Coolier - 新生・東方創想話

誰かを助けるのに理由がいるかい?

2010/04/07 09:55:11
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マヨヒガの周りに何も無い荒野の中、

ポツンと立った一つの家から、すすり泣く女の声が聞こえる。

「えぐっうぐっ、聞いてよ、藍…。

 霖之助さんたらせっかく添い寝してあげたのに、

 手を出そうともしないのよ?せっかく人が恥ずかしいの我慢して、

 あんな格好で行ったのに…。ひどいと思わない!?ねぇ、藍!」

つい先日、香霖堂にて悪夢に悩まされる霖之助に救いの手を伸ばした紫。

なんとか添い寝することに成功したが、それでもそこまでで。

何もしてこなかった霖之助に腹が立ったのか、マヨヒガにてヤケ酒中である。

「そうですねー…。やっぱり格好云々というより、紫様に何かあるのかと」

橙の世話をしている時はまるで天使のような顔なのだが、

いざ紫の相手となると、どこか面倒臭そうな顔になる。

「わ、私にって…、どういうことよ」

頬を膨らませ、少し目に涙を浮かべる。

「そうですね。まず、紫様が幻想郷でトップレベルの実力だからでしょう。

 仮に紫様に手を出すとします」

藍はこの時少しだけ、口を3の字にしてる紫を可愛いと思った。

「もし手を出して、逆鱗にでも触れたら人生終わったも同義です。

 そこまでして、手を出す男がいるでしょうか…って紫様?」

藍が喋り終わる頃には、紫は部屋の隅で蹲りのの字を書いていた。

「ふん…どうせ私は、危ない女だわよ。

 いーもん、これからも独りで生きていくんだから…」

どうやら拗ねてしまったようである。

「心配なさらないでください。紫様にだって魅力はあります」

すると、紫は少しだけ顔を上げ、

「…私の魅力って…?」

「そうですね、まず幻想郷を守るだけの力、

 そして、その幻想郷の住民をまとめるカリスマ性、

 最後に、神の力に等しい能力…って紫様?」

気がつくと、目の前に紫の姿は無く、

寝室の布団に、包まっている紫が発見された。

「それって、やっぱり力強くてただ胡散臭いだけじゃない…」

どうやらネガティブになったようだ。

「あ、そうだ。この間監視に行った時に店主がこのような事を――」

藍が言い終わるより早く、紫は寝ていた体を上げ、

「霖之助さんが?何を言ってたの?」

「え、ええ、『紫は(胡散臭くなければ)綺麗なんだよ…。

 そうだ、本人に伝えておいてくれないか?

 これからもずっと(扉から)来てほしいと。君なら聞くだろうしね』とのこと」

一言足りないせいで誤解を招くことを霖之助自身理解していない。

「そ、そうなの…。しょ、しょうがないわねぇ…。

 仕方ないから行ってあげるわよ。

 ほんとに、しょうがなくなんだから誤解しないでほしいわね」

顔を赤らめ、いやんいやんしながら呟く紫の姿を見て藍は、

(あぁ…これは橙には見せられないな…)

と、静かに思ったそうな。

「霖之助さんの事なんか、好きでも何でもないんだから!」

妄想の世界に入った紫が現実世界に戻されるのは、それから半刻が過ぎてからである。

















「うぃっくしょい!…風邪でも引いたかな」

「大丈夫ですか?」

暇つぶしがてらに遊びに来ていた早苗は、

心配そうに霖之助の顔を覗く。

「あぁ、大丈夫だよ。それより今日はどうしたんだい?」

「今日は暇つぶしに…ってそうだった。神奈子様から伝言があります。

 この間の礼をしたいから、神社まで来てほしいそうです」

「気にしてないよと伝えておいてくれ」

いかにも面倒臭そうに呟く霖之助。

嘘を隠そうとしないところが良い所なのか悪い所なのか…。

「そうもいきません。約束を破るわけにはいきませんから」

早苗としても、断固として連れて行くらしい。

「しかし、ただ礼を言われるだけに――待てよ」

そこでふと霖之助に考えが浮かんだ。

(今回の悪夢は統一して女の嫉妬によるものだ。

 普通は地底に住んでいる鬼姫に頼る所だが…。

 彼女は嫉妬を操る能力であり、その嫉妬元が存在しないのなら意味がない。

 では一体どうするか。

 悪夢と言うのは本来悲しい出来事、辛い食べ物、アルコールの過剰摂取などによるものだ。

 しかし、僕はそのどれも満たしていない。

 では、恨みやそれに似た何かだとどうだろうか。

 無縁塚で仕入れてる以上、そんな感情を持った霊がいてもおかしくない。

 確かに僕は取付かれにくいが、取り付かれないわけではない。

 と、するとあの二柱か)

