ある曇りの日の事
「うっ…ヒッグ、うぇ…」
ぽつり、と
また青いワンピースが濡れる
氷精が泣いていた
「あれは…いつかの氷精じゃないか」
奴には見覚えがある。自分の事を最強と言いながら、以前、散歩中にいきなり喧嘩をふっかけられた事があった
その時は一蹴してやったのだが
一人散歩もいいものだとチルノに近づくは、夜の王
「うっ、…ぐ……う…」
何があったか知らんが相当落ち込んでいるらしい
何を思ったか、軽く笑みを浮かべながら話しかける
「お前d「うわぁぁああああああああああああああ!!
ドガガガ!!
一瞬にして10mはあろう氷山が作られ、閉じ込められたレミリア
「はぁっはぁっ……はっ、あはは!あたいを、あたいをバカにするから……あ」
氷の中から紅い光が見えたと思ったら、自分の体に小さい穴が空いていた
「ゴ、ホ…」
「なんだ…この程度か、折角久々に楽しめると思ったんだが」
ガラガラと、涼しい顔で氷山を崩し出てくる紅い悪魔
氷精は倒れ
ない
右手を付き、体を支え、ありったけの冷気を左手に集める
顔は前を、レミリアを見据える
「面白い、そうでなくてはな」
「ばかにするなぁぁぁああああ!」
ダッ、と地を蹴り、地面すれすれの低空飛行のままレミリアに突進する
吸血鬼からすれば簡単に、避けて下さいと言わんばかりの速度
だがそれでは面白くないと、右手を突き出すレミリア
「その手もろとも砕いてやろう」
そのまま氷精が殴りかかろうと突き出した右手を叩き壊す…
右手?
奴が冷気を溜めてたのは…
「…ッ!」
ゴッ
地面に叩き付けられたのはレミリア
「う…ォえ…」
しかしチルノも満身創痍
レミリアを殴り付けたままザザザと地面を滑って停止し、動けない
「う…うぅ…」
また涙が出てくる
相手はその意図を知る由も無い
「なんだ?情けないな、妖精でも痛みを感じるのか?」
「う…るさ…ゲホッ…」
あぁ、またこのきもちが
「…」
「くそッ…うっうぅ」
なんででてくるんだろう
「…」
「なんで…なんでよ!」
もうとめられない…
「なんでみんなしてあたいをバカにっするのよ!なにがおかしいのよ!?
ッあたいだって…すきで、すきでバカにされてるんじゃないのに…!
のぞんでわらわれてるんじゃ、、、うっ、ないのに…なんで…どうしてよぉ…!!
あたいだってあたい、な、なりに…いっしょうけんめいこたえて…ズッ、ごだえて…
…もうやだよぉ…うぐっだれも…だれもわがっでぐれない…グシュッ」
傷の治りが早いのか、息を切らすのも忘れて急にわんわん泣き始めるチルノ
一方のレミリアは何が何やら分からない、と言う感じでは無く、ずっと立ち尽くす
何を思ったか、少し経つと急にレミリアが動く
「おい、氷精」
「うぅ…?」
「バカを治す方法を教えてやろうか?」
「え…?」
「でっでも、うぐっバカにはつけるくすりもっなっ、ないって、えーりんがいってたっし…」
「あるさ、知りたいか?」
「うん…」
「なら、死ね」
「え?」
大地が揺れる、それ程までの妖気を手に集め、ヒュンヒュンと槍を練成しながらレミリアは言う
「バカは死ぬと治るらしいからな」
「えっで、でも、まッて…ぁ、あぁ…」
今まで感じた事の無い恐ろしい妖気に当てられ、ガタガタと震えるチルノ
だめだ、しぬ、ころされる。ほんきだ、こいつ、こわい…こわいよ…
「ははっ恐怖しているのか?最強のお前が?」
「うっ、うぅ……」
「大丈夫だ、痛みは感じないよ、一瞬で治してやる」
「や…やめ「やめて下さい!!」
チルノの声を遮り、一匹の妖精が叫ぶ
「だ、だいちゃん…」
「なんだ氷精、お前の『お友達』か?」
「お願いです。この子がいたずらをしたのなら謝ります。で、でも根は悪い子じゃないんです。少し頭がおかしいだけで…」
「駄目だな、こいつは私を地面に伏せさせた、許せる事ではない。お前も一緒に死ぬか?」
大妖精も体を震わせる、あまりにも相手が大きすぎる
でも、でも私がやらないと…!
