「むぅー。何か新しい驚かせ方は無いのかなぁー」
人気の無い夜の道を、私――多々良小傘はてくてくと歩いていた。
抱き抱えているのは相棒の唐傘。
足元には愛用の高下駄。
身に纏うのは、翡翠色と純白の二色で織られた一張羅。
夜風の冷たさがほんの少しだけ身体に刺さるけれども、付喪神だからあまり気にならない。
だからこそ、こんな夜は人間を驚かせる方法を考えるのに丁度良い。
真っ暗な夜は、妖怪が姿を現すのに最高のシチュエーションだから。
「誰かを驚かせて実戦からー……むぅー……んっ?」
あーだこーだと考えながら道を歩いていると、私の正面の方から二つの人影がこちらにやって来るのが見えた。
子供みたいに小さな人影と、それに付き従う大人の人影。
小さな方の背中にはコウモリみたいな翼が見えているので、きっと妖怪なのだろう。
大人の方の人影は、月の光を浴びて冷たい光を放つ銀髪がとても綺麗だ。まるで、刃物みたい。
とにもかくにも、妖怪に遭遇してしまうと言うのはあまり良い事ではない。
相手が危険な妖怪だとしたら、私みたいな弱い妖怪は虐められてしまうかもしれないからだ
だから、私は道の外れの草むらの中に隠れて、この場をやり過ごす事にした。
「……ねぇ、咲夜。静かな夜の散歩と言うのも、また風流な物かもしれないわね」
草むらの中でひっそりと息を殺していると、妖怪が隣の大人へ言葉を漏らすのが聞こえた。
大人の方は咲夜さんと言うらしい。
咲夜さんは、隣の子供を気遣いながらぽつりと漏らす。
「そうかもしれませんわね。ですが、夜風がお嬢様の御身体に障らぬかが心配です」
けれども、心配をされた事があのお嬢様とやらは気に入らなかったのだろうか。
口を尖らせながら、面白く無さそうにしていた。
「咲夜は心配性なんだから……この私が、夜風程度で風邪を引く様に見えるのかしら?」
「ふむ……確かに、杞憂だったかもしれませんね」
「もうっ。心配をしてくれるのは嬉しいけど、余計な心配はこちらとしても迷惑よ。私の従者ならば、それも察してくれないと」
どうやら、あの子供は咲夜さんのご主人様らしい。
メイドさんを従えると言う事は、どこかのお屋敷のお嬢様なのだろう。
何にせよ、そのお嬢様はご機嫌がナナメらしい。
草むらの中から様子を伺っているだけだけれど、その眉が逆ハの字になっているのが丸わかりだ。
「……罰よ。ちょっとだけ、目を瞑りなさい」
「何を」
「良いから」
「…………――んっ!」
思わず、声が漏れてしまいそうになった。
お嬢様の方が罰として、目を瞑った咲夜さんの唇に、自分の唇を強引に重ねたのだ。
一瞬、妖怪の食事――つまりは人間を捕食しているのかと思ったけれど、そうではないらしい。
無理やりに合わされた唇の間から聞こえるのは、唾液の交わりあう音。
そして……舌が絡み合って立てる、粘液質の水音。
最初は抵抗をしていた咲夜さんだけれども、これがお嬢様による罰だからだろうか?