ここまでの間約1秒。

「…どうしました?」

「いや、なんでもない。すぐ準備してくるから待っておいてくれ」

掌を返したかのように、行く気になった霖之助に

少し疑問を持つ早苗。

だが、しかし別に悪いことでもないので、すぐに忘れてしまう。
















「神奈子様。霖之助さんを連れてきましたよ」

「あ、ああ。すぐ行くよ」

赤らめる顔を冷まし、心を落ち着かせるよう深呼吸を繰り返す。

(服は洗濯したてのやつだし、髪や体は二回洗った。

 掃除だってしてあるし、礼の言葉も練習した。

 うん、イケる!ファイト、神奈子!)

緊張した面持ちで、霖之助の目の前に立つ。

「やあ、久しぶりだね。神奈子」

「え、あ、うん。そ、その…この間はありがとね。迷惑かけちゃって」

手をもじもじしだして、霖之助の顔を見ようとしない。

「困った時はお互い様さ。それに僕もそれなりに楽しかったからね」

微かに笑う霖之助に心が大きく跳ねたような気がした。

「う、うん。えと…こんな所じゃなんだし、あがりなよ」

オドオドしながらも、何とか客間へ案内することができた神奈子は、

早苗のいるキッチンへ行くと、まるで走ってきたかのように、

ドサッと崩れ落ちた。

「ど、どうしたんですか?神奈子様」

「い、いや、いいんだ。それより諏訪子は?」

早苗に気づかれないように平静を装う。

「諏訪子様でしたら、そろそろお戻りに「ただいまー!」」

大きな声と共に、ガラッと戸を開ける音が響く。

「お帰りなさいませ。霖之助さんがお見えになられてます」

「そうなの?分かった」

諏訪子は鼻歌を歌いながら客間へと向かっていく。

「やあ、霖之助。久しぶり」

「諏訪子か。久しぶりだね」

諏訪子は霖之助の手元にあったお茶を一飲みすると、隣に座る。

「今日はどうしたの?」

「ああ、神奈子に呼ばれたのと…君に用があったからね」

急に霖之助の顔が真剣な顔になり、諏訪子も何かあったのではと顔を険しくする。

「…何かあったの?」

「ああ、落ち着いて聞いてくれ。

 ここを去って何日かしてか、ある事が起きてね。

 そこで思ったんだ。僕には君が(夢をどうにかするのに)必要だと。

 君がいないと、僕は(夢のせいで)夜も寝られないんだ。

 無理にとは言わないが、(夢をどうにかするのに)付き合ってくれないか」

すると、すぐ近くで湯のみの割れる音が聞こえた。

自分が飲む為のものであろう、湯のみを落とした神奈子は、

最初は真っ青になり、すぐに真っ赤になった。

「り…り…」

「り?」

「霖之助のバカーーーーーーーーーー!!!!!!!」

霖之助の腹に柱が1つ。

「ごふっ。ま、待つんだ、神奈子。これは深いわけが」

まるで浮気の言い訳をしているようである。

まぁ、神奈子から見ればそう見えるのかもしれないが。

「あなたを殺して、私も死ぬー!!」

「ば、ばか!ヤケになるんじゃない!」

霖之助が真相を話すのに、しばらく時間がかかったとケロ子の談。
















「…ようするに、女の嫉妬のような悪夢が祟りだと思ったわけね?」

「…その通りだ」

霖之助の顔には無数の傷跡があり、とても痛そうだ。

「で、紫とそ、そそ添い寝をした時は何ともなかったんだね?」

「その通りだ」

神奈子は先程とは違う理由で真っ赤にしている。

「うーん、私が見る限り祟りのようなものはどこにもないね…。

 これは私の推測だけど、

 もしかして女性と一緒に寝ればその時だけ大丈夫なんじゃないかな?」

「まだ紫との1回だけだから、保障はないが…それしかないか…」

毎晩添い寝しなければならないと聞いて、

神奈子はもちろん真っ赤に、早苗や諏訪子も少し赤らめていた。

「もう一度言うけど、無理なら無理と言ってくれて構わない。

 嫌いな人と寝ることがどれ程嫌なことかは僕だって分かってるからね」

そこで即座に否定する者が一人。

「べっ別に嫌というわけじゃないよ。ただ驚いてるだけさ」

