「寅丸!」
「ムラサ?」
ぐりんと窓枠から顔を出す。
さかしまの視界の中で、寅丸はいつもと変わらず写経をしていた。
「どうしたんですか」
「どうもしないわ。用も無しに来ちゃ悪い?」
「そんなことはありません」
さかしまでも寅丸の生真面目な顔は変わらない。
面白味がないとゆーか、常に張り詰めているとゆーか。ちょっとお面っぽい。
せっかく美形なんだからもっと笑えばいいのにさー。顔の筋肉固まってんじゃないのこいつ。
「ムラサ、あの」
「ん?」
おや表情に変化が。顔を赤らめてまぁ。
可愛いのはいいんだけどなんじゃろね。
「いや、着物が捲れて……腰巻が……」
「おう」
そういえば窓枠にぶら下がりっぱなしだった。
「いや別にいいじゃない。一緒に風呂に入った仲でしょー」
「もう少し恥じらい持ちましょうよ」
「恥じらいってもなー」
私海の女だし。上脱ぐのなんか日常茶飯事だし。ここに来る前はマッパも珍しくなかったし。
誰かに見られて恥ずかしいって感覚がいまいち無いのよねぇ。
「夏でもちゃんと服を着てるんだし。十二分に努力してると思うんだけど」
「陸の生活にもっと馴染みましょうよ」
「むう」
恥らえ馴染めと言われても、私からすればちょっと脱いだくらいで大騒ぎする方がおかしいのだ。
正反対の価値観に変えろとは無理難題。というか押し付けがましいわ。
「私は……自由を愛する海の女だから」
「わかった話し合いましょうまずここで脱ぎ始めるな」
ちょろいな。
窓枠から飛び降りてにたりと笑う。応じる顔は顰め面。
似たようなことは何度もやっている。慣れたのか、寅丸はからかわれたと察したようだ。
「どうしてあなたはそう……」
「凝り固まった寅丸さんの顔の筋肉をほぐしてやってんのさ。お礼の一つも欲しいもんだよ」
「絶対言いませんよ」
「真面目だねーあんたは」
けらけら笑って一歩引く。捕まえに来ていた寅丸の手は空を切った。
お説教するつもりだったんだろうけどそうはいかない。説法は聖のだけで十分さ。
魚油の焼ける臭いが鼻につく。風の向きが変わったのか、灯りが揺れる。
ふと、寅丸の手元に置かれたものに目が行った。
「んん? 見慣れない筆ね」
「ああ、これですか」
まだ墨にもひたされていない真新しい筆。
今までの寅丸の文机にはなかったものだ。
「聖が新しい筆をくださったのです。写経が捗りますよ」
またこいつは……
「んー。聖はさ、そういう風にもっと修行頑張れって意味で渡したわけじゃないと思うわよ?」
「う、それは……確かに、聖もほどほどにと言ってはいましたけど……」
途端、彼女の表情は曇る。
「……ほどほどにと言われても、加減がわかりません」
兎角――彼女は真面目なのだ。
きっと聖は、休めという意味を籠めて新しい筆を渡した筈。
真正面から休めと言えば瞑想に耽るくらいしかしなかろう寅丸に休息の口実を与える目的で。
聖は貧乏性の寅丸は真新しい筆を使うことを躊躇い結果的に休めると踏んだのだろうが……
古い筆を使い続けて休みもしないとはねぇ。
やっぱ、ここはこの水蜜様の出番よね。
「よし決めた。私と遊びに行きましょう」
「へ?」
やれやれ、手の焼ける友達だよ。
「あそ、びって――ムラサ、私は功徳を積み毘沙門天の代理に相応しく生きねばなりません」
「息抜きも功徳の内よ? 堅っ苦しい生活続けて体壊したら善行も積めないでしょうが」
「で、ですが……私は信仰を受ける身ですし、それ相応の暮らしを」
「いいから!」
「わっ」
寅丸の手を取り走り出す。
「聖ー! 寅丸借りてくよ!」
自室でお茶を飲んでいた聖に声を掛けなお走る。
「はい、いってらっしゃい」
ちらと見えた聖は微笑んでいた。
「ひ、聖? いやでも、私は毘沙門天の代理として」
「いいから黙ってついてこいノッポ!」
ここで聖の望みだなんてことは言わない。事実だけどそれじゃこいつは息抜き出来ない。
聖の命令じゃダメなんだ。親友の我儘に付き合わされたって形じゃないとこいつは肩の力を抜けない。
私のそれより大きな寅丸の手を強く握る。
全力で息抜きさせてやろうじゃないさ。
「む、ムラサ、あの、やはり私は」
「あ、一輪! ちょっと出かけてくるから後頼むわ!」
寅丸の声を無視して見かけた一輪と雲山に声を掛ける。
「あら? どこ行くの?」
「寅丸連れて夜のお散歩さ」
「とらまるつれて……はーん」
それだけで理解したようで一輪は薄く笑う。
相変わらず頭の回転の速い奴だ。
「いってらっしゃい。なんなら朝まで帰ってこなくていいわよ」
「朝まで!? む、ムラサ! 私は修行が」
「黙れ猿轡噛ませんぞ」
雲山に手を振って外に出る。
私の目的を果たすにはここではダメだ。寺から離れた、開けた場所まで行かねば。
夜道を駈ける。全力で走っているが寅丸は息も切らさずついてきた。
体がでかい奴は得だなぁ。足の長さからして違うもんなぁ。
「あの、ムラサ? そろそろどこに行くかくらい……」
む、観念し始めたかね。もう強引に引っ張らなくてもいいんだろうけど――
「行ってからのお楽しみ!」
この手を、離したくなかった。
山道が終わる。もうすぐ開けた場所に出る。
少しだけ先に教えてもいいだろう。
「特別に、聖しか乗せてないのに乗せてあげるよ!」
「え? それは――」
「私の船さ!」
ごつんと、船の縁に頭をぶつけて目を覚ました。
「ふぁ……ふゅん」
欠伸をし頭をぼりぼり掻いて体を起こす。
んぁー、また甲板で寝ちゃったか。部屋まで戻るの面倒なのよねぇ。
あー体痛い。傾いた甲板で寝るもんじゃないわね。つっても何度も繰り返してるけど。
それにしても、懐かしい夢を見たな。
――懐かしい?