最後は抵抗もせずに、ただお嬢様にされるがまま、そのくちづけを受け入れていた。
咲夜さんの喉がコクコクと波打っているのは、お嬢様の唾液を受け入れている証拠なのだろう。
そして……どれ程の時間が経ったのだろう。
見ている私の身体の奥から、薄らと熱っぽい何かが感じられる様になった頃、お嬢様が咲夜さんから唇を離した。
二人の舌の間には、月明かりを帯びて銀色に光る唾液の糸が一筋。
朱色に染まった咲夜さんの頬を優しく撫でるお嬢様の表情は、満足気だった。
えろちっくな光景だ。
「……んっ…………ふふっ、咲夜の唇って冷たいのね。
貴女こそ、この夜風で冷えたのではないかしら?」
「そうかもしれませんね。こんなにも、夜風が冷たい夜ですから」
「あらあら。それじゃあ早く紅魔館に帰って、温かい紅茶でも飲みましょうか」
「はい。お供致します。上質の茶葉が入りましたので、是非ストレートティーにて」
「ミルクティーが良いわ。咲夜の唇の味がするから」
「……かしこまりました」
何とも優雅な会話をしながら、お嬢様と咲夜さんは行ってしまった。
凄いのを、見てしまった。
しかしながら、これは使えそうな気がする。
お嬢様にちゅーをされた瞬間、咲夜さんの表情がほんの一瞬だけ強張っていたのを確かに私は見たのだ。
つまり、ちゅーをすれば相手は驚く。
それも、濃厚に舌と舌を絡み合わせれば尚グッド。
さらに相手の唇の味を教えてあげれば完璧。
これは早速試してみないと。
「にひひっ、良い事を知ったぞー。
朝は早速この方法で、人間を驚かせてやるんだからぁっ!」
予想外の収穫に気を良くしたまま、私は夜の道を一人駆け出す。
目的は……あの巫女だ!
◆ ◇ ◆
「早苗ー!」
翌日。
準備と段取りを終えた私は、件の巫女が居る神社――守矢神社へ到着していた。
もはや、今日の私は無敵なのだ。
だって、あんなにも冷静沈着なメイドさんでも驚かせる事が出来る方法を、知ってしまったのだから。
今日こそにっくき早苗をこてんぱんに驚かせてやって、私の実力を知らしめてやろう。
「はいはいっと。何事ですか一体」
めんどくさそうな表情で社務所から出て来たのは、緑色のロングヘアを風になびかせた巫女。
私のライバル、東風谷早苗。
今日と言う今日こそは、恐怖のどん底に落としてやるんだからっ!
「早苗っ! 今日と言う今日こそは、このわちきがお前を驚かせてやるのだ!」
「あーもう。面倒だからとっとと済ませて下さいよ?
あと、この前の『トレンチコートの中身は素っ裸作戦』とか『ある日突然空から女の子が降って来た作戦』みたいなしょーもないのは勘弁です」
「それはリハーサルっ! 今日と言う今日こそが本番にして早苗最後の日なのっ!」
「あーはいはい。そいつは楽しみですねぇ。ちなみに、小傘ちゃんの今までの戦績はどんな具合でしたっけ? 私の記憶が確かなら六十戦六十敗ですけども」
「ぐぬぬっ……」
しかしながら、流石は我が永遠のライバル東風谷早苗。
これだけ脅していると言うのにも関わらず、その表情は依然として余裕のままだ。
でも、今日と言う今日こそは絶対に負けないんだから!
六十の敗北を糧にして、私は今日こそ初の白星をゲットするのだ!
「よ、よしっ……早苗、目を閉じろ!」
「嫌ですよ。どうしてそんな事をせねばならないのですか」
「ふぇーん!?」
ここに来て、この作戦最大の欠陥が発覚。
相手が目を閉じてくれないとまともに行動が出来ないのだった。
つまり、これで六十一個目の黒星で――……
【こがちゅっちゅ大作戦っ!! 完】
「と言うのはまあ残酷ですし、目を閉じるくらいなら良いですよ。はい、どうぞっと」
とかやってる間にも、早苗は自ら目を瞑ってくれた。
こんな時、早苗の何気ない優しさが嬉しかったりする。
棒立ちのままで、そっと瞼を下ろした早苗の表情には、何故か期待をしている様な気配も感じられた。
まあそれが命取りになるんだけど!