「神奈子も言ってるし、私も構わないよ?家族が増えて楽しいしね」

そして神奈子と諏訪子は早苗をチラッと見る。

「わ、私も大丈夫ですよ。初めてなので緊張しますけど」

年頃の娘にとって、成人男性との添い寝など早々ないことだろう。

「じゃ、決まりだね。今日からしばらくよろしく、霖之助」

「ああ、恩に着るよ」

霖之助は両拳を床につけ、深々と頭を下げた。

そしてその様子を見てる者が他に2人…。

「霖之助さん…どうして私に言わないのよ。

 私だったらいくらだって添い寝させてあげるのに…」

「添い寝することが当初の目的だからじゃないからじゃないですか?」

悲しそうな顔だったのが、藍の言葉を聞いてぱぁっと笑顔に戻る。

「そうよね。ただ偶々添い寝になっただけで、それが目的なら私の所に来るはずですものね。

 藍ったら頭いいわぁ」

(まぁ他にも色々理由はあると思いますけど)

紫の機嫌を損なうのも嫌なので、それは言わないことにする。
















霖之助も、ついでとのことで一泊させてもらうことになり、

夕食が出来るまでの間、霖之助はやることがなかった。

普段なら本を読むなりできるのだが、

如何せん他人の家だ。本を持ってくるのも気が引ける。

すると神奈子が何をしたいのか、

やたらと彼の前を通り、しきりに頭を振る。

(虫でもついてるのか?)

と、彼女の髪の毛を凝らして見てみると

「おや、中々綺麗なものが…」

彼女の頭に小さな髪飾りがついていた。

髪飾り自体紫なので、よく目を凝らさないと見えないのである。

「え?あ、気づいちゃったかい?この間人里で見つけてね」

偶然を装っているが、霖之助じゃなかったらバレバレである。

「へぇ、綺麗じゃないか」

綺麗と言われて、顔を赤らめる神奈子。

「や、やだよ。煽てても何も出ないんだから…」

「もらうつもりはないんだが…あぁそうだ」

霖之助は腰から下げたポーチを開くと、中から小さな何かを出し、

神奈子の手に渡す。

「この間土蜘蛛の糸が少し余ってね。ゴム程度しか作れなかったが、

 神奈子には似合うと思うよ。色も似合ってるしね」

渡されたのは、キラキラと輝く赤のヘアゴム。

「これを…私にかい?」

わなわなとゴムを摘み上げ、目の前まで持ってくる。

「いいのかい?こんな綺麗なもの私になんか…」

「神奈子だから似合うと思ったのさ。もちろん嫌なら捨てても構わないよ」

すると、彼女はゴムをぎゅうっと握り締め、涙を浮かべながら、

「ううん…絶対大切にする。ありがとう…霖之助」

(たかがゴムだが、随分手の込んだものを作ったものだ…。

 ま、これを見れただけ良しとするか)

霖之助の心情にも、どこか変化が訪れようとしている…かもしれない。

「そうだ、神奈子。ここへおいで」

霖之助は彼女を自分の目の前へ来るよう手招きをする。

「どうかしたのかい?」

「せっかくだ。僕が結んであげるよ」

神奈子も断ろうとしたが、せっかく霖之助がプレゼントしてくれて、

それを結んでくれるというのに断るとは非情ではないだろうか。

そんな考えが浮上して、真っ赤にさせながら頷く神奈子。

「よ、よろしく…」

まるで、犬の時に戻ったような至福の時間に、

時間の経過も忘れ、ぼうっとする神奈子。

「ほら、終わったよ」

もちろん結ぶだけなので、そこまで時間がかかるわけではない。

「あ、うん…」

名残惜しそうに、霖之助から離れる神奈子の顔は、

どこか子供のような雰囲気があった。















お風呂も難なく終わり、今からが本題である。

布団を4つ並べ、

左から、早苗、諏訪子、霖之助、神奈子の順である。

「皆で寝るというのも久しぶりだねー」

諏訪子は嬉しそうに、ごろごろと縦横無尽に転がりまわる。

「諏訪子、静かにしなよ。すまないね、騒がしくて」

「何、気にすることはないよ」

騒がしかった諏訪子も、寝てしまったのか静かになり、

神奈子も眠ってしまったようである。

(さて…悪夢じゃないことを祈りたいね)