ああ、そうもなるか――あれは、色々な意味で、遠くなってしまった記憶。
私が地の底に封じられる前の記憶だ。
もう何年前だかもわからない。
私の船は――聖の為の船、聖輦船は地の底深く埋められてしまった。
五行に則った封印術。
船は水に縁が深く、海の妖怪たるこの村紗水蜜が所有することでその縁はさらに深められた。
土剋水。土は水を相剋する。
この地底は私や聖輦船を封じるにこの上ない地だ。
土や岩に縛られぴくりとも動かせない。
「っは。舟幽霊が地の底に括られるなんて笑い話にもなりゃしない」
聖輦船だけじゃない。
私も、動けなかった。
船を捨てて逃げるなんて考えもしなかったけれど、それも出来ない。
封印術の影響か、私自身も聖輦船に縛られ……船から離れることは出来なかったから。
息を吐き真っ暗な空――岩の天井を見上げる。
この封印はいつまで続くのだろう。
私は、いつまで生き長らえるのだろう。
飢えも渇きもしない。
私の名は今でも畏れられているのか――力はなんら減じることはなかった。
妖怪の糧とは人々の恐怖だ。恐れにどす黒く染められた魂を喰らうことで生きるもの。
恐怖に漬された血肉を喰らうこともある。私も、そうだった。
ああ、そう簡単に忘れられる筈もないか。
かつては暴れに暴れた。封じられる寸前にも大暴れしたんだっけ。
重ねた罪はそう簡単に薄れはしない。
「……聖の元で罪滅ぼしするつもりだったんだけどなぁ」
空しい言葉を思わず吐く。
どのように固い決意であったとしても、破ってしまった決意に意味など無いのに。
聖は、怒っているかな。怒ってるだろうな。
改心したつもりだったのに、人間をまた、殺しちゃったんだから。
争いを嫌った彼女の思想を、裏切ってしまったのだから。
苦笑は尽きない。
時間しか与えられていない私には、後悔をし続けることしか許されていない。
誰も居ないこの地の底では……それ以外にすることなど何もない。
「一輪と雲山はどこに封じられちゃったのかな」
封じられた時一緒だったし、同じ術式で封印されたんだからそう遠くないところに居る筈だけど。
「聖もここには、居ないのかな」
彼女が封じられた時私はその場に居なかった。帰って来た時には全てが終わっていた。
「寅丸は」
その名を呟き――口を噤む。
馬鹿が。思い出すなよ、あいつのことなんて。
あいつは、寅丸星は、私たちとは違う。
私たちと袂を別った。
あいつはもう妖怪じゃなくて、毘沙門天、で……
私たちの、敵だって――未練を……断ち切らなきゃ。
立ち上がりふらふらと歩き出す。
心を無にしろ。あいつのことは忘れろ。忘れてしまえ。
あいつのことなんて――なんとも想っていないのだから。
舵輪を握る。
心を落ちつかせる。
ここは船の上で、私はその船を任されたふなおさ。
のんびりと……この永遠に等しい航海を続けるさ。
地の底でも風は吹く。潮風には程遠い生温い風。
無いよりゃ、マシさ。
「面舵いっぱーい」
手応えのない舵輪をからからと回す。
声は響くことは無く、ただ闇に吸い込まれていった。
数百年が過ぎた――
朝も夜もないこの地底で、狂った体感時間では正確なところなど全くわからない。
二百年か、三百年か。私の出した答えと現実の間に百年の開きがあってもおかしくない。
今日も明日もない暗闇の中ではなあんにもわかりゃしない。
「聖……あなたの説法が、恋しいよ」
頭の中は海のことばっかりで、大した学もない私にはまさに馬の耳に念仏だったあの説法。
正直言ってることの半分も理解出来てなかった。
理解出来ず、理解しようとしてないのは同じだけれど……
同じわからないでも聖の説法はあたたかかった。こんな、冷たいだけのわからないじゃなかったさ。
他の奴らは必死に勉強して理解してたようだけど、私はそんな気になれなかった。
聖の元で罪滅ぼしをしたいと願ったのは本気。
だけど私は言葉じゃなく行動で示したかった。
聖の手助けをして、暗愚な行いを繰り返す馬鹿妖怪をとっちめて、あいつと一緒に仏の威光を、
「っち」
忘れろ忘れろ。
聖のことは忘れちゃいけないけど、あいつのことなんか思い出すな。
この数百年で何度目だってのよ。いい加減学習しろってんだ私よ。
舵輪から手を離し甲板に寝転がる。
「錨を下ろせーい。碇泊だ」
誰にでもなく呟く。
無限の航海は一旦休憩。出発は私の眠気が覚めてからだ。
人も荷も乗せてない船なんだ、急ぐことなんざないさ。
目を閉じれば暗闇は夜の海より暗くなる。
後悔に適さぬ月も星もない夜となる。
朝も夜もないこの地底では、私が眠る間だけが夜になる――
「おおっ!? なんだこりゃ!」
――声?
