ここ幻想郷の天気は雲一つ無い快晴だった。
その青空を一直線で飛んでいく影が一つ、普通の魔法使い“霧雨魔理沙”だった。
「今日も大量だったぜ~」
今日も今日とて紅魔館の大図書館や香霖堂で貸してもらった(彼女曰く)物を風呂敷に包み、“妖怪の山”上空を飛んでいた。
「そういえば、ここにも面白いとこがあったな…ちょっと行ってみるか。」
思い立ったら即行動が身上の彼女はあるところに降り立った。
彼女が下りたのは山に流れる、川の近くだった。
「確かこの辺だったと思うんだけど…」
そこらを歩いて探してみたが、一向に見つからなかった。
「おかしいな…確かこの辺だったんだけど…」
「あれ、魔理沙じゃないか。」
後ろから声をかけられ、魔理沙が振り向くとそこには魔理沙が探していた家の主“河城にとり”がいた。
「おお、探したぜ!遊びに来たぜ~」
「そうか、じゃあこっちだよ。ついて来て。」
ということでにとりに付いて行くことにした。
少し歩くと木も岩も何もない開けたところに付いた。
「あれ?何にもないぜ?」
「ふふ、ってことは、実験は成功だね。」
「実験?」
にとりが自分の手に巻きつけてあったブレスレットのボタンを押すと…
「おお?!」
なんと、目の前に家が現れた。
「すげー!これどうなってんだ?!」
「研究の成果だよ。この工学迷彩で作った新しい家は、このボタン一つで誰にも見えない家になるのさ!」
にとりの家は前の家に比べてさらに突起物が増え歪な形になっていた。
「でも、なんで新しい家を作ったんだ?」
「人間や人の物を盗んでいく“誰かさん”の対策のために作ったんだけどね。」
「? それって誰だ?」
人の物を盗んでいく誰かさんは本当にわからないと言った風な口調で答えた。
「まったく…あんたいつか友達無くすよ。」
「あまりそういうことにならないように気を付けるさ。」
魔理沙の背中にある風呂敷がその言葉の信憑性を物語っていた。
にとりが疑いの眼差しで魔理沙を見ているとさすがに悪いと思ったのか
「悪かったって、だが安心してくれ。死んだら返すぜ!」
それは何十年後の話なんだと言いたそうなにとりは表情一つ変えなかった。
「そうだ、さっきコーリンの店で見つけた面白そうなものがあるんだ。」
それを聞くとまるで人が変わったかのように表情が変わった。
「それって、あの店のことだよね。」
「そうだぜ。」
「見せて!!!」
目が…輝いています…
「いいぜ、でもここじゃなんだし中でゆっくり見ないか?私も使い方知らないやつがあるから一緒に考えようぜ。」
「いいよ!入って入って!」
「悪いな。あ、あと緑茶とかがあったらうれしいかな~」
「任せといて!」
と言ってにとりはウキウキしているのが目に見えるくらい嬉しそうな表情で魔理沙を家に招き入れた。
それを見て魔理沙はにやりと笑った…
そう、魔理沙は知っていいた。にとりの弱点、技術者としての性を…
魔理沙…恐ろしい娘!
