「霊夢ー」
てゐが行方不明になった。
一日ぐらい永遠亭を空けることはザラだった。ところが今回は一週間だ。
「居ないのー?」
困る。永遠亭の兎たちは、てゐの下で動いている。
で、アタマを失った兎たちはぐちゃぐちゃ。永遠亭は大混乱。特に炊事や洗濯、その他の家事。にっちもさっちも行かなくなった。
「おーい」
これはいかんということで、姫と師匠に命じられ、私はてゐを探す羽目になった。てゐ捜索隊だ。
隊員は私だけだ。姫や師匠がやるわけにもいかないし、兎どもは言うことを聞かないし、仕方ない。
でも、私一人の力でアレを探し出すなんて無理だ。砂漠から砂一粒を見つけるようなものだ。誰かの協力は必須。
そこで霊夢だ。彼女の勘は鋭い。てゐの居場所について重要なヒントが得られるに違いない。
そういうわけで、博麗神社にやって来たのだけど。呼びかけても返事がない。
「あがるよー?」
玄関から上がって奥に進む。
立派な不法侵入だけれど、まあ事情が事情だし、お天道様も許してくれるだろう。
呼びかけても返事が無いとき、だいたい霊夢はこの部屋に居る。寝室。
いきなり入るのもアレだから、一応ノックした。
「霊夢ー」
「んー、あと五時間……」
もうお昼を回っている。五時間も待ってられますかと戸を開け、布団を引っぺがした。
霊夢は芋虫みたいに縮こまったあと、観念して起き上がった。
「うう、もー、何」
「ちょっと相談があるの」
「ウチはお悩み相談所じゃないのに」
「そんなことは分かってるって」
不満げに口を尖らせる霊夢を、なだめすかす。
「てゐが行方不明なの。探すの手伝ってくれない?」
「はぁ? 何で私が。巫女だって暇じゃないのよ」
うそつけ。
「聞いてくれたら永遠亭印の健康野菜をお礼に……」
「む……」
永遠亭印の健康野菜とは、師匠プロデュースのもと栽培している高級野菜だ。お値段五倍、味と栄養価十倍。ぶっちゃけ贅沢品。
ウチの直販で流通しているので、そこらの八百屋じゃ売ってない。人里の庶民からは憧れの的。売り上げは師匠の懐へ。何に使ってるんだか……。
まあとにかく、労働の対価としては、結構なものだと思う。
「……あの詐欺師、いつ居なくなったの?」
「ありがとう。一週間前、朝起きたら居なかった。布団にも入ってないみたいだったわ。だから前の日の夜には居なくなったんだと思う」
さすがの巫女も食い気には勝てないらしい。
野菜に関しては経費ということで落とそう。師匠が我慢すれば済む話だ。私一人にこんな面倒な仕事を押し付けた恨みだ。ふふん。
「んー……永遠亭に行かなきゃなんない気がする。うん。てゐの部屋を見せて」
「永遠亭に?」
「なんとなくそう思っただけ。でもまあ、私の勘だし?」
霊夢の勘を頼っているのだ。わざわざ逆らう道理も無い。
そういうわけで、私たちは永遠亭に向かう。
「てゐの部屋に? かまわないけど、あの子勝手に部屋に入られるとうるさいから、痕跡は残しちゃ駄目よ?」
「もちろんです。逆恨みされて悪戯されるのはゴメンですもん」
ところ変わって永遠亭。
みんなの私室はそれぞれに鍵がついていて、てゐの部屋は、奴の失踪以後、施錠しっぱなしだ。
だから、マスターキーを師匠に借りに来た。
「ねぇ永琳。てゐ、居なくなる前、あんたのとこに来なかった?」
「え? ……ああ、来たわ。最近お腹の調子が悪いって。どうかした?」
「いや、なんとなく。まあいいか。とりあえず部屋を見ないと」
?
