地霊殿にて。
私ことこいしとフランちゃんの二人で、毎度お馴染みのティータイムを堪能中。大人の嗜みって奴よね。
「でもコーラはお茶って言わないと思うわよ」
フランちゃんの突っ込みを無視しつつ、最近お空がどこからか持ってきた黒いお茶をストローでゴクゴクと飲む。
口の中がシュワシュワと大変な事になって、なんとも爽快で不思議な味であった。
「まったく、子供なんだからこいしちゃんは。私くらいの大人になると、やっぱり紅茶の方が性に合ってるわ」
とフランちゃんはコーラ片手に胸を張ったけど、十杯も嬉しそうに御代わりした子に言われても、説得力ないよもう。
「まったく、我侭なんだからフランちゃんは」
「こいしちゃんだけには言われたくないわ」
私は困ったちゃんなフランちゃんを見つめながら、軽く溜息を付いた。
そしてふと、ぬえの事を思い出す。
あいつは今、この空の向こうで何をしてるんだろうか。
出来ることなら、あの子にこの美味しいお茶を鼻の穴から飲ませてあげたかったわ
そう想うと、悲しくて、目から、ビームが……、
「みんなー、大変な事が起きたんだよ!」
その時、壊れるんじゃないかというくらいの勢いで部屋のドアが開かれた。
一体誰だろうかと二人で見ると、そこにはゼェゼェと呼吸の乱れたぬえが居た。
羽の鳥よれよれ、羽の矢印も地面を差してる、いつも手に巻きつけているヘビもいない。
私とフランちゃんは只ならぬ雰囲気に、コーラを飲む手を止めてぬえを見る。
この緊迫した空気、事件の予感だねっ。
え? ぬえが死んだって? 失礼ねぇ、そんなわけないじゃない。
「実は私の使い魔が、逃げちゃったんだ……」
「なーんだ、よかった」
ぬえの発言に、ほっと安堵の溜息を付く。
もしや、命蓮寺のみんなに危険が及んだのかと思って心配しちゃったよ。
それはフランちゃんも同じだったみたい、安心してお茶を飲み始めたわ。
よかったよかった。
めでたし、めでたし。
「何もめでたくないよ! 私の使い魔が逃げたって言ってるでしょうが!」
もぅ、耳元で大声出さないでよぬえ。
怒って机もバシバシと叩きだしちゃうし。
振動でコーラがこぼれちゃうじゃない。
さっきまでヘナチョコになってたぬえの羽鳥も、バッサバッサと怒り出したよ。
「冗談だって、ぬえが元気になってよかったよ。はいこれお茶」
「うん、ありがとうこいし。どう見てもジュースだけどね」
文句をグチグチと言いながらも。ぬえはコーラを喉の乾きを癒すように飲み始めた。
そのときのぬえの頭が無防備だったので、良い子良い子と髪を撫でてあげたら、恥ずかしそうに俯いちゃったわ。
少し落ち着きを取り戻したようだね。
そして、冷静になったぬえにフランちゃん一言、
「しかし使い魔のいない鵺なんて、本当に普通のぬえよね。変な羽とクセッ毛しか特徴ないじゃないの」
「こんなぬえは、略してふぬえだね♪」
「そうねこいしちゃん、腑抜けたぬえにピッタリの名前だわ」
「ああんもぉ、五月蝿いっ!」
うへぇ、また怒って机をたたき出しちゃったよぬえ。
羽の矢印も怒涛の如く天を指してるし。
やれやれ、この子も困ったちゃんなんだから。
「だいたい、なんで使い魔なんか行方不明になっちゃったの?」
「それが分からないんだよこいし。なんか急に私の元から逃げるようにいなくなっちゃって」
「愛情が足りないんじゃないのー? 愛を持って接すれば、喋れないみんなともすぐに家族になれるんだよ」
私がお空やお燐を抱きしめる仕草をしながら笑顔で言うと、ぬえがさらにションボリと俯いちゃった。
もー、見てられないなぁ。
「ムラサさんとかにはもう話したのぬえ?」
フランちゃんが尋ねると、ぬえが気まずそうに指をつんつんしだしたよ。
羽の矢印も脱力したようにヘナヘナと地面に向いちゃった。
こういうところは子供っぽいんだから。
「使い魔が逃げたなんて恥ずかしくて言えないよぅ。だから、バレない内に見つけたいんだよね」
「まったく、しょうがないわねぇ」
フランちゃんと私は目を合わせて、同意するかの様に大きく息を吐き出した。
いくら使い魔に見捨てられちゃう駄目な子とは言え、ぬえは仲間だもんね。
こういうときは、ちゃんと助けてあげるよ。
落ち込んだぬえを虐めても、つまらないもん。
「元気だしなよぬえ、私が良い物をあげるから。恋い焦がれるようなクマさん柄のすごーく可愛い布だよ♪」
「ありがとうこいし、……っておいこれ私のパンツじゃないか! いつの間に脱がしたんだよもぅ」
「ぬえが『みんなー』って言ったときから」
「最初からじゃないか!」
本当は、ぬえがションボリしてたときなんだけどね。
見境無く脱がすほど変態じゃないよ私は、うん。
「クマさん柄なんて、妙に可愛いパンツを穿いてるのねぬえは」
「五月蝿いよフラン、ニヤニヤするな!」
顔を赤らめながら、慌ててパンツを穿くぬえも可愛いね。
フランちゃんと一緒に微笑んじゃったよ。
「まったく、相変わらず自由なんだからこいしは」
「でも、今のぬえは笑ってるじゃない。さっきまでの泣きそうな顔が嘘のようだよ♪」
「こいしの変態さに苦笑してるだけだよ。まぁ、ありがとうね二人とも」
もぉ、素直じゃないんだからぬえは。
それでもやっぱり、悲しい顔よりも楽しい顔のほうがいいよね。
そっちのほうが、私達には似合ってるよ。
ちなみに、フランちゃんは水色の縞々パンツだよ!