「――! チャーンス!」
瞬間、私は全力で早苗の唇めがけて飛び掛っていた。
背は私の方がほんの少しだけ低いから、そこは爪先立ちになる事でどうにかクリア。
危うくつんのめり掛けたけども、そこは早苗の身体に抱き付いてブレーキを掛けたので大丈夫。
「……んぁっ?」
「まだなのー!」
「はいはい」
早苗がこっそり薄目を開けようとしていたので、怒っておこう。
これは、不意打ちだからこそ意味がある作戦なのだ。
「……んっ…………」
眼前の瞼がきちんと閉じられたのを確認すると、私は静かに早苗の唇に自分の唇を重ねる。
唇の間からちろりと覗かせた私の舌は、唐傘お化けとしてのちょっとした自己主張。
腕を早苗の背中に回した瞬間には、ほんの一瞬だけ、腕の中で早苗が震えるのが感じられた。
「……んふっ…………それで、終わりですか? そんなのじゃあ驚けませんよ?」
「んむっ……! むぅー……」
予想外だった。
早苗は、ちゅーをされたくらいでは動じていない……流石は私の永遠のライバル!
でも、こっちにはまだまだ奥の手がある。あのお嬢様がやっていた様に、舌を早苗のナカに絡ませて――……
「ふぁふご、しろー」
覚悟しろー。
と前置きをしつつ、私は舌を早苗の口内に侵入させる。
硬い前歯を無理やりに押し退けながら、私の舌は早苗の口のナカへと導かれ、早苗の舌と絡み合う。
ざらざらとした舌の感触を楽しみながら、私の舌はさらに奥へ、奥へ、奥へ――……
「……んっ……? んぁ、ちょ、ちょっと、小傘ちゃん……?」
もっと奥へ、奥へ、奥へ。
どんどん奥へと――……口のナカだけじゃなくて、早苗のナカまで。
「ひぁっ、あ、ああぁ!? ちょ、ちょっと待っ、んっ……ふぁぁっ!?」
ぐちゅっ、ぬちゅッ、ぬりゅ……
じゅぷり。ぬぷ、ぬぴゅっ、じゅぐり。
ぬぴゅっ。ぬぷぷぷぷっ。じゅぷっ。
「かっ、あかッ、や、止めて、ぇッ! ナカ、あかぁっ!? や、舐めりゃれ、ぇぇっ!?」
ずぷ、ちゅりゅ、ぬぷり。
「あ、ふァっ!? や、ああああっ……ンっ!? や、ああああああぁぁぁっ……!」
にゅっ。
ぬぷるっ。
ちゅるん。
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? い、ふっ、ふあぁ――――ッ!!」
◆ ◇ ◆
「ふぃー。終わった終わった」
一仕事を終えた後、私は大満足だった。
目の前には、ぜいぜいと息を切らせている早苗の姿。
これはもう大成功なのだろう。
流石は、お嬢様の驚かせ方だ!
「…………………………ねェ、小傘、ちゃん…………」
「んー?」
「最期に、何か、言い残すコトがあれば、聞いてあげましょう」
ゆらりと立ち上がった早苗は、そんな事を言っている。
……よし、ここはキメ台詞だ!
「えっへん! 早苗のナカはお味噌汁の味がしたのだ!」
最後のセリフまで、あのお嬢様を見習う事にした。
こうなれば早苗は何も言い返せなくて――……
「――ほゥ?」
言い返せない――んじゃないのかな?
あれれ?
