれていたという。
こんにちわ、ogiyです(-。-)y-゜゜゜
今、タバコがなくなってしまったので思考能力が低下しています…
ですから、前回のあとがきで「次回は必ず幻想入りを~」と言っていたことも忘れてしまい、こんなSS作りに励んでしまいました…
次回こそは…フラグになりそうなんでやめときます。

こんかいはチルノとレティのお話でした。
この二人は良い組み合わせですよね~
チルノは幻想入りに登場させる予定ですが…
先に謝っておくよチルノ…また泣かすかもw
ネタばれはここまでにしといて、そろそろ自分の中のニコチンとメンソールが無くなりmakahusigiな現象が起こりそうなので早急に買いに行ってきます。

次回は間違いなく幻想入りを!!!!!

では、また。
ogiy
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コメント



0.580簡易評価
12.80名前が無い程度の能力削除
まず誤字報告。
情景反射→条件反射
的確な育て方 誤字じゃないですが、育て方につく形容詞としては若干不自然かと。「正しい」「適切」あたりがいいのではないかと個人的には思いました。

良いお話でしたが、地の文が薄いのが残念です。
苗木が成長してからの流れは感動的な部分ですので、ほとんど数回の会話のキャッチボールだけで終わらせるのはもったいない気がしました。
14.60名前が無い程度の能力削除
チルノとレティのお話のわりには、幽々子と妖夢のほうが出番が多いような……。
題材自体はすごく素敵だと思うので、苗木をもらってからのお話をしっかり書いて欲しかったです。
15.70ずわいがに削除
短くも優しさを感じた。チルノの懸命さは何度読んでもええなぁ。
16.80名前が無い程度の能力削除
いい話だ
冥界組がほのぼのしててにやにやしました。