何百年ぶりだ。幻聴じゃなけりゃ私が封じられてから初めて聞く声。
聞き方さえも忘れた耳に届くひどく新鮮な声。
……ついに、狂ったのかな。ああだとしたら楽しくなるね。
聖や一輪、雲山の幻を見れればこの航海も寂しくない。
体を起こし声の方へ歩く。
さてはて、私は誰の幻を見るのかな。
――金の、髪。
え――? 船の縁から身を乗り出しもう一度見る。
長い金の髪を揺らす、大柄な人影。
金の髪、大柄な、体。
そんな――嘘だ。
あいつが、そんな、あり得ない。
幻? 幻でもあり得ない。私はそんなの望んでない。
じゃあ、まさか、でも。
気付けば飛び降りていた。人影に向かって走る。
「寅丸……!?」
「ん――?」
「な、なんで――どうしてあんたがここ、に」
足が止まる。
幻じゃ、なかった。
確かにそこに存在している。
「? なんだい?」
「……寅丸じゃ、ない」
でも、あいつじゃ、なかった。
長い、金の髪。その間から生える、深紅の角。
あいつじゃあ、ない――鬼、だ。
「誰かと間違えてんのかい? 人違いされたのは初めてだねぇ」
鬼はにこりと笑って問い掛ける。
ああ、違う。
あいつは、こんな風には笑わなかった。
もっと控えめに、薄く笑う――だけだった。
「……ごめん。誰かに会うのなんて、久しぶりでね。つい、間違えちゃった」
「いやいや、気にすんなよこれくらい。誰にだって間違いなんざあらぁね」
快活に笑う。
「でもちょいと気になるね。誰と間違えたんだい?」
問われ、胸が締め付けられる。
「ほら、私はタッパあるからさ。誰かと間違えられるってのはなかったんだよね」
「あ――うん、でしょうね。でも、私が間違えた奴も、大きかったよ」
「へぇ。そいつは会ってみたいねぇ」
「会えないよ」
ぼそりと、答えた声は自分でも驚くほどに冷たかった。
鬼が目を丸くしていることに気付き慌てて言い繕う。
「はは、今頃どこでなにしてんだか」
気を持ち直せ。村紗水蜜はこうじゃないだろう。
苦笑でもいい、笑みを作れ。
呆れっちゃうわ。なぁに頓珍漢な期待してんだか。
あいつが、迎えに来てくれる筈ないのに。
「もう何百年も会ってないからさ」
多少歪ではあったが、微笑む。
「……そうなのかい?」
「色々あってね」
そろそろ確信持っていいかな。こいつは幻じゃあないようだ。
幻だったら、もっと私の都合がいいことしか話さないだろうし。
「それで、あなたは?」
「おっと自己紹介が遅れたね。私は星熊勇儀。山の四天王力の勇儀だ」
「山の……?」
「あ、地底の妖怪に言っても通じないか。幻想郷――地上の山に住んでたんだ」
「地上……あ、いや私は地底の妖怪ってわけじゃないのよ。封じられてここに居るだけで」
「あれ、先輩かと思ったんだがね。封じられて、か――難儀だねぇ」
「難儀してるわ。封印されてから数百年、話し相手も居なかったし」
「そいつぁ辛いなぁ」
ほしぐま……星熊? か。
重ったい話してんのに気分が軽くなる。どうやら話して楽しい相手のようだ。
「私は村紗水蜜。舟幽霊よ」
「ムラサか。んじゃよろしく頼むよ」
星熊はからからと笑う。気風のいい姉御肌――といったところか。
短い会話だけでそれらが覚れるとは、明け透けな妖怪だな。
「しっかし地獄に封印されるたぁね。私は知らんが、さぞかし名のある妖怪なんだな」
「地獄……? ここ、地獄だったの?」
「今じゃ元、だけどね」
なんとなく辺りを見回す。
数百年ここで過ごしてきたが地獄とは気付かなかった。
また、随分と強力な封印しやがったわねあの連中。
とっくにおっ死んで地獄に堕ちてるだろうが欠片も気が晴れんわ。
「そういえば、先輩がどうとか……」
問うと、星熊は頭を掻きながらそうだったそうだったと口を開く。
「自己紹介どころか挨拶まで遅れちまった。私らこの地底に住むことになったんだよ」
地底に……?