「チルノちゃんをいじめるなぁー!」
ドンッ!
いっしゅんだった
あまりのあかいつよいひかりでめがくらんだ
わかったことはレミリアのてから やり が消えていたのと
だいちゃんがうしろのやまと一緒に消えたこと
「だい…ちゃん…?」
「やはり脆いな、妖精は、つまらなすぎる、さぁ、次はお前の番だぞ…氷精?」
「あぁぁぁあああ!!!」
氷を作り、飛ばす、飛ばす、飛ばす
しかし全て簡単に避けられ、目の前まで悪魔が迫る
「ヒッ…」
「…飽きた、消えろ……
ん?」
レミリアの動きが止まり、後ろを振り向く
そこにはリグル、ミスティア、ルーミアが立っていた
「や、やめろ!チルノをやらせはし、しないぞ!」
レミリアは口の端を吊りあげ、笑うと再び槍を練成しはじめた
「うわぁ、す、すごい妖気…」
「やばいのかー」
「チルノー!ごめんねー!ボク達ちょっと調子に乗りすぎちゃったんだー!
ごめん!本当に!ごめんねー!」
「私も!ごめんなさーい!」
「謝るのかー!」
レミリアの向こうにいるチルノに大声で叫ぶリグル
「みんな…」
チルノは俯き涙を零す
「で、でも、だいちゃんっが…ッ!?」
顔を上げた時にはリグル、ミスティア、ルーミアが消えていて、そこには
レミリアが変わりに浮いていた
「茶番は嫌いでな」
「…ぁ。…ぁ」
「さて、仕上げだ」
もう、いいや、なんにものこらないんだもん…
すっ、と虚ろなチルノの顔に手をかざす
「抵抗しないのか?最強よ」
「かってにすれば…いいじゃない…なおしてくれるんでしょ…」
「…そうだな」
───そして、光が無くなった
「全く、お嬢様も気まぐれを起こすのは勝手ですが余り私にも迷惑をかけないで欲しいものです」
「でもあなた、結構楽しそうだったらしいじゃない」
「そ、それは…でも朝指定された時間に行くとあんな惨事ですもの、私が感づかなければ皆死んでいましたよ?」
「それはお前の勘の良さを信頼したからだよ」
「あ、お嬢様、お早う御座います、ですがあんな状況、とりあえず助けるに決まってるじゃないですか。」
「まぁ私が一度目にグングニルを放った時は間に合わなかったかと心配になったがな」
「本当ですよ、後少しで私まで死ぬ所でしたもの」
──あれ、なんで、あたい…いきて…いきてる!?
ガバッ
「あ、目が覚めましたよ」
「チルノちゃーん!」
「あ、あれ?え?だいちゃん?あれ?みんなも?え?」
「大丈夫?チルノ」
なにがなにやらわからないチルノ
「お前には説明しても分からんさ、まぁ説明する気もないが」
ククッと悪魔は嘲笑う
「え?え?え?」
「言ったろう?治してやるって、まぁ馬鹿までは私にも治せなかったがな」
チルノは大妖精、リグル、ミスティア、ルーミアに、皆に囲まれる
あぁ
なんとなくチルノはわかったきがした
──たしかに、なおしてくれた
悪意の籠もってない言葉だけに、凄まじい破壊力だ。
チルノはバカじゃないよ