てゐの行動が何か関係あるんだろうか。どこに行ったかが重要だと思うのだけど。
とにかく、百聞は一見にしかず。てゐの部屋へ向かった。
師匠に借りた鍵で、部屋の鍵を回す。かちりという手ごたえの後、私は扉を開いた。
「うわぁ!」
上から小麦粉が降ってきた。あわてて後ろに飛びのく。
それでも間に合わなくて、ちょっとブレザーが白くなった。
さらに、金タライ到来。小麦粉の落下地点に降ってきた。
霊夢がカラカラ笑う。
「あー、うん。あんたに開けさせて正解だったわ」
「てゐ……ッ!」
なんというトラップ。見られて困るようなものなんて持ってないくせに。
奴め。戻ってきたら一発ぶん殴ってやる。
「それ以外に変わったものは無いのね」
「てゐは物に執着しないから」
「ふぅん……あら」
霊夢は、部屋の隅っこにあった湯飲みに目をつけた。
何の変哲も無い湯飲みだ。緑茶が入っている。
「ねぇこれ」
「ん?」
「呪術が掛けられてる」
「はい?」
私は首をかしげた。
というのも、てゐがそんなもの作れるはずは無いからだ。
てゐにそんな技術は無いはずだ。だから小麦粉だの金タライを降らすトラップを作るのだ。
術だのなんだのが使えるなら、それでトラップを作るはずだ。そのほうが安上がりで低労力。てゐだけに低労力。いま思いついた。傑作。
「外すけど、いい?」
「危ないんじゃないの? 呪術って」
「ああいや、そういう類のものじゃないわ。大丈夫大丈夫」
「ならいいけど」
霊夢は湯飲みに御札を貼り付け、何かしらむにゃむにゃと呟きだした。祝詞とか言うんだっけ?
どこか不思議な響きを持つ言葉で、私はそれに聞き入る。
「かしこみかしこみ申す、へへー。というわけで、どっせい!」
おい!
霊夢は湯飲みを思いっきり蹴飛ばした。入ってた緑茶が思いっきりこぼれる。呪術って、そんな物理的な手段で外れるものなのか。
何のための祝詞を唱えたというのか。すごく疑問に思った。
しかし、何かしらの効果はあったらしく、湯飲みがモワモワと煙を出し始めた。
部屋が真っ白になる。
「うわ、霊夢、大丈夫なのコレ」
「もちろん。たぶん」
「どっちなのよ……」
ものすごく不安だ。でも手遅れだ。後は野となれ山となれ。煙が治まるのを待った。
半ば観念していたけど、やがてそれは薄れていった。
「……てゐ?」
湯飲みは無くなっていた。ぶちまけられた緑茶もだ。
代わりに、見慣れた兎が居た。
「あれ、あんた何やってんの? 巫女まで……うわ! 小麦粉Xが発動してるし!」
てゐは状況がまったく分かっていないようだった。
あのトラップ、小麦粉Xっていうのか。その名前はやめとけ。小麦粉じゃなかったら色々まずい。
「あんた、一週間湯飲みと緑茶になってたのよ」
霊夢が説明した。かいつまみすぎて何を言ってるのか分からない。
「はぁ? 何言ってんの」
それはてゐも同じだった。
「永琳に薬をもらった?」
「え、うん。それが?」
「何の薬?」
霊夢はてゐに訊く。でもそれが何だっていうんだろう。
てゐもそう思ったらしいけど、霊夢に促されて答えた。
その答えで、私はすべてを理解した。
「胃収縮の薬。最近胃拡張ぎみだったから」
「因幡ティー……!」
あとてゐさんの聖水は姫さま専用ですよ喚さん(なんだと)
鈴仙のがいいw
飲むのはともかくお茶汲みはしてみたい。
落ちがわかってやるせない気分になったのは初めてだw
ちくしょう、くだらねえwww
因幡を中心としたなかなか良いCDで、結構好んで聞くんですよ
でも、このオチは最後まで気づけなかった…っ!
喚くさんなら「愚問」と一笑に付すのでしょうね。
…その発想はなかった…ッ!くだらなすぎるw
湯飲みと緑茶よりは紅茶とかのほうがわかりやすかったかもしれませんね
相変わらずのトンデモ発想です、楽しませていただきました。
あぁ…、なるほどw
……くだらないww実にくだらないwww(誉め言葉
てかタイトル意味不ww
なんかもう負けましたwwwwwww
途中から、喚く狂人氏の作品と言うのを失念してたから、真剣に読んでしまったじゃないかwwwww
『ゐ』だし!しゅうしゅくしても『てぃ』だし!てぃーじゃないし!
ちょっと苦しくないですかいw
そしてこの作品が創想話10000作品目というのも何故か頷けてしまうwおめでとうございます!
「ゐ」はわ行の文字なので「wi/うぃ」が本来の発音ですね
まあ現代仮名使いでは普通に「い」と同音なのでどちらも正解だと思いますが
>>59さん
そんな数百年前に混同されるようになった発音に拘られても……
これはwwwく、くだらねぇ(誉め言葉)
そういうことかwwww
永遠亭ギャグもっと増えろ
でも、そこが好きです