鬼が、地獄に――というのはまあ、わかる。
でも彼女は元地獄と言っていたし……なんかよくわからないわね?
「見えるかい? あっちに町を作ろうとしててさ」
「え? どこ?」
「鬼の目なら見えるんだがなー。ムラサにゃきついかね」
「海の女の目をナメんなよ」
意地でも見ちゃるわ。
思い切り目を凝らすと――廃墟のような町が幽かに見えた。
「……廃墟に住むの?」
「建て直そうってしてんだよ今」
星熊は半目で唸る。
まあ流石にあのまんまのところに住むわけないか。
「ここらは地獄だったんだけど、切り離されて今は怨霊くらいしか住んでないんだ。
閻魔と取引してさ、地底の統治権を手に入れたんだよ。まーめんどくさいこたぁいいやね。
見えてるとこが多分、地獄街道って呼ばれてたとこだな。そのちょい先に都の跡があってさ。
私らは今んとこ旧都って呼んでんだけど――そこらへんを改築して私らの町にしようと思ってんだ」
へぇ……私ら、ってことは鬼たちが移住してくるのか。
「もっと奥にさらにでっかい都の跡があんだけど、そっちは灼熱地獄跡でねぇ。
暑くてとても住めたもんじゃない。火力の調節すりゃ住めそうだけどめんどいからさ」
「ふぅん――鬼の町にしようってわけ?」
「いいや」
星熊は頭を振る。
「私ら鬼以外にも、地上の妖怪に嫌われた妖怪が居てさ。そいつらも住める町にしようと思ってる」
遠くを――先を見据える眼。
彼女の赤い瞳は、過去を振り返らずに、未来を見ていた。
上に立つ者の風格さえ見てとれる――
私に名のある妖怪じゃないかって言っていたけど、彼女こそ名のある妖怪ではないのだろうか。
「そんでな」
くるりと星熊は私を見た。
「ムラサも私らの町に来ないかい? ここで会ったのもなにかの縁だ。一人で住むよりゃいいだろうし。
なによりあんたくらい強そうな酒呑み友達が欲しくてさ」
「強そうって、まぁ、強いけどさ」
こいつ相手に謙遜しても意味はあるまい。正直に答えるが……
「誘いは嬉しいけど、ごめん」
「ダメかい? そりゃまぁまだ廃墟同然だけど」
「違うの。私はさ、この船に縛られてるからここから離れられないんだ」
私の言葉に、彼女は目を丸くした。
封印がそこまで強いものだとは思っていなかったようだ。
「そうかい、なんだって船ごと封じられてんのかと思えば……舟幽霊だって言ってたしな」
「そういうこと」
ふむぅ、と彼女は唸る。聖輦船を見上げ何か考え込んでいる。
「この船壊していいかい?」
「ダメに決まってんでしょうがっ!!」
いきなり何言い出すんじゃこのボケは!
数百年ぶりに怒鳴ってしまったわ!
「そっかー。いい木材が取れると思ったのになぁ」
「なんで町から離れたここに来たかと思えば建材探しかよ」
他所でやって頼むから。
「こいつ潰せば家の四・五軒は軽い……いや十軒いけるかな」
「ははは星熊ー、グーで殴るよ? グーで」
「んー。おまえの封印これで解けんじゃないかって思ったんだがね」
船を見上げたまま――彼女はそんなことを呟いた。
何の気負いも無しに告げられた言葉。
「……あなた、いい奴だねぇ」
「そんなんじゃないよ」
言って頭をがりがりと掻く。
くっく。初対面の奴助けようとするなんて、いい奴じゃなけりゃなんなのさ。
「あーもう、そんなことよりだ。おまえ私の酒の相手しな」
照れ隠しなのは明白だが、あまりからかってやるのも悪い。
久方ぶりの話し相手になってくれたのだし多少は要求も呑もう。
「別にいいけど、あなた何も持ってないじゃない。悪いけどこの船には蓄えなんて」
彼女は背を向け歩き出す。
町に帰るようだが、酒の話はどうなったのか。
「通う」
背を向けたまま星熊はぼそりと言った。
「おまえがここを動けないってんなら私がここに通ってやんよ。酒の相手はそん時しとくれ」
まったく――底抜けにいい奴だ。
気が向いたらな、なんて続けるけど、それでどれだけ私が救われるか。
たった一言で……私の、数百年の孤独を打ち砕いてくれた。
礼を言うべきなんだろうけど、きっと彼女は受け取らない。
だから――
「またね、星熊」
「おうよ」
再会の約束を。
一口啜り、眉間に皺が寄るのを自覚した。
あー……うん。これ、キツい。
「決して食えないってわけじゃないんだけど、ねぇ、寅丸」
「はい?」
「なんで味噌汁が甘いの」
「え、甘かったですか!? 聖が檀家の方からいただいたサトウキビというのを入れたのですが……」
「変なもん入れようとすんなぁ! なんで教えた通りに作らないのよあんたは!?」
想定してた味と真逆の味が来ると体が対処出来ないのよ!