「それは、きっと――」
早苗は、何処からともなく御幣と御札を取り出すと、自分の周りに風を吹かせていて。
それはもう、どう見ても臨戦態勢で。
驚いていると言うよりも、怒っていると言うべき状態で。
「今日の朝食のメニューですねぇ――ッ!!」
早苗の珍妙な掛け声と同じくして、私の身体は足元の地面ごと吹き飛ばされていた。
「ふにゃぁぁぁぁぁっ!? どうしてぇぇぇぇっ!!!!」
かくして、今日の驚かせ作戦もあえなく失敗。
六十一個目の黒星を、早苗には付けられてしまったのでした。
人気の無い夜の道を、私――多々良小傘はてくてくと歩いていた。
抱き抱えているのは相棒の唐傘。
足元には愛用の高下駄。
身に纏うのは、翡翠色と純白の二色で織られた一張羅。
夜風の冷たさがほんの少しだけ身体に刺さるけれども、付喪神だからあまり気にならない。
だからこそ、こんな夜は人間を驚かせる方法を考えるのに丁度良い。
真っ暗な夜は、妖怪が姿を現すのに最高のシチュエーションだから。
「誰かを驚かせて実戦からー……むぅー……んっ?」
あーだこーだと考えながら道を歩いていると、私の正面の方から二つの人影がこちらにやって来るのが見えた。
子供みたいに小さな人影と、それに付き従う大人の人影。
小さな方の背中にはコウモリみたいな翼が見えているので、きっと妖怪なのだろう。
大人の方の人影は、月の光を浴びて冷たい光を放つ銀髪がとても綺麗だ。まるで、刃物みたい。
とにもかくにも、妖怪に遭遇してしまうと言うのはあまり良い事ではない。
相手が危険な妖怪だとしたら、私みたいな弱い妖怪は虐められてしまうかもしれないからだ
だから、私は道の外れの草むらの中に隠れて、この場をやり過ごす事にした。
「……ねぇ、咲夜。静かな夜の散歩と言うのも、また風流な物かもしれないわね」
草むらの中でひっそりと息を殺していると、妖怪が隣の大人へ言葉を漏らすのが聞こえた。
大人の方は咲夜さんと言うらしい。
咲夜さんは、隣の子供を気遣いながらぽつりと漏らす。
「そうかもしれませんわね。ですが、夜風がお嬢様の御身体に障らぬかが心配です」
けれども、心配をされた事があのお嬢様とやらは気に入らなかったのだろうか。
口を尖らせながら、面白く無さそうにしていた。
「咲夜は心配性なんだから……この私が、夜風程度で風邪を引く様に見えるのかしら?」
「ふむ……確かに、杞憂だったかもしれませんね」
「もうっ。心配をしてくれるのは嬉しいけど、余計な心配はこちらとしても迷惑よ。私の従者ならば、それも察してくれないと」
どうやら、あの子供は咲夜さんのご主人様らしい。
メイドさんを従えると言う事は、どこかのお屋敷のお嬢様なのだろう。
何にせよ、そのお嬢様はご機嫌がナナメらしい。
草むらの中から様子を伺っているだけだけれど、その眉が逆ハの字になっているのが丸わかりだ。
「……罰よ。ちょっとだけ、目を瞑りなさい」
「何を」
「良いから」
「…………――んっ!」
思わず、声が漏れてしまいそうになった。
お嬢様の方が罰として、目を瞑った咲夜さんの唇に、自分の唇を強引に重ねたのだ。
一瞬、妖怪の食事――つまりは人間を捕食しているのかと思ったけれど、そうではないらしい。
無理やりに合わされた唇の間から聞こえるのは、唾液の交わりあう音。
そして……舌が絡み合って立てる、粘液質の水音。
最初は抵抗をしていた咲夜さんだけれども、これがお嬢様による罰だからだろうか?
最後は抵抗もせずに、ただお嬢様にされるがまま、そのくちづけを受け入れていた。
咲夜さんの喉がコクコクと波打っているのは、お嬢様の唾液を受け入れている証拠なのだろう。
そして……どれ程の時間が経ったのだろう。
見ている私の身体の奥から、薄らと熱っぽい何かが感じられる様になった頃、お嬢様が咲夜さんから唇を離した。
二人の舌の間には、月明かりを帯びて銀色に光る唾液の糸が一筋。
朱色に染まった咲夜さんの頬を優しく撫でるお嬢様の表情は、満足気だった。
えろちっくな光景だ。
「……んっ…………ふふっ、咲夜の唇って冷たいのね。
貴女こそ、この夜風で冷えたのではないかしら?」
「そうかもしれませんね。こんなにも、夜風が冷たい夜ですから」
「あらあら。それじゃあ早く紅魔館に帰って、温かい紅茶でも飲みましょうか」
「はい。お供致します。上質の茶葉が入りましたので、是非ストレートティーにて」
「ミルクティーが良いわ。咲夜の唇の味がするから」
「……かしこまりました」
何とも優雅な会話をしながら、お嬢様と咲夜さんは行ってしまった。
凄いのを、見てしまった。
しかしながら、これは使えそうな気がする。
お嬢様にちゅーをされた瞬間、咲夜さんの表情がほんの一瞬だけ強張っていたのを確かに私は見たのだ。
つまり、ちゅーをすれば相手は驚く。
それも、濃厚に舌と舌を絡み合わせれば尚グッド。
さらに相手の唇の味を教えてあげれば完璧。
これは早速試してみないと。
「にひひっ、良い事を知ったぞー。
朝は早速この方法で、人間を驚かせてやるんだからぁっ!」
予想外の収穫に気を良くしたまま、私は夜の道を一人駆け出す。
目的は……あの巫女だ!