にとりの家の中を歩くとそこかしこに何に使うのかわからないような物が積まれていた。
「相変わらずここには変なものがあるな。」
「失礼だな~全部私が作ったものなんだよ。」
「ふーん…ん?なんだこれ?」
魔理沙が手に取ったのは細長い筒の様なもので、先端はとがっていた。
「ああ、それは魚雷だよ。」
「魚雷?」
「うん、勢いよく投げたら…」
「投げたら?」
「爆発する」
魔理沙は急いでそれを元あった場所に戻した。
「…そんな危なっかしい物をここに置いていてもいいのか?」
「それは、失敗作だからね。それが爆発してもこの家が半壊する程度だからいいよ」
「…」
とりあえず、むやみに色々と触らない方がいい気がする魔理沙であった。
「よし、私のラボに着いたよ。さあ中に入って。」
「ああ、お邪魔するぜ。」
にとりのラボにはあちこちにスパナやドライバーなどの工具が散乱しており、机の上には作りかけの物体が乗せてあった。にとりは丁寧にそれをどかした。
「さあ、魔理沙!香霖堂から持ってきた物を見せてもらおうか!」
「わかった。」
魔理沙が背負っていた風呂敷を広げると大図書館からと…借りてきた本の他に香霖堂から借りてきた物が
たくさん入っていた。
「そうだな…じゃあまずはこれだな。」
と言って、魔理沙が取り出したものは、ちょっと大きな卵を半分にした様な形をしておりその先端からヒモが出ていた。そして、その紐の先には金属がむき出しで出ていた。
「うーん…何なんだ?これ…にとり、わかるか?」
「…その紐の先端の部分は何かのプラグなのかもしれないな」
「私にはヌンチャクにしか見えないぞ?」
と言って魔理沙はぶんぶんと振りまわし始めた。
「うーん…使い辛いぜ。」
「あんまり乱暴に扱わな…そうだ、確か香霖堂でそれと似たやつを見たことがあったな…」
「へぇ、お前もコーリンの店に行くことがあるのか?」
「前に一度だけだったけどね。その時は確かネジを探しに行ってたんだ。」
「そうだったのか…で、何かわかったか?」
ネジの事を全く知らない魔理沙だったが、話が長くなりそうだったので本題に入る事にした。
「でも、それはもっと小さかったし…全然形は違うし…」
にとりが思考を凝らす中、魔理沙は“卵を半分にした様な形”をいじくりまわしていた。すると…
「お?なんか下が開いてボールの様なものが出てきたぞ?」
「本当?!見せて。」
魔理沙は出てきたボールをにとりに渡してやった。
「樹脂で作られたのボールのみたいだね…ますますわからなくなってきたよ…」
「なんだかよくわかんないから他のを出すよ。」
「そうだね、またあとでゆっくり考えてみるよ。」
風呂敷からまた香霖堂から…借りてきた物を取り出す。
今度は全体的に丸っこい作りになっていて、中には風車の様なものが入っていた。またもそれには紐が出ていた。紐の先はまた違う部品が付いていて、さっきとは違う形の金属が二つ付いていた。
「今度もまた、初めて見る形だね。」
「そうだな…ん?これ下が曲がるぞ。」
「へえ…あれ?曲がった部品に文字が書いてあるな。」
「お、本当だ!ええっと…“hot”“cool”“off”?」
「offが付いているってことは、どうやらそれはスイッチみたいだね。あとコードの先端に付いているのはプラグだね…」
「プラグ?」
「外の世界から来た機械にはたいていそれが付いているの。そのプラグをコンセントに差し込むとそれが動き出すんだ。」
「ふーん。ここにコンセントって無いのか?」
「あるよ。ちょっと試してみようか。」
と言ってにとりはプラグをコンセントに差し込んだ。
…え?どうしてコンセントがあるのかって?河童の技術に不可能は無いのですよ!!!
「あれ?動かないぜ。」
「たぶんスイッチが“off”になってるからだね。たぶんこれをこうして…」
にとりがスイッチを入れてみると…
ブオオオオオーという音をたてて風が出てきた。
「お、ついたみたいだね。」
「それってなんの役に立つんだ?」
「うーん…」
「そうだ!ちょっと貸してくれ。」
にとりはその機械を魔理沙に渡した。
「いいけど…どうするの?」
「いいからいいから。」
魔理沙はスイッチを入れて床に向けた。
「ほら、こうしたら部屋の掃除とかに使えるんじゃないか?」
「…でも、それってまき散らすだけなんじゃ…」
「…それもそうだな。」
「いや、待てよ…それとは逆に風を出して、吸い込むようにしたら…」
「でも、吸い込んだ物はどうするんだ?」
「それなら機械の中に吸い込んだ物を溜めるとこを作ってやればいいよ。」
「そっか。」
「これはいい物が出来るかもしれない…魔理沙これ頂戴!!!」