せめて予想出来る味に仕上げてよ!
「で、でも工夫した方が美味しくなるかなって……」
「それが許されんのは玄人だけだー!」
「またやってんの?」
「あ、一輪」
「丁度いい、この味噌汁飲んでみな」
「あはは、味噌入れ過ぎてすっごいしょっぱいとか? ――――――――ぉう……」
やっぱり甘いというのは想定外にも程がある。
「え? え? そんなに不味かったですか……?」
「違うのよ寅丸。決して食えないってわけじゃないのよ」
ぷるぷるしながら言っても説得力皆無よ一輪。
あと気持ちはわかるけど土間に座り込むな。倒れ伏すな。
「あー。変な汗出てきた……」
「やっぱ寅丸に厨房は任せらんないわね……」
「……すいません」
ええいでかい図体でしょぼくれんなうっとうしい。
「まーいいわよ。あなたに息抜きさせようと思って誘ったんだし」
「またそれですか。ムラサ、そこまで気を遣ってもらわずとも……」
「はいはい。あんたがなに言ってもむーだー」
「ムカつくんですけどぶん殴っていいですか」
寅丸は笑いながら青筋立てるという器用な真似をしていた。
「くっくっく。私が本当の料理ってもんを教えてやんよ」
「確かに料理の腕じゃあなたには敵いませんが……!」
にはってなんだにはって。雲山にも負けるくせに。
「里で団子買ってくるわ……真っ当な甘いのが食べたい……」
よろよろと一輪は厨房を出ていった。
いってらっしゃいと告げ私は料理を始める。
うーむ。この甘い味噌汁なんかに使えないかなー……
「そういえばあれから結構経ちますね」
手持無沙汰になったのか寅丸が話しかけてきた。
食材を切りながらそれに応じる。
「ん? あれって?」
「ひどいなぁ、忘れたんですか?」
忘れた、と言えば忘れてる、かな。
なんだっけ。つーか抽象的過ぎて絞り切れないんだけど。
振り返ると、彼女は約束のことですよと微笑んだ。
「ほら、また私を――――」
最悪の目覚めだった。
近頃は、とみにあいつの夢を見る。
望んでなんかいやしないのに……心の奥底で、望んでいるとでもいうのか。
「――まさか」
何百年己に言い聞かせてきたと思ってるんだ。
そんなこと、ある筈がない。
風に当たりたくて、甲板に出る。
位置が悪いのかここには灼熱地獄跡からの生温い風しか届かないがそれでも当たりたかった。
びゅうと、珍しく強い風が吹いていた。
生温さよりも、その強さに意識が向く。
「おーい」
上の空の耳に、聞き慣れた声が届いた。
見なくともわかる。
「乗船許可をおくれ、船長殿」
「星熊勇儀の乗船を許可する」
とん、と軽く飛んで乗り込んできた大柄な人影に手を振る。
彼女は酒の入った瓢箪を掲げることでそれに応えた。
もう幾度目か。
傾いだ甲板の上で行われる酒盛り。
杯を干しながら船の縁に体を預け、遠く霞む町を見る。
「随分と町らしくなったね」
「ああ、移住者も増えてきたからなぁ。まだまだ旧都は大きくなるよ」
いつぞやの言葉通りにあの町は様々な妖怪を受け入れ発展していった。
旧地獄街道沿いも灯りが絶えることはなくなったし、旧都に至っては不夜城の様相を呈している。
あの真っ暗闇が……変われば変わるもんだわ。
「移住者って言えば、最近ここにまで遊びに来るのも増えたわ」
「ん、もしかしてぬえの奴かね」
「名前は知らないんだけどね」
幾度か見かけた少女の姿。
あれは何しに来てるのかな。
「町の生活が窮屈だって奴も結構居るからなぁ……なんか迷惑してんなら遠慮せず言いなよ」
「大事にするつもりはないわよ。自分の身くらい守れるしね」
注がれた杯を傾ける。
そうさ――自分の身は、守れる。それ以外は……なに、一つ。
脳裏をかすめるのは夢の光景。
やく――そく?