そう思うとすっと目をつぶり、

眠りの森へと足を踏み入れる。











「――どうして、私じゃないの」

女は言う。

「貴方に似合うのは私だけなの」

言いながら女は段々と近づいてくる。

「私だけが貴方を救えるの」

そして目の前で歩みを止める。

「ねぇ、そう思うでしょ?霖之助さん」

目の前にあったのは、目を大きく開いた紫の顔。

「はっ!?」

がばっと布団を跳ね除け起き上がる。

額には汗がびっしょりと浮かんでいた。

「…悪夢だったようだね」

いつの間に起きていたのか、神奈子も目を覚ましていたようだった。

「ああ、すまない。起こしてしまったようだね」

「気にすることはないさ」

神奈子はそう言うと、また目を瞑り寝てしまった。

霖之助も寝ようとはするが、

目が覚めてしまい、寝付けることは不可能だった。















翌朝。

全員が起きた所で、夢の内容を話した。

(あの賢者が添い寝した時は何事も無く、私や神奈子が寝ると夢に出る…。

 ふむ…、あの賢者もややこしい能力を持ったものだね)

諏訪子は静かに口を開き、

「紫が出てきたってことは何か関係があるのかもしれないね。

 実際にそんなことができる能力も持ってるし」

「だけど、居場所なんて…」

すると、霖之助が口を挟み、

「紫は定期的に店には来ている。確立は高くないが、

 店にいれば会える気がするんだ」

と、いうことで霖之助は店へ戻ることになり、

神奈子も店へと付いてきた。

「付いてくることはなかったんだがね」

「何、霖之助の事が心配になったからね」

そこで霖之助は何を思ったのか。

「確かにありがたいが…君がそこまでする必要はないんじゃないか?

 迷惑もかけてしまったしね」

それを聞いた神奈子は、呆れ顔になって、

「霖之助…誰かを助けるのに理由がいるかい?

 私は霖之助が心配だ。それだけで十分じゃないのかい?」

すると、霖之助も何も言えなくなり、

「それはそうだが…」

「何、旅は道ずれ世は情けってことだよ。

 あのヘアゴムのお礼とでも思ってくれればいいさ」

そう話す神奈子の顔は、

オドオドした少女の顔ではなく、

まさに神と言うべき勇ましい顔だったらしい。
お久しぶりです

いやぁ、パソコンがイカれてしまって(;´・ω・`)

とりあえず、豆知識お。

タイトルを見たら分かると思いますが、

そうです、あの人の言葉です。

いや、大好きです(*・ω・)

自分が困ってる時にあんな言葉言われたら…

惚れてまうやろー!(*`・ω・´)

とりあえず、紫は少女だと思うんだ。

\ばばぁーん/とか書いた人はスキマ送りされていいと思うんだ。

異論は認めないよ?
白黒林檎
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コメント



0.2260簡易評価
8.90スポポビッチ削除
神奈子様が可愛すぎて生きてるのが辛い
11.100名前が無い程度の能力削除
八雲紫、八坂神奈子ときたらもう「八」つながりで八意永琳しかいないでしょう!!
霖之助さん、一回医者に診てもらおうよw
23.100名前が無い程度の能力削除
結局紫が原点?
続きが楽しみです!
28.100名前が無い程度の能力削除
そう言えばバb……じゃなくて
少女は皆頭に「八」の字が付いてるね。
38.90sk005499削除
困った時には
( ゚∀゚)o彡゜えーりん!えーりん!
44.100名前が無い程度の能力削除
ジタンの名言
47.100名前が無い程度の能力削除
いいねえこの九十年代ハーレム漫画の展開!
56.100名前が無い程度の能力削除
萌え死にするwww
63.100名前が無い程度の能力削除
もっとやれ!
66.100静かに読み続ける程度の能力削除
ゆかりんと神奈子様が可愛すぎる!
ゴロゴロしちまうぜー!