◆ ◇ ◆
「早苗ー!」
翌日。
準備と段取りを終えた私は、件の巫女が居る神社――守矢神社へ到着していた。
もはや、今日の私は無敵なのだ。
だって、あんなにも冷静沈着なメイドさんでも驚かせる事が出来る方法を、知ってしまったのだから。
今日こそにっくき早苗をこてんぱんに驚かせてやって、私の実力を知らしめてやろう。
「はいはいっと。何事ですか一体」
めんどくさそうな表情で社務所から出て来たのは、緑色のロングヘアを風になびかせた巫女。
私のライバル、東風谷早苗。
今日と言う今日こそは、恐怖のどん底に落としてやるんだからっ!
「早苗っ! 今日と言う今日こそは、このわちきがお前を驚かせてやるのだ!」
「あーもう。面倒だからとっとと済ませて下さいよ?
あと、この前の『トレンチコートの中身は素っ裸作戦』とか『ある日突然空から女の子が降って来た作戦』みたいなしょーもないのは勘弁です」
「それはリハーサルっ! 今日と言う今日こそが本番にして早苗最後の日なのっ!」
「あーはいはい。そいつは楽しみですねぇ。ちなみに、小傘ちゃんの今までの戦績はどんな具合でしたっけ? 私の記憶が確かなら六十戦六十敗ですけども」
「ぐぬぬっ……」
しかしながら、流石は我が永遠のライバル東風谷早苗。
これだけ脅していると言うのにも関わらず、その表情は依然として余裕のままだ。
でも、今日と言う今日こそは絶対に負けないんだから!
六十の敗北を糧にして、私は今日こそ初の白星をゲットするのだ!
「よ、よしっ……早苗、目を閉じろ!」
「嫌ですよ。どうしてそんな事をせねばならないのですか」
「ふぇーん!?」
ここに来て、この作戦最大の欠陥が発覚。
相手が目を閉じてくれないとまともに行動が出来ないのだった。
つまり、これで六十一個目の黒星で――……
【こがちゅっちゅ大作戦っ!! 完】
「と言うのはまあ残酷ですし、目を閉じるくらいなら良いですよ。はい、どうぞっと」
とかやってる間にも、早苗は自ら目を瞑ってくれた。
こんな時、早苗の何気ない優しさが嬉しかったりする。
棒立ちのままで、そっと瞼を下ろした早苗の表情には、何故か期待をしている様な気配も感じられた。
まあそれが命取りになるんだけど!
「――! チャーンス!」
瞬間、私は全力で早苗の唇めがけて飛び掛っていた。
背は私の方がほんの少しだけ低いから、そこは爪先立ちになる事でどうにかクリア。
危うくつんのめり掛けたけども、そこは早苗の身体に抱き付いてブレーキを掛けたので大丈夫。
「……んぁっ?」
「まだなのー!」
「はいはい」
早苗がこっそり薄目を開けようとしていたので、怒っておこう。
これは、不意打ちだからこそ意味がある作戦なのだ。
「……んっ…………」
眼前の瞼がきちんと閉じられたのを確認すると、私は静かに早苗の唇に自分の唇を重ねる。
唇の間からちろりと覗かせた私の舌は、唐傘お化けとしてのちょっとした自己主張。
腕を早苗の背中に回した瞬間には、ほんの一瞬だけ、腕の中で早苗が震えるのが感じられた。
「……んふっ…………それで、終わりですか? そんなのじゃあ驚けませんよ?」
「んむっ……! むぅー……」
予想外だった。
早苗は、ちゅーをされたくらいでは動じていない……流石は私の永遠のライバル!