忘れてしまったわ、そんなもの。もう思い出せなんかしない。
だから、しつこく何度も出てくるな。
ぐっと杯を干す。夢ごと呑みこんでしまおうと一気に呷る。
「随分と不味そうに酒を呑むね」
空になった杯に、星熊は酒を注がなかった。
「――酔いたい気分なのよ」
杯を差し出すも彼女は注いでこない。
いつの間にか、星熊が浮かべるのは険しい表情になっていた。
睨むように、私を見ている。
「なぁムラサ。私が嘘が嫌いだってのは知ってるよな」
「知ってるも何も。昔それで大喧嘩したじゃない。ったく冗談だってのにさ」
「今度は冗談じゃ済まない」
彼女の杯も、空だ。
酒気を散らして、星熊は私を睨んだ。
「私の前で嘘を吐くなよ」
いやに、絡むじゃない。星熊。
どうして今日に限ってそんな。
「嘘、なんて」
「それも嘘だ。おまえの顔見りゃわかる」
星熊の目が、伏せられた。
「無理して笑ってんじゃ、酒も不味くなるか」
「はは、やめてよ」
嫌なこと言うなぁ。
「そんなんじゃ、ないって」
そんなこと言われたら、気付いてしまう。
「私はさ、元から能天気で通ってたんだし」
気付かぬふりで耐えていたのに。
「昔のことなんて」
昏い想いの海に、沈んでしまう。
忘れなきゃ、いけないのに。
私の想いなんかで縛ったら、あいつまで――地獄に堕とされるかもしれないのに。
せっかくあいつだけは、封印を免れたのに、私が求めてしまったら――
「――ああ、これこそ、嘘に出来ればよかったのになぁ」
手から杯が滑り落ちる。
作り物の笑みは苦笑へと変わっていた。
「好きだったんだ。寅丸のこと」
「――私と間違えたって奴かい」
「うん。あんたみたいに背が高くて、金髪で。目立つ奴だったの」
目に浮かぶはずっと、思い出す度に忘れようとしていた姿。
「でもさ、真面目過ぎるんだよね。面白味に欠けるっつーか、ナリは派手なのに中身が地味でさ。
ほんっとに妖怪らしくないの。我欲なんて欠片も持ってなかったんじゃないかってくらい。
私が何度そそのかしても酒の一滴も飲まないような奴で、私が遊びを教えてやらなきゃって。
私が、面倒見てやらなきゃ、一日中修行、ばっかで」
思い出されるのは、後悔の念。ただ、それだけ。
「――……だから、好きだって、言えなかった」
口が重い。
「女同士で好きになるなんて、おかしいでしょ? 友としてじゃなくて、一人の女として好きだなんて。
あんな堅物には冗談でも言えないわ。言ったら、はは、一晩中お説教かも」
無理矢理言葉にする。
吐き出さねば、この重さに押し潰されてしまう。
「そうやって、私は自分に言い訳して、足踏みしてた。前に進まなかった。
友のままがいいって、この関係を壊したくないって、気持ちのいい言葉で誤魔化してた。
本当は、怖かっただけなのに。あいつに嫌われるのが、怖かっただけなのに」
ずりずりと、船の縁に背を預けたまま座り込む。
もう立っていることさえ苦痛だった。
「そんな風に、臆病な私は、動けなかった。足踏みしている間に、全部終わっちゃった」
苦笑がどれだけ歪んだのかわからない。
「聖が――私と寅丸の恩人が、人間に捕らえられて、封印されたの」
もう、星熊に言っているのか、自分に言い聞かせているのかもわからない……
「聖が捕らえられて、頭に血が昇って、何も考えられなくなって、どうしようもなくて。
人間たちを襲いに襲った。皆殺しにしてやろうと思った。復讐することしか考えられなかった。
そこにあいつが来て、なのに、あいつ、まだ毘沙門天のふりなんかしてて……!
私もう、考えるより先に、あいつに、寅丸に刃を向けて――っ」
両の手で顔を覆う。何も見たくない。何も思い出したくない。
なのに、閉じた瞼に浮かぶのは、あの時の寅丸の姿――
「――――わかってたのに。あいつ、一番傍に居たんだ。聖の最後にまで付き合わされたんだ。
あいつにとって、聖はかけがえのない人で……っ。そんなの耐えられる筈がないって、知ってたのに!
なのにあの時の私はっ! あいつがどれだけ苦しんだか、どれだけ悲しんだか、考えもしなかったっ!
聖が捕らえられても人間の味方をしているって怒り狂って、叩きのめしてやるとしか思えなかったっ!
全力で戦ったっ! 私の全てをあいつにぶつけたっ! 殺そうとまでしてしまったっ!!」
あの時、私は寅丸を憎んだ。
聖を裏切った寅丸が憎くてしょうがなかった。
好きだった分憎しみは際限なく増え続けて、殺意にさえ、至った。
だけど。
「……どうして、気付かなかったのよ。あいつ、私を、倒して、泣いてたのに……!