駄目と言っても、こうなったにとりを止めることはできないのを知っているのであげることにした。
「まあ…いいぜ!」
「ありがとう!!!」
子供のように喜ぶにとりを見てなんだかこっちまで嬉しくなる魔理沙だった。
魔理沙が起きたのは昼近くだった。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
「ん…あれ?私いつの間にか寝てしまってたのか」
にとりはラボにはおらず、昨日にとりと一緒に考察していた物だけが周りに落ちていた。
と、ここでドアが開きにとりが二つのカップを持って入ってきた。
「あ、起きたね。はいこれ、お茶じゃないけど…コーヒーだよ」
と言って湯気が立ち上るコーヒーを魔理沙に渡した。
「ありがとう」
魔理沙は熱いコーヒーを息を吹きかけて冷ましながら飲み始めた。意外とおいしい…
「たまには、コーヒーもいいでしょう?」
「ああ、たまにはいいかもな…そういえば私はいつ寝たんだ?」
「確か…5時ぐらいには返事が無くなったね」
「そうか…悪かったな」
「いいんだよ、私もたまにいつの間にか寝てしまうことがあるし」
と言った後ににとりはあくびをした。
「お前もしかして…」
目をこすりながらにとりは答えた。
「うん、徹夜だね。おもしろい物がたくさんあったから寝る暇なんて無かったよ」
「そうか…じゃあ寝たいだろ?これ飲んだら私も帰るぜ」
「うん、ありがと」
「あ、ちょっとトイレ借りるぜ」
「うん、扉を出て左に行ったところにあるから」
トイレから帰ってきた魔理沙は椅子に座っているにとりが寝ているのにに気がついた。
「あ、にとり…寝ちまったか…」
にとりは椅子にもたれかかって寝ていた。
だが、どことなく寝心地が悪そうなので、魔理沙はにとりを抱えて寝室に連れて行った。
にとりの家は入り組んでおり、到着するのにだいぶ時間がかかった。
「よっと、これでいいだろ…」
にとりをベッドに寝かせ、布団をかけてやった。
「あ、持ってきた物どうするかな…付き合わせちまったし、コーリンのとこから借りたやつはここに置いて行ってやるか。」
魔理沙はドアを開けてにとりに振り返った。
「じゃあな、にとり。…付き合わせちまって悪かったな…」
魔理沙はドアを閉めて帰っていった。
「魔理沙…ありがと」
数日後
魔理沙は香霖堂に訪れていた。
「よお、コーリンなんか面白い物無いか?」
「お、魔理沙じゃないか」
コーリンは珍しく本を読んでおらず、何やら変なものを持っていた。
「? コーリンそれなんだ?」
「河童の新作らしくてね、どうやら部屋を掃除するためのものらしい、効果の方は…結構いい感じだよ」
「そ、そうなのか…」
その形に魔理沙はどことなく見覚えがあった…
そう、その形はこの間にとりの家に持っていった物にそっくりだった。
「どうやら、持つところのスイッチを切り替えて埃やゴミを掃除するものらしいよ」
「そ、そうなのか…」
「…ところで、魔理沙…この形に見覚えはないかい?」
「!? いや~私は見覚えが無いな…はははは」
「じゃあこれらの見覚えは無いかな?」
といって霖之助が取り出してきたのはこの間この店からと…借りていった物たちだった。
「は?! な、なんでそれをお前が…」
「この間河童がこれを持ってきた時に一緒に持って来ていたものなんだ、確か君が来た時に無くなっていた物ばかりなのだが?」
「ははははは…あ、そういえば用事を思い出したから私はこれで」
「ドアは開かないよ」
「な、何だと?!」
魔理沙はドアに走り寄り、開けようと試みたがドアは開かなかった。
「ふふふ、ドアにちょっと細工をして開かないようにしたよ…なぜだかわかるかい?」
いつの間にか霖之助は魔理沙のすぐ後ろに来ていた。
「ちょっとお仕置きが必要だね」
「や、やめろ…やめてくれーーーーーーーーーー!!!!」
「たまには痛い目を見とかないとね…」
にとりはコーヒーを一口飲んだ。
「やっぱりコーヒーはジョー○アだね」
創想話では、今まで変態属性こーりんが沢山居たせいで、「ふふふ、ちょっとドアに細工を~」とか「お仕置きが~」のセリフがエロく感じてしまうw
それから、幻想入りの話は確かに少ないですが、全く無いわけではありませんから大いに結構だと思いますよ。
ただ、ここでは他の場所ですでにUP済みの作品をそのまま投稿するのは御法度ですので(確か規約で決まってると思った)気を付けて下さいね。
素人の私が言うのもおこがましいのですが、貴女の書き方は堅実で読みやすいので、幻想入りを書いてくれるなら楽しみです。
これは中々可愛いにとりですね。幻想入りは個人的に好みのジャンルなので、これからもどしどし投稿してください。
次回作も期待しています。