でも、こっちにはまだまだ奥の手がある。あのお嬢様がやっていた様に、舌を早苗のナカに絡ませて――……
「ふぁふご、しろー」
覚悟しろー。
と前置きをしつつ、私は舌を早苗の口内に侵入させる。
硬い前歯を無理やりに押し退けながら、私の舌は早苗の口のナカへと導かれ、早苗の舌と絡み合う。
ざらざらとした舌の感触を楽しみながら、私の舌はさらに奥へ、奥へ、奥へ――……
「……んっ……? んぁ、ちょ、ちょっと、小傘ちゃん……?」
もっと奥へ、奥へ、奥へ。
どんどん奥へと――……口のナカだけじゃなくて、早苗のナカまで。
「ひぁっ、あ、ああぁ!? ちょ、ちょっと待っ、んっ……ふぁぁっ!?」
ぐちゅっ、ぬちゅッ、ぬりゅ……
じゅぷり。ぬぷ、ぬぴゅっ、じゅぐり。
ぬぴゅっ。ぬぷぷぷぷっ。じゅぷっ。
「かっ、あかッ、や、止めて、ぇッ! ナカ、あかぁっ!? や、舐めりゃれ、ぇぇっ!?」
ずぷ、ちゅりゅ、ぬぷり。
「あ、ふァっ!? や、ああああっ……ンっ!? や、ああああああぁぁぁっ……!」
にゅっ。
ぬぷるっ。
ちゅるん。
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? い、ふっ、ふあぁ――――ッ!!」
◆ ◇ ◆
「ふぃー。終わった終わった」
一仕事を終えた後、私は大満足だった。
目の前には、ぜいぜいと息を切らせている早苗の姿。
これはもう大成功なのだろう。
流石は、お嬢様の驚かせ方だ!
「…………………………ねェ、小傘、ちゃん…………」
「んー?」
「最期に、何か、言い残すコトがあれば、聞いてあげましょう」
ゆらりと立ち上がった早苗は、そんな事を言っている。
……よし、ここはキメ台詞だ!
「えっへん! 早苗のナカはお味噌汁の味がしたのだ!」
最後のセリフまで、あのお嬢様を見習う事にした。
こうなれば早苗は何も言い返せなくて――……
「――ほゥ?」
言い返せない――んじゃないのかな?
あれれ?
「それは、きっと――」
早苗は、何処からともなく御幣と御札を取り出すと、自分の周りに風を吹かせていて。
それはもう、どう見ても臨戦態勢で。
驚いていると言うよりも、怒っていると言うべき状態で。
「今日の朝食のメニューですねぇ――ッ!!」
早苗の珍妙な掛け声と同じくして、私の身体は足元の地面ごと吹き飛ばされていた。
「ふにゃぁぁぁぁぁっ!? どうしてぇぇぇぇっ!!!!」
かくして、今日の驚かせ作戦もあえなく失敗。
六十一個目の黒星を、早苗には付けられてしまったのでした。
という単語が浮かんだ
これをしょーもないと言うか!? 早苗さんやせ我慢はよくないぞ!!
小傘ちゃんとちゅっちゅしたいけど駄目だ。俺だったら喉の時点で絶対吐く orz
もっとwもっとwwもっとwww
良くも悪くもありがち。
そんなプレイは考えた事も無かった!
やってみたいけど、悲しい事に人間に生まれてしまった私には不可能な技ですね。
なんか悔しいから、もう小傘さんの勝ちで良いっスよw
こがさなちゅっちゅいいねぇ
てっきり傘の方でちゅっちゅするオチかと思った結果がこれだよ!