聖を失って、壊れて、人形みたいになってまで、聖の教えを守って――
……それでも、襲いかかった私を、殺さずに捻じ伏せて、封じられるだけで済まそうとして、
壊れて、能面みたいな顔で、泣きながら私を、助けて、くれたのに――」
嫌いになんか、なれなかった。
寅丸は、壊れても、私が好きだった寅丸のままだった。
だから、だから私は――最後の最後で、あいつを毘沙門天に仕立て上げて、生き延びさせようって決めた。
あいつだけでも逃げられるようにって、この地獄に付き合わせちゃいけないって。
私の想いがあいつをこの地獄に招かないよう、忘れようとしたのに。
私はもう、あいつを好きでいちゃいけないのに。
あれから何百年経った?
何百年も過ぎたのに、私の力は微塵も衰えない。
生者を招き死の淵へ沈める忌まわしい力はかつてのまま。
私は、寅丸を、好きだった人を、地獄に落としかねない力を持ったまま。
だから――逢いたいと、願っては、ダメだったのに。
「う――あ、あぁ」
顔を覆う手の平が、熱い。
寅丸。
寅丸、寅丸――
ごめんなさい、寅丸。
あなたは私を助けてくれたのに、私はあなたを助けようとすることも出来なかった。
何度忘れようとしてもあなたを忘れられなかった。
幾度謝ろうと足りないくらい悔いているのに。
これだけ後悔してるのに。
私は、まだ――
「――――……ぁいたい、よ」
ぼろぼろと涙が零れ落ちる。
「あいたいよぉ……とらまるぅ……」
「逢いに、行けばいいだろ」
ぐいと襟首を掴まれる。
そのまま体を引き起こされた。
「泣けよ」
見たことのない顔で――星熊は、私を睨む。
「好きなだけ泣くがいい。そいつはおまえの本音だ。おまえの心が流す涙だ。とやかく言うつもりはないよ。
涙を零した酒を飲み続けるのもいいだろうさ。不味い酒でも涙を薄れさせてくれるってんなら上等だ。
だがね。一つだけ、気に食わない。一つだけ、許せない」
襟首を掴む手が、震える。
「諦めんなよ」
絞り出すような声。
「トラマルって奴は死んだのか? もう二度と会えないのか?」
「死――っ、死ぬわけないっ! 寅丸は強いのよ!! そんな簡単に死ぬものか!!」
「じゃあなんで諦めんだよ」
言葉を返せない。
「封印だかなんだか知らんが、永遠なんてもんは無い。この封印だっていつかは解けるかもしれない。
私に頼れば、壊してやることも出来るかもしれない。私じゃ無理でも旧都の誰かが解けるかもしれない。
先のことなんてどうなるかわかりゃしないんだ。諦めるなよ――ムラサ」
手が離される。
糸の切れた人形のように私は座り込む。
「おまえの想いは本物で、今でも泣き続ける程――そいつが好きなんだろ」
そんなの、決まってる。
「逢いたいって、泣く程好きなんだろ」
理性を駆逐した感情が吠え立てる。
一切合財のしがらみを無視して逢いに行きたいって。
嫌われるかもしれないとわかっていても――好きだと伝えたいって。
言葉に出来ない。
だけど星熊は声にならぬ叫びを酌みとってくれたのか、ただ頷いた。
酒を置いて、背を向ける。
「封印ブッ壊すとか、私の力が必要だったら言いな。それ以外でもまぁ――
酒呑み友達の愚痴くらい聞いてやるよ」
一度も振り返らずに、星熊は去っていった。
そして、私は――――
また、数百年が過ぎた。
結局あれから、星熊を頼り封印の破壊を頼んだが無理だった。
術式が複雑過ぎて力技ではどうにもならなかったのだ。
彼女が与えてくれた権利は、酒の席の愚痴として使わせてもらっている。
もう――私が封印されてから千年が過ぎたのかな。
封印されたままで身動きの取れぬ私であったが、知り合いは幾人か出来た。友人と呼べる人も、幾人か。
地底での生活もとっくの昔に馴染んでしまっている。
でも聖のことも、一輪のことも、雲山のことも――寅丸のことも、忘れてはいない。
膨大な時間に埋もれさせるにはあまりに輝かしい記憶。
あの数十年の出来事だけは忘れられない。
たった数十年の記憶だけを糧にして私は今日まで生きてきた。
きっと、これからも――そうするだろう。
いつか封印が解けて、聖たちを……迎えに行ける日まで――
「――ん?」
妙な振動に追憶から戻る。
この間地震があったばかりなのに、もう地震?
大丈夫なのかな。最近は地霊殿の方で何かあったらしいって話も聞いたし――?
「うわっ!?」
ちょ、周りの岩に亀裂走ってんですけど!? 生き埋めコースじゃないのこれ!?