「ところで、何か心当たりでもないのぬえ? お姉様も『ぎゃおー』とか馬鹿な事を言ったり、私を置いて月に勝手に行って情けなくボロボロに負けたときでも、あいつの使い魔の蝙蝠は逃げなかったのよ? 毎度毎度私を置いて行きやがって……」
「なにかよっぽど酷い事をしたんじゃないのー? ぬえが全裸で永遠亭に行った時でさえも、使い魔は貴方を見捨てなかったじゃないの」
「こいしの言ってる事はわけわからないけど、心当たりかぁ……」
私とフランちゃんで問い詰めると、ぬえはしばらく考え込むように唸りだす。
ぬえもやれば出来る子なんだけどなぁ。
一人で大異変を起すくらいの実力持ってるのに、変なイタズラしかしないんだもん。
前にも、「魔理沙を混乱させたぞー!」とかわけわかんない事やってたし。
そんな簡単に使い魔が逃げたなんて思えないよ。
「うーん、無いなぁ。強いて言えば、最近新しくペットを飼ったくらいかなぁ」
「ペットって、何か飼ってるのぬえ?」
「うん、最近早苗に貰ったんだよ」
私が首を傾げると、ぬえがあっけらかんとした顔で答える。
ぬえがペットを飼ったなんて初耳だよ。
今度もふもふさせて貰おうかなぁー。
熱帯魚とかだったら無理だけど。
「マングースを飼い始めたんだ。私に懐いて結構可愛いんだよ」
「「ふぬえぇ……」」
後日、ぬえの説得もとい涙の訴えにより、使い魔のヘビ達とは和解したらしい。
脱字
ぬえの頭が無防備だったで
だったので?
ああ、よかった……蛇生きてたよ。生きてたよ蛇。
こいしちゃんどうやって気づかれずにパンツ脱がせられるんだwwwすげぇ!……あとで水色の縞々ちょうだい。
ぬえってアメリカンクラッカーみたいな涙しながら指つんつんが似合うと思います。俺だけ?
全然関係ないけど「ムラサさんとかには~」え?ムラサキさん?って思ったww
パンツを脱がすこいしとか蛇が逃げた理由がマングースを飼い始めたことだったりとか面白かったです。
それにしても、ぬえはいじられて涙目になるのがよく似合うと思う。
誤字
>「こいしの言ってる事はわけわからないけど、心辺りかぁ……」
心当たり ですよね?
>地霊殿にて。F
F?
誤字報告本当にありがとうございます
修正させていただきました
>ぺ・四潤さん
あっとすいません、修正させてもらいます。
ぬえの羽は自分なんか鳥にしか見えなかったのでそっちはワザとです。
クラッカーみたいにつんつんは、とっても可愛いですねw
あと、流石に自分は作中に出せませんw
>5さん
天敵ですものねぇ。
>煉獄さん
ありがとうございます。
賑やかな雰囲気を演出出来てよかったです。
>15さん
ぬえって、名前の響きもいいですよね。
>18さん
奇跡の力で(ry
誤字報告ありがとうございます。
修正させていただきました。
>21さん
ありがとうございます。
そう言っていただけると本当に嬉しいです
>22さん
F……?
と思ったらなんでこんな文字が入ってるんだろ、元のところには入ってないのに……。
誤字報告ありがとうございます。修正させていただきました。