せめてもう少し船から離れられれば――!
かくん、と足場が消えてなくなった。
「え――?」
などと疑問に思う暇もなく――
「あぢゃがもごぼぼぼっ!?」
熱い! あっつい!! なにこれ間欠泉!? 完全に巻き込まれて流されてんですけど!
てゆーか船は!? 聖輦船はなんで消えて
「ごぼぁ!?」
流されてる? まさか、封印が解け
熱い熱い熱いっ! ちょ、だめ考え事とか無理! 熱過ぎる! 妖怪じゃなきゃ即死よこれ!?
がんっ
「~~~~~~~~~~ッ」
しこたま頭打った。噴き出した間欠泉から放り出されて頭から地面に落ちた。
なんなんだ今日は――っ!
地震かと思えば間欠泉が湧いたり聖輦船が消えたり大体今ここどこよ!?
「――――ぁ」
視界を埋め尽くすのは満天の星空。
手を伸ばせば届きそうなそれに、寅丸は嘆声を漏らした。
『わぁ……』
『気に入った?』
『それは、もう。言葉がありません』
『私ら、自力で空飛べるけどさ、そういうのとは違うでしょ』
得意げに笑う。これは、私と聖しか知らなかった世界。
『この光景は、聖輦船からでしか見れないよ』
この世に唯一の空を飛ぶ船。この船からでしか見れぬ星の海。
聞こえているのか、寅丸の目は完全に星の海に奪われていた。
しょうがないか。私も初めて見た時は似たようなものだったし。
それよりも寅丸の息抜きになれたようでよかった。
こいつの生活見てるとこっちの息が詰まっちゃうからねー。
『ムラサ』
『ん?』
『ありがとうございます。こんな素敵な場所に連れてきていただいて』
お礼なんてくすぐったいって、いつもみたいに茶化すつもりだった。
だけど、うっすらと微笑む、寅丸の楽しそうな顔を見てしまってはそんなこと出来ない。
『寅丸が望むなら、何度でも乗せてあげるよ』
思わず口をついて出た。慌てて手で口をふさぐ。
ちょっと冷静に考えれば逢引の誘いみたいであまりよろしくない言葉だ。
全員が寺を離れるわけにはいかないから、自動的に二人きりになってしまうのだし……
ああ、こりゃお説教かなと、恐る恐る振り返る。
『はいっ』
だがそこに居たのは元気良く返事をする寅丸によく似た誰か。
だって見たことない。寅丸がこんな風に笑うだなんて、知らなかった。
『それじゃあ、いつかまた――乗せてくださいね』
『……うん』
上の空のまま頷いてしまう。
あー……調子狂うなぁ。寅丸はもっとこう、からかい甲斐のある……っていうか。
――ま、いいか。
『約束よ、寅丸』
星、空。
岩の天井じゃない、空が――ある。
間欠泉で地上まで流されたのか。まわりに散らばる木片は聖輦船、ではなく、飛倉の破片。
封印されっぱなしだったからこそ保っていた船の形を維持する霊力が薄れたのか。
欠片は随分と散ってしまったけれど――船の形を保つことくらいは出来る。
私の妖力を注ぎもう一度船の形を作り出す。
――そう、ここは地上だ。私が封じられていた地底ではない。
船はある。地上に戻れた。私はもう縛られていない――
聖を、一輪、雲山を――――そして、寅丸を迎えに行ける。
矢も盾もたまらず船に飛び乗る。
星空を見上げ――舵輪を握る。
私は、今度こそ立ち向かってみせる。
今度こそ聖を助け出してみせる。
今度こそ――――果たされなかった、約束を。
「抜錨っ!」
空飛ぶ船に号令を発す。
「面舵いっぱーいッ!」
重い舵輪をがらがらと回し目的地を定める。
まずは寅丸のところへ。聖の封印された場所を探さなきゃ。
次に一輪と雲山を探して――きっと、私と同じように封印が解けているだろうし。
さぁ忙しくなるぞ。
そして、全てを終えたら、いつか――
いつか見た――星の海へ
氏の星蓮船は特に、「心」の描写が濃密でグッと来る。
まさか猫井さんが水星を書いてくれるとは思ってなかったので狂喜乱舞しております!!
この二人の組み合わせが好きなのに、巷ではあまり見かけなくて……。
水星分補給させていただきました!ありがとうございます!!
そして出来れば続きや星sideのお話もお願いしたいところなのですががが。
星熊「は」じゃないですか?
軽く読みやすい文体にそっとほのかな思いが乗ってて
読み終わった後すっきりと気持ちいい
幻想入りキップはいつ来るのやら
自分には、結局最後までナズーリンの名前が上がらなかったのも深いなあと思いました。
「ふん、確かに好きだった星を“御主人”に仕立て上げた張本人だ、思い出す気なんかさらさら無かっただろうね……」
というような賢将のつぶやきが聞こえるようでした。
村紗が可愛